「いーぐる」連続講演

ジャズ喫茶「いーぐる」の『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました(後編)。

先日 ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演のレポートの続きです。

私なりににヒップホップを勉強してきたとはいえ、ヒップホップについての理解は未だ初心者より少しましな程度。また単に私の理解力不足もあるわけでして、そのあたりはご了承いただいたうえでお読みいただければ幸いです。当然ですが講演の全てではなく私なりの編集が入っています。いつものように音楽を聴いての感想などはピンク文字。

前半はヒップホップの歴史と特徴を駆け足で紹介する内容でした。後半は日本にはじまり世界に広まったヒップホップを紹介する内容になっていました。

P123_2 KEYWORD3 日本におけるリアルの意味

時間が押していたため、この章は大幅にカットされてしまったのが残念です。4曲カットされてかかったのは1曲のみ。まあ、日本については聴こうと思えば簡単に聴くことができるので、それよりは聴いたことがない世界のヒップホップの紹介を優先されたのは了解できることです。

11.DCPRG with Simi Labの《Uncommon Unremix》2012年
これはシミ・ラボのラップ以外は、マイルスがキーボードを弾いている時の70年代マイルス・バンドのコピー。菊地成孔さん、好きなのは分かるけれど、どうなんでしょうね、これ? まあ、シミ・ラボとのマッチングは良いので良しとしておきましょう。私、基本的にこういうサウンドは好きですよ。

原さんから、先日ニューヨークへ行った時、乗ったデルタ航空の機内ラジオにはヒップホップというジャンルがなくて、アーバン・ソウルに含まれているという話がありました。ティンバランドが登場以降、ジェイ-Zやカニエ・ウェストはゴージャスになりセレブ系音楽になったという話もありました。

KEYWORD4 移民(イミグラント)たちの表現としてのラップ

ここではアメリカ以外の世界に広まったヒップホップを紹介。これは関口さんならではの切り口であり、著書『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』にいおいても重要な視点です。

世界的に経済難民が移民する現象が起こっていて、モロッコ人はフランスへ、パキスタン/バングラディシュ人はイギリスへ、トルコ人はドイツへ移民。こういった移民が権限を主張してヨーロッパとぶつかり、移民の自己主張の手段がヒップホップとなっている。

※以下に紹介するラッパー/MCなどの詳細はウィキペディアを参照下さい。

アブダル・マリックはフランスに移民したコンゴ人。
12.Abd al Malikの《Mon Amour》、アルバム『Chateau Rouge』2010年から
女性ボーカルから昔懐かしい長山洋子の《ヴィーナス》を連想。あの頃はテクノだったけれど今はヒップホップ。途中にマリックのラップが入る。このポップス性はJ-POPを聴く人には受け入れやすいかも。

M.I.A.はスリランカ人。イギリスで活動。ディプロがサポートしているアルバムから。
聴いた後、原さんから、アメリカ以外のビートはダサイがM.I.A.は新しいビートをやっているという指摘があって、私も納得。
13.M.I.A.の《Mon Amour》、アルバム『Arular』2005年から
南部ビート。サウンド的にはアメリカのヒップホップとして聴ける。

マルクスマンはアイリッシュ。アイリッシュ民族音楽とヒップホップの融合を図っている。関口さんはアイルランドの可能性に注目。ヒップホップ・ミュージシャンがヨーロッパ全体で活躍して競争する中で、マルクスマンのような人がヒップホップを面白くしていくのではないか。
14.Marxmanの《Bucky Dung Gun》、アルバム『33 Revolution per Minutes』1993年から
オーソドックスなヒップホップ・ビート。録音が古いから。

タンザニアのヒップホップ。ボンゴフレーバーはダンス・ミュージックで、正確にはヒップホップではない。歌詞はタンザニア賛歌。スワヒリ語でラップ。
15.Bongo Flavaの《Umoja Wa Tanzania》、アルバム『Bongo Flava』2004年から
語感が何となく日本語っぽくて、フローは日本語ラップを聴いているように聴こえる。

ケイナーンはソマリア人。アルバム名『トルバドール』は放浪者という意味。
聴いた後、原さんから、トラックは地域の格差がなくなっていると指摘があって、これも納得。
16.K'Naanの《ABC》、アルバム『Troubadour』2009年から
ビートは新しい。「文化系のためのヒップホップ入門」で散々聴いた祭囃子系。大太鼓みたいな緩いドラム音が活躍。

ここで、高円寺で行われた原さんが参加したイヴェントの話題。そこに関口さんも行ったそうで、とても面白かったそうです。数名のトラックメイカーが、生演奏をしているのをその場でサンプリングしてビートを作り競うというもの。本当に色々なものが出くるとのことでした。私は全くそういうシーンに疎いのですが、お2人の話を聞いて興味が湧きました。

マルセロ・D2はブラジルで圧倒的に支持されている。コンテンポラリー音楽が発展したブラジルらしい工夫(ノイズを入れるなど)が凝らされているブラジルのヒップホップ。
17.Marcelo D2の《Pra Posteridade》、アルバム『Looking For The Perfect Beet』2007年から
ボッサ・ミーツ・ラップという感じ。

ドランクン・タイガーはUSコリアン。歌謡性が凄い。メロディー性が凄くて、こんなのがあったのかという感じのもの。
18.Drunken Tigerの《Pra Posteridade》、アルバム『Drunken Tiger4』2003年から
歌謡性ありまくり。こういうのを聴くと私には久保田利伸が浮かぶ。日本の歌謡性をひっさげてニューヨークでそれなりに受けた人だから。メロディーは哀愁マイナー調。私的にはいつもブログに書いている”セツネー”の極致(笑)。

スヌープ・ドッグがジャマイカに急接近。ヒップホップは世界を巡ってカリブに戻るのか?
19.Snoop Lion feat. Drakeの《No Guns Allowed》、アルバム『Reincarnated』2013年から
レゲエ・ビート。カリブに戻る。なるほど。 私はなぜかレゲエが苦手。基本的にエッジが効いたリズムが好きなのでノホホンとしたレゲエは魅力薄なのでしょう。

原さんによると、最近日本ではアメリカのヒップホップは聴かないとのこと。とうとうこのシーンでも”洋楽離れ”現象が始まったということなのでしょうね。

最後に関口さんから、この本を書くにあたって協力していただいた2人の女性と出版社の社長への感謝の弁があり、いらしていたので皆さんで拍手を贈り講演は終了。

<質問コーナー>
まずは後藤さんから指名された柳樂さんから質問。
Q: オバマ大統領以降のヒップホップの傾向は?
A: (いまいち私の頭に入っておらず、ごめんなさいm(_ _)m)

レゲエ系の音楽に詳しい方?から質問
Q: 今回レゲエにあまり触れなかった理由は?
A: 2000年以降ダンスホール・レゲエからの影響はあるが意識的に外した。

私から質問。
Q: ヒップホップが移民の権限主張の手段になった理由は? 単に今世界的に流行っている音楽というだけで、ヒップホップでなければならない理由はあるのか? 過去にはロックがそうであったし、日本ではかつてフォークがそういう音楽だった時期もある。
A: ヒップホップでなければならない理由はある。ラップは権限を主張しやすく歌に比べれば簡単だから。私から「メロディーというテクニックを要求される縛りがなく、より感情表現しやすいからかもしれない」ということを伝えて納得。今加えれば、ヒップホップが持つに至ったメッセージ性という文化が他の国でも共有されやすいのかもしれません。

後藤さんから質問。
Q: 中山康樹さんの「ジャズ・ヒップホップ・マイルス」、大和田俊之さんと長谷川町蔵さんの「文化系のためのヒップホップ入門」についての感想は?
A: (ここは敢えて伏せさせていただきます。笑)

<今回の講演を聞いて>
ヒップホップはアメリカの売れ筋の(メジャーな)音楽にとどまらず、世界中の音楽シーンに広まっているということを今回実感しました。まあそれは日本の状況からも何となく察しがつくことです。世界で多様化していくヒップホップをフォローするというのは、今だからこそできるヒップホップの聴き方としてとても面白いと思います。
ラップの重要性を改めて認識。ラップを手法のひとつとして片づけてしまうことに疑問を抱いていた私には納得できる内容でした。
今回はポップなものが多くて聴きやすかったです。それは主張(メッセージ)をより多くの人に聞いてもらうという目的を考えれば、理にかなっている気がします。
ヒップホップと一言で言っても売れ筋(ポップなもの)からマニアックなものまで様々。DJサイドからクラブシーンとの結びつきで語ることもできるでしょう。で、それはどうしてもサウンド志向の需要になりがち。これまではむしろそうい切り口で語られてたものが多かったようです。しかしクラブシーンを知らない私からすれば、今回の関口さんや以前講演を聞いた大和田さん/長谷川さんの切り口の方が分かりやすい気がします。
原さんもおっしゃっていましたが、関口さんが世界中のヒップホップを聴きまくっているのは凄いと思いますし音楽に対する並々ならぬ愛情を感じました。
『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』はこれからじっくり読ませていただきます。

今回かかった曲のリストや後藤さんのレポートは ジャズ喫茶「いーぐる」「blog」を参照願います。

今回の講演、とても楽しく聞きました。
打ち上げにも参加させていただき色々な情報が得られました。
皆様どうもありがとうございました!

「いーぐる」の連続講演は何と今回が500回目!
500回とは凄い!後藤さんに拍手、そして、感謝であります。

余談ですが、後藤さんがみんなの党代表渡辺吉美風ヘアスタイル(ソフトモヒカンみたいな感じの)になっていてビックリ!似合っていましたので今後も続くけてほしいです。

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ジャズ喫茶「いーぐる」の『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました(前編)。

昨日は久しぶりに ジャズ喫茶「いーぐる」『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました。その前に秋葉原で買い物をしてきたのですが、それについては後日書きます

P122_2 「いーぐる」の前に来るとハッピ姿の人がたくさんいました。近所でお祭りをしていたのです。お店の中に入って後藤さん他に軽く挨拶。一番良い席が空いていたので迷わずそこに座りました。パット・メセニーの『TAP』がかかっている最中。やっぱり「いーぐる」で聴くといい感じですね。売っていた『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』を購入。

今回の講演は『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』刊行記念イヴェントです。著者の関口義人さんとゲストの原雅明さんがトーク形式で進行して行きました。最初に今回の講演について後藤さんから説明があった後にお2人が登場。入場曲がYMOの《ラップ現象》という趣向に思わず笑みが。

この本が刊行されるというのは、昨年の「いーぐる」年末ベスト盤大会の時に関口さんから伺っていて、その時に私は「本を買います。」と言ったので、その流れで今回参加したわけです。拙ブログを読んでいただければ、私のヒップホップ興味の延長だということも分かっていただけるでしょう。

さて、これから講演について書いていくわけですが、私なりににヒップホップを勉強してきたとはいえ、ヒップホップについての理解は未だ初心者より少しましな程度。また単に私の理解力不足もあるわけでして、そのあたりはご了承いただいたうえでお読みいただければ幸いです。当然ですが講演の全てではなく私なりの編集が入っています。いつものように音楽を聴いての感想などはピンク文字。

最初、原さんからヒップホップのプロパーでもない自分がなぜゲストとして指名されたのかと言う問いがあり、関口さんからヒップホップより広い目線で見られる方ということで敢えて原さんを指名したという回答がありました。原さんからは『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』にはアメリカのヒップホップの歴史から世界のヒップホップまで物凄い情報量が入っているという話、関口さんからはこの本の章立てについての説明などがありました。第8章は世界中のヒップホップについて書いてあり80ページも割いてあるそうです。

関口さんから、90年くらいからヒップホップに入れ込んで聴いていること、この本のテーマは「ヒップホップ=移民の言葉」、ヒップホップはアフロ・アフリカン・カルチャーというよりはアフロ・カリビアン・カルチャー、というような説明もありました。今回の講演では本に書いていないことを主に話すとのことで、本の内容は本を買って読んでほしいとのことでした。

KEYWORD1 ”言葉”としてのヒップホップ

故中村とうようさんがヒップホップのルーツはジャイブ/ジャンプと言っていたそうで、ヒップホップのルーツかな~ということで。
1.Half-Pint Jaxsonの《Down At Jasper's》1928-40年
おっしゃるとおりそんな感じでした。

ヒップホップのラッパーのほとんどが尊敬しているというLangston Hughes。
2.Langston Hughesの《The Story Of Blues》1954年
これもなるほど。

ポエトリー・リーディング、こちらもラッパーの口に上ることが多いGil Scott Heron。
革命はテレビで報道されるようなところではなく、身近で起こっているというもの。
3.Gil Scott Heronの《The Revolusion Will Not Be Televised》
ファンキーなサウンドは私好みでした。

ヒップホップの勃興を決定づけた曲
聴いた後で原さんから、いーぐるで聴くと90年くらいまでのヒップホップ(高級なスタジオ機材を使って良い音で録られている)が凄く良く聴こえるとのコメント。
4.Run DMCの《Walk This Way》1986年
これは私もリアルタイムで試聴。当時から結構好きでした。
けれどヒップホップには嵌りませんでした。

アフリカ回帰の強いグループ。
5.Arested Developmentの《Afrika's Inside Me》1994年
かなりポップ。ジョー・サンプルの《野生の夢》がサンプリングされていました。
ここで関口さんはポップな曲がお好きなんだなと直感。

アフリカ・バンバータはカリビアンですが、ズール・ネイションからネイティブ・タンと来てアフリカ回帰していきます。
ハイチ出身のカリビアン。曲目《トゥ・ザイオン》の”ザイオン”は”シオン”聖地。
カルロス・サンタナのアコースティック・ギターをフィーチャ。
6.Lauryn Hill feat.C.Santanaの《To Zion》1998年
女性コーラスが入ってエスニック。カリブな感じでした。

ボブ・マーリーの息子ダミアンが入っている曲。
7.Cypress Hill feat. Damien Marleyの《Ganja Bus》2004年
「文化系のためのヒップホップ入門」で触れられていた南部ビートですね。

ブルース(奴隷の歌)、ゴズペル(霊歌)、ソウル(愛を歌う)ときて、ヒップホップは政治言論であり黒人の社会的言語。DJの名前に使われるグランド・マスターは当時アメリカで流行ったカンフー映画、少林寺拳法の師匠(グランドマスター)から来ている。グループ名:パブリック・エネミー(大衆の敵)、N.W.A.(ニガーズ・ウィズ・アティテチュード)などは、黒人の自虐性であり偽悪性。原さんからは、ヒップホップにはディスの文化があり、それはゲーム感覚でもあり、カンフー映画に通じる娯楽性でもあるなどの話がありました。

KEYWORD2 エディットされる文化、DJ/Producerの役割

日本ではディスコとクラブの区別があいまいな頃からDJが出てきた。原さんによると、最初はレコードが店にあったが(DJが店のお金で買って揃える)、だんだんそういうものとは別なものをかけるようになり、DJがレコードを持つようになったとのこと。六本木や西麻布のクラブでは色々なものがかかった。80年代後半にはハウスとかテクノとかが出てきて、それまでテクノポップと言われていたものがテクノと呼ばれる。石野卓球など。当時はヒップホップとテクノの区別があいまい。日本ではダンスの影響が大きく、音楽よりダンスが先に入ってきてその後「ダンス甲子園」とか流行る。

関口さんが大尊敬するDJ Krush。
8.DJ Krushの《The Beginning》2004年
アブストラクト・ヒップホップ。北欧フューチャージャズ似。こういうのは好き。

Krushさんはアメリカで影響を与えている。インスト・ヒップホップ~トリップ・ヒップホップ。Krushさんは動きとかが武士道的でそこに日本性を強く感じる。原さんによると、バカにされていた時期が長くあったがアメリカで受けて2000年以降影響力を増す。ジャズプレーヤーに近い感じだそう。

豪華でゴージャス。
9.Timbaland with Drakeの《Say Something》2004年
ティンバランドらしい南部ビート。ボコダーが懐かし風味。

全く新しい概念でヒップホップを捉えなおす。
10.N*E*R*Dの《Things Are Getting Better》2002年
パッと聴き8ビートのフージョン。う~む、まあポップで楽しいことは事実。

原さんから、今のようにPC編集などはなかったので最初はテープ編集で宅録でローファイな作りだった。ダンスさせるためにB.P.M.(ビート・パー・ミニット:テンポ)は上がりがち(テンポが速い)だったが、最近はB.P.M.が下がって(テンポが遅い)きて、それで踊れるようになってきたという話がありました。

長くなりすぎると読んでもらえそうにないのでここで一旦切ります。
後半は次回。

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「クラブジャズの範疇」とは書いたものの・・・

先週末、ジャズ喫茶「いーぐる」で行われたイベント「新春ジャズ七番勝負 : 原田和典 vs 大塚広子」のレポートで、大塚さんのジャズ観をクラブジャズの範疇だろうと書きました。客観的に見ているつもりだったのですが、やはり私の主観は入っていますよね。そのあたりに関して補足的なことを書かせていただきます。

そのイベントの打ち上げで大塚さんと会話を交わしたところ、「私がクラブでかけるのは(いわゆる)クラブジャズとは違うんです。(いわゆる)クラブジャズはフュージョンなどで聴きやすいものです。柳樂さんや私は(いわゆる)クラブジャズとは違う(ものを志向している)んです。」というようなことを強調されていました。

実は年末の「いーぐる」忘年会で、柳樂さんからも同様の話をお聞きしていたのです。その時私は大塚さんにとても興味を抱きました。「大塚さんのクラブジャズ(ジャズ観)とはいったい何なのか?知りたい!」、それが今回の「七番勝負」に参加した最大の理由です。相手がどっぷりジャズの原田さんなので、大塚さんのジャズ観がより浮き出るのではないかという期待がありました。

結果は最初に書いたとおり「クラブジャズの範疇」ということに。この表現、大塚さんにとっては”違う”というお気持ちがあるようです。後になって大塚さんのツイッターを読んで気付きました。

これは私がジャズとフュージョン(ジャズではない)の間にある微妙な演奏を、これはジャズではないと言いたい気持ちと似ていると思いました。「あなたはジャズだと言うけれど違います。あなたは何も分かっていません。」という気持ちです。

そういう気持ちは私もよく分かります。大塚さんのそういう反応も想像できないことではなかったのに、「クラブジャズの範疇」と書いてしまう私。あ~っ、実にいやらしい。大塚さんごめんなさい。

実に面白いですね。私が硬派ジャズと軟派フュージョンを一緒にするのを嫌うように、大塚さんもフュージョンぽい軟派路線のクラブジャズと一緒にされるのを嫌っています。というか、そういうクラブジャズのあり方に大塚さんは危機感のようなものを抱かれているのではないかと思うのです。それには共感できる部分があります。

上記のことを書くに至った大塚さんのツイート2件(青字)を貼らせていただきます。
ツイッターを勝手に引用すること、ご容赦願います。

「矢部直さんのDJは刺激的で繊細で。振り幅が広くて繋ぎになる要素、曲の並べ方の理由がわかる。気持ち良いダンス。いーぐるで私が紹介したのを一概にクラブジャズと言われるのはやっぱり違う。それは矢部さんのやってることでDJプレイとして体感して感じてほしいです。」

「だからジャズサイドの環境で、じっくり矢部さんのDJでクラブジャズを体感してほしいんです。場所は、故日野元彦さんの奥様容子さんのジャズハウス、六本木のアルフィー。」

(注)上記イベントは既に終了。

ツイートはジャズ喫茶リスナー全般に対するのものだと思います。DJプレイ/クラブジャズを現場で体感したことがない私。う~む、大塚さんのおっしゃるとおりです。私が東京に住んでいれば行けるんでしょうけれど・・・、そういうことを理由にせず、行って体感しておかないといけないでしょうね。やっぱり体感していないと自分の意見が説得力を持ちません(涙)。

こちらも興味深い大塚さんのツイート。3件(青字)貼ります。

ジャズ喫茶いーぐるで、かけたsteve reid /  kai 。ジャズ喫茶にいるみなさんでは、reidのドラミングや、les walkerのピアノじゃなくて、arthur blythe のサックスのソロを聴いてる。

それはすごく貴重な発見で。いままで気付かなかったこと。でもその聴き方の違いはどんな音設備の環境で聴いてるかによる、無差別的に。クラブや家の音で、こんないいサックスの響きは聴こえてこなかった。

でもリズムや鼓動はスピーカーよりも、なによりもフロアからの響きで感じとれる

P158_2

なるほど。確かに音設備の環境の違いは大きいでしょう。しかし、ジャズ・リスナーとクラブジャズ・リスナーの聴き方の違いもそこに浮き上がっています。

まず私達ジャズ・リスナーは個々のアドリブ/ソロの良し悪しを聴き取るのが基本だと思います。たとえ音が悪くても(音響装置が良くても録音がひどいものもあります)、まずそこに耳をそばだてます。それがある程度できないと「いーぐる」にはとても行けません(笑)。

一方、大塚さんの「リズムや鼓動はスピーカーよりも、なによりもフロアーからの響きで感じとれる。」、これは私にはない感覚です。凄く説得力がある言葉です。ここに「踊れるかどうかを唯一の基準にジャズを選ぶ」クラブジャズの聴き方の本質を見ます。”フロアーからの響き”って踊っている人がいる場でしか感じられないと思いますから。

最後に言い訳めいてしまいますが、その感覚を持ち合わせてクラブのフロアでジャズをかける(基本的に躍らせるわけですから当然のことです)大塚さんのジャズ観、私から見ればやはり「クラブジャズの範疇」ということで。m(_ _)m

ただし一概にクラブジャズと言っても様々なスタンスの方がいらっしゃるわけで、それは一概にジャズ喫茶と言っても様々なスタンスの店がある(例えば「いーぐる」と「メグ」の違いとか)のと同じことでしょう。「クラブジャズの範疇」と書いた上で、大塚さんのスタンスについてもう少し丁寧な説明をしていなかったのは反省点です。

これが話題の曲。スティーヴ・リードの『リズマティズム』から《カイ》。

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「新春ジャズ七番勝負 : 原田和典 vs 大塚広子」

昨日は ジャズ喫茶「いーぐる」「新春ジャズ七番勝負 : 原田和典 vs 大塚広子」に行ってきました。今回は吉祥寺ディスクユニオンでレコード1枚、新宿ディスクユニオンでレコード3枚を買った後「いーぐる」へ。買ったレコード4枚は全て\1,000未満。

P157「新春ジャズ七番勝負」は com-post メンバーであり音楽ライター/ジャーナリストの 原田和典さん若手人気女性DJ 大塚広子さん が7つのテーマで曲をかけて対決するというイベントです。元々はジャズ喫茶「メグ」で模様されたもの(「いーぐる」のマスター後藤さんもそれを観戦)を参考にしています。「メグ」のマスター寺島さんには了解を得たうえで今回の開催とのことでした。対決方法には色々な趣向がこらされていました。

どのテーマからかけていくかはあみだ(線はお客さんに1本ずつ入れてもらう)で決めました。曲名、ミュージシャン、アルバム名等、一切伏せた状態で聴き、挙手により勝ち負けを判定してからネタ明かしをしました。原田さんは自分の曲をかけると表情に出てしまうということで、曲をかけている間はお面を被るという原田さんらしいエンタメぶり(笑)。勝敗の挙手については、両方良い場合は両方に挙手O.K.、逆に両方ともいまいちなら両方に挙手しなくてO.K.というルールです。私は灰色決着はよくないと思い必ずどちらかに挙手しました。

今回の企画、私にはいくつか目的がありました。まずはDJ大塚さんのジャズ観を知りたいということ。そこからクラブ・ジャズ(後で大塚さんに伺ったところ、この対決でかけた曲はクラブでかけるものとは違うというこでしたし、大塚さんがクラブでかけるものは一般的なクラブDJがかけるジャズとは違うということでしたが)とは何なのか具体的な感触を掴みたかったのです。それからお2人の選曲を聴き分けることができるかということ。原田さんの好みは結構分かっているつもりなのでそれが生かせるかどうか。「いーぐる」のお客さん(大塚さんのファンも来ているとは思いますが)がどういう勝敗を下すのか。単純にかかる曲を楽しみたいというものありました。

前置きはこのくらいにして、対決の模様をレポートします。

各テーマの最初の感想はブラインド状態で聴いた時のものです。メモのままをここに書きます。大塚さんはお客さんがどういう風に聴いたのか知りたいとおっしゃっていたので、少々コアな一ジャズ・ファンの意見として参考にしていただけたら幸いです。

1.私の一押しトンガリ系

後藤さんのリクエスト題目

(先) : 北欧音響系トランペッターの大き目の編成。クラブ・ジャズ~フューチャー・ジャズで大塚さんの選曲と推測。

(後) : フリーっぽいところもある4ビートのアグレッシブなピアノ・トリオのライブ。どこがトンガリなのかよく分からないけれど原田さんの捻った選曲と推測。

私は(先)に挙手。トンガリ系はこっちでしょう。勝ちは(先)。

勝ち(先) : 原田さんの選曲でロバート(ロブ)・マズレク(tp)のサンパウロ・アンダーグラウンドの曲。北欧ではなく南米でした。ロブ・マズレク(パルサー・カルテット)のアルバムは少し前に私もブログに取り上げています。このアルバムはほしいです。

(後) : 大塚さんの選曲でロジャー・ケラウェイ(p)。1967年のレコード。頭と最後に変な音が入っていて、大塚さんによるとこの時代でライブにテープレコーダーを持ち込んで出しているのがトンガリとのこと。なるほど。後から振り返れば、このB級感は私が感じているクラブ・ジャズ。

2.ジャズの未来は君にまかせた~これからが楽しみなミュージシャンをセレクト

(先) : アルト・サックス・トリオ。4ビートでの迫力演奏。演奏がちょっと長い。アドリブがちょっと単調かも。これはもう原田さんの選曲でしょう。原田さんのなでアンドリュー・ディ・アンジェロ(as)あたりか?

(後) : フュージョン/ブラコン/トロピカル。これはもう大塚さんの選曲でしょう。アース・ウィンド・アンド・ファイアーの《宇宙のファンタジー》に似た感じのメロディー。スチール・ドラムが南国の雰囲気。

私は(先)に挙手。ジャズの未来ですからね。勝ちは(先)。

勝ち(先) : 原田さんの選曲でジョン・イラバゴン(ts)。フィリピン系でシカゴで活動。テナー・サックス・トリオでした。後藤さんからは「一応こちらだろうけど、フレーズが繰り返されていていかがなものか?」とのご指摘あり。

(後) : 大塚さんの選曲でカルロス・ニーニョのプロデュース・チームが作ったデクスター・ストーリー(vo)のデビュー作。ネオ・ソウル。

3.大人数の快楽~ビッグバンドで正月を

(先) : ピアノから始まり、最初はジョー・サンプルかと思いましたが、ピアノ・ソロではマッコイ・タイナーお得意フレーズ連発。ソプラノ・サックス・ソロはフュージョン系。エレベで8ビートの比較的オーソドックスな現代ビッグ・バンド。ライブ演奏。大塚さんの選曲でしょう。

(後) : 太いベースから入りコテコテのテナー。原田さんの選曲ですね。ホーンの炸裂具合が良いです。8ビートから4ビートへ。これぞジャズです。

ここでちょっとしたハプニング。曲が終わり勝敗挙手の前に、原田さんは「最初のマッコイ・タイナーなやつと、後のチャールズ・ミンガスなやつ」と漏らしてしまったのです。まあ、これを聴いたからと言って勝敗が変わるとは思いませんが。

私は(後)に挙手。ジャズ的な快楽はやはりこちら。勝ちは(後)。

(先) : 大塚さんの選曲で88年録音のブルーノートのライブ。大塚さんはビッグ・バンドが苦手で、今は勉強している最中とのことでした。マッコイの《フライ・ウィズ・ザ・ウィンド》も考えたけれどストリングスが苦手とかで、こちらにしたそうです。

勝ち(後) : 原田さんの選曲でミンガスの『レット・ヒア・マイ・ミュージック』から。ミンガスが子供に聴いてほしい音楽として作ったんだとか。原田さんからは「子供にこんなのを聴かせるのはどうか。」という笑い話がありました。

ここで原田さんが大塚さんに質問。「大塚さんはライブの曲を選ぶことが多い(ここまでの3曲中2曲)けれどどうして?」と。この質問、実は私もそう思っていたところだったので、ちょっとビックリ。原田さんと以心伝心なのかシンクロしているのか? 大塚さんによるとクラブでライブ曲をかけると観客が盛り上がるとのこと。入っている拍手とか歓声につられて開場が盛り上がるんだとか。なるほどと思いました。

4.このアルバムの良さがあなたにわかるか!~私だけの名盤、極めつけの1曲

大塚さんはレコード片面全部を聴いて来なかったという話がありました。その代りレコードのどの部分が使えるか、その場所は全て覚えているということでした。これは私達ジャズ・ファンとDJの皆さんとの音楽需要形態の違いであり重要なところですよね。

(先) : ラテン・リズムから始まるオーソドックスなバップ。途中4ビートにリズム・チェンジしたりします。聴いたことがあるようなトランペット。ドラム・ソロでマックス・ローチかと思いました。ラテン・リズムのクラブ・ジャズつながりで最初は大塚さんかとも思いましたが、次の曲を聴いてこれが原田さんの選曲と思いました。

(後) : 濃いめの8ビートでスピリチュアル。トロンボーン・ソロとかはいい感じ。しばらく聴くと微妙にB級感が。70年代の音。リズムが時々よれたりしてます。これは私が感じているクラブ・ジャズのテイストなので大塚さんの選曲でしょう。

私は(先)に挙手。王道ジャズで演奏が良いから。勝ちは(後)。

(先) : 原田さんの選曲でドラマーのチャーリー・パーシップの『ジャズ・ステイツメン』から。ジャケット写真のハイハットが大きく開いているのを見て、豪快な演奏だろうと思い購入。豪快だけでなく繊細さもあり良いとのことでした。

勝ち(後) : 大塚さんの選曲でドラマーのスティーブ・リードのオリジナル盤。1万円したとか。76年の演奏。最初に声が出ちゃうところが良いそう。トロンボーンとアルトはアーサー・ブライス。後藤さんから発言。最初の方はダメだったけれど後でアーサー・ブライスが出てくると良い感じになるとのこと。おっしゃることは理解できます。

特に示し合わせていないのに、どちらもドラマーのアルバムというシンクロぶりが面白かったです。

5.音楽はジャズだけじゃない!~他ジャンルの最近のオススメ曲

(先) : テクノ/ミニマル/打込み。大塚さんの選曲ですね。こういうやつも好きですが、これはというインパクトが不足ぎみ。

(後) : 原田さんは何をかけるのか、パフューム?モモクロ?やっぱりその手のやつした(笑)。テクノですね。J-POPをバカにしてはいけません。なかなか良く出来ているのです。

私は(後)に挙手。J-POPはバカにできない。勝ちは(後)。あらまっ!(笑)

(先) : 大塚さんの選曲。ダブステップというジャンル。「ゾンビ」(ユニット名?)。レゲエの箱(クラブ)でやる時にトリップしそうな感じなものとして良いとのこと。低音が気持ち良い。このジャンルは勉強中だそうです。原田さんはパフュームかしゆかがダブステップに興味があるということでこのジャンルを聴けて良かったとか。

勝ち(後) : 原田さんの選曲。9nineの《イーアル!キョンシー》。インドネシアのダンス・ミュージック”ファンコット”を取り入れているとか。パフュームのメンバーの妹がいるそうです。

この対決もどちらもテクノ系ダンスビートというシンクロぶり。

6.たまにはしっとりバラードを~じっくり聴いてほしい1曲

DJの方がバラードをどう考えているかを原田さんが知りたかったから。

(先) : チコ・フリーマンですよね。このアルバムは持っています。テナーとベースのデュオ。サブ・トーン”ズリズリ”。これは好きなアルバムです。原田さんの選曲ですね。

(後) : テナーとピアノのデュオ。フュージョンですな。きれいなメロディー。こちらもサブ・トーン入りでいい感じ。大塚さんの選曲ですね。

私は(先)に挙手。やっぱジャズではこっちなのですよ。勝ちは(先)。

勝ち(先) : 原田さんの選曲でチコ・フリーマンの『スピリット・センシティブ』から《ニューヨークの秋》。原田さんが最初に見たジャズ・マンがこの人。フュージョン全盛期にこういうジャズが出ていました。セシル・マクビーのベースが良い。後藤さんもベースが良いとおっしゃっていました。私も同感。

(後) : 大塚さんの選曲で田中邦和(p)、林正樹(ts)の『ダブル・トゥルース』から。村井康司さんが大塚さんにおすすめしたアルバムだったようです。プロデュースは「いーぐる」にも来る徳永さん。曲はラーシュ・ヤンソンの《マリオネット》。どうりで美メロなわけです。このアルバムにはフリーキーな演奏もある中でこの曲を選曲。

これも両方ともテナーと他の楽器のデュオというのシンクロぶりが面白いです。私はこの対決において、ジャズ・テイストとフュージョン・テイストの微妙でありながら実は大きな差異を感じ、原田さんと大塚さんのジャズ観の差が象徴的に現れていると思いました。

7.私の考えるまっくろアルバム

後藤さんのリクエスト題目。黒さの感受性は世代により異なるのでそれを知りたい。

(先) : ギターとムード・テナーのデュオで始まり後でオーケストラが加わる。曲は《マイ・ウェイ》。サム・テイラーみたいな感じ。デヴィッド・マレイか? 徐々に盛り上がるテナーはいい感じ。確かに黒いテナー。こういうコテコテは原田さんの選曲でしょう(笑)。

(後) : フリー/スピリチュアル・ジャズで大き目の編成。アフリカ/アフロです。これはもうクラブ・ジャズ範疇の黒さでしょうから大塚さんの選曲でしょうね。

私は(後)に挙手。原田さんの黒さも分かるけれど、基本はジャズでありアフロな黒さが好きだから。勝ちは(後)。

(先) : 原田さんの選曲でテナーはジーン・アモンズ、曲や周りのメンバーなどは白人で、白人のための音楽だけれど、やっている人が黒ければ黒いというのが原田さんの選曲理由。

勝ち(後) : 大塚さんの選曲で『トリプル・・・』(よく聞き取れませんでした)。73年の録音。原田さんの”ドロドロ”ジャズに影響を受けているそうで、こういう選曲になったとか。原田さんからベースは「レジー・ワークマン?」との問い。当りでした。オル・ダラとかもいます。イムホテップ・レーベルのレコード。

以上で七番勝負は終了。原田さん5勝、大塚さん2勝でした。「ジャズ喫茶という大塚さんにとっては不利な条件の中での2勝は大健闘ではないか。」と、後藤さんがおっしゃっていましたが同感です。

終了後の大塚さんの感想は、普段聴く音とここの音は全然違っていて、最後の曲は音に立体感があり、始めてこういう音を聴いたというものでした。そういえば一昨年、原雅明さんが「いーぐる」の音を聴いた時にも、聴こえ方が違うという感想をおっしゃっていましたね。原田さんは貴重な体験で勉強になったとのことでした。

大塚さんは今日聴いたお客さんがどういう感想を持ったのか知りたいとおっしゃっていました。後藤さんからは今度やる時にはもう少しかける曲(テーマ)を減らして、聴いた後でお客さんに感想を聞きながら進めようという提案もありました。

大塚さんのジャズ観はやはり私が感じるクラブ・ジャズの範疇でした。フュージョン、B級テイスト、アフロ・スピリチュアルなどがキーワードか? クラブ・ジャズの中では少々立ち位置が異なる大塚さんなんでしょうけれど、どっぷりジャズに浸かった私から見ると、そう大きく逸脱しているとも思えないのでした。一方の原田さんの選曲はとてもらしいものだと思いました。

最初こそハズレでしたが、後はどちらか一方を聴いた段階で、ほぼどちらの選曲か分かってしまったことも面白かったです。実は原田さんがかけたのは全てCDで、大塚さんがかけたのは全てレコードだったので、時にはスクラッチ・ノイズでどちらの選曲か分かってしまうところがあったわけですが、私はそういうことに関係なく、お2人の志向で判別できました。

大塚さんにとっては完全アウェイ状態、こういう場に独り殴り込みをかけてくる大塚さんの(女性ですが)男前な心意気に惚れました。フランクなお人柄にも好感を持ちました。ジャズについてもっと知りたいということなので大塚さんには頑張ってほしいです。

今回のイベント、とても面白かったです。改めて自分のジャズ観を見直す機会にもなりました。終了後に聞いた「いーぐる」常連の皆さんのご意見も「そう思われますよね。」という内容。終了後の打ち上げもとても楽しかったです。

原田さん、大塚さん、後藤さん、皆さん、楽しい時間をありがとうございました。

今回かかった曲目のリストは ジャズ喫茶「いーぐる」 の「blog」に後ほど掲載されると思います。そこには後藤さんのレポートも掲載されますので合わせて参照願います。

本件について次の記事に補足を書きましたのでお読み下さい。

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ジャズ喫茶「いーぐる」の「2012年ベスト盤大会」へ行ってきました。

昨日は ジャズ喫茶「いーぐる」「2012年ベスト盤大会&大忘年会」へ行ってきました。今年は「いーぐる」の連続講演にあまり行けなかったのですがお誘いをいいただいたので喜んで参加させていただきました。

甲府を出発する時は天気予報に反してお日様が顔を覗かせていたのに、新宿に着くと結構雨が降っていて傘を買う羽目になってしまったのは誤算。電車が少々遅れていたりと出だしからちょっぴりつまづき加減。せっかく上京するのだからということでいらないレコード20枚とCD14枚をディスクユニオンの買取りに出しました。最近は買取り価格がかんばしくないので期待はしていなかったのに今回は納得の範囲。これは良い誤算。誤算もあれば良い誤算もあるのが人生。

買い取りの査定が済むまで中古CDとレコードをチェック。中古CDは全体的に値下がり傾向。ここでもデフレの影響が。ピアノ・トリオというだけで高値というのも収まり、今が適正価格だろうと思います。最近私は特に買いたくなるものがないんですよね(涙)。中古レコードは色んなセールの箱がいたる所に積みあがっている状態でした。「discland JARO」の通販で既に10枚買ってしまった私は適当に数棚/箱をチェックしたのみ。探しているものは見当たりませんでした。結局買ったのは、Amazonで売っていないヤコブ・ブロの新譜『BRO/KNAK』のみ。

P141_2さて今日のメインイベントということで「いーぐる」へ突入(笑)。連続講演の講演者、com-postメンバーの皆さんはほとんどお集まりでした。後藤さんと皆さんに軽く挨拶して着席。ホットな空気感が漂っていて良い感じです。ジャズ評論家の瀬川昌久先生もいらっしゃっていました。

いよいよ開始。例年だと後藤さんが最初にかけるのですが今年は違いました。後ほど回ってきたベスト盤を記入するリストにも後藤さんがかけるベスト盤が記入されておらず、参加者(私など)が被りを気にせずにかけられるようにご配慮いただいのだろうと思います(最初にかけなかったのは全然違う理由でした。私が深読みし過ぎ)。

他のメンバーはそれぞれ明確なテリトリーがありそれをわきまえての選曲なのでほぼ被りません。その被らなさが「ベスト盤大会」の面白いところで、”今年のジャズ・シーンが見えてくる”ということにつながります。

それではかかったものの中から気になったものや私のブログでUPしてあるものをいくつかピックアップします。今回全くメモをとっておらず、あくまで記憶によるのもなので誤解があるかもしれません。ご容赦願います。

最初はジャズ評論家の杉田さん、かけたのは狭間美帆の話題の新譜。やっぱりこれは買って聴いておくべきか。

次にかけた瀬川先生の《おとこっておとこって》(グループ名失念)は最高でした。軽妙なスイング感の女性コーラスで歌詞が秀逸。 「フランス語のメニューは読めても 私の心のオーダーは読めない」「素敵なキスのタイミング また見逃してる」 などの歌詞に妙に納得する私なのでした(笑)。

瀬川先生が寺島さんの「PCMジャズ喫茶」へゲスト出演した時のレポートを書いていますので、お読みいただければ幸いです。
瀬川昌久さんもお元気ですね~。(その1)
瀬川昌久さんもお元気ですね~。(その2)

以下順番はだいたいこんな感じ?

ラテンにお詳しい伊藤さんがかけたアヴィシャイ・コーエンの新譜は以下。
ストレート・アヘッドなトランペット・トリオ。

com-postメンバー須藤さんがかけたギレルモ・クラインの新譜は以下。
なかなか渋いです。

com-postメンバー原田さんがかけた激渋サックス奏者のサイドでギターを弾く若かりし頃のジェームス・ブラッド・ウルマーはやっぱりウルマーだった。

com-post編集長村井さんがかけた東京ザビヌルバッハの新譜は後日ブログで紹介文をアップする予定。
アップしました⇒東京ザビヌルバッハの新譜

com-postメンバー林さんがかけたのは今年もやっぱりローランド・カーク。この過剰さがジャズなのですよね。

com-post裏方メンバー田中さんがかけた先月来日したばかりのラリー・グラハムの新譜はファンキーノリノリ。

先日クリード・テイラーについて講演をされた山中さんがかけた今年CD化された『フランク・フルトのフィル・ウッズとヨーロピアン・リズム・マシーン』は、やっぱりジャズってスゲーってことで。1970年録音なんですよね。今はこれほどの演奏がどれだけあるのか(涙)。

com-postメンバー柳樂さんがかけたグレゴリー・ポーターは渋いボーカル。ショーターの《ブラック・ナイル》は好きな曲。内容については com-post の「新譜レビュー」を参照願います。

com-postメンバー八田さんがかけたJ.D.アレンは気合が入ったサックス・トリオ。新譜にあまり良いものがないというのが八田さんのお悩み。なのであまり新譜は買わないとか。

後藤さんがかけたキース・ジャレットの未発表ライブ『スリーパー』は以下。
キースの昔のライブ盤

オーラス登場のcom-postメンバー益子さんは「いーぐる」でしゃべるのがかなり久々とのこと。かけたのはコリン・ステットソンの編集なしのライブ独奏。複数サックス&足リズム?音響系というか何というか、いかにも益子さんらしい。

ここから漏れてしまった皆様、本当にごめんなさい。m(_ _)m
かかった曲のリストは、後日 ジャズ喫茶「いーぐる」「blog」 にアップされるはずですので参照願います。

さて、私はというと。後藤さんからジャズ・ファン代表ということでご紹介いただき。代表なんて恐れ多いとは思いますが、平然とベスト盤をかけさせていただきました(笑)。

かけたのはヴィジェイ・アイヤの『アッチェレランド』から《ヒューマン・ネイチャー》。自宅のスピーカーを小型化したせいもあり、「いーぐる」のオーディオで大音量/多低音で聴く迫力に圧倒されてしまいました。
やっぱり今注目すべきはこの人
紹介だけしたのが大谷能生さんの『ジャズ・アブストラクションズ』。これは中山康樹さんが昨年講演した「ジャズ・ヒップホップ学習会」への、ジャズ側からの最良の回答のひとつだと思います。
これはジャズです。

まあこんな感じで多種多彩。かかった曲と皆さんの解説は、年末恒例「今年1年の出来事を振り返る」といった具合の内容になっているのでした。毎年行われているこの企画、非常に貴重なものだと思います。

その後は「大忘年会」へ。ビール缶やワイングラスを傾けお寿司と鍋などをつつきながら楽しい会話が弾みました。私はここで皆さんから色々な情報を教えていただく貴重な時間を得ました。毎年酔った勢いで暴言放言の類をしてしまうお調子者の私。何卒お許しを。

とても楽しいイベントをどうもありがとうございました。皆さんに感謝!

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「いーぐる」講演「1990年代のジャズを聴く」後編

一昨日の ジャズ喫茶「いーぐる」 連続講演「1990年代のジャズを聴く」のレポートの続きです。

P16 昨日説明したように、かかったのはベストではなく、予備選考で1票しか入らなかったものです。複数票が入るアルバムは少なかったというのが、90年代のジャズの拡散と名盤の減少をよく物語っているのだろうと思います。この辺りの事情は「いーぐる」ホームページの「blog」をご覧下さい。後藤さんが詳しくお書きになられています。

私が90年代にジャズをあまり熱心に聴いていなかった原因は、仕事が超多忙だったからに他なりませんが、90年代のジャズ状況がそうさせていたと言えなくもないと思えてきました。

*私の聞き違いや勘違いがあるかもしれませんし、聴き損ねた部分も多々ありますのでご了承下さい

8.柳樂さんセレクト
Dino Saluzzi『Cite de la Musique』

ディノ・サルーシはアルゼンチンのバンドネオン奏者。タンゴのバンドネオンとは違う演奏。インプロバイザー的な部分が一番格好良くでたアルバム。ECMレーベルです。ジャズ・ベーシストのマーク・ジョンソンと息子(ギター)との共演。

これはエスニック・ジャズです。ECMの音になっています。ジョー・ザビヌルの《バディアの楼閣》とかそっち方面のテイスト。なかなか良い感じでした。(以降緑字は私の感想などです。)

9.林さんセレクト
Yusef Lateef『Tenors of Yousef Lateef & Ricky Ford』

ユセフ・ラティーフは自分のレーベルに30枚録音していて、その中にサックスと組んだものは4枚あって、このアルバムが一番面白い。録音当時は73、4歳。ラティーフとリッキー・フォードは音色が似ているので分かり辛いけれど、2人が禅問答をしていて師匠がラティーフで弟子がフォードと思って聴けば判別できます。

リズムがオーネット・コールマンのプライム・タイム風ファンクであるところがまず気に入りました。ラティーフが吹き終えないうちにフォードが挑んでくるような掛け合いが続きます。ガッツがあって私はこういうの好きです。このアルバム、「ジャズ批評」No.125の「サックス・トリオ決定盤」の中で下段に紹介されてました。

P17

10.原田さんセレクト
Horace Tapscott『Thoughts of Dar Es Salaam』

すみません。前のアルバムのことを林さんと話してしまい、原田さんの解説を聞き逃してしまいました。皆さんごめんなさい。お詫びとして「ジャズ批評」の「90年代のジャズ」に書かれているこの盤に対する原田さんのコメントを一部抜粋します。
すべての時期がピークだったといってもおかしくない彼だけに、遺作であろう本番でも創造力は全くかげりがみられない。作曲にしろ、ピアノにしろ、彼こそ真のスタイリストだった。

重いビートがカッコいい。4ビートからシャッフル・ビートへ。これも暴れ太鼓の部類。黒いファンクとロックなギターがいいです。後で原田さんに聞いたら、ギターはマルク・デュクレ。なるほどだからキレたギター弾いていたのです。私、暴れ太鼓が好きです(笑)。

11.後藤さんセレクト
Henri Texier『Ramparts D'Argile』

オーソドックスなジャズ。アンリ・テキシェは古いところでフィル・ウッズの『アライブ・アンド・ウェルインパリ』でベースを弾いていた人。息子のセバスチャン・テキシェがサックスをバリバリ吹くが、コルトレーンなんかとは雰囲気が違うもの。気合が入っているのが良い。トニー・ラべソンはマダガスカル出身のドラマーでリズムが好き。聴いた後で村井さんがベースの音が良く録れているとおっしゃっていました。「録音がいいですよね。」と後藤さん。

あれっ?と思いました。タイトルがフランス語表記だったので気付きませんでした。後藤さんが自著でたくさん推薦いる『粘土の城壁』です。これっ、「いーぐる」で聴きたかったんですよ。凄い音が入ってますからね。かけたのは《サクリファイス》。これです。これで決まり! サックスも強烈だけれど後半のベース・ソロが怖~っ。このテクニックとパワーは異次元。ラベル・ブリュー・レーベルのクリアにしてパワフルな録音。ベースが良い音なのはヨーロッパならではだろうと私は思っています。もちろんこれは持っています。

12.村井さんセレクト
Mick Goodrick, Jerry Bergonzi, Bruce Gertz, Gary Chaffe『Sunscreams』

もの凄く同業者の間で評価が高いけれど地味。ジョン・アバークロンビーを更に地味にした感じ。サックスも同様に同業者の間で評価が高いけれど地味なジェリー・バーガンジ。グッドリックのアルバムで一番地味なアルバム。バーガンジは全てフレーズがスケール・アウトしている独特なもの。

ギター&テナー・カルテットの好演。これは4ビートのコンテンポラリー・ジャズ王道。こういう渋めのやつも好きです。スタイル的には80年代です。バーガンジいいですよ。ドラムはジャック・ディジョネットにクリソツの叩き方でした。

13.益子さんセレクト
Pita『Get Out』

これはレジュメの解説から抜粋。PitaことPeter Rehbergは、ロンドン出身の電子音楽作家。オーストラリアのエレクトロニカ系のレーベル、Megoからのリリースが多い。本作はフル・アルバムとしては2作目で、全編Macパワー・ブックのみで制作されている。フィードバックのような高周波から、部屋の空気を振動させる低周波まで幅広い音域・音色のノイズを用いて、・・・、どちらかと言えば無機的で、時に暴力的な表現を用いる。この辺りの言葉に村井さんが反応(笑)。柳樂さんから補足。Megoレーベルは踊らない電子音楽のレーベルだそうです。聴いた後で後藤さんはこういうのは結構好きとおっしゃってました。

ノイズ・ミュージックでしょうね。ジャスに引き寄せれば音響系のフリー・ジャズと言えなくもないか。終りは”ブツッ”となったのでアンプが飛んでしまったようでした。皆さんはオーディオが壊れたのか?曲が終わったのか?と笑っていました。極たまにはこいうのも面白いでしょう。

14.八田さんセレクト
アルタード・ステイツ『Cafe 9.15』

アルタード・ステイツは日本オリジナル。八田さんは90年代からこのグループがたまたま好きだったそう。2000年代の方が好きだけれど、これも90年代を代表するアルバム。ネッド・ローゼンバーグ(サックス奏者)が参加しています。

ローゼンバーグの循環呼吸による演奏が彼らしい。フリー・ジャズ。ロック・ビート&変拍子は私も好みです。今堀恒雄のウンベルティポ・トリオとかにも通じます。私にはジェームズ・ブラッド・ウルマーとかがやっていたつんのめり気味のリズムに近いように聴こえました。なかなか良いです。

2巡目終了。

2巡目はジャズと言って良いと思います。
エスニック、ベテラン、ブラック、ヨーロッパ、コンテンポラリー、アバンギャルド、日本新進と、ジャズの広がりが網羅されている感じです。
私は全てジャズとして面白く聴けるのですが皆さんはいかがでしょう?
それぞれがその人らしいセレクトです。
メンバー各自がご自分の領分を分かってセレクトされているんだと思います。

時間に余裕があるとのことで柳樂さんセレクトから。

15.小野誠彦(オノ・セイゲン)『Montreux 93-94』

小野さんというと今は録音エンジニアだが元はミュージシャン。シロ・バプティスタ、アート・リンゼイ、マーク・リボーなどが参加。モントルーのライブ。ワールドミュージックを取り入れ心地良い。90年代東京の感じがする。

正直に言ってしまえば、こういうの私にはどうも”ピン”と来ないんです。90年代東京の感じか~。薄っぺらい感じに聴こえます。1曲だけなので何とも言えませんが、どうやら私にはこの手の音楽の良さが分からないみたいです。

P18

16.Mono Fontana『Ciruelo』

シカゴの音響派と同じことをやっているとして注目されたアルゼンチンの音響派。ジョー・ザビヌルとエルメット・パスコアールの影響大。多彩なパーカッション。音響的に面白い。

これもあまり”ピン”と来ないです。ジャズが私を引きつけてやまない何かがこの音楽には足りないような? 流れて行ってしまいます。う~む・・・。

P19

ということで終了。

今回かけたのはベストではないということでしたが、色々バラエティーに富んでいて面白く聴けました。インナーゾーン・オーケストラ、ユセフ・ラティーフ、ホレス・タプスコット、ミック・グッドリック、アルタード・ステイツのアルバムは今回初めて聴いて気に入りました。

90年代のジャズ、やっぱりシーンはないようですね。
100枚選ぶとどういうことになってしまうのか?興味津々です。

打ち上げにも参加させていただき、とても楽しかったです。
「いーぐる」の連続講演、毎度色々ためになります。
感謝!!

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「いーぐる」講演「1990年代のジャズを聴く」前編

昨日は ジャズ喫茶「いーぐる」 の連続講演「1990年代のジャズを聴く」に参加してきました。そのレポートです。

せっかく東京へ行くんですから、毎度のことで今回もレコード漁りに行きました。今回一番買いたかったのはケイト・ブッシュの『天使と小悪魔』日本盤LP。

最初は下北沢の「イエロー・ポップ」へ。『天使と小悪魔』はありませんでした。残念。で、他を探していたら、矢野顕子の『峠のわが家』を発見。これは《David》が入っているので探していたのです。そしてもう1枚、プラスチックスの『ウェルカム・プラスチックス』。これは探していたわけではありませんが、YouTubeの動画を見て懐かしく思っていた和製テクノグループ。以上2枚をゲット。

「フラッシュ・ディスク・ランチ」に寄ろうとしたらまだ開店していませんでした。『天使と小悪魔』は吉祥寺の「RARE」あたりにありそうなのですが、時間の関係で新宿へ戻ることに。そっかー、下北のディスクユニオンを覗いてみるべきでしたね。

「ディスクユニオン新宿本館」へ。ここのロックレコード売り場へ初めて入りました。廃盤セールをやってましたが目もくれずお目当てのレコード探し。ここにも『天使と小悪魔』はありませんでした。で、これも探していたボストンの『サード・ステージ』輸入盤とキング・クリムゾンの『太陽と戦慄』日本盤をゲット。

レコード漁りは以上4枚で終了。今回はジャズなし。今はそういう気分なのです。

P15 はいはいっ、「いーぐる」へと向かいましたよ。お店の前でパチリ。久しぶりの「いーぐる」。今回の講演者 com-post の皆さんはほぼお揃いでした。ご挨拶して着席。そこで後藤さんから今回の講演の趣旨を説明していただきました。「90年代ベスト盤」をかけるのではないということでした。

今回の企画「90年代の100枚」は、予備選考の段階でかなりばらけてしまい、1票しか入らなかったものは相当数あるそうです。それを絞るとなると音を聴いてみようということになり、大変な時間がかかってしまうとのこと。それで、今回そういうものをこの場で聴いてみようということになったそうです。なので必ずしも内容がベストというものではないとのことです。

同様のことは講演冒頭、com-post編集長村井康司さんからも説明がありました。ということで早速かかったものを順次紹介していきましょう。各曲をかける前にcom-postのメンバーが選考理由を説明しています。

*私の聞き違いや勘違いがあるかもしれませんし、聴き損ねた部分も多々ありますのでご了承下さい

1.後藤雅洋さんセレクト
Jamaaladeen Tacuma『Gemini-Gemini, the Flavors Of Thelonious Monk』

ジャマラディーン・タクマがサックス奏者ウォルフガング・シュニングと組んだバンドGemini-Geminiのアルバム。モンクの曲を取り上げてクラブミュージックっぽいものをやっています。こんなものもあったという例。店でかけると8割がたのお客さんがジャケットを見に来るそうです。

最初にラップが入っていてブレイクビーツっぽいので、これはジャズ・ヒップホップの部類だと私は思います。そう思って聴くと、私のヒップホップ耳にはビートがいまいちに聴こえてきてしまうのでした。すみません。ジャズ耳では面白く聴けましたよ。(以降緑字は私の感想などです。)

2.柳樂光隆さんセレクト
Innerzone Orchestra『Programmed』

いわゆるテクノ。打込みビートに生演奏を加えたもので名盤と言われています。デトロイトテクノ。色々あるけれど黒人の匂いが強いものを選択。メンバーのカール・クレイグはハービー・ハンコックの『Future 2 Future』にプログラミンで参加しています。このアルバムの「トーキン・ラウド」レーベルはアシッド・ジャズのレーベル。このアルバムはアシッド・ジャズからジャスサイドに向けた最後の回答とも受け取れるとのことでした。アルバム発売は1999年。聴いた後で村井さんは「ドラムが凄い。”無法松の一生”みたい。暴れ太鼓。」と笑っていました。

ジャズではないと思いますが面白いです。ビートが際立った尖がった音。ドラム自体はロックドラムで(買って聴き直したらドラミングもジャズでした)、アコースティック・ベースがジャズっぽさを出して黒さに一役買っているように聴きました。これは是非買って聴いてみたいと思いました。

3.八田真行さんセレクト
Bluesiana Triangle『Bluesiana Triangle』

アート・ブレイキーとドクター・ジョンとデヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンの3人が組んだのでトライアングル。童謡を歌っていて長いので途中でフェードアウトしてほしいとのことだったのですが全曲かかりました。「ブレイキーとか90年代に死んだんだな。」という思いも込めての選曲。聴いた後で村井さんは「ここまで無法松の一生系が3曲続いたね。」と笑っていました。

アフロ・キューバン・リズムで黒くて良い雰囲気でした。ブレイキーはドラム頑張ってましたね。ジャズではないけれどこれもまた良し。

4.林建紀さんセレクト
Jimmy Giuffre『Conversation With a Goose』

ジミー・ジュフリー、ポール・ブレイ、スティーブ・スワローでのトリオ演奏は、60年代、80年代とこの92年の3枚があり、このトリオでのラスト作。前2作と違うのはほとんどジュフリーの曲をやっていること。ジュフリーの静かな狂気。ブレイとスワローは丸くなっています。行っちゃってる爺さん(ジュフリー、72歳)を2人が見守るような演奏。聴いた後で後藤さんから音がなかなか良いとの指摘。

フリー・ジャズ。でもベースとかピアノはバップ的であり聴きやすかったです。確かにジュフリーは凄いでしょう。でも私の耳には聴きなれてしまったというか、ジャズも熟成したんだなという印象でした。

5.原田和典さんセレクト
Cecil Taylor - Elvin Jones - Dewey Redman『Momentum Space』

Verveレーベル。セシルとエルヴィンがやったのが嬉しい。レッドマンがオーネットだったらなお良かったけれど。3人が適当にやっています。家で聴くともっとチャラチャラに聴こえるけれど、ここで聴くといいとのことでした。

これもフリー・ジャズ。さすがの演奏ですね。非常にパワフル。セシルいいですよね。エルヴィンは我が道をゆくいつものドラム。ちょっとバランス的に弱く聴こえました。こういうフリー・ジャズは良いオーディオで大きな音で聴くのが絶対いいです。これを聴いてやっぱりジャズは熟成したんだなと思いました。

6.益子博之さんセレクト
Noel Akchote『Rien』

益子さんは都合が悪くて不参加だったのでレジュメに解説が書いてありました。抜粋します。Akchoteはパリ出身のジャズに留まらない幅広い領域で活動するギタリスト。本作は、コンピューターやターンテーブルとの共演で、記憶や触覚を刺激するサウンドスケープを構築。森山大道のピンぼけ写真を配したインナー・スリーヴには「サウンドトラックというより、これ自体が一つの旅であり、ロード・ムーヴィーである。

益子さんらしいセレクトです。ノイズ/音響系でアバンギャルド。このアルバムは持っています。

7.村井康司さんセレクト
Paul Haines『Darn It!』(プロデュースはKip Hanrahan)

ポール・ヘインズはビートニク(詩人)。カーラ・ブレイの『エスカレーター・オーバー・ザ・ヒル』のテキストを書いています。このアルバムもそれの続編みたいなもの。かける曲はデレク・ベイリーがギターの弾き語りで歌うという変なもの。

確かに変なものです(笑)。こういう世界もありでしょう。

ここまでが1巡目です。

前半のブラック&ビート、中盤のフリージャズ、後半のギター・アバンギャルド。
なるほどー、90年代はこんな感じなのか~。面白いですね。

長くなってしまいますのでここで一旦切ります。
続きはまた明日!

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ヒップホップ講座 パート4 これでおしまい。

1月28日(土) ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた「ヒップホップ講座」のレポートの続きです。

講演の内容については前回までに書きました。
今回は講演後の質問と私の感想を簡単にまとめます。

P44

質問はたくさんあったのですが、その中からいくつか書きます。

 ラップの上手さがわからない。
 ジャズの楽器と同じで、きちんとキャラが立っているかどうか。
(こういうのはある程度聴きこまないとダメでしょうね。私なんかまだラッパーの区別さえままなりません。)
 

 今はコミュニティー感が減っているようだが聴いている人はコミュニティー内?
 黒人が住んでいる場所にはコミュニティーがある。そこの人達も聴いている。

 ラップを聴いていると歌詞がひどい。
 時には社会ネタ、時にはギャングネタ、色々なのが回っている。ウィットが肝心で、そういうセンスでラッパーから俳優になる人が多い。

 音源㉖のところで「これが売れているのはどういうことか?」と言っていたがもう少し詳しく。
 真剣に考える必要があると思う。そのためにもメジャーのヒップホップを聴きましょう。

 ここで聴くとキック(ドラム)にサイン(波)を被せたのがバラバラに聴こえてよくない。どいうところで聴くことを想定しているのか?
 車で聴くことが多いんではないか。最後にかけた音源なんかは音がしょぼいが、それは作品としての完成度じゃなく、ヒップホップの場に参加できれば良いという考え方。タイラー・ザ・クリエイターは若くてヒップホップを意識していない。
(解像度が高いとよく聴こえないという場合もありますよね。ボロが見えちゃうという。それにしても「いーぐる」オーディオの低音の解像力。恐るべし。)

今の学生は洋楽を聴くというだけで嫌味と受け取られてしまうなんて話もありました。若者が聴いているのはほとんどJ-POPだそうです。大和田さんは大学の先生ですからこういう事情には詳しいのです。中山康樹さんが「かんちがい音楽評論」で、”日本に洋楽は根付かなかったということに向かっている”と書いていたことがここにも表れていますよね。R&B(ヒップホップ)を聴いているのは不良女子で、渋谷辺りにいるまっ茶な毛の女の子などだとか。

日本ではイギリス経由のアメリカ音楽評論が多く、そのためロック系の価値観でヒップホップも捉えられる傾向があるとのことでした。音そのもの以外のことによって耳ができてしまうことが起こりがちであることは自覚しておく必要があると思います。

 ティンバランドのビートは祭りばやしのようだったが、アメリカの民族音楽に先祖帰りがあり、中南米経由のビートになっていることは日本とどう繋がるのか?
 黒人のバックビートはどこから出てきたのかよく分からない。中南米のビートにしても、アフリカのビートにしてもバックビートというわけではない。
(日本との繋がりについては回答なし。)

 ヒップホップはポストモダンという話があったがどういうこと?
 モダンは偉大なアーティストの作品を聴かせていただくというものだが、ヒップホップは聴き手と作り手の境がなくなり、できたものが作品ではないところがポストモダン。

(注)質問と回答が微妙にリンクしていないところがありますが、それは私が3時間以上の講演をメモを取りながら集中して聞いた疲れもあり、理解に至っていないということをご理解願います。まあ、短い時間の質疑なので話が深められないという面もあります。

今回の内容は「文化系のためのヒップホップ入門」に書かれていることを音源を聴きながらたどるものでした。速足ではありましたが概要は掴めました。日本ではあまり語られないというヒップホップのメジャー・シーンの動き(4.ヒップホップ・ソウル~ティンバランドのサウンド革命、5.サウス、6.ヒップホップの現在)は特に面白かったです。大太鼓リズムの連発には頭が”クラクラ”きましたけどね(笑)。いたる所にヒップホップの楽しみ方に係る話が散りばめられていて興味深かったです。

「文化系のためのヒップホップ入門」を読んでから今回のレポートを読んでいただければ、ヒップホップ理解はより深まると思います。是非ご一読を。

今回でジャズ喫茶「いーぐる」におけるヒップホップ関連の講演は一区切りです。

1.中山康樹さんのようにジャズがらみで聴く方。
2.鷲巣功さんのようにオールドスクールで聴くのをやめてしまった方。
(ある意味70年代以降のジャズを聴かないようなもの)
3.原雅明さんやDJアズーロさんのようにプロデューサーとトラックを中心に聴く方。
(日本のヒップホップ需要はこちらが多いとか)
4.長谷川町蔵さんや大和田俊之さんのようにメジャーなものを聴く方。
(日本にこちらのリスナーを増やしたいそう)

まだ未熟ではありますが、一応ヒップホップとはどういう音楽なのか分かっただけでなく、需要のされ方までも目の当りにすることになり、色々な聴き方ができるヒップホップの広さや深さを改めて実感できました。「ジャズ・ヒップホップ学習会」だけで終わらず、3回の「ヒップホップ講座」が追加された意味はとても大きかったです。後藤さんの音楽に対する姿勢のなせる業なのでしょう。

講演者の皆さん、後藤さん、関係者の皆さん、ありがとうございました。

最近はジャズに混ぜてヒップホップも聴いています。
ヒップホップ・アルバムも10枚以上購入。
音楽ライフがより楽しくなりました。感謝!

「ヒップホップ講座」のレポートはこれにて終了。ふ~ぅ、疲れました。

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ヒップホップ講座 パート3

1月28日(土) ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた「ヒップホップ講座」のレポートの続きです。

3回に分けてレポートする3回目です。

講演者の長谷川町蔵さんと大和田俊之さんの「文化系のためのヒップホップ入門」を読むんでおくと、以下の内容がより分かります。

ヒップホップを勉強してきましたが、まだまだ素人に毛が生えた程度です。聞き間違えや誤解があるかもしれませんのでご了承ください。

お2人の発言は基本的に区別しません。

貼っている音源は当日かかったものとバージョンが違う可能性がありますのであらかじめご了承ください。

5.サウス

⑳ Jay Z feat. UGKの《Big Pimpin》 1999年

発想が貧困で申し訳ないのですが、これも祭りばやし、もしくはチンドン屋に聴こえてしまうという(涙)。”和”なんですよね。鐘やボンゴなどパーカッションが面白いです。ラップがフリーっぽくアウトしているところが格好いい。JAY-Zのアルバム『Vol.3... LIFE AND TIMES OF S.CARTER』をたまたま買ったのですが、こういうビートでなく普通のビートのほうが多かったです。

ティンバランドのトラック。インド風?ニューヨークではこのリズムに違和感がありました。JAY-Z(今スター・ラッパー)が、UGKと共演。最初JAY-Zがラップし、次に出てくるUGKのBun Bのラップに注目。上手いです。JAY-Zが乗れるか乗れないかという感じでラップ。英語で言う巻き舌でバウンスします。

㉑ Juvenileの《Ha》 1998年

ファットな太鼓が特徴だったはずなのですが、YouTubeではいまいち。三三七拍子に聴こえなくもないという(笑)。手拍子みたいな音も入っていますしね。面白いビートだと思います。

適当に何か言ってから”ハッ”と言って韻を踏んでいるように見せかけます。何を言っているのか分かりません。

㉒ Lil Jon & East Side Boyzの《What U Gon' DO》 2004年

さあ皆さん、”エンヤートットー、エンヤートットー”と歌って下さい。そして”マツッシーマ~ノッ ~”ということで、《大漁歌い込み》かと思いました(笑)。応援団なんて声もありました。その時は前のと同じで三三七拍子で手拍子して聴いて下さい(笑)。いずれにしても男の世界であることには変わりはないです。ファットな大太鼓に手拍子、横笛まで入ってます。サウスのリズムが日本の拍子に近いという気付き。面白いです。前ノリですよね。格好いいのかな~この曲。PVを見ると尖がっているんですけどね。

”「いーぐる」でかけて一番インパクトがある。これを「いーぐる」で聴きたいために今回講演をやった。”とのことでした。確かに上記のとおりインパクがトありました。

㉓ T-Pain feat. Ludacrisの《Chopped N Skrewed》 2008年

私の感覚はどんどんおかしくなり。これなんかはK-POPかも? この辺りで頭の中が”ウニウニ”状態に陥ってしまいました(笑)。低音は強烈でした。回転数を落とした声が確かに面白いです。もうポップスだと思います。

テキサスのリミックスのアレンジの手法。単純にレコードの回転数を落とします。酩酊感があります。ロボ声で歌うぶっ飛んだアレンジです。彼女に振られてボロボロになるという歌詞。いい曲です。ロボ声という共通点で、2008年は日本でパフュームがブレイクした年です。トラックに自分の名前を入れていて、それをシグネーチャーサウンドと言います。

「ヒップホップに嵌ってからモダンジャスがみなヒップホップに聴える。(ジャズの演奏が)”今度こういうルールでラップしてみよう。”(と同じように聴こえる)みたいな変化がある。」とおっしゃっていたと思いますが、私のメモがいまいち不明瞭でした。

6.ヒップホップの現在

㉔ Kanye Westの《Runaway》 2010年

ピアノの単音から入る印象的な曲。歌は確かにロック。私はエアロミスの映画アルマゲドンの主題歌が浮かんできました。メロディーの雰囲気が似ているような?にしてもどんどんヒップホップと離れたイメージに結びつきます(笑)。この曲が入っているCDは買いました。結構気に入ってます。

今何が起きているか?内省化があります。ロック最後の牙城(砦)である疎外感、孤独をヒップホップに取り入れようとしています。カニエ・ウェストがそれです。「ダメな僕」をテーマにしています。サウンド的には流行りのビート。私小説をラップ。プロモーションビデオはバレリーナのシュールな前衛映画(貼り付けた映像のとおり)

㉕ Drake feat. Rihannaの《Black And Yellow》 2011年

(注)これはYouTubeに動画がありません。

普通のポップス/ロックに聴こえます。サウンドは暗く感じないです。歌詞がかなり暗いんでしょうか?スチールドラムのような音が寂しい感じと言えばそんな感じです。前ノリの4つ打ちビート。

昨年一番売れたアルバム。内にこもる暗さ。ヒップホップも遠い所へ来ました。最近はインディーものが増えています。

㉖ Lil Wayneの《6Foot 7Foot》 2010年

またきましたね。大太鼓のお祭り。バックで「ワッショイ、ワッショイ」て神輿を担いでませんか(笑)? クラーベのリズム。バナナボートの声が面白いと言えば面白いです。ラップは特徴があるちょっと変な声ですね。アンダーグラウンドで突き詰めていたらこういう弾けたものは出ないでしょうね。こういうものがメジャーの面白さなんでしょう。

リル・ウェインは㉕のドレイクの親分。その年に2番目くらいに売れたもの。ハリー・ベラフォンテの《バナナボート》をネタにしています。バングラデシュというプロデューサー。一押しです。このシングルはリル・ウェインが刑務所から出てきた最初の歌。これが売れているのは何のか?真剣に考えないといけないです。

㉗ Tyler, the Creatorの《She》 2011年

イルでドープな感じのシンセ音。退廃感もあります。遅いビート。歌とラップが交互に。これは従来のバックビート。このPVはなかなか面白いです。歌詞がそのまま映像になって、夢と現実を行き来します。

ネット上にフリー・ダウンロード曲をバンバン出した人です。ピッチフォーク・メディア(Pitchfork Media)で注目されます。タイラー・ザ・クリエイターはやんちゃなノリ。中学生のワルそのままです。アンファンテリブル(恐るべき子供たちの意)。YouTubeにたくさん映像がありますので見て下さい。ゴキブリを食べたりするそうで、アルバムを出さないままに、”ゴキブリ食ってるスゲーッ!”みたいなノリで白人のティーンが熱狂したとか。閉塞感みたいなものを出していて、今の状況の日本で流行っても良さそうな人。お仕着せでなく完全自作。屈折感の歌詞。タイラーは20才くらい。好きなのがステレオラブ。

私が気に入ったものを追加で貼ります。

いいなーこのサウンド。ジャズを引用するとかではなくてジャズを感じさせます。
歌詞はfuckだらけ(笑)。

㉘ Lil Bの《The Wilderness》 2011年

元ネタが何かあてて下さいとのことでしが分かりませんでした。答えを聞いてビックリ。これもだるい感じです。祭りの後の寂しさか?ディスコのチークタイムみたいな感じもします。ヒップホップはこんなことになっているんですね~。ブルーノートとかのオリジナル盤を聴いているジャズ・リスナーとは隔世の感があります。

元ネタは岡田有希子の《二人だけのセレモニー》のイントロです。無調な感じです。何が出てきてもいいんです。フリーのダウンロード・コンペティションで勝ち上がりました。ただ(無料)の音源を使っていましたが今は使っていません。こうなってくるとポップスの徒弟制がなくなってしまっています。

講演は以上で終了。色々あって面白かったです。

長くなったので、講演後の質問や私の感想はパート4に書きます。

日本の歌謡曲を使うところを面白がる感性がないと、メジャーのヒップホップは楽しめないのかもしれませんね。ということで《二人だけのセレモニー》を貼って今日は終わります。

この曲はいいですね。ときめきとせつなさの狭間を揺れ動きます。
さすが尾崎亜美!
会社に就職してすぐ、研修中にあの悲劇が起きました。合掌。

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ヒップホップ講座 パート2

1月28日(土) ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた「ヒップホップ講座」のレポートの続きです。

3回に分けてレポートする2回目です。

講演者の長谷川町蔵さんと大和田俊之さんの「文化系のためのヒップホップ入門」を読むんでおくと、以下の内容がより分かります。

ヒップホップを勉強してきましたが、まだまだ素人に毛が生えた程度です。聞き間違えや誤解があるかもしれませんのでご了承ください。

お2人の発言は基本的に区別しません。

貼っている音源は当日かかったものとバージョンが違う可能性がありますのであらかじめご了承ください。

ここからいよいよお2人が本領を発揮します。

3.ウェストコースト

⑩ Dr. Dreの《Let Me Ride》 1992年

スッキリポップ。ベースのラインが気持ちいい。タブラみたいなパーカッションがアクセント。シンセがカラフル。グルーヴに自然と体が揺れます。こういう雰囲気の曲は好きです。このPVが全てを物語っているみたいですね。あらためて聴くと歌詞が下品なような幼稚なような(笑)。英語が苦手なのでなんとなくとしか分かりません。(以降ピンク字は曲を聴いての私の感想などです。基本的には当日聴いた感想をそのまま書きます。)

東海岸の精神性に対して西海岸は商業的。西海岸は車社会。車でかけると気持ちいいものになります。東海岸のジャズ・ファンクのサンプリングのたがが外れます。サンプリングがミニマルになり、行きようがなくなって、じゃあ本当に弾いてみたらどうか?ということになります。本当に弾いているんだけれどディスコ(オールドスクール・ヒップホップ)と違って遊びがありません。サンプリングしたのと同じように弾きます。サンプリングはこもった音だけけれど、本当に弾くとクリアになって隙間ができます。その隙間にサビが乗せられるようになります。サビメロをゲストボーカルが歌うようになります。この曲は海岸べりを女の子を乗せて車で走るイメージ。パーラメント(グループ)のアルバム『マザーシップ・コネクション』の曲を生演奏で繰り返しています。

西海岸のギャングスタラップは不良文化。これで精神性が落ちたかというとそうではありません。ラップの基本は身の回りのことをラップします。身の回りに起こっていることが政治的なら政治がテーマのラップになるし、身の回りのことがギャングならギャングがテーマのラップになります。その違いだけです。西海岸は麻薬とセックスがテーマになることが多いので、東海岸の人は質が落ちたと言いますが、「女に騙されたとして気の利いたことを言ってみろ。」というのがラップ。ギャングスタラップはラップのテンポが落ちて自由になり、より表情が出せるようになります。喜怒しかなかったラップに喜怒哀楽が出せるようになります。歌詞はひどい⇒雰囲気。こういうもの(ラップ)は仮初めです。より表情が出せることでR&Bがラップと同じくらいになっていくきっかけになります。

⑪ Snoop Doggの《Ain't No Fun》 1993年

ポップな曲です。この曲を聴いて頭に浮かんだのが久保田利伸の《LA・LA・LA LOVE SONG》(ナオミ・キャンベルとのコラボで1996年に出したシングル)。かわいいキーボードの音とメロディーが連想の根源。これも体が揺れる心地良さ。あらためてこれを聴いて思いました。私の”ポップス耳”が発動しているのです(笑)。ファンキーなグルーヴと心地良いメロディー。好きです。

東海岸の後半とオーバーラップしてつつ、西海岸では全く別のものが流行っていました。レイドバックしたリラックスした感じです。西海岸の方が売れ、全国区になります。白人に受けてヒップホップがアメリカ中の白人の若者に聴かれるようになります。

⑫ Pharcydeの《Drop》 1995年

ビートが明らかに重いです。テープスピードをおかしくしたような音がマニアック。ノリが複雑。これにはメッセージ性を感じます。

東海岸的なことをやりたいというオルタナティブなもの。ファーサイドは日本のヒップホップ・ファンが多い人。それは他の西海岸のラッパーのように全身刺青とかでなくかわいい感じだからです(PVのとおり)。日本のファンが多い弊害もあります。あらためて聴くとトラック的には面白いが、ラップが上手くないのが決定的。一人一人のラップがきちんとしていません。プロデュースはデトロイト出身のJディラ。

東西抗争。ディスりがあり死人が出ました。西海岸の2PACが射殺され、1年後に東海岸のトーリアスBIGがニューヨークで射殺されます。この抗争を東海岸は乗り越えたけれど、西海岸は国を挙げての規制でつぶれてしまいます。離脱したドクター・ドレーは自分が作ってきたものを捨て、ミニマルなものを作ります。これがヒップホップの完成形。次の曲です。

⑬ Dr.Dreの《The Next Episode》 1999年

ビートはシンプル。ギターとドラムにサウンド・エフェクト・シンセが乗ります。渋い感じです。なるほどヒップホップの完成形ね~。

「超カッコイイですね。」とお2人。ミュージシャンにジャムらせてドラムを差し替えています。テンポが絶妙。日本人にはできません。三味線のように聴こえるギター。これが出たあとメジャーではサンプリングが流行しなくなります。講演では触れられていませんでしたが、メジャーでのサンプリングの衰退は著作権の問題も絡んでいるようです。トラックを重視する日本のヒップホップ・ファンはこのあたりのサンプリング事情にも敏感に反応しているようなことを他所で聞きました。

ここで10分程休憩が入りました。

後半が肝。ここまでの前半は書いた本がたくさんあります。

4.ヒップホップ・ソウル~ティンバランドのサウンド革命

⑭ Mary J. Bligeの《Be Happy》 1994年

風の音から入ります。ディスコっぽいのり。ベースがビージーズの《ステイン・アライブ》に似ていますよね。ストリングスの音がいい感じです。歌はアメリカの主流。ハスキーな声がいい感じです。

ウエストコーストの引き直し。歌を乗っけます。ワン・ループの上で歌います。このパターンがR&Bに普及してヒップホップのプロデューサーが活躍。1個のループの中でサビはあります。この流れは今も生きています。R&Bがヒップホップのサブジャンル化しました。この曲はその先駆けとなった曲。カーティス・メイフィールドのイントロの弾き直しのループです。ループの宙吊り感。歌はジャズの譜割。ブランフォード・マルサリスはこの人のフレージングに影響されたと言っています。どんなループでも歌を乗せられます。そこでとんでもないことが起きます。

⑮ Destiny's Childの《Get On The Bus》 1998年

ティンバランド・サウンドですよね。格好いいです。響きが新しいと思うのです。マーカス・ミラーみたいなチョッパー・ベースが素敵。バスドラの不規則リズム感が心地良いです。男の声で入るため息みたいなボーカルもいい感じ。このサウンドは好きです。

何が起きたのか訳が分からない。ビヨンセがいるアイドル・グループですね。鳥の声やシンセの”シャー”音とか特殊な音が入っていて、バックはループが流れています。2拍4拍にスネアが入っていません。ルンバ、ラテンのクラーベのリズムに近いです。このビートがR&Bに向けて流行りだし、ブレイクビーツから外れていきます。バックの音がブルーノートから開放されていて黒人的ではありません。上の音は黒くないのにビートは真っ黒。おもちゃ箱をひっくり返したような音です。ティンバランドは業界に雇われた人でバージニア州出身。バックビートはどこが由来なのか?アフリカや南米はバックビートというわけではありません。フェラクティなどはバックビートが効いていません。

⑯ Missy Elliotの《Get Ur Freak On》 2001年

これはマイルスの《レイテッドX》に通じます。ティンバランドのサウンドについては既に私のブログで言及済み⇒今日もヒップホップです。m(_ _)m ちゃ~んとお見通しなのです。参ったか(笑)。ティンバランド・サウンドの魅力は前曲の解説で納得。ブラック・ミュージックのメインストリームがヒップホップだということもその後分かりました。

これが1位。日本で言えば「いきものがかり」(このグループ、私好きです)の位置にいるのは凄い。後にも出てきますが、こういう発言が出てくる時点で、長谷川さんにしても大和田さんにしても、私の感性にマッチするものを感じます。「さっ、これから作ろう。」と、こういうものが出てくること自体、ブレイクビーツの作業とイメージが全然違います。南部中心にこのビートでラップしたりどんどん出てきます。東海岸のラッパーは軒並みこの動きに乗り遅れました。そしてこのビートに乗れる南部のラッパーがスターになります。

⑰ R.Kellyの《Ignition Remix》 2003年

レゲエにも近いように感じました。ゆったりしたグルーヴ。ちょっとありがちなのが私的にはいまいち。

⑯のようなリズムで歌うと歌とリズムの境がなくなります。R&Bのキングと言われる人の歌。4小節のループとAメロのサビ。4種の和音が鳴っているだけ。

⑱ Snoop Doggの《Drop It Like It's Hot》 2004年

これは「いーぐる」で聴くととんでもない低音が出ていました。この低音、どう聴いても大太鼓(和太鼓)なのです。祭ばやしかと思いました。盆踊りかとも思いました(笑)。最後の質問で同じことを言った方がいました。”フー”という音は尺八みたいだし、途中に入る”チーン”が仏壇にある鐘みたいだし。舌打ちするみたいな音とかユニーク極まりないですよね。これって前ノリ?もう頭が”ウニウニ”になりました。ヒップホップがこんなことになってたとは・・・。しかも大ヒットシングルって(笑)。どういうシチュエーションでこういうのを聴いているんでしょうね?

クールの美学。熱いんだけれど覚めています。ウエストコーストの代表的なラッパーがクラーベのリズムを採用しました。大ヒットシングル。

⑲ Busta Rhymesの《Touch It》 2006年

最初無音なのでCDが認識されないのかというちょっとした戸惑い。また出ました大太鼓。タンタンの音量大小のみは確かに面白いです。ラップは確かに上手いと思います。でもこのリズムには参るな~っ。この後このリズムが続出。クラクラッ(笑)。このビデオの世界、いかにも黒人ギャング。私にゃついて行けませぬ。「いーぐる」オーディオのパワー炸裂。凄い音圧でした。

”タンタタン タンタン”だけで音が大きくなっり小さくなったりするだけです。「”タンタタン タンタン”だけでは単調だよね。シンセ被せる?じゃあ音を大きくしたり小さくしたりしてみようか?」と言ったのかどうか?このトラックをラッパーが奪い合いました。抑えた部分の微妙なラップのずらしが素晴らしい。これは音楽なのか?ビートだけでミニマルになっています。歌詞の内容は言葉遊びで精神的ではありません。音楽的に面白いです。スター・ラッパーが復帰第一弾として賭けたのがこれです。お2人も笑っていました。

今回はここまでです。いや~っ、濃いですね。
次回もお楽しみに!

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