フュージョン・アルバム紹介

心地良いラテンフュージョン

前回のアルバムが気に入ったので、今回の新譜も買ってみました。

P120スティーヴ・カーン『サブテクスト』(2014年rec. TONE CENTER)です。メンバーは、スティーヴ・カーン(g)、リューベン・ロジャース(el-b,baby-b)、デニス・チェンバース(ds)、マーク・キニョーネス(timbal,bongo,per)、ボビー・アジェンデ(conga,bongo)(1)、ゲスト:ランディー・ブレッカー(flh)(1)、ロブ・マウンジー(key(2)(5),orchestrations(3)~(7)(9),coro(7))、ギル・ゴールドスタイン(acc)(7)、マリアナ・インゴールド(voice)(7)です。今回も国内盤と輸入盤のジャケットが異なります。わざわざジャケットを変える必要があるのでしょうか? 日本盤を買いたくなるほど日本盤ジャケットが良いとは思えません。私が買ったのはもちろん安い輸入盤。

※ tommyさんからのコメントで気付きました。昔カーンがジャン・ミッシェル・フォロンの絵に拘ったように、今はMicdhel Grangerの絵に拘っているから、輸入盤と日本盤のジャケットをわざわざ変えて、この人の絵をたくさんお披露目しているのでしょう。

前アルバム『パーティング・ショット』から3年ぶりとなりますが、内容的には同じでラテンフュージョンです。コアメンバーの中ではベースがアンソニー・ジャクソンからリューベン・ロジャースに変わりました。録音が今年の1月ということは、この頃アンソニーは上原ひろみの新譜録音のために強化合宿中だったのではないかと推測します。ベースはロジャースでも問題なし。

前回と同様今回も初夏にリリース。紹介するのは少し遅くなってしまいました。夏はラテンフュージョンの季節! 左右に広がるパーカッション群を前に、ちょっとレイジーな気分も交えながらカーンが悠々とギターソロを披露していきます。基本はカーンのギターソロを聴かせるもので、曲によってはゲストメンバーがソロをとります。カーンのギターは特徴があるけれど、私にはその特徴を上手く言い表すことができません。

前回同様に今回もオープニングがオーネット・コールマンの曲。ラテンリズムにオーネットのメロディーが良くマッチするから面白いです。カーンのオリジナル曲の他に、前回同様のモンクの曲に加え、今回はフレディ・ハバード、ウェイン・ショーター、グレッグ・オズビーの曲をやっているのが興味深いところ。いずれの曲も上手くラテンフュージョン化されています。スタンダード《ネヴァー・レット・ミー・ゴー》まであります。

ジャズマンオリジナルの中ではやはりショーターの曲が好きです。ショーターって良い曲を作りますよね。オズビーの曲ではカーンのギターとハモるゴールドスタインのシンセが不穏な空気感を出していて面白いです。オズビーの一癖ある面を演出しているのでしょうか。カーンとインゴールドの共作曲は歌が入ってトロピカルな雰囲気。ゴールドスタインのアコーディオンが程よい哀愁を醸し出しています。

このアルバムはいつ聴くのがいいんでしょうか? 今でしょ!(もう古い、笑)
暑い夏の昼下がりにトロピカルジュースでも飲みながら聴けば最高の気分。

アルバ名:『SUBTEXT』
メンアバー:
Steve Khan(g)
Ruben Rodriguez(electric bass, baby bass)
Dennis Chambers(ds)
Marc Quinones(timbal, bongo, per)
Bobby Allende(conga, bongo) (1)
ゲスト:
Randy Brecker: flh (1)
Rob Mounsey: key (2, 5), orchestrations (3, 4, 6, 7), coro (7)
Gil Goldstein: accordion (7)
Mariana Ingold: voies (7)

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この人もファーストアルバムで歌っていました。

マーカス・ミラーがファーストアルバムで歌っているというのには時代を感じました。で、この人もファーストアルバムで歌っているんですよね。オマー・ハキムです。マーカスが80年代マイルスを支えた一人なら、オマーは80年代ウェザー・リポートを支えた一人。二人はミュージック&アーツ・ハイ・スクールの同窓生なのだそうです。

P19オマー・ハキム『リズム・ディープ』(1989年、GRP RECORDES)です。メンバーは、オマー・ハキム(lead and background vocals,ds,electric ds,per,electric per,g,key,p,syn,synth bass)、マイケル・ベアデン(key,synth strings,synth harp,synth marimba,synth bass,org)、スコット・アムブッシュ(b)、ヴィクター・ベイリー(b)、キエリ・ミヌッチ(g)、ナジー(ss)、ドン・アライアス(per)、ニッキ・リチャーズ(vo)、キャンディ・ヒントン(background vocals)、バリー・ジョンソン(background vocals)、キーシア・ボスティック(background vocals)、シャロン・デイヴィス(background vocals)です。オマー・ハキムも色んな楽器が出来る人ですよね。ジャケット写真のオマーはなかなかのイケメン。オマーを知らない人に歌手のアルバムだと言ってこれを見せれば信じそうです。オマーは好きなドラマーなのでリアルタイムで買いました。

これはR&BというよりAORといった感じに仕上がっています。3曲はインスト曲。歌はなかなか上手くて甘い良い声をしているので、ボーカルでもやっていけそうなくらいです。マンハッタン・トランスファーをフィーチャしたウェザー・リポートの曲《ホエア・ムーン・ゴーズ》をウェザー・リポート単独ライブでやる場合、オマーが歌っていました。難しいリズムを淀みなく叩きながら歌うのを見て、凄いなと思ったものです。ウェザー・リポート解散後にこのファーストアルバムが出て、聴いた時はなるほどと思いました。

全12曲をオマーが作曲しています。上記のとおりのアルバムなので曲は単なるアドリブのためのテーマではなく、歌ものとしてきちんと成り立っています。みんな良い曲ばかりなので、この人の作曲センスはかなりのものだと分かります。マーカスもそうでしたがオマーも”新人類”ジャズマンなのでした。ここではドラムをビシバシとテクニカルに叩くのではなく、歌ものをグルーヴさせるドラミングに徹しています。この人はウェザー・リポートを支えたくらいですからバカテクではあるものの、こういうグルーヴィーなドラミングも非常に上手いです。私は粘りがありつつ躍動感のあるこの人のドラミングがとても好き。

基本的な部分はオマーとベアデンでほとんど作っていて、ベースは曲によってアムブッシュとベイリーが弾き分け、ベーシスト抜きでシンセ・ベースになっている曲もあります。シンセ系を中心に色々な音が緻密に重ねられているサウンドは、紛れもなくポップス・アルバムの仕上がり。そこにジャズ的なセンスが散りばめられている(それを”ジャズ性”という人がいます)のは言うまでもないのですが、でもだからと言ってこれはジャズ(フュージョン)ではないと思います。だってジャズ的なセンスを聴かせるのが目的ではないのですから。インスト曲についてはフュージョンだと思います。

一番好きな曲は”セツネ~”な《テイク・マイ・ハート》。こればっかり。好きなんだからしょうがありません(笑)。この曲はオマーとベアデンの2人だけでトラックを作っています。ニッキ・リチャーズとデュエットするメローな《ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ》も気に入っています。曲名に”ハート”とか”ラヴ”とかが入っている、私はそういうフィーリングが好きなんでしょうね。「お前は乙女かっ!」と、ツッコミを入れたくなりますよね(笑)?

当時の私が好きだった新世代のジャズ・ドラマーはオマー・ハキムとデニス・チェンバース。2人とも黒人。私は黒人の腰にくるビートが好きなのです。白人デイブ・ウェックルはそのバカテクは認めるもののそれほど好きではなかったです。ウェックルのドラミングでヘッドバンキングはできても腰は揺れない、そんな感じでしょうか?

このアルバムはジャズではありません。オマーのボーカル・アルバムという色物です。でも結構気に入っていて時々聴きたくなったりするから困ったものです(笑)。

ところで最近のオマー・ハキムは何をやっているんでしょう? グレイト・ジャズ・トリオでやっていましたけれど、ハンク・ジョーンズが亡くなってしまいましたからその後です。 

と思ったら、最近リーダーアルバムを出していました。『We Are One』。”ザ・オマー・ハキム・イクスペリエンス”って、ロバート・グラスパーと似たようなグループを名乗っています(笑)。 MP3の試聴をしてみるとかなり聴きやすいフュージョン。ウェザー・リポート在籍時の《モラセズ・ラン》をやっていて懐かしいのですが、すっかり洗練されてしまっています。ほんと最近は80年代逆戻りみたいなものがあちこちにあり、しかも80年代のパワーはなく、私としてはウ~ムッと・・・。

アルバム名:『RHYTHM DEEP』
メンバー:
Omar Hakim(lead and background vocals, ds, electric ds, per, electric per, g, key, p,syn, synth bass)
Michael Bearden(key, synth strings, synth harp, synth marimba, synth bass, org)
Scott Ambush(b)
Victor Bailey(b)
Najee(ss)
Chieli Minucci(g)
Don Alias(per)
Nicki Richards(vo)
Candy Hinton(background vocals)
Barry Johnson(background vocals)
Keysia Bostic(background vocals)
Sharon Davis(background vocals)

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これはフュージョンでしょうね。

パット・メセニー・ユニティ・バンド/グループに参加してアーティスティックなベースを弾くベン・ウィリアムスが気になっているので、今更なのですが彼のファースト・アルバムを聴いておくことにしました。

P181ベン・ウィリアムス『ステイト・オブ・アート』(2010年rec. CONCORD JAZZ)です。メンバーは、ベン・ウィリアムス(b,el-b)、ジャリール・ショウ(as,ss)、マーカス・ストリックランド(ts,ss)、マシュー・スティーヴンス(g)、ジェラルド・クレイトン(p,fender rhodes)、ジャミル・ウィリアムス(ds)、エシーネ・チャールズ(per)、スペシャル・ゲスト:ジョン・ロビンソン(mc,vo)、クリスチャン・スコット(tp)、ストリングス・カルテットです。これはやはりフュージョンと呼ぶべきでしょうね。私にとっては懐かしい80年代フュージョンの雰囲気。コンコード・レーベルがやっているスムース・ジャズ系のアルバムという位置づけになるのだろうと思います。

ベン・ウィリアムスのオリジナル5曲の他、色々な人の曲をやって全11曲。ベン・ウィリアムスの曲はとても聴きやすいメロディックな曲。80年代フュージョンの雰囲気と書きましたが、ラスト以外はアコースティック・ベースを弾いているので、クラブジャズやヒップホップのジャズ的グルーヴを経た今時の感覚が入っています。しかし曲調やアレンジは80年代フュージョンを継承しているように思われます。

80年代に入ってジャズを聴き始めた私は、この手のどちらかと言えば軟派フュージョンを好んで聴く一方で、硬派で難解なものとしてのジャズを聴いてこそ、ジャズが分かるということなのだという意識が強くありました。そうさせるような雰囲気が世間に色濃く残っていたということもあります。なのでこの手のフュージョンをジャズだというような今時の風潮には少なからず反感があります。それでその反感を失わないことが、私にとってジャズを守ることだと思っています(笑)。

今黒人音楽としてのジャズが、一部でフュージョン化しているというのは興味深いことです。ただ今や黒人音楽としてのジャズはジャズ全体からすれば範囲は限定的であり、これを持ってジャズ全体を語ることはできないはずです。せいぜい今のジャズにはそういう部分もあるということに過ぎないと思います。そして今後もしこれがジャズの主流(メイン・ストリーム)になるのなら、その時は本当にジャズが死ぬ時だと思います。私はそうならないことを祈っています。

このアルバムを聴き、《リトル・スージ》のストリングスを交えたアレンジにウィリアムスの音楽性を見て、メセニー・グループに招かれた理由が分かりました。この《リトル・スージー》はマイケル・ジャクソンの曲だったんですね。私はメロディーの一部が《サンライズ・サンセット》に似ていることが気になってしょうがありませんでした。ネット検索をするとそのあたりについて考察したものがありました。で、マイケルの《リトル・スージー》をYouTubeで見て、この人の中にあった異様な何かを感じました。常人にはない天才ならではの異様な何か。そしてやはり本家マイケルの歌のほうが音楽的強度があるのでした。

スティーヴィー・ワンダーの《パートタイム・ラヴァー》もやっています。この曲は日本でもヒット。TDKカセットのCMソング(CMには本人出演)でした。私はこの曲が好きでした。この曲が入ったアルバム(CDだったような?)は、友達の下宿に集まって実験レポートなどを作成する際に、B.G.M.としてよく聴いた記憶があります。当時流行っていたマドンナやシンディ・ローパーも同じようにB.G.M.としてよく聴きました。懐かしい思い出です。ウィリアムスがこの曲を取り上げているところに私は親近感を感じます。

《ザ・リー・モーガン・ストーリー》は、ジャズ喫茶「いーぐる」で数年前にやった中山康樹さんの「ジャズ・ヒップホップ学習会」でかけた曲(本家の方を)です。ヒップホップ側のジャズへの接近/憧れ/継承というような文脈の中でかけたと思います。そこでラップしているジョン・ロビンソンをゲストに招き、ここでもヒップホップ演奏になっているのですが、やはりというかフュージョンになってしまっているような気がします。エレピがね~っ、フュージョンしているのです。ロバート・グラスパーにも同じようなものを感じます。まあ元曲のヒップホップについても私はあまり魅力を感じません。もっとカッコいいヒップホップはいくらでもあります。

ショウ、ストリックランド、クレイトンのソロはなかなか聴かせてくれます。良いと思いますよ。でもやはりフュージョン。しつこい(笑)。ここはひとつ、メセニー・グループでウィリアムスには「ジャズとは何か?」をしっかり継承してほしいと願っています。

アルバム名:『STATE OF ART』
メンバー:
Ben Williams(b, el-b)
Jaleel Shaw(as, ss)
Marcus Strickland(ts, ss)
Gerald Clayton(p, fender rhodes)
Jamire Williams(ds)
Etene Charles(per)
Special guests:
John Robinson(emcee/vocals)
Christian Scott(tp)
String Quartet

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フュージョンだな~と思いました。

去年出たアルバムのフォロー。やっぱり聴いておくことにしました。

P171_2ロバート・グラスパー・イクスペリメント『ブラック・レディオ2』(2013年、BLUE NOTE)です。メンバーは、ロバート・グラスパー(p,rhodes,syn)、ケイシー・ベンジャミン(vocoder,sax,fl,syn)、デリック・ホッジ(b)、マーク・コレンバーグ(ds,per)、ゲスト:ジャヒ・サンダンス(turntables)2曲、マイケル・エリック・ダイソン(vo)2曲、ジョン・P.キー(vo)1曲、ウェイン・ブラディ(vo)1曲、ビル・ウィザーズ(vo)1曲、他フィーチャリングボーカリスト多数です。前作『ブラック・レディオ』の2作目で同様の路線。豪華ボーカル(ラッパー)陣をフィーチャしてイクスペリメントが伴奏するというもの(笑)。

最初に聴いた時、これはフュージョンだと思いました。先週ジャズ喫茶「いーぐる」で後藤雅洋さん、中山康樹さん、村井康司さんが鼎談しました(私は行きませんでした)。その席でこのアルバムが話題になり、中山さんがフュージョンとおっしゃったそうで、私も同感だと思いました。これはジャズというジャンルの中で話をした場合。一般的なジャンル分けならば、前アルバム紹介の時にも書いたブラコン(ブラック・コンテンポラリー)だろうと思います。まあ今はそういうのも含めてR&B(リズム&ブルース)と言うそうなので、グラミー賞での受賞区分そのものだろうと思います。

音楽をジャンル分けすることに意味はないという意見があることは承知しています。でも私はジャンルが違えば楽しみ方が違うので、ジャンル分けすることに一定の意味があります。というわけで私はこれをフュージョンとして楽しんでます。このフュージョンとジャズの区分、最近の若い方は分からないようなので、分かりやすいだろうと思う言い方に変えれば、私はジャミロクワイ(好きなグループ)を聴くのと同感覚で楽しんでいます。ジャミロクワイはアシッド・ジャズですよね。アシッド・ジャズがジャズだと勘違いしている人にはやっぱり分からないか?(笑)

やって来た路線を更に洗練させて上質にした仕上がり。故にどうしてもつきまとう安定性ゆえの退屈さ。私なんかは基本的に刺激を求めて音楽を聴くようなところがあるので、この手の刺激の無さにはちょっぴり不満。私の場合、ジャズを聴いて何が楽しいのかと言えば、新しい刺激なのだろうと思っています。他には”分からなさ”かな、分からないからこそ「よし、もっと聴きこんでみよう。」となるのです。で、聴きこんで分かれば面白い。ところがこのアルバムは聴けば分かっちゃうでしょ(笑)。こっちから音楽に詰め寄らなくても、音楽からこっちに猫なで声ですり寄ってきます。そこがフュージョンなんですよね。フュージョンとジャズの違いの一つであり、私にとっては重要なポイント。

メローな楽曲が次から次へと流れていき、聴き進むうちに気分は温泉に浸かっているような心地良さへ。都会の夜が似合うアーバン・ミュージック。ヒップホップ系のラッパーとかをたくさんフィーチャしているので、ヒップホップとの融合と言われますが、私に言わせるとそれほどヒップホップでもないような気がします。ノラ・ジョーンズがフィーチャされるトラックだけドラムンベースになっているのが気になります。でもこれがアルバム中一番ジャズだったりして(笑)。まあそれはノラ・ジョーンズがジャスの人だからですね。他の曲は全てグラスパーが作っているのに、なぜラストはビル・ウィザーズ作のモロにフュージョンなのか?これも気になります。私はこの80年代フュージョン調のセツネ~メロディーにやられました。私の好きな胸キュンメロディーのドツボです(笑)。

ライナーノーツに「プログラミングは使っていなくて全てライブ演奏してます。」というただし書きがついています。私なんかは聴けばそのくらいのことは分かります。でもわざわざそんなことを書かなければならないくらい、プログラミング(打ち込み)に毒されてしまったリスナーに向けた音楽だということなのでしょう。この手のリスナーには「ライブ演奏(生演奏)しているからジャズだ。」というようにさえ受け取れるような意見があって、私はそれを聞いて頭がクラクラします(笑)。ジャズに対する誤解(だと私は思う)が、ここに来て極まっていると思える今日この頃。にしてもコレンバーグにほとんどの曲で単調なリズムを叩かせているので、コレンバーグの良さが出ていないように思うのは私だけ? まあボーカルの伴奏なので仕方ないか。

色々言いたくなるのですがこのくらいでやめておきます。このアルバム、ジャズとフュージョンの両刀使いな私は楽しく聴いています。フュージョンとして。しつこい!(笑)

最後に、このアルバムが気に入ったからと言って、ジャズファンになるとは思えませんし、ヒップホップファンになるとも思えません。せいぜいスムースジャズどまりでしょう。

アルバム名:『BLACK RADIO2』
メンバー:
Robert Glasper(p, rhodes, syn)
Casy Benjamin(vocoder, sax, fl, syn)
Derrick Hodge(b)
Mark Colenburg(ds, per)

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久しぶりにフュージョン新譜を買ってみた。

最近はフュージョンの新譜をほとんど買わななくなりました。特にテクニカル系のものは興味が湧きません。テクニカル系フュージョンは、最初のうちはそのテクニックに酔いしれて”スゲ~ッ!”となるのですが、すぐに飽きてその後はほとんど聴かなくなるのが私の常だからです。でも今回はフュージョン新譜を買ってみたくなりました。ネットでちょっと試聴したら良い感じだったのです。

P119トニー・グレイ『エレヴェーション』(2013年、ABSTRACTLOGIX)です。メンバーは、トニー・グレイ(b, keys 1,5)、ジョン・マクラフリン(g)、マイク・スターン(g)、布袋寅泰(g)、レブ・ビーチ(g)、デヴィッド・フュージンスキー(g)、ニル・フェルダー(g)、ファブリツィオ・ソッティ(g)、デヴィッド・ソロックモートン(ds)、ミノ・シネル(per 2)、ロマイン・コリン(keys 2)です。メンバーをみて分かるとおり、色々なギタリストをフィーチャしたアルバムです。しかも布袋さんがいます!

グレイは上原ひろみの前のバンドのベーシスト。上原ひろみファンの私としては気になる存在なのです。ここに参加しているフュージンスキーも上原ひろみのバンドで一緒にやっていましたよね。このアルバム、まずテクニック偏重ではないところが気に入っています。もちろんテクニカルな演奏は随所にあります。でもそれだけを聴かせる風ではなく、音楽を聴かせてくれているところが良いです。グレイはベースにしてもサウンドにしても結構しなやかでエレガント。そこが今の私の気分に嵌ります。

大御所マクラフリンは曲を提供していて、この曲だけシネルのパーカッションとキーボーディストが入った豪華版なのに、全体の中では意外と記憶に残らなかったです。布袋はディストーションを聴かせたロック・ギターで”ギュインギュイン”やっています。でも私はこれが意外とつまらない。で、今回気付きました。私はスケールを駆使したジャズ的なアドリブがないと面白くないんだと。そういう意味でやはり私はスターンをフィーチャした曲が一番好み。この人が弾く独特なスケール、それが鳴っただけでもう彼の世界に引き込まれてしまいます。

基本的には1曲ずつしかフィーチャされないのに、フュージンスキーだけが3曲にフィーチャされています。これは上原ひろみのバンドでのよしみもあるのでしょう。というか3曲中1曲だけがグレイのオリジナルで後の2曲はジャズマン・オリジナルなので、それら2曲はグレイなりのアレンジで聴かせるのに、一緒にバンドを組んで気心知れたフュージンスキーにご協力いただいたということなのだろうと思います。フュージンスキーはいつもの変態的ギターを控えめに披露。

ギタリストをフィーチャしているものの主役はグレイです。ほとんどの曲で自分が最初にベース・ソロを弾いてからギタリストのソロに渡します。ベース・ソロの最中もバックにベースが聴こえることから、ベースは多重録音していると思われます。バッキングのベースは4弦ベースで、高音を多用するベース・ソロはジャケット写真の6弦ベースを弾いているのでしょう。

8曲目《ソーラー》はベース・ソロのみ、フュージンスキーはバッキングです。曲自体も短くて”フ~ッ”と消えていくのが面白いです。ラスト《サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム》はギターとベースのソロがありますが、短めの演奏でやはりこれも”フ~ッ”と終了。余韻を残すアルバムの最後になっています。

私はこのアルバムが気に入りました。

アルバム名:『ELEVATION』
メンバー:
Tony Grey(b, keys 1,5)
John McLaughlin(g)
Mike Stern(g)
Tomoyasu Hotei(g)
Reb Beach(g)
David Fiuczynski(g)
Nir Felder(g)
Fabrizio Sotti(g)
David Throckmorton(ds)
Mino Cinelu(per 2)
Romain Collin(keys 2)

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たまには懐かしいフュージョン

どうもブログを積極的に書こうと思えない今日この頃。適当にネタを探して適当に書くとしましょう。お気に入りフュージョンアルバムの紹介です。

P75 ジョー・クール『パーティ・アニマルズ』(1983年rec. CANYON)です。メンバーは、ジェフ・ミロノフ(ac-g,el-g)、ウィル・リー(el-b,vo,per)、ロブ・マウンジー(fender rhodes,vo,per)、クリス・パーカー(ds,per)です。このレコードはリアルタイムで買ったのではなく、後で中古を買ったような気がします。どうも記憶が定かではありません。

時代が時代なので、ニューヨーク・スタジオ・ミュージシャンならではの、お洒落なフュージョンになっています。お洒落と言っても決して今で言うスムース・ジャズではありません。テクニックも演奏内容もきちんと聴かせるもので、B.G.M.にしてしまうにはもったいないような気がします。

テクニックを聴かせると言っても、それを強調するような野暮なことはやっていません。同時代の和フュージョン、例えばカシオペアがテクニック重視でスクエアーがポップス感重視で売っていたのとは路線が違います。パッと聴いただけでは分からないでしょうが、聴く人が聴けば納得の演奏。この辺り、私にとっては「ジャズの本場発のフュージョンはやっぱり違うよね。」ということになるのです。

ジョー・クールのデビュー・アルバムとのこと。メンバーの4人、80年代フュージョンを知る人にとっては凄いメンバーだと分かるでしょう。当時のファースト・コールです。このグループのセカンド・アルバムが出たかどうかは知りません。私が持っているのはもちろんレコードで、このアルバムがCD化されたかどうかも不明です。

なぜかB面1曲目がタイトル曲《パーティ・アニマルズ》になっていて、この演奏に限ってはカシオペアにかなり似た雰囲気を持っています。当時のあちらと日本の微妙なシンクロ具合というのが感じられます。でもあちらはやっぱり大人なんですよね。そして和フュージョンの芯が歌謡曲なのに対して、あちらのフュージョンの芯はR&B。

このアルバム、今買おうと思ってもみつからないでしょうね。

ビックラコイタッ!このグループのライブ演奏がYouTubeに、恐るべし!
カッコいい演奏ではありませんか。この曲はアルバムに入っています。

ナベサダと共演してるし、時代ですよね。

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カシオペアのレコードを買ってみた。

別にジャズに固執しているわけではないので、ピュア・ジャズ・ファンからはあまり好かれないジャパニーズ・フュージョンも聴いて楽しんでます。ということで今日はカシオペア。

昔はもっぱら車のB.G.M.として重宝させていただきました。何度も書いていますがレンタルCDをカセットにダビングしていました。今もカセットは残っています。カセットは少し傷んでいることもあり、まともな音源を持っていたくて、昔のものはレコードを少しずつ揃えています。

しばらく前に、時々見ているネットレコード店舗を覗いてみたら、年末セールをやっていたので衝動的にカシオペア2枚とスクエアー3枚をまとめ買いしてしまいました。今日紹介するのはその中の1枚。

P147カシオペア『ジャイヴ・ジャイヴ』(1983年、ALFA)です。メンバーは、野呂一生(g,guitar synth,linn drum computer,per)、向谷実(key,syn,p)、桜井哲夫(el-b)、神保彰(ds,linn drum computer,per-syn)、他です。ロンドンでの公演の折にロンドンのスタジオで録音されたアルバムです。

タスキを見ると「新たなるジャズ・ファンクの雄として、ロンドン子を震撼させたカシオペアの、これはまぎれもなく世界制覇をもくろんだ衝撃のアルバム!!」なんて、大袈裟な文字が並んでいます(笑)。私が車のB.G.M.として聴いていた頃は、アルバムの背景みたいなものは全く気にしていなかったので、今初めてこのようなことが分かった次第。

カシオペアのアルバム(カセット)は何枚か持っていて、その中で好きなものと嫌いなものがあるのは当然のこと。この『ジャイブ・ジャイブ』は好きなアルバムだったのですが、その理由がタスキの宣伝文から分かりました。”ファンク”だったのです。私、ファンクが好きだというのはブログに何度も書いていますよね。結局それなのです。

過去の音を改めて聴くと自分の好みがあぶり出されるというのはもう何度も体験していて、今回もまた同じことを体験してしまいました。

さて、久しぶりにアルバムを通して聴いていてみると、”何これ、メチャクチャ格好いいじゃん。”という曲がありました。多分昔はこれがそれほど格好いいとは思っていなかったはずです。ところが今の”ジャズ耳”で聴くとこれが一番ヒップ! 《シークレット・チェイス》。

これはジャズってます。難しいリズム・フィギュアにタブラがからみ、実に2000年代的リズム。適度にアブストラクトなメロディーにオーケストレーションを被せた不穏感。アタックが強いブレイク。向谷さんのホーン系サウンドのソロがクール。野呂さんのギター・シンセもアグレッシブに飛翔してます。当時にしては時代を先取りしたサウンドだったのではないでしょうか?

カシオペアらしいのは1曲目の《スウィート・イット・アウト》。タイトなリズムが気持ちいいですね。向谷さんのピアノ・ソロが美しい。

”フュージョン耳”ならばやっぱりこっちが気持ちいいです。

こちらもカシオペア・サウンドの《リビング・オン・ア・フィーリング》。ライブ映像でどうぞ。

こうして女性コーラスが入っているのを聴くと、当時流行ったシャカタク(イギリスのフュージョン・バンド)のサウンドと被りますよね。この辺りがロンドンで録音した成果なのだろうと分かります。レコードのバージョンはもう少しテンポが遅くてファンキーな感じが増しています。エレベのチョッパーがいい感じです。今になってサウンドを分析してみると面白い。

レコードジャケットの中にはこんなオマケが!カシオペア・シール(笑)。
P148

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こんなスムースジャズも好きです。

CD、レコード棚から1枚紹介。

P131ジェイ・ベッケンスタイン『アイ・コンタクト』(2000年、Windham Hill)です。メンバーは、ジェイ・ベッケンスタイン(ss,as,ts)、チエリ・ミヌシ?(g,key,programming)、デヴィッド・チャールズ(per)、フェルナンド・サンダース(el-b)、チャック・ローブ(ac-g,el-g,electric sitar,key,org,harmonica,drum programming)、マーク・イーガン(el-b)、ブライアン・ダナー(hi-hat,cymbals)、ウィル・リー(el-b)、ジェイソン・マイルス(key,programming)、ロナルド・ドレイトン(el-b),ジョン・パティトゥッチ(b)、ジェフ・ビール(orchestratison and programming)、ミノ・シネル(per)、マカス・ミラー(el-b)、オマー・ハキム(ds)、バキチ・クマロ?(chanting,el-b,backing vocals)、ジュリオ・フェルナンデス(g)、他です。曲によってメンバーが様々変わります。皆さんご存知のとおり、ベッケンスタインはスパイロジャイラの中心メンバー。珍しくグループを離れて録音したアルバム。昔々はこの人の演歌っぽい?節回しがちょっと苦手でしたが今は大丈夫。

曲毎にキーボードやプログラミングを担当しているチエリ・ミヌシ、チャック・ローブ、ジェイソン・マイルス、ジェフ・ビールとベッケンスタインが協同でプロデュースするという内容。曲はベッケンスタインのオリジナルの他に、ベッケンスタインとローブやマイルスやクマロとの共作、ミンガスの《グッドバイ・ポーク・パイ・ハット》、ザビヌルの《ブラック・マーケット》があります。

スムース・ジャズです。心地よいメロディーの上でベッケンスタインがソプラノ・サックス、アルト・サックス、テナー・サックスを軽やかに気持ち良さそうに吹いています。私的にはヒップホップ系打ち込みリズムを採用しているところがお気に入りの理由。曲によってプロデューサー・コンビが変わるわけですが、基本ベッケンスタインがやっているので全体の統一感はあります。

《グッドバイ・ポーク・パイ・ハット》は、打ち込みリズムとシンセ・オケにパティトゥッチのアコースティック・ベースが重厚に響き、ダークな感じとお洒落な感じが絶妙のミックスチュア。《ブラック・マーケット》ではマーカス・ミラーにオマー・ハキムにミノ・シネルというウェザー/マイルス・コネクションが実現。ジェイソン・マイルスがザビヌルの祝祭ムードを上手く引き出しています。

たまにはこんなフュージョンも楽しく聴きたい。結構好きなアルバム。

アルバム名:『eye contact』
メンバー:
Jay Beckenstein(ss, as, ts)
Chieli Minucci(ac-g, key, programming)
Chuck Loeb(ac-g, el-g, electric sitar, key, org, harmonica, drum programming)
Jason Miles(key, programming)
etc

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軟弱アルバムを紹介(笑)

久しぶりに聴いたら妙に心地よかった1枚を紹介します。
硬派ジャズ・ファンは絶対に聴かないでしょう(笑)。

P55天野清継国分弘子『ヘブン』(1993年rec. ビクター・エンターテインメント)です。メンバーは、天野清継(ac-g,el-g)、国分弘子(p)、アレックス・アカーニャ(ds,per)、ドン・グルーシン(syn)、ゲイリー・ハービッグ(sax,fl)、エイブラハム・ラボリエル(el-b)です。2人のリーダーの頭漢字「天」と「国」を合わせて「天国」=「Heaven」という何ともいい加減な命名です(笑)。LA録音ということで、サポートはあちらの凄腕セッション・プレーヤー。

やっている音楽はスムース・ジャズ=フュージョンなので、確かに「天国」気分です。「フォープレイ」をもう少し軟弱にした感じの音楽です。テクニックを聴かせるような場面はほとんどなく、ただひたすら良いメロディーの曲を心地よく聴かせていくというもの。リズミックな曲が多いので楽しく聴けます。

天野のギターはアール・クルー風&少しリー・リトナー風。デビュー・アルバム『アズール』が大ヒットし、その流れでこのセッションへとつながったのでしょう。相棒の国分のピアノはあまり特徴はありませんね。当時それなりに話題にはなっていたように記憶しています。私は『アズール』は買わなかったものの天野のことが気になっていたので、このアルバムを買ったのだと思います。

曲は天野の3曲、国分の3曲、2人の共作が4曲、クレア・フィッシャーの曲が1曲の全11曲。共作が4曲もあるのはちょっと珍しい感じがします。2人による曲作りの仕掛けはライナーノーツの各曲紹介に詳しく書かれています。とにかく美メロ&天国気分な曲が並んでいます。ラストは2人だけのデュオ演奏でクラシック的です。

超久しぶりに聴いて思い出したのですが、当時は結構ヘビロテだったように記憶しています。真空管アンプ作りに没頭していた頃なので、ジャズを真摯に聴くという感じではなく、仕事に疲れた気持ちをこういう心地良い音楽で慰めていたのかもしれません。

まっ、こんな音楽も時にはいいでしょ。
「天国」サウンドに酔いしれましょう。

アルバム名:『Heaven』
メンバー:
天野清継(ac-g, el-g)
国分弘子(p)
Alex Acuna(ds, per)
Don Grusin(syn)
Gary Herbig(sax, fl)
Abraham Laboriel(el-b)

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ハーブ・アルパートがヒップホップやってました!

ジャズ友tommyさんが貴重な情報を教えて下さいました。m(_ _)m

何とハーブ・アルパートがマイルスよリ先にヒップホップをやっているというのです。
この映像を紹介してくれました。

本当だっ!これは紛れもなくヒップホップ。
ブレイクダンスしてるし。
1991年2月26日ということなので、90年に録音しているんでしょう。
マイルスよりちょっと早いじゃん。
ご丁寧にPVまで作ってます。

ハーブ・アルパートとは盲点でした。
にしても、ラッパがショボ過ぎ(笑)。
だからイージー・リスニングなんですよ。
こういうショボさって、クラブジャズ・ファンが好きなテイストかも?

さすが、メジャー(売れている)のほうがこういう動きって早いんでしょうね。
この年は、マイルスが亡くなって、Us3が結成されて、
ア・トライブ・コールド・クエストがジャズを引用した新サウンドで
ファースト・アルバムを出した年です。
90年代に入って一気にジャズ/フュージョンとヒップホップがクロスオーヴァー。

マイルスを失って、少なくともジャズ界はこの流れが迷走したと私は思います。

さてっ、

ジャズ・ヒップホップと言えば、今日面白い新譜が届きました。

大谷能生さんの『ジャズ・アブストラクションズ』

今聴いている最中なのですが、これは文句なくジャズ!
はっきり言ってロバート・グラスパー何かよりずっと面白い。
のっぺりラップがこういうトラックに乗るなら面白いのです。

菊地成孔さんのライナーノーツが興味深い。
珍しく言っていることが分かります(笑)。
なるほどね~。
ところで”アンチ・オイデプス的”って何?
ギリシャ神話のオイディプス王的な行動のアンチという意味?
こういう言葉を持ち出すところが
菊地さんの面白くも嫌味なアンビバレンツなんでしょうね(笑)。

これっ、聴いておかないと絶対まずいでしょ!
私は激しくプッシュします。

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