これはハイブリッド・ジャズです。
先日、定期的にジャズ・ブログを巡回していると書きました。
今日は巡回中にアルバム評を読んで、
「これは聴きたい。」と思ったアルバムを紹介します。
「ジャズ批評」誌の「ブログ・ウォーキング」仲間すずっくさまが書いてました。
ココ↓
http://plaza.rakuten.co.jp/mysecretroom/diary/200910200000/
アーロン・パークスの『インビジブル・シネマ』(2008年rec. BLUE NOTE)です。メンバーは、アーロン・パークス(p,melotron,glockenspiel,key)、マイク・モレノ(g)、マット・ペンマン(b)、エリック・ハーランド(ds)です。
昨年の今頃発売したアルバムです。当時はそれほど買おうと思いませんでした。ジャケットのイメージから、内省的で暗いアルバムというイメージがあって、あまり聴く気になれなかったのです。
ところが今回、ブログを見ていたらすずっくさまが
「この不思議な世界は今の季節にかなり似合うな。。って、思った。」
と書かれていたので、聴いてみたくなったというわけです。
このアルバム。今風のハイブリッド・ジャズだと思いました。ジャズ以外の要素や感性が混ぜられています。4ビート、ブルージー、アドリブ一発という、いわゆるジャズ的な要素は薄いと思いますが、その分ロック、フォーク、ポップスなど他ジャンルの要素が上手い具合に融合されていると思います。
このアルバムの雰囲気は”暗い”とのご意見が多いのですが、私はあまり暗いとは感じません。多分もっと暗くて抽象的なものをたくさん聴いているからでしょう。う~ん、これから、もし私がこれは”暗い”と書いたら、とんでもなく暗い、つまり”暗黒”のアルバムということになってしまうのかも(笑)?
1曲目《トラヴェラーズ》はデジタルライクなリズムの曲です。上原ひろみのピアノ・ソロ・アルバムの1曲目《BQE》に近い匂いを感じます。ドラムとベースが上手い具合にデジタルってると思いますよ。最後のほうに出てくる抒情的なフレーズ。こういう抒情性と無機質なデジタルのハイブリッドは上原にもあるんです。ピアノ・トリオでの演奏。パークスは速いパッセージも楽々こなすテクニシャンで音も粒立ち良くクリア。窮屈さがなく開放的な(ちょっと荒い)のが良いです。
次の《ピースフル・ウォーリア》。これはもうパット・メセニーの東洋系フォークの世界です(笑)。こういう郷愁感のある曲は日本人好みだと思います。モレノのギターには、これはもうしょうがないんですけど、メセニーやカート・ローゼンウィンケルの影響を感じます。曲の展開もドラマチックで、4人が一体化して作り出すサウンド・スケープは魅力的です。
《ネメシス》は7拍子。モレノがカートのようなギターを弾くので、変拍子と相まって今時NYのサウンド。ちょっと内省的なメロディーが暗さを漂わせていますが、パークスもモレノも突き詰めない程良いテンションなので、ダークというよりはクールな感じです。グロッケンシュピールを使うあたりは、鬼才ドラマー、ジョン・ホレンベックに通じます。薄くキーボードも被せていてNYサウンドですね。これは。
《リドル・ミー・ディス》はロックなリズムで、バッド・プラスに通じる世界ですが、あそこまでの過剰性はありません。パークスもモレノも程良くポップな意識があるところに、私は開放的なものを感じます。NY系のともすると排他的な世界に陥っていないことに好感を持てます。《イントゥ・ザ・ラビリンス》はピアノ・ソロ。クラシカルな雰囲気漂うかわいらしい小品と言っておきましょう(笑)。これら2曲は3分弱の短い曲です。
《カルマ》はECM系のコンテンポラリー・ジャズです。これが一番いわゆるジャズにとどまっているかもしれません。ベース・ソロ、ピアノ・ソロ、ギター・ソロがアドリブを強く意識させるものになっています。他の曲はどこまで作曲でどこがアドリブか分かりにくいものやアドリブなしもありますからね。アップテンポの6/8拍子にのって、オシャレでビューティフルに演奏しています。
《ロードサイド・ディストラクション》は、今流行りのフォーク/ブルージーな曲。モレノのギターがスティールギターの響きを模しています。この曲はアドリブなしの短い曲です。《ハーベスティング・ダンス》はスパニッシュ/ジプシー系美メロ曲。こういう曲もNYを意識させますね。当然の如く変拍子。モレノが弾くフレーズはなんとなくアルディ・メオラに聴こえてきたりします。キメなんかはチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエバーの世界かも?
《プライス》はフォーク/ポップな世界。一歩間違えると暗めのリチャード・久レイダーマンのようでもあります(笑)。キャッチーで聴き易い曲になっています。ラスト《アフターグロウ》。ピアノ・ソロで静かにエンディングです。
全曲の説明を書きましたが、それはジャズの新しい世代観やジャズ以外のサウンドが詰まったアルバムだということを、わかってほしかったからです。色々なミュージシャンを引き合いに出していますが、だからと言ってパークスが真似をしているというわけではありません。色んな要素を取り入れた上で、ここにあるのは間違いなくパークスの世界です。ぼーっと聴いていると、まるで映画のサウンドトラックを聴いているように流れます。
最後になってしまいましたが、全曲パークス作曲です。この人、なかなかのコンポーザーだと思います。過去にはオーソドックスなピアノ・トリオを出しているようですが、私は今のコンテンポラリー路線にこの人の良さを感じます。今後にも注目。
これ、聴いて良かったです!
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