久しぶりのジャズ喫茶「いーぐる」連続講演
先週は久しぶりに上京しました。ジャズ喫茶「いーぐる」で行われた高野雲さんの本『ビジネスマンのための(こっそり)ジャズ入門』の出版記念イヴェントに参加したためです。いつものように(と言っても何年かぶりですが)昼頃新宿に到着。今回高速バスで行ったのですがバズターミナルが新宿駅の南口側に新設されていたとは知りませんでした。
新宿で昼ご飯を食べてからまずはディスクユニオン新宿ジャズ館のレコード売り場へ行きました。 エレベーターを降りて目の前の新着箱をチェック。レコードの値段が以前より安くなっていますね。レコードを詰める箱には余裕があります。以前のようにギッシリ詰め込まれていないので取り出しやすかったです。中身もいまいちな感じ。
これらをもって判断するのは安易なのかもしれませんが、世間で言われるレコード人気は下火になっているのではないかという気がしました。お客さんも少なく何より売り場に以前の活気が感じられないのです。何度目になるか分かりませんが今回のレコードブームも一段落したのではないでしょうか。レコードを5枚買って10%引きでジャスト5000円。
ディスクユニオンを出て次はどこに行こうかとしばし悩んで秋葉原へ行くことにしました。ちなみにディスクユニオンのCD売り場には行きませんでした。新譜はAmazonで買った方が安いし中古CDは今特にほしい物がないからです。いつものように御茶ノ水駅で降りて歩いて秋葉へ。以前よく買い物をした電気パーツ店がなくなっていました。電気パーツ店は「秋葉原神社」という新種のメイドカフェ?に衣替え。変化し続ける秋葉原です。
まずは秋月電子でトランジスタを購入。DENONレコードプレーヤーの修理に大活躍する2SC1815(GRランク)です。続いて千石電商ではんだ吸い取り線とはんだごてのこて先を購入。最近こて先が折れてしまったので丁度良いタイミングでした。ほしいものは買ったのであとはいつもの秋葉原パトロール。
電気デパートへ。ここも電気パーツ店が減っていました。地下のノグチトランスにはいつものおじさんではなくおばさんがいました。3階の真空管販売店サンエイ電機が開いていて一安心。今は真空管アンプを作りませんがここはつい覗きたくなるお店。2階の真空管販売店キョードーのお兄さんがおじさん化していてビックリ。いつも混雑していた電気パーツ店海神無線にお客さんが一人もいないのは初めて見ました。寂しい・・・。
次はラジオセンター。南隣にあったラジオストアーがなくなってから初めて行きました。今は別のお店が営業中で昔の面影はありません。寂しいです。2階の内田ラジオのおばさんはさすがにいませんでした。かなり高齢だったのでもう引退したのでしょう。陳列具合が以前と異なっているし、ラジオセンターのホームページを見ると池之谷ラジオとなっていることから経営者が変わって引き継いでいるのかもしれません。ニュー秋葉原センターにある春日無線変圧器は相変わらず健在。
昔ながらの電気街のお店をパトロールするのは楽しいです。変化する秋葉原。それはそれで良いと思いますが、変わらない部分も残っていてほしいと願う私です。
でっ、やっとジャズ喫茶「いーぐる」へ。約3年ぶりです。
地下への階段を下りてお店の中へ。ここは全然変わりませんね。マスター後藤雅洋さんと高野雲さんがお話し中でした。「超お久しぶりです。」と挨拶。お二人ともお変わりなく笑顔で迎えてくださいました。ここへ初めてきた時は凄く緊張しましたし、その後しばらくは緊張が続いていたのが今は嘘のよう。
まずは雲さんに長い間借りっぱなしだった立花ハジメのCDをお返ししました。ホント申し訳ありませんでした。ここでもう一度お詫び致します。このCDの高橋幸宏のドラム、お薦めのとおり最高のグルーヴでした。何でY.M.O.だとあんなにイモっぽく聴こえるのか今はそれが謎? 理由がよく分かりません。
いよいよ本の出版記念イヴェントの始まり。村井康司さんと高野雲さんのトーク形式で進みました。今回は全くメモしていないので一週間後のあやふやな記憶で書きますので誤りがあるかもしれません。ご容赦願います。またここに書く内容はイヴェントの一部分で全てではありません。
この本を書くことになった経緯などから話が始まりました。その後は面白い喩えのジャズマンをピックアップして曲をかけながら紹介。かなり話をしてから最初にかけたのがビル・エヴァンスの『枯葉』だったはず。久しぶりにちゃんと聴きました。テーマを演奏した後、ラファロのベースソロから入って、そこにエヴァンスが絡み、次にモチアンが絡んで盛り上がりを見せたところで、エヴァンスのソロが登場するというアレンジの上手さに改めて気付きました。インタープレイもさることながらアレンジをきちんとしているエヴァンス。今は特にどうということがないこんなアレンジも当時は斬新だったことでしょう。
営業マン対決コルトレーン対ロリンズ。彼らの営業トークの特徴を解説。コルトレーンの《ジャイアント・ステップス》とロリンズの『コンテンポラリー・リーダーズ』収録曲(曲名忘れました)を聴きました。
『ビジネスマンのための(こっそり)ジャズ入門』を読んでいて思ったのですが、コルトレーンの高い音で速く大量の音を吹くというのは「デジタル」と同じじゃないかということ。高周波クロックで高速に大量の演算を行うという「デジタル(処理)」の特徴に通じますよね。私がコルトレーンに感じる現代感覚はそのデジタル感にあったのではないかと今は思っています。一方のロリンズ。私はこの人のタンギングに他のサック奏者と違う独特の物を感じていて、それによって生み出される小気味よい間合いこそが聴くものを魅了しているのだと思っています。
村井さんが雲さんに「どちらが好きか?」と聞いたら、雲さんは「ロリンズ。」と答えたので、村井さんは「コルトレーンじゃないの?」と聞き直していました。私もコルトレーンの方が好きだと思っていたので少々ビックリ。でもそれは昔ネットにあったジャズマン占いで雲さんがコルトレーンだったというのと、雲さん自身がコルトレーンに似ているところがあると言っていたのを、コルトレーンの方が好きだと私が勘違いしていたのだろうと思います。
パウエルのピアノの良さを聴くということで、秋吉敏子のピアノと《クレオパトラの夢》の比較試聴。最初に秋吉敏子を聴いて続けてパウエルを聴きました。秋吉敏子のアレンジを駆使した演奏を聴いていたら私の頭には山中千尋が浮かんできて、秋吉敏子という人が正に日本人ジャズピアニストの元祖という思いを強くしました。
雲さんが言っていた秋吉敏子のつながりを欠くばらばらな演奏に対してパウエルの一つのまとまりとして聴ける演奏というのはソロの展開のことだろう理解。秋吉敏子の毛色を変えながらフレーズをつなぐソロに対し、パウエルの一貫したストーリー性のあるフレーズ展開力はさすがだと改めて思いました。このように言葉として聞いたことが演奏の理解度を深めるのはままあることでして得した気分になりました。
他ではあまり取り上げないジャズマンとしてロイ・ヘインズの話がありました。かけた曲はパット・メセニー・トリオの《オール・ザ・シングス・ユー・アー》で、この時70代のヘインズの凄まじくキレの良いダイナミックなドラミングには一同「凄いよね。」という驚嘆の言葉しかありませんでした。
村井さんがヘインズにインタビューした時、ヘインズが「昔はダメだと言われたリズム感が時代が経つにつれて合うようになってきた。」と言っていたことに触れ、時代の遥か先を行っていたヘインズのリズム感は凄いという話には、私も大いに頷けるものがありました。私がヘインズのドラムの面白さに気づいたのはチックの『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』を聴いた時です。
村井さんから『フリーダム・ジャズ・ダンス ブートレグ・シリーズVol.5』(だろうと思う)にはリハーサルの会話が録音されていてその会話が面白いという話があり大いに盛り上がりました。日本盤は会話の訳もあるそうなので日本盤を買うようにとのことでした。かけた曲は『ネフェルティティ』から時間が短い曲の《ピノキオ》 。講演の時間が押していたのでタイトル曲はかけられませんでした。私は《ピノキオ》が好きです。
最後にかけた曲はマイルスの『フォア・アンド・モア』から《ソー・ホワット》。村井さんからこのライブにまつわるエピソードの話があり、トニーが何であんなに叩きまくるのか分かったりして面白かったです。疾走するマイルス・クインテットは最高のカッコ良さ。トニーの凄まじいドラミング、文句なく最高っ! ジャズバンサイ!
とても楽しい講演でした。雲さんと村井さんが事前打ち合わせをほとんどしていないことは分かりました。それをトークで上手くまとめ上げていく村井さんの手腕。敏腕編集者村井さんの面目躍如といったところだと思いました。拍手!
関係者の皆様、楽しい講演をどうもありがとうございました。
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