レコードプレーヤーを落札しました。今回はトリオのKP-700Dです。過去にヤフオクでトリオのレコードプレーヤーを4台入手しています。KP-7070、KP-700、KP-7300、KP-F605MKⅡ、いずれもトーンアームにガタがあって、それ以来トリオのレコードプレーヤーには手を出さずにいました。しかし今回あえてトリオを入手たのは、今回もトーンアームにガタがあるようであれば、トリオの中古レコードプレーヤーには気をつけるように注意喚起するつもりだったからです。
電源コードと出力コードが根本から切断されているジャンク品で3100円也。なんでジャンク品にそんなに払ったかというと、金色のヘッドシェルが付いていてこれを売ればそこそこの金額になるだろうと思ったからです(笑)。トリオのレコードプレーヤーはヤフオクで人気があり、動作するというだけで良い値が付くので、今回メンテナンスして動作するようになれば儲けがありそう(笑)。コードが切れているのは壊れているからというより、廃棄物にするために切断して使えないようにしていると考えました。
トーンアームがアームレストから外れて中で動く状態で送られてきました。カートリッジに針は付いていないだろうと思っていたので特に問題なし。プラッターはもちろん取付けたままです。梱包にきちんと配慮ができる出品者はなかなかいません。

かなり汚れています。ダストカバーは黄ばんでしまっています。本体の木目調塩ビシートも角が割れてしまっていたり、少し浮いているところがあります。屋外物置など悪環境の所に保管されていたのでしょう。ところが意外や意外、トーンアームにガタはありませんでした。これまでトリオのレコードプレーヤーを疑い続けてゴメンナサイ。トーンアームにガタがない物もあるんですね。(よく確認すると僅かなガタはありました。)
金色のヘッドシェルに付いているカートリッジはグランツのGMC-20E。MC型なのに針交換が出来る特殊なタイプでヤフオクにも中々でない珍品。

やはりカンチレバーは折れていて、特殊なカートリッジなので交換針は入手できないでしょう。アルミの本体部分には刻印された模様があったりして、見てのとおりかなり高級感があるカートリッジです。私は金色ヘッドシェルに興味がないのでヤフオク行き決定です。だって完全に周りから浮いてしまっていますから。
メンテナンスに移ります。裏返して蓋を開けるとこんな作りです。モーターとトーンアームはARBC材(乳白色のプラスチック系素材)で補強されています。ショーティング構造と言っていますが、トーンアーム部とモーター部のARBC材は一体型ではなく密着するように配置しています。一体型になっていないのは組み立てやすくするためだろうと推測します。この思想を更に突き詰めたのがその後のユニファイド・アルミダイキャストフレームですね。

モーター部分の補強には大いに頷けるところがあります。以前入手したKP-700はプラッターがキャビネットに接触していたので、モーターを本体に取付けてあるスタットボルトの1ヵ所にワッシャを噛ませて傾きを補正しよとしたら、モーター自体がたわんでキャビネットとの接触が治らなかった経験があるからです。モーターベースが1枚の鉄板というのは機械強度的に問題ありです。下の写真の左側がKP-700のモーター。

右は私が愛用しているPL-380のモーターで、こういう縦長のモーターの方が強度的には優れていると思うのです。パイオニアのこのモーターはアルミダイキャストの厚みがあるベースなのでかなり強靭。モーターの回転を滑らかにするためにできたモーターですが、機械強度的には後退してしまっているのは皮肉です。トリオに限らすパイオニアも同タイプのモーターを採用していきます。
回転制御基板はIC化が進んで部品点数は少なくなっています。これならば故障率は低いでしょう。

上部に見えるように軟なモーターも補強すれば弱点を克服できます。トリオのこの補強は的を射ています。KP-700のモーターにはその後の展開がありまして、モータのローターを外して当時使っていたロクサンのラディウス3用スピンドルオイルを軸受に入れたら、キャビネットとの接触が治ってしまったのです。モーターの軸がそれほど傾いていたとは思えないのですが・・・。
KP-700DはKP-700の後継機なのですが、正にそのあたりを改善してきています。モーター軸に逆「く」の字のヘリングボーン溝を付けて、オイルを回転させることによって流体圧力でモーター軸をセンターにロックしています。DL(ダイナミック・センター・ロック)モーターと言ってトリオが売りにしていた技術です。そんなわけでしてトリオの改良には実体験から納得できます。
まずは手持ち電源コード(以前入手したジャンク品から外してとっておいたもの)を取付けました。ケーブルクランプをきちんと通して取付けました。絶縁にはビニールテープではなく自己融着テープを巻きました。

電源トランスを浮かせて振動を遮断するゴムが劣化して内部に壊れて落ちていたので、ここにも自己融着テープを巻いて防振ゴムの代わりをさせました。少しは防振効果があるでしょう。

電源を入れてみるとモーターもアームリフターも動きました。モーターは最初ゆっくり回ってロックランプが点灯しない状態。手で回転を与えたらロックするようになりました。その後はスタートスイッチを入れればロック状態になります。どうやら長い間回転していなかったためにオイルが硬化気味だったようです。動作O.K.なので出力コードを交換。

これも以前入手したジャンク品から取り外して保管してあったものを使用。シールドケースを外す時に1個のネジの頭を少しなめてしまい外せなくなって焦りました。しかしCRCを吹き付けてからニッパでネジの頭を挟んで強引に回したらなんとか外せました。写真の上部少し左に見える鏡でレコードのエンドを検出します。トーンアームが回転して少し下に見える黒色の素子に鏡が近づいてLED光を反射できればエンドになります。

裏蓋を付けると、トーンアームのシールドケースや電源トランスのカバーやモーター補強材が蓋からはみ出します。これはキャビネットの高さを抑え重心を低くするための配慮だろうと思います。
後はひたすらクリーニングしてそこそこきれいになりました。

トーンアームの細かい錆は落ちません。このくらいが限界です。肉眼ではここまで目立たないので良しとしておきましょう。

ダストカバーはプラスチッククリーナーで磨いて透明度はある程度確保しましたが黄ばみが取れません(涙)。

問題なく鳴っています。オートリフトアップも良好(レコードによってはエンド検出しないものがあります)。オーソドックスなデザインなので安心感はありますが面白みに欠けますね。PL-380とこれを併用してみようと思います。まあでも飽きたら手放すことになりそうです。

レコードを何枚か聴いてPL-380より音が鮮やかに鳴っている感じがしたので、いつものリー・リトナーを使って同時切換試聴をしてみました。同じカートリッジはないので似たような音のZ-1EとME-45を使って比較。念のためカートリッジを入れ替えて比較もしました。その結果、PL-380よりKP-700Dの方が高音寄りのバランスであることが分かりました。KP-700Dの方が高音が良く出るのか、それともPL-380の方が低音が良く出るのか。受け取り方次第なので判断は難しいのですが、私としては後者と解釈しました。
意外ですよね。重量が2Kg重くリジットな作りのKP-700Dに比べ、フローティング構造のPL-380の方が低音が出るという結果になりました。鮮やかに鳴るKP-700Dを良しとするか、それとも安定して鳴るPL-380を良しとするか。う~ん・・・、まあ結果を急ぐ必要はありませんのでしばらく聴いてから判断することにします。

こうして並べて見るとPL-380はかなりコンパクトなレコードプレーヤーです。
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