たまにはおおらかな音を楽しんでみる。
またまた昨年出たアルバムの紹介です。
ステファノ・ボラーニの『ジョイ・イン・スパイト・オブ・エブリシング』(2013年rec. ECM)です。メンバーは、マーク・ターナー(ts)、ビル・フリゼール(g)、ステファノ・ボラーニ(p)、イェスパー・ボディルセン(b)、モーテン・ルンド(ds)です。私は初めてボラーニのアルバムを買いました。ボラーニのピアノよりはターナーのテナーにフリゼールのギターという組み合わせに興味を持ったのです。
フリゼールのギターが入って一捻りしたサウンドなのかと思ったら、捻りとかはなくおおらかな雰囲気のサウンドだったので、最初聴いた時は拍子抜けしてしまいました。聴きやすいサウンドです。しかし何度か聴くうちにしっかりした演奏であることが分かりました。ECMレーベルなのですからクオリティ的に抜かりないです。全曲ボラーニが作曲。アルバム全体としては色々な景色を想像させるもので、映画のサウンドトラックのような雰囲気があります。
1曲目《イージー・ヒーリング》はどことなくメキシコの匂いがするエスニック調でゆったり進みます。タイトルどおりヒーリング効果があるかも? 最近のターナーは自分のアルバムであれ他人のアルバムであれ堂々と自分のテナーを展開していて説得力があります。フリゼールは前述のとおりで独特の灰汁や暗さがないクリーンな感じ、それでも説得力はあります。リーダーのボラーニは粒立ちの良いタッチの安定感ある王道ピアノ。ボディルセン、ルンドのヨーロッパコンビは小気味良いビートです。
2曲目《ノー・ポプ・ノー・パーティ》はタイトルの響きにあるようなどことなくユーモアを感じさせる曲。ちょっとひっかかりがあるリズムに乗って楽しげに演奏が進みます。ターナーのソロのバックでアクセントを聴かせるボラーニのピアノが良い感じ。フリゼールのソロのバックでは初めあまりピアノを弾かず、途中から目立ってきてそのまま調子良くピアノソロへと入ります。ドラムとのバース交換もあって明るく楽しく。
3曲目《Alobar a Kudra》はエスニック薫るヨーロピアン・ピアノトリオ演奏。クラシカルな匂いがありながら意外と元気なピアノが鳴っています。ピアノのタッチや抑揚はどことなく上原ひろみに似ているところがあったりして、そう聴こえると曲の雰囲気も上原ひろみの曲との共通性が聴こえてきます。ボラーニはイタリア出身。ちょっと強引かもしれませんが、こんなところにイタリアと日本の親和性を感じたりして?
4曲目《Las Hortensias》はワンホーン・カルテットで静かなバラード演奏。ボディルセンの繊細なベースソロから。続いてクラシカルな匂いのするターナーのテナーがきれいに音を綴っていきます。この曲は完全にユーロジャズ。ターナーのテナーに対してカウンター的なメロディーを奏でるボラーニ―のピアノが良いです。ターナーはフェイドアウトしてそのまま繊細なピアノソロへと。
5曲目《Vale》はクインテットでECMらしい温度感低く暗めのバラード曲を丁寧に演奏。
6曲目《テディ》はボラーニとフリゼールのデュオ。2人の緻密なインタープレイが展開。フリゼールがジム・ホールのように聴こえます。フリゼールの灰汁のないギターは新鮮。このデュオ、楽しそうな雰囲気があって私はかなり気に入ってしまいました。
7曲目《Ismene》はギター・カルテットでちょっと可愛い感じの曲を愛しげに演奏。曲名は女の子の名前かも?フリゼールらしからぬ可愛らしい演奏が良いです。
8曲目《テイルズ・フロム・ザ・タイム・ループ》はクインテットで演奏。ドラマのテーマ曲のような曲です。この曲のフリゼールは少しいつもの感じが漂っています。ミステリー系恋愛ドラマのテーマ曲にしたら良い感じかも? で、そう感じる理由はボラーニのピアノに日本的歌謡要素を感じるからか?
ラスト《ジョイ・イン・スパイト・オブ・エブリシング》はピアノトリオ演奏。これまた上原ひろみの曲と似たような雰囲気です。快調に飛ばすピアノソロにも上原ひろみが被ります。ラストの歯切れの良いドラムソロも含めこの曲でのドラムは気持ち良いです。
最初聴いた時はつまらないと思ったのですが、何度が聴くうちにこういう雰囲気のアルバムも悪くないと思うようになりました。
アルバム名:『Joy In Spite Of Everything』
メンバー:
Mark Turner(ts)
Bill Frisell(g)
Stefano Bollani(p)
Jesper Bodilsen(b)
Morten Lund(ds)
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