« たまにはおおらかな音を楽しんでみる。 | トップページ | 久しぶりに1000円レコードプレーヤーを入手 »

クリポタらしさが出た良いアルバム

お待たせしました。やっと今回から今年発売になったアルバムの紹介です。やはり最初はこの人でしょう。アルバムが発売されてからもう半年くらい過ぎました。今年の初めはこんな予定ではなかったんですけどね。

P180クリス・ポッター・アンダーグラウンド・オーケストラ『イマジナリー・シティーズ』(2013年rec. ECM)です。メンバーは、クリス・ポッター(ts,ss,b-cl)、アダム・ロジャース(g)、クレイグ・テイボーン(p)、スティーヴ・ネルソン(vib,marimba)、フィマ・エフロン(bass guitar)、スコット・コリー(double bass)、ネイト・スミス(ds)、マーク・フェルドマン(vn)、ジョイス・ハマーン(vn)、ルイス・マーティン(va)、デヴィッド・イーガー(vc)です。ECMの2作目で今回はオーケストラと名乗った11人編成でやっています。新旧アンダーグラウンドのメンバーを中心に、ヴァイブ、ベース、ストリングスカルテットが加わった構成。

クリポタは過去に管のアンサンブルを入れた10人編成のアルバムを出しているので、こういう編成でアルバムを作るのはお手の物でしょう。ECMのレーベルカラーにも合っていると思います。クリポタのコンポーザーとしての実力が如何なく詰め込まれたアルバム。コンポジションに力が入っているのは当然ですが、インプロバイザーとしての魅力を失っていないのがクリポタの良さです。全曲クリポタが作曲していて分かりやすい良いメロディーの曲ばかり。リズムはほとんど8ビート。変に難解にしないところが好印象。

全曲を11人編成でやっているわけではなく、曲によっては演奏していないメンバーがいます。ソロをとるメンバーを曲によって適材適所に使い分けています。ツインベースの使い方が凝っていて、左にエフロンのエレクトリックベース、右にコリーのアコースティックベースを配置して、曲の場面(ソロなど)によってベースを弾く人を替えたりします。ストリングスカルテットは全曲で演奏していて要所に登場して彩を添えます。ストリングスが入ってクラシカルな雰囲気でありながら、スミスには躍動的なビートを叩かせていてそこが私好み。

1曲目《ラメント》はストリングス・カルテットだけで静かに始まる出だしが良いです。これから始まる「イマジナリー・シティーズ(仮想都市)」の物語に思いを馳せます。コリーのベースソロから入るところに意外性を感じさせ、続くクリポタのソロは堂々のインプロバイザーぶり。皆さんこれが聴きたいのですからクリポタは期待を裏切りませんね。この曲は次から始まる《イマジナリー・シティーズ》の組曲へのイントロ。

2曲目《イマジナリー・シティーズ1、コンパッション》はロジャースのギターがバッキングとソロで活躍。クリポタの落ち着いたソロが盛り上がってきたところでロジャースのギターソロへ。その勢いをつないで躍動するロジャースのギターソロがカッコいいです。クリポタのソロではコリー、ロジャースのソロではエフロンがベースを弾いていて、グルーヴを微妙に変えるベースの使い分けは上手いと思います。

3曲目《イマジナリー・シティーズ2、デュアリティーズ》はストリングスカルテットのピチカートから。この曲は最初のテーマ部で、左のエフロンと右のコリーが交代でベースを弾いていくところが面白く、ここにサブタイトルの「デュアリティーズ(二重元性)」を反映か? 8分の11拍子のグルーヴとマリンバのサウンドに、以前所属していたデイヴ・ホランドのバンドの雰囲気が被ります。クリポタの迫力あるテナーソロが最高。私はこういうソロが大好き! このソロの部分はロジャース、エフロン、スミスによる現行アンダーグラウンドなのでした。続くマリンバソロではコリーのベース。

4曲目《イマジナリー・シティーズ3、ディスインテグレーション》はテイボーンのピアノでフリーな雰囲気の始まり。ほとんどの部分で定型リズムはなく、クリポタはソプラノサックスでフリーな気分を高めます。クリポタのバックではテイボーンとロジャースが左右で自由に弾き、サブタイトルの「ディスインテグレーション(分解)」を演出。ストリングスの響きは現代音楽調。タイトルを分かりやすく編曲して聴かせるところに好感を持ちます。

5曲目《イマジナリー・シティーズ4、リビルディング》はドラムの躍動的な演奏から。サブタイトルの「リビルディング(再建築)」をイメージさせる前向きな感じの曲。そのイメージで躍動的なビートに乗って颯爽とテナーソロを繰り広げるクリポタがカッコいいです。それに続くロジャースのギターソロも快調に進みます。それぞれのソロでのテイボーンのアグレッシブなバッキングが良。この曲のヴァイブの音にメセニーのサウンド(オーケストリオンなど)を感じます。特に曲後半部で展開が変わるくだりのヴァイブの使い方はメセニー風。メセニーのグループに加わった影響がこんなところに出ているのかも? 曲自体にもメセニーの影響を感じたりして。

6曲目《ファイヤーフライ》はジャズ! 最初のメンバーの絡みがそれを表しています。スキップするようなビートにもそれを感じ、ここまで組曲でクラシカルな雰囲気があったのを気分チェンジする効果を狙ったように思います。エフロンのエレベソロから。クリポタのソロに続くヴァイブソロもアグレッシブでジャジーな匂い。私はやはりこういうジャズが好き。ストリングスも入っているけれど、ジャズを強く感じさせる辺りにクリポタの技があります。リズムとしては古いんでしょうけれど、スミスの躍動的で力強いビートには魅力がありますよね。

7曲目《シャドウ・セルフ》は一転。今度はストリングスカルテットをメインに据えた演奏。前半部はストリングスカルテットだけで進みます。それで終わらず後半部では全員が加って、クリポタがバスクラでソロをとる辺りが上手い。どこでバスクラを使うのかと思っていたファンに、なるほどと納得させるものがあります。

ラスト《スカイ》はタイトルどおりの広がりを感じさせる曲。テーマ部で伸びやかに朗々と歌うクリポタのテナーが良いです。そしてやっとテイボーンのピアノソロが登場。ここまで裏で支えてくれたテイボーンに長めのハイライトを当てます。今はアンダーグラウンドのメンバーから外れたテイボーンに最後に花を持たせ感謝する格好か? もちろんクリポタのテナーソロもあって最後まで抜かりなし。

聴きやすい曲ばかりで楽しく聴きとおせる仕上がりですが、クリポタ大活躍はもちろん、各メンバーにも要所で聴かせどころを用意して、よく聴くとなかなか凝った編曲になっているという充実ぶり。芸術性と大衆性のバランスが高度に取れていると思います。ダウンビート誌の読者投票でウェイン・ショーターを抜きテナー部門1位になったのは、パット・メセニー・グループに参加して知名度が上がっただけではないことが、このアルバムを聴けば分かります。

私は今のところ今年のベスト1にこのアルバムを上げたいです。

アルバム名:『Imaginary Cities』
メンバー:Underground Orchestra
Chris Potter(ts, ss, b-cl)
Adam Rogers(g)
Craig Taborn(p)
Steve Nelson(vib, marimba)
Fima Ephron(bass Guitar)
Scott Colley(double bass)
Nate Smith(ds)
Mark Feldman(vn)
Joyce Hammann(vn)
Lois Martin(va)
David Eggar(vc)

|

« たまにはおおらかな音を楽しんでみる。 | トップページ | 久しぶりに1000円レコードプレーヤーを入手 »

ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: クリポタらしさが出た良いアルバム:

« たまにはおおらかな音を楽しんでみる。 | トップページ | 久しぶりに1000円レコードプレーヤーを入手 »