独自の表現が円熟味を増しています。
昨年出たジャズアルバム紹介です。その5枚目。
ザ・バッド・プラスの『インエヴィタブル・ウェスタン』(2014年rec. Okeh)です。メンバーは、レイド・アンダーソン(b)、イーサン・アイヴァーソン(p)、デヴィッド・キング(ds)です。私はここ数年この人達をフォローしています。前作『春の祭典』は、クラシック曲をこの人達独特のサウンドで料理しているにもかかわらず、原曲のイメージを上手く聴かせるもので気に入りました。今回は通常のジャズ演奏。
曲は3人で3曲ずつ提供して全9曲。曲の並び方はアンダーソン作、キング作、アイヴァーソン作の順で1曲ずつ演奏後、同じ順序で2曲ずつ演奏していくというバランスを意識したものになっています。そんなところに3人対等のグループであることが良く表れています。
当初から言われる轟音ピアノトリオの側面はそのままに、繊細な表現も織り交ぜつつ彼等独特のサウンドが展開。1曲の中に置いても繊細から轟音までを変化するものがあり、そのダイナミックレンジの広さがひとつの聴きどころになっています。轟音演奏とは言ってもただ力任せに演奏しているのではなく、魅せることの緻密な計算は感じられます。
3人の個性を敢えて表現すると、アンダーソンのクラシック的な抒情性、キングのポップでロックなエンターテインメント性、アイヴァーソンのアバンギャルドで自由なジャズ性という風に私は感じます。それら3人の個性をバランス良くフュージョンしたのがバッド・プラスのサウンドだろうと思います。多彩な側面を持つから幅や奥行を持った表現ができるのでしょう。
このグループは結成してからもう10年以上経つということで、最近すっかり円熟味を増しています。こうなると最初に聴いた時の新鮮な感動はないことになりますが、自分達のサウンドを洗練、熟成させていく姿を見るのも悪くはないと思っています。
こういうジャズを落ち着いて聴くことが出来るようになった昨今、彼らのサウンドをじっくり味わってみてはいかがでしょうか。
アルバム名:『INEVITABLE WESTERN』
メンバー:
Reid Anderson(b, syn, electoronics)
Ethan Iverson(p)
David King(acoustic/electronic ds)
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