マーク・ターナーらしいサウンド
昨年出たジャズアルバムでまだ紹介していないものを入手順に順次紹介していきます。まずはこれから。
マーク・ターナー・カルテットの『レイズ・オブ・ヘブン』(2013年rec. ECM)です。メンバーはマーク・ターナー(ts)、アヴィシャイ・コーエン(tp)、ジョー・マーティン(b)、マーカス・ギルモア(ds)です。現代ジャズ注目株を集めてターナーらしいサウンドを展開。リーダーアルバムとしてはECM初だったんですね。黒人/白人比率半々。ジャズを黒人/白人だけで語ってもしょうがない今日この頃。ここには芸術音楽としてのジャズを頑なに守るECMならではのジャズがあります。
全曲ターナーが作曲。ターナーのアドリブフレーズをそのままメロディーにしたような浮遊感ある曲が並んでいます。テンポも同じようなものが多く、聴き流していると同じようなサウンドと雰囲気が初めから終わりまで続いているような感じです。じっくり聴いていくと曲によって展開の仕方に変化を持たせていることや曲の微妙な雰囲気の違いが分かるでしょう。
浮遊感ある(着地点がはっきりしない)メロディー、変拍子、ダークな雰囲気、丁寧できれいなホーンアンサンブル、落ち着いていつつ静かに燃えるターナーとコーエンのソロ、淡々とではあるけれど逞しいベース、細分化されたビートを巧みに操り前に出過ぎることなく背後でじわじわ燃えるドラム、こんなところが全ての曲に共通しています。サウンドとしてはECMらしいクールさ。(そう言えばこのアルバム1曲目はマイルス『ソーサラー』の1曲目《プリンス・オブ・ダークネス》に似た雰囲気です。)
ターナーが参加した同じ編成のトム・ハレルのアルバム『トリップ』にはポップな分かりやすい部分も含まれていたのに対して、こちらは芸術音楽に専念。あちらは”トリップ(旅)”というテーマーやジャズとしてはキャッチーなメロディーを聴き手に伝える面もあったのに対し、こちらはアドリブの出来を中心に演奏そのものを聴き手が聴き取らなければならないものになっています。
緊張感ある演奏が展開して行きます。ターナーとコーエンのソロは質が高いです。コーエンはターナーのトーンにとてもマッチ。マーティンは堅実なベース。10年くらい前にヴィジェイ・アイヤのグループで初めて聴いたギルモアは今や引っ張りだこ、チック・コリアのグループに参加したり、ECM他のアルバムに多々参加したり、このアルバムでも現代重要ドラマーとしてその技を遺憾なく発揮しています。
ECMクオリティらしいアルバムに仕上がっていると思います。
アルバム名:『Lathe of Heaven』
メンバー:
Mark Turner(ts)
Avishai Cohen(tp)
Joe Martin(b)
Marcus Gilmore(ds)
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コメント
マーク・ターナーとアヴィシャイ・コーエンという取り合わせで、ピアノレス・クァルテットがECMで聴けるとは、それまで思ってもみませんでしたが、この2人のECMらしさも保ちつつ、素晴らしい演奏が聴けました。昨年ECMのアルバムは50枚以上出てますが、個人的にはかなり好きな方のアルバムになります。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2015年1月10日 (土) 14時33分
910さん
こんばんは。
アヴィシャイ・コーエンはこれまでの活動からするとECMのサウンドイメージとちょっと違う感じがしますよね。
でもターナー~ECMサウンドに上手く溶け込んでいました。
おっしゃるとおり良い演奏をしていると思います。
昨年ECMのアルバムは50枚以上出ていたんですね。
私はたった3枚しか買っていません。
もう少しチェックしないとECMを語れませんね。
TBありがとうございます。
投稿: いっき | 2015年1月10日 (土) 18時25分