廉価カートリッジならではの音作り
エージング試聴をしていればカートリッジのキャラクターはだいたい分かってしまうのですが、一応再確認の意味でオルトフォンOmegaの比較試聴をしました。2枚のリー・リトナー『オン・ザ・ライン』(ダイレクトカットディスク)を2台のレコードプレーヤーで同時にかけて、自作フォノイコライザーの入力セレクタで瞬時切替試聴。比較の相手はリファレンスZ-1E。
左 : ビクター Z-1E(針:アーピス現行楕円針DT-Z1E)
右 : オルトフォン Omega(針:純正楕円針)
出力はOmegaの方が小さいです。かなり小さい部類に属します。音量を揃えればこの2個は良く似た音です。帯域バランスもほぼ同じ。全く同じというのではなく、Z-1Eの音を少し粗くして騒がしくしたようなのがOmega。とても元気良く鳴るけれど奥行や広がりのある表現は苦手だと思います。今まで聴いた中で同傾向の音はシュアーM44G、コロムビアJM-20、オーディオテクニカAT100E。これらと共通でOmegaもトレースが少し悪いです。
トレースが悪いと言ってもチェックレコードのトレースは問題なく、松田聖子のサ行もザラつきません。ピアノの強打など特に厳しい極一部の箇所で歪が出るという程度。トレース性能はAT100Eに近いように思います。トレース性能を少々犠牲にしても元気良く逞しく鳴らすという廉価品ならではの音作りがされているのがOmega。オルトフォンならではの音は、強いてい言えば上記の機種の中では音に少し潤い(情緒)があるところか?
50、60年代のジャズを聴くのに良いです。ロックやポップスをザックリ鳴らすのにも向いているでしょう。ただしクラシックの弦のきれいなハーモニーやボーカルの繊細な雰囲気を聴く音ではないと思います。こういう音のカートリッジを1つくらいは持っていても良いのではないでしょうか。私ならサ行の歪がどうしても気になるM44GよりはOmega(ただし出力は小さい)を選びます。価格からしてもこれでしょう。楕円針なので高音が良く出ます。
ネット上にもありましたが、買ってから音が落ち着くまでに少々時間がかかるように思います。私の感じではLPを20面くらい聴かないとダメみたいです。100倍顕微鏡でスタイラス(針先)を見ると、円錐の前後を平面にカットした普通の楕円針であることがわかります。この低価格ですからもちろん接合ダイヤ。
価格が価格なので交換針は用意されていないようです。針がダメになったらカートリッジごと交換。ただし針の部分は交換できるようになっています。針を外して確認しましたがVMS(MI)型ではなくMM型です。写真のようにリングマグネットはなくカンチレバーの後ろにマグネットが付いています。本体側にはオルトフォンならではの丸いポールピースが4つあります。
試しにConcorde 20の針を挿そうとしたら嵌合部が太くて挿せませんでした。多分現行のDJ用交換針は挿せるのではないかと思います。他の交換針を挿して楽しむこともできるでしょう。OM 5E用交換針(多分挿せます)を日本で売っていれば買って聴くのですが残念ながら売っていません。まあでもOmegaの少し上位の音を求めるならば、私はZ-1Eがあるのでこれを聴けば良いわけです。針の供給も今のところ心配ないですしね。
Omegaだけで現行オルトフォンMM型カートリッジの特徴を判断することはできませんが、やはり今時のクリヤな音なのではないかと推測します。オーディオ的ハイファイ音がほしいなら、価格は少々高くても2Mシリーズを買った方が良さそうです。
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コメント
おぉ、「Ω」お買いになったんですね。
私も密かに興味あったんですが、買いそびれています(汗)
ヘッドシェルの選定でさらなる追い込みがかけられそうな感じですねw
多分現行「Concorde」のラインナップに入ると思いますが、以前「Concorde DJ-E」というモデルを試しましたが、DJ向けに調整されたモデルなので、パワー感あふれる音だったと思います。針圧も3g以上掛けるので安定感もありますw
投稿: 不知火もなれ | 2014年12月21日 (日) 11時19分
不知火もなれさん
こんにちは。
「Ω」買ってしまいました。
前から気になっていましたから。
安いので買って色々トライしてみるのも良いのではと思います。
DJ向けは出力が大きいでしょうし、パワー感溢れる音というのは分かります。
それはそれで存在意義はあると思います。
投稿: いっき | 2014年12月21日 (日) 12時55分