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しっかりしたフリージャズピアノトリオです。

ニューヨーク・ダウンタウンのジャズをフォローしている一環でこのアルバムを買いました。リーダーにも注目していますが、どちらかと言えばメンバー買いかも。

P148クリス・デイヴィス・トリオ『ウェイティング・フォー・ユー・トゥ・グロウ』(2013年rec. clean feed)です。メンバーは、クリス・デイヴィス(p,compositions)、ジョン・エイベア(b)、トム・レイニー(ds)です。レイニーのドラムを初めて聴いた時はグルーヴに違和感があって馴染めなかったのに、今ではすっかりそのドラミングが気に入っています。パワーがありつつ柔軟さもある縦ノリグルーヴの快感です。エイベアのベースは職人的でしっかりしていつつアートな匂いがあるところが気に入っています。

タイトル「あなたが成長するのを待っている」のとおり、去年生まれた息子に捧げられているようです。ジャケットの中には可愛い息子の写真があります。ジャケットのイラストも可愛い植物(息子)を母の愛で包んでいくような感じのものになっています。アルバム収録曲を作曲した時もこのアルバムを録音した時もお腹の中に息子がいた(妊娠中)とのこと。そう言えばcom-post にアップされている昨年の「益子博之のニューヨーク放浪記 2013年6月編」にデイヴィスがお目出度だというのがありました。

アルバムに収録されている曲は、ジェロム基金がプロデュースしたジャズ・ギャラリーのために作曲したものだそうです。そういうこともあってか15分程度の長尺曲があり、曲構成や進行などは緻密に作り込まれているように聴こえます。ただしその中にあるインプロビゼーションとインタープレイは比較的自由にやっているみたいです。定型ビートの部分は少なくて曲はどちらかと言えば抽象的。そういうフリージャズの割にはそれほど難解なものにはなっていないと思います。スローテンポの部分は現代音楽のように聴こえたりします。

デイヴィスのピアノはとてもしっかりしていて力強く、低音の打鍵にはかなりの重みを感じます。母になる不安よりも決心が音になっているように聴こえるのは気のせいでしょうか? プリペアードピアノ的奏法も交えながら、どちらかと言えば打楽器的表現でリズミックなアプローチをしながら緩急織り交ぜて様々な表情を見せてくれます。力でゴリ押しするような感じではないのでそこは母の優しさなのかもしれません。レイニーのドラミング、エイベアのベースは前述のとおりのらしさを出していて、私としてはこのアルバムにおける2人の演奏に満足しています。

決してキャッチーでポップなアルバムではありません。しかしアートという部分では聴き応えのあるアルバムだと思います。浮つかず安定していて重厚な作りが好ましく聴こえます。オーディオ的にはクリヤでパワー感のある好録音が魅力。

アルバム名:『Waiting For You To Grow』
メンバー:
Kris Davis(p, compositios)
John Hebert(b)
Tom Rainey(ds)

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