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美しいメロディーに浸りたい。

ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブアルバムが良かったのでスタジオ録音の新作を買ってみました。

P152フレッド・ハーシュ『フローティング』(2014年、Palmeto Records)です。メンバーは、フレッド・ハーシュ(p)、ジョン・エイベア(b)、エリック・マクファーソン(ds)です。ヴァンガードでのライブのアルバムと同一メンバー。最近のレギュラーグループなのでしょう。ベースのエイベアは前の記事で紹介したアルバムにも参加していました。フリージャズからこういうバップまで自在にこなせるフレキシブルなベーシストです。

美しいメロディーを聴かせることを主眼に置いていると思います。美しいと言っても単に甘くて媚びているような感じではなく、凛とした美意識によって貫かれたハーシュの中にあるアートを聴かせてくれているところが良いです。表現としてはエンリコ・ピエラヌンツィのトリオとかと共通。でもピエラヌンツィのようなエスニックはなく、エバンス系の抒情性をストレートに表現しているように思います。

1曲目とラスト2曲がスタンダードとジャズマンオリジナルで残りの7曲をハーシュが作曲。ハーシュが作曲した7曲のうちタイトル曲以外は誰かに捧げられています。どの曲も美しいメロディーを持ていて、特にバラード演奏では胸に迫って来るものがあります。ミディアムテンポの曲では軽快なリズムに乗って美しいメロディーが踊っているような感じに聴こえます。この曲順はハーシュがライブで演奏するやり方と同じとのこと。

1曲目《あなたと夜と音楽と》を聴いてビックリしました。右手左手バラバラメロディーが最初から最後までアドリブを含めて展開しているからです。この曲は名演奏が生まれやすい(テーマの旋律が良いから)とか寺島靖国さんが本に書いていましたが、この演奏は単にメロディーではなくテクニカルな面も含めてなかなかの名演。決してテクニックを聴かせているわけではなく、左右の手から折り重なるように紡がれるメロディーが心を捉えるところが良いです。

このような右手左手バラバラは他の曲でも時折顔を出して、その度に聴く者の耳を演奏に引きずり込みます。ハーシュ作の曲はどれも似たような感じなので、7曲続くと正直飽きてくるような部分はあります。で7曲聴き終わったところに現れるスタンダード《イフ・ネヴァー・アイ・ウッド・リーヴ・ユー》が新鮮に感じられます。スタンダードならではのポピュラリティあるメロディーをハーシュが可憐にピアノで紡いで行き、思わず”ホロリッ”と来ること間違いなし。

ラストはモンクの《レッツ・クール・ワン》。曲の並びの妙なのでしょう。この曲がとても可愛く聴こえます。モンクってこんなに可愛い曲を作っていんだと発見します。この曲の最初がやはり左手左手バラバラのアドリブで始まります。その後は普通の左手コード/右手旋律と右手左手バラバラが交互に現れて楽しく展開していきます。この演奏を聴いていると心が軽やかになっていきますよ。最後に静かに終わるのとは反対に、明るく楽しく終わるのも悪くないです。そうか、ライブの最後に盛り上がって終わるあの感じですね。

このアルバムの主役はあくまでハーシュ。エイベアとマクファーソンは脇役に徹してハーシュに寄り添って一体化しているのが良いと思います。このアルバムはオーソドックスなピアノトリオなので誰にでも安心してお薦めできます。良いアルバムだと思います。

アルバム名:『FLOATING』
メンバー:
Fred Hersch(p)
John Hebert(b)
Eric McPherson(ds)

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