この人もファーストアルバムで歌っていました。
マーカス・ミラーがファーストアルバムで歌っているというのには時代を感じました。で、この人もファーストアルバムで歌っているんですよね。オマー・ハキムです。マーカスが80年代マイルスを支えた一人なら、オマーは80年代ウェザー・リポートを支えた一人。二人はミュージック&アーツ・ハイ・スクールの同窓生なのだそうです。
オマー・ハキムの『リズム・ディープ』(1989年、GRP RECORDES)です。メンバーは、オマー・ハキム(lead and background vocals,ds,electric ds,per,electric per,g,key,p,syn,synth bass)、マイケル・ベアデン(key,synth strings,synth harp,synth marimba,synth bass,org)、スコット・アムブッシュ(b)、ヴィクター・ベイリー(b)、キエリ・ミヌッチ(g)、ナジー(ss)、ドン・アライアス(per)、ニッキ・リチャーズ(vo)、キャンディ・ヒントン(background vocals)、バリー・ジョンソン(background vocals)、キーシア・ボスティック(background vocals)、シャロン・デイヴィス(background vocals)です。オマー・ハキムも色んな楽器が出来る人ですよね。ジャケット写真のオマーはなかなかのイケメン。オマーを知らない人に歌手のアルバムだと言ってこれを見せれば信じそうです。オマーは好きなドラマーなのでリアルタイムで買いました。
これはR&BというよりAORといった感じに仕上がっています。3曲はインスト曲。歌はなかなか上手くて甘い良い声をしているので、ボーカルでもやっていけそうなくらいです。マンハッタン・トランスファーをフィーチャしたウェザー・リポートの曲《ホエア・ムーン・ゴーズ》をウェザー・リポート単独ライブでやる場合、オマーが歌っていました。難しいリズムを淀みなく叩きながら歌うのを見て、凄いなと思ったものです。ウェザー・リポート解散後にこのファーストアルバムが出て、聴いた時はなるほどと思いました。
全12曲をオマーが作曲しています。上記のとおりのアルバムなので曲は単なるアドリブのためのテーマではなく、歌ものとしてきちんと成り立っています。みんな良い曲ばかりなので、この人の作曲センスはかなりのものだと分かります。マーカスもそうでしたがオマーも”新人類”ジャズマンなのでした。ここではドラムをビシバシとテクニカルに叩くのではなく、歌ものをグルーヴさせるドラミングに徹しています。この人はウェザー・リポートを支えたくらいですからバカテクではあるものの、こういうグルーヴィーなドラミングも非常に上手いです。私は粘りがありつつ躍動感のあるこの人のドラミングがとても好き。
基本的な部分はオマーとベアデンでほとんど作っていて、ベースは曲によってアムブッシュとベイリーが弾き分け、ベーシスト抜きでシンセ・ベースになっている曲もあります。シンセ系を中心に色々な音が緻密に重ねられているサウンドは、紛れもなくポップス・アルバムの仕上がり。そこにジャズ的なセンスが散りばめられている(それを”ジャズ性”という人がいます)のは言うまでもないのですが、でもだからと言ってこれはジャズ(フュージョン)ではないと思います。だってジャズ的なセンスを聴かせるのが目的ではないのですから。インスト曲についてはフュージョンだと思います。
一番好きな曲は”セツネ~”な《テイク・マイ・ハート》。こればっかり。好きなんだからしょうがありません(笑)。この曲はオマーとベアデンの2人だけでトラックを作っています。ニッキ・リチャーズとデュエットするメローな《ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ》も気に入っています。曲名に”ハート”とか”ラヴ”とかが入っている、私はそういうフィーリングが好きなんでしょうね。「お前は乙女かっ!」と、ツッコミを入れたくなりますよね(笑)?
当時の私が好きだった新世代のジャズ・ドラマーはオマー・ハキムとデニス・チェンバース。2人とも黒人。私は黒人の腰にくるビートが好きなのです。白人デイブ・ウェックルはそのバカテクは認めるもののそれほど好きではなかったです。ウェックルのドラミングでヘッドバンキングはできても腰は揺れない、そんな感じでしょうか?
このアルバムはジャズではありません。オマーのボーカル・アルバムという色物です。でも結構気に入っていて時々聴きたくなったりするから困ったものです(笑)。
ところで最近のオマー・ハキムは何をやっているんでしょう? グレイト・ジャズ・トリオでやっていましたけれど、ハンク・ジョーンズが亡くなってしまいましたからその後です。
と思ったら、最近リーダーアルバムを出していました。『We Are One』。”ザ・オマー・ハキム・イクスペリエンス”って、ロバート・グラスパーと似たようなグループを名乗っています(笑)。 MP3の試聴をしてみるとかなり聴きやすいフュージョン。ウェザー・リポート在籍時の《モラセズ・ラン》をやっていて懐かしいのですが、すっかり洗練されてしまっています。ほんと最近は80年代逆戻りみたいなものがあちこちにあり、しかも80年代のパワーはなく、私としてはウ~ムッと・・・。
アルバム名:『RHYTHM DEEP』
メンバー:
Omar Hakim(lead and background vocals, ds, electric ds, per, electric per, g, key, p,syn, synth bass)
Michael Bearden(key, synth strings, synth harp, synth marimba, synth bass, org)
Scott Ambush(b)
Victor Bailey(b)
Najee(ss)
Chieli Minucci(g)
Don Alias(per)
Nicki Richards(vo)
Candy Hinton(background vocals)
Barry Johnson(background vocals)
Keysia Bostic(background vocals)
Sharon Davis(background vocals)
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