聴くのが待ち遠しかったブラッド・メルドーとマーク・ジュリアナの新プロジェクトなのですが、私的にはいまひとつでした。
ブラッド・メルドー&マーク・ジュリアナの『メリアナ』(2014年、NONESUCH)です。メンバーはブラッド・メルドー(syn,fender rhodes,p,spoken voice,"AHH" vocals)、マーク・ジュリアナ(ds,electronics)です。メルドーのエレクトリック・プロジェクトと言う感じのアルバムになっています。真の意味でのプログレッシヴ・ミュージックだそうです。
何がいまひとつなのか書いてみます。
まずこの手の音楽は音の重なりの妙が肝だと私は思ったのですが、どうもそうなっていませんでした。基本的にはサウンドエフェクト系シンセ、シンセベース、エレピ、ドラムという4要素でサウンドが構築されている分かりやすいものでした。それぞれの役割も比較的はっきりしているのでそこに重なりの妙が生じてこない物足りなさがありました。そうでない曲もありましたが。と書いたのですが、ネットを検索するとどうやらそういう音楽ではないみたいですね。これはロックと解釈すべきようです。
そしてメルドーが弾くエレピなどのメロディーに触発されるものがないと言いますか・・・。私には70、80年代のロックやフュージョンの匂いが濃厚で、どこかで聴いたことがあるようなフレーズが散見されました。ハービー・ハンコックなのか?チック・コリアなのか?そういう類の既視感がありました。6曲目のモロにフュージョンな曲以降が特にそういう雰囲気です。聴いたことがないような、そして「メルドーやるなあ。」と言わせるようなものがあれば良かったのですが。と書いたのですが、これもそういう捉え方をするのではなく、メルドーの過去音楽への憧れがそうさせていると解釈すべきようです。
いずれにしても、私がメルドーに期待していたものとは違うみたいです。
1曲目、メルドー自身のナレーションとロックなインストの交互な展開に最初は”オォッ”となたのですが、よく聴けば今更ナレーションに目新しさはありませんし、後ろに薄くかかるエフェクトシンセはまんまですし。アグレッシブなシンセベース(私にはそう聴こえる)がせめてもの救いか。ジュリアナの弾けるドラムは良いと思います。ナレーションはメルドーが見たトリッピーな夢の内容?う~む、意外とベタやないですか?(笑)
2曲目、ピロピロピロ~ンなエレピがフュージョン&アンビエントですな~。このフレーズはかなりポップです。シンセベースもテクノとかを聴いてきた耳には特にこれと言うところはないと思うのですが・・・。途中からジュワ~ン&ギュイ~ンなシンセも懐かしいですよね。70、80年代。とまあサウンドの仕掛けが全て見えてしまうと言いますか・・・。ドラムは今時のビート感があってカッコいいと思います。ラストのドラミングが特にイイ感じ。
3曲目、ピアノ独奏から入ります。これは始めからズッコケ系の今時ビートが炸裂してカッコいいです。その後もナレーションのサンプリング、ピロピロシンセ、エフェクト系シンセ、打ち込み系ビートの混入と、かなり良い感じ。これなんですよね。私が求める音の重なりの妙って。ビートもこれが一番カッコいいです。このアルバムの中でこれがベストトラックだと思います。全曲このレベルで行ってほしかったのに・・・。
4曲目、なかなか良い感じのテクノ系アンビエントをバックに、メルドーらしいピアノ・ソロが展開していくバラードは良いと思います。重なるシンセのフレーズもそれほど悪くなく、重厚な感じが醸し出されているのが○。ここでもナレーション登場。ピアノをバックに流れるメルドーのナレーションは意外と良い声で良い発音。
5曲目、シンセのエフェクトをバックにエレピのテーマが流れるサウンドトラック風な前半。シンセのエフェクトにもう一捻りほしいと思うのは私だけでしょうか? 途中から女性ナレーションが登場。ナレーション、エフェクト、エレピ、更に合唱風効果音が加わり爆発音まで、大袈裟系プログレかな? なぜか懐かしさが込み上げて来てしまいます。
6曲目、シュワ~ンなシンセが思いっきり80年代フュージョンの香です。昨年紹介した菊地雅晃のアルバム『オン・ファゴットン・ポテンシー』が持っていた雰囲気に酷似。今はこういうフュージョンが流行りということなのでしょうかね。こちらもあちらも。このエレピ、敢えて悪く言えばシャカタクと大して変わらないような(笑)。ドラムは今時のビート感で良いです。この曲を聴いてガックリ来たのは言うまでもありません。
7曲目、ア~ァ、今度はプログレ風オルガンサウンドをバックにエレピのソロから。プログレ風オルガンがとにかく懐かしい。こういうのをまんまもって来てしまうのが逆に凄いのかも? 中盤以降のシンセのソロもなんだかな~。70年代ロックにはこんなのがよくあったような気がするんですけど? 音の揺らぎ具合がアナログシンセですね。この感触は懐かしいな~。ドラムは今時のビート感で良いです。
8曲目、エフェクトシンセをバックにシンセベースから、ピアノのフレーズが何か安っぽいというか・・・。ナレーションの被せ具合もヒップホップを聴いた耳にはチープ。シンセベースもありがちテクノですよね。メルドーの訳の分からないボーカルまで登場。うぅ、めまいがっ(笑)。う~む、このチープな感じは狙いなのでしょうか。だとすればそれを良いと言ってあげねばなりますまい。ドラムは今時のビート感で良いのですがね。そこがこのアルバムの救い。
9曲目、プログレ。このギュイ~ンなエフェクトシンセは何なん?(笑) 70年代に良くありましたよね。シンセベースは毎度っ。このサウンドに乗っかってしまうと、メルドーのエレピソロが何だかハービー・ハンコックに聴こえてきました(笑)。ヘッドハンターズあたりのライブでハービーがやっていたシンセサイザー・ショーの再来か? やっぱり懐かしいのでした。
10曲目、またまたフュージョン。メルドーって実はフュージョンが大好きなのかも(笑)。このエレピですよ。この手のエレピってハービなのです。いやっ、チックかも? シンセベースはテクノ調。エレピとシンセベースとエフェクトとドラム。サウンドが分かっちゃうんですよね。ラストの方では何かジャミロクワイっぽい部分もありまっせ!
11曲目、このエレピの出だしはチック・コリアっしょ。チックのアルバム『フレンズ』が浮かんできます。でプログレ風シンセベースがあって、その後のエレピソロはチックかな~。チックの第2期リターン・トゥ・フォー・エバー? プログレやってましたから。ラストはまたチック風テーマに戻ります。
12曲目、まだ書きますか!! もうここまで来るとこの曲が《タイム・アフター・タイム》に聴こえてくるという?? ほんまかいな(笑)。
やっと終わりました。という訳で、私の中には既視感満載。懐かしくて好きなものがいっぱい詰まっています。でもですね。今更な感じもするわけでして、私の”ジャズ耳”でこれを聴いてしまうといまひとつなのです。まあ楽しくロッケンローな感じで、”ジャズ耳”で聴かなきゃいいわけですが、それで済ませたくない衝動が(笑)。
このアルバムは曲説明を進めるのが楽しくてしょうがありませんでした。しょうもないことを書きまくりました。大変失礼致しました。m(_ _)m
アルバム名:『MEHLIANA』
メンバー:
Brad Mehldau(syn, fender rhodes, p, spoken voice, "AHH"vocals)
Mark Guiliana(ds, electronics)
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