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私としては腑に落ちたアルバム

昨年末記事に書いた米国の公共ラジオ局NPRのNPR Musicの「ジャズ評論家の投票による2013年のフェイバリット・アルバム TOP50」。その10位にランクインしていたので買いました。この人のリーダー・アルバムは前から聴きたかったので良いきっかけでした。

P167メアリー・ハルヴァーソン・セプテット『イリュージョナリー・シー』(2012年rec. firehouse records)です。メンバーは、ジョナサン・フィンレイソン(tp)、ジョン・イラバゴン(as)、イングリッド・ラウブロック(ts)、ヤコブ・ガーチク?(tb)、メアリー・ハルヴァーソン(g)、ジョン・エイベア(b)、チェス・スミス(ds)です。ハルヴァーソンは女性ギタリストで、この人のリーダー・アルバムを買うのは今回が初めて。この人の演奏自体は、ここにも参加しているイングリッド・ラウブロックのアルバムで聴いています。

ハルヴァーソンは変態的なサウンドを奏でるマニアックなギタリストなので、このアルバムもかなり難解なのかと心配しつつ聴き始めました。ところが奇をてらうようなところは感じられず、ホーン群の柔らかいアンサンブルが心地良く響く聴きやすいものでした。あくまで主役はホーン陣。ハルヴァーソンの変な音も交えての伴奏は、存在感を示しつつも前に出たがるようなものではなく、リーダーとしてグループを見守っていくような感じに聴こえました。変態的なギター・ソロも楽曲の範疇を逸脱するようなものではありません。

全7曲中6曲をハルヴァーソンが作曲。この人の作る曲は時にユーモラスです。独自のメロディーセンス。後述しますが私にはあの人との共通性が感じられました。ラストの《Nairam》だけがフィリップ・カテリーンの曲で、最後に普通の曲が出てきて安心するという塩梅。ホーン陣で一番活躍しているのはトランペットのフィンレイソン。トロンボーンも暖かく厚みのある音で貢献しています。ソロは全員が回すわけではなく、曲によってソリストが使い分けられています。エイベアのベースとスミスのドラムは安定して力強く頼もしい限り。

さて、この記事のタイトル”私としては腑に落ちた”について説明します。どうして腑に落ちたかというと、このグループのサウンドのルーツとなるものが私には見えて来たからです。

ルーツ1 :変拍子と浮遊感ある抽象的なメロディーに計算された演奏ということで、やはりM-BASEでしょう。トランペットのフィンレイソンは先日紹介したスティーヴ・コールマンのアルバムで相方を務めています。ニューヨーク・ダウンタウンのジャズに脈々と流れているM-BASE、それを感ぜずにはいられません。

ルーツ2 :このユーモラスなメロディー感覚と言えば、オーネット・コールマンでしょう。ハルヴァーソンが弾くギターは、時にオーネットのプライム・タイム・バンドで鳴っていたギターのサウンドを思い起こさせます。

ルーツ3 :厚みのあるホーンアンサンブルを聴かせつつ、ソロが有機的に挟まれています。そして計算されているようでいてサウンドは意外と自由な開放感を持っています。この雰囲気は80年代のカーラ・ブレイ・バンドが持っていた雰囲気でしょう。

ルーツ4 :ホーンアンサンブルの淡い色彩感覚。これはギル・エバンス・オーケストラの色彩感覚でしょう。上記のバンドの自由な感じは、80年代のギルのオーケストラにも言えることです。オーケストラの緻密なサウンドの中に、しっかりしたソロが映えたんですよね。

このアルバムを何度か聴くうちに上記4つのルーツが見えて、私には腑に落ちたというわけです。まあ、あくまで私のジャズ体験においてなので、必ずしもこれが正解だと思いません。少々強引と言えば強引です。ただ私としてはこのアルバムが分かってしまったのです。ルーツに照らして、どこを聴いたら面白いのかが分かってしまったのです。それにしても上記4つのルーツって、ジャズを聴き始めて数年くらいの間に、私が面白いと思った当時のジャズなのですから、懐かしさがこみあげてきます。

同じ女性リーダーということで、80年代カーラ・バンドの現代版が、このハルヴァーソン・セプテットなのかもしれません。そして、現代性溢れるこのバンドがジャズの歴史に連なっているということで安堵しました。良いバンドだと思います。

アルバム名:『Illusionary Sea』
メンバー:
Jonathan Finlayson(tp)
Jon Irabagon(as)
Ingrid Laubrock(ts)
Jacob Garchik(tb)
John Hebert(b)
Ches Smith(ds)

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コメント

こんにちは〜
ジャケットが すごく素敵ですね。
ジャケットじゃなくて 音楽が大事なんですけどね(^^;)

4つの点を読んでみて 初めて聴いても そんなに失敗はないかなぁ という感じもしますが わたしでも聴きやすいでしょうか??
メモしておきますφ(._.)

投稿: Marlin | 2014年1月20日 (月) 16時27分

Marlinさん

こんばんは。

>ジャケットが すごく素敵ですね。

言われてみると確かにそうですね。
海の波をイメージしたかわいいイラストと淡い色彩が良い感じですね。

>4つの点を読んでみて 初めて聴いても そんなに失敗はないかなぁ という感じもしますが わたしでも聴きやすいでしょうか??

耳なじみの良いメロディーとは思いませんが、意外と心地よく聴けるののではないかと思います。

http://www.npr.org/blogs/bestmusic2013/2013/12/16/251761858/the-2013-npr-music-jazz-critics-poll?ft=1&f=1039
で1曲だけ聴けます。

投稿: いっき | 2014年1月20日 (月) 20時25分

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