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今年の私のベスト1はこれ!

例年のとおりブログでは今年の「ベスト~」は書きません。今年も色々なジャズ・アルバムが出たわけですが私のベスト1はこれ。これを1位にする人は恐らく誰もいないだろうと思います。そもそもこのアルバムを聴く人自体があまりいないでしょう。日本のヘボなジャズジャーナリズムにはもちろんひっかかりません(笑)。

P146ヴィジェイ・アイヤ&マイク・ラッド『ホールディング・イット・ダウン:ザ・ヴェテランズ・ドリームズ・プロジェクト』(2012年rec. PI RECORDINGS)です。メンバーは、ヴィジェイ・アイヤ(composition, p, fender rhodes, programming, live electoronics)、マイク・ラッド(lylics, vo, analog synthesizer)、モーリス・デカウ(lyrics, vo)、リン・ヒル(lyrics, vo)、パメラ・Z(vo, live processing, composition)、ギレルモ・E・ブラウン(vo, effects)、リバティ・エルマン(g)、オッキュン・リー(cello)、カッサ・オヴェラル(ds)です。今週末のジャズ喫茶「いーぐる」の「2013年ベスト盤大会」には参加しませんが、参加するなら私はこれをかけるつもりでした。そういえば昨年の「ベスト盤大会」でかけたのもヴィジェイ・アイヤのアルバムでしたね。

ラッパーという扱いで良いのかどうか?マイク・ラッドとアイヤ名義の3作目です。2作目については以前ブログに書きました。ヴィジェイ・アイヤが気になって。

前アルバムも興味深くとても面白いアルバムでした。ジャズの名門サヴォイから出ていたというのが驚き。2007年はそういう状況だったのです。その後大手レーベルのほとんどはジャズ部門から撤退してしまったのでした。

このアルバムの「ヴェテランズ・ドリーム・プロジェクト」というのは、アイヤとラッドの3年のコラボレーションの成果で、イラクやアフガニスタンにおける最近の戦争、これらの戦争の影の中にあるここ10年のアメリカの生活をテーマにしているとのこと。ライナーノーツには全曲の歌詞が書かれていることから、メッセージ性を持ったアルバムであることが分かります。

エレクトリックを駆使した生演奏で、そのサウンド(トラック)はヒップホップ系の影響が強いものです。その上で4人のラッパーがメッセージ性を持ったラップを展開。ヒップホップを融合したジャズというと、最近では何かとロバート・グラスパーが話題に上りますが、どっこい、ヴィジェイ・アイヤも忘れてもらっては困るというのが私の意見。グラスパーがジャズというよりR&B(前回のグラミー賞受賞がこの部門でした)へ行ってしまったのに対し、こちらはどこまでもジャズ。

メンバーが面白いではありませんか? ギターのエルマンとチェロのリーを左右に配し、この手のジャズに不可欠なアバンギャルドな面を忘れていないところが、アイヤの”ジャズ魂”だと思うのです。更にエフェクトを扱うブラウンはマシュー・シップのバンドのドラマーです。グラスパーのようにR&Bに(ついでにコマーシャリズムにも)魂を売ってしまっていないところが良い(笑)。聴けば分かりますが、アイヤのピアノはジャズの上にどっかりと腰を据えた上で個性を発揮しています。

P147内ジャケットの写真はこのバンドがライブをしている場面です。このアルバムには拍手とかが入っていないので断言できないのですが、ライブの音源を使っていると思われます。たぶんこれと同じレベルの演奏はライブで十分再現できるはず。ヒップホップのトラックに生演奏を取り入れるのが最近の動向みたいな話にも十分則っていると思います。こういうライブ性を持っている点、各曲における日常のメッセージ性など、ここにはストリート性(路上性)が存在します。

「メッセージ性」とか「ストリート性」とか書いたのは、そういうものがジャズからヒップホップへ移ってしまい、ジャズが面白くなくなったというような意見(思いっきり簡略化してます)が、中山康樹さんの一連の「ジャズ・ヒプホップ学習会」(ジャズ喫茶「いーぐる」で数年前に開催)の中であったことに対して(私の中ではひっかかり続けている問題)、いやいやこれなんかはそういうものを取り戻した面白いジャズなのでは?と言いたいからです。

メンバーはほとんど黒人ではないので「黒人性」という部分はないようにも思われますが、「黒人性」を”社会に対するクールな眼差し”とでも言いかえれば、ここには「黒人性」もあるのではないかと思います。演奏にもジャズ特融のクールな質感があります。それから意外と聴きやすく押しが強くないのは、今時の人達の感性によるサウンドなのだろうと思います。

色々理屈をこねましたが、聴けばそんなことは考えなくても十分面白いジャズになっていると思います。ヒップホップ的要素をかなり取り入れてはいるものの、ジャズ的要素(ジャズ性なるものではない)も色濃く残っています。

以上、これが私の今年のジャズ・アルバムの”ベスト1”!!
ヴィジェイ・アイヤはこれからのジャズを担う重要な存在だと思います。

アルバム名:『HOLDING IT DOWN:THE VETERANS' DREAMS PROJECT』
メンバー:
Vijay Iyer(composision, p, fender rhodes, programming, live electoronics)
Mike Ladd(lyrics, vo, analog synthesizer)
Maurice Decaul(lyrics, vo)
Lynn Hill(lyrics, vo)
Pamela Z(vo, live processing, composition)
Gillermo E Brown(vo, effects)
Liberty Ellman(g)
Okkyung Lee(cello)
Kassa Overall(ds)

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