ALASNOAXISの新譜
今日はジャズ新譜紹介です。新譜とは言っても出てからだいぶ経っています。
ジム・ブラックALASNOAXISの『アンチヒーローズ』(2012年rec. Winter&Winter)です。メンバーは、クリス・スピード(ts, cl)、ヒルマー・イェンソン(g)、スクリ・スヴェリソン(b)、ジム・ブラック(ds)です。このバンドの6作目。最初のアルバムが出たのが2000年なので、バンドを組んでからもう13年経つことになります。メンバーチェンジもなし。今時としては長寿のバンドなのではないでしょうか。今回、ジャケットのアートは奈良美智ではありませんが、やっぱり日本人のササブチフミエ。
このバンドとの出会いは、ジャズ喫茶「いーぐる」へ行くようになって、最近のジャズが分かりにくいという話題の中で、マスターの後藤さんが最初分かりにくかったけれどこれは良いということで、このバンドのアルバム『ドッグズ・オブ・グレイト・インディファレンス』(2006年)を推薦していたからです。
その頃、最近のジャズの分かりにくさはなぜなのかいう話題と並行してポストモダン問題があり、私はこれらの問題を取り扱った「いーぐる」連続講演(とくに益子博之さんの講演)に何度も参加しました。益子さんはこの手のジャズを聴きこんでいる第一人者なので、益子さんが発信し続けている情報は今も参考にさせていただいています。あれからもう7年経ちました。今の私は自分なりに最近のジャズを理解して楽しんでいるつもりです。
本アルバムの話です。前アルバム『ハウスプラント』から4年ぶりの新作ということになります。前アルバムについてはブログに書いています。
これいっときますか。
結構いい加減な書き方ですよね(笑)。
前回ポップな方向へ振られていたのですが、今回はもう少し落ち着いた内容になっているように思います。このバンドはギター、ベース、ドラムからなるバックバンドに歌い手(ボーカルではなく、テナーとクラリネットですが)がいるような構成で演奏します。ここがちょっといわゆるジャズとは違うところでロックバンド的です。ギター・ソロがほとんどないのも興味深いところ。ギターはサウンドエフェクトも兼ねています。
1曲目を聴くとテナーが切々と心情を込めて歌っていて印象的。これがジャズのコード進行に伴うアドリブではなく、曲のメロディーを崩さずに歌っています。この曲の聴きどころはテナーの情感を込めた歌いっぷりであり、アドリブのキレではありません。ここを理解しないと良さが見えてきません。バックは意外と自由なレスポンスをしていて、ここに”フロントとバックの(奏法上の)逆転現象”なるものが見られます。
4ビートは一切なしで、8ビートまたはメトリック・モジュレーションの変拍子です。時々ズッコケそうになるようなリズムの停滞が入るのはジム・ブラックのお家芸? 上記のようなロック的な演奏で進みつつ、曲の中盤または終盤には、マイルスの《イン・ア・サイレント・ウェイ》のような牧歌的雰囲気のフリージャズが入る曲もあり、一筋縄ではいかないのがこのバンド。繊細な表現は髄所にちりばめられているので、そういう部分に耳がいけば、より面白く聴くことができるのではないかと思います。
このバンドにしか出せないサウンドがあります。そのサウンドは一貫性があり、アルバムを出す毎に深みを増しているように思います。良いアルバムだと思います。それからWinter&Winterレーベルは、独特な匂いの音楽といい、高級感漂うエンボスの厚紙ジャケットといい、センスの良いアートワークといい、唯一無二の良いレーベルだと思います。
アルバム名:『ANTIHEROES』
メンバー:
CHRIS SPEED(ts, cl)
HILMAR JENSSON(g)
SKULI SVERRISSON(b)
JIM BLACK(ds)
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