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メンバーチェンジしたけれど相変わらずカッコいいです。

新譜紹介を順次進めていきましょう。ヘボな日本のジャズジャーナリズムはあまり取り上げてくれないグループの新譜です。まあ私が紹介するマニアックなアルバムの多くはそういうものですけどね。日本のジャズジャーナリズムがそんな具合だから、逆にブログの存在意義があるわけなので、ブロガーとして”ヘボ”は大歓迎(笑)。

P73ムタン・ファクトリー・カルテット『ラッキー・ピープル』(2013年rec. PLUS LOIN MUSIC)です。メンバーは、フランソワ・ムタン(upright bass)、ルイ・ムタン(ds)、エマニュエル・コジャ(el-g)、トーマス・エンコ(p)、クリストフ・モニオ?(as, ss)です。これまでムタン・リユニオン・カルテットと名乗っていたのですが、今回はメンバーが5人になりムタン・ファクトリー・カルテットと改名。ひょっとしたらこの2個のグループは並行してやっていくのかもしれません?

コアであるムタン兄弟以外は入替。サックスはリック・マーギッツアからクリストフ・モニオへ、ピアノはピエール・ド・ベスマンからトーマス・エンコへ、ギターのエマニュエル・コジャが増員されてクインテットとなりました。ピアノは初代のバティスト・トロティニョンから2台目ピエール・ド・ベスマンを経てトーマス・エンコへ。フランス人ハンサム・ピアニストの王道系譜?を今回も継承しました(笑)。

トーマス・エンコ って、リンクした日本のホームページでは”仏流美形ジャズピアニスト”と書いてあります(笑)。日本ではこういう売り方しかできないんでしょうね。私、一昨年の東京JAZZの野外ステージで近くからエンコを見ました。”仏流美形”は全くそのとおりだとは思います。美しくてハイセンスなピアノを弾いていました。そんなエンコが今回はワイルドなムタン兄弟のバンドに入ったところが良いではありませんか。ジャケット写真中央とその両脇を参照。

エンコがワイルドな表現もできるエレピを弾かないからなのか、コジャが加わってギターでそいう部分を担当しています。エレガントなピアノとワイルドなギターという具合に、今回は分業体制をとったようにも思います。メンバーが増えれば各人に与えられるソロ・スペースが減るのもあるでしょうが、エンコはバッキングにしてもソロにしてももう少し強く主張してほしい気がします。

基本的なサウンドはこれまでのムタン・リユニオン・カルテットのものを継承。曲はルイの3曲にフランソワの6曲にオーネット・メドレー1曲の全10曲。1曲目は前アルバム『ソウル・ダンサーズ』と同じく、ウェザー・リポートを意識していると思えるタイトル曲です。ジャコ・パストリアスの《スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット》に雰囲気がかなり似ています。最初聴いた時、《スリー・ビューズ・・・》と同じくワルツだと思ったら、よく聴くと5拍子なんですね。5拍子で違和感なく快適にスイングするあたりがムタン兄弟の技。

2曲目《ドラゴンフライ》のソプラノ・サックスは、ウェイン・ショーターの80年代ソロ・アルバムの匂いがします。そして、7曲目《ア・ビジー・デイ》もウェザー・リポート調。と3曲並べた理由は皆ルイが作曲したものだからです。今回のアルバムでやっと気づいたのですが、ウェザー・リポート・サウンドというのは、ルイが志向するサウンドだったようです。

サックスがソプラノとアルトになったこととギターが加わったことで、よりコンテンポラリー(フュージョン)なサウンドになりました。だからといって軟なフュージョンではありませんよ。上記のようにウェザー・リポートだったり、80年代のアコースティック系フュージョンのチック・コリアとかそいうサウンド。コアはフランソワの強靭なベースとルイのキレとパワーのドラミングであり確固としています。私はこういうサウンドがかなり好きです。

ムタン兄弟が志向するのはフュージョンではなくジャズだという証しが、4曲目の《オーネットズ・メドレー》。2人のデュオで演奏されます。前アルバムでも今回と同じく4曲目に配置された《モンクス・メドレー》をデュオでやっていました。オーネットにしてもモンクにしても、現代に違和感なくフィットする曲を作ったジャズ・ジャイアントですよね。今こうして取り上げる意味は察しがつきます。

そしてフランソワが作曲する曲の中に、今回はかなりベタで分かりやすいポップス系哀愁曲が2曲あります。《ソウル》と《ユール・ビー・ファイン》がそれですね。前者ではモニオのソプラノ・サックスを主体に哀愁の歌を奏で、後者ではコジャのギターを主体に哀愁の歌を奏でます。これら2曲はメンバーが変わったことで新しく加わえられたこのバンド味と言えるのではないかと思います。

メンバーチェンジしても相変わらず私好みのカッコいいジャズをやってくれているのが嬉しいです。

アルバム名:『lucky people』
メンバー:
Francois Moutin(upright bass)
Louis Moutin(ds)
Emmanuel Codjia(el-g)
Thomas Enhco(p)
Christophe Monniot(as, ss)

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コメント

なんだか、お久しぶりです。(最近、この挨拶ばかり。。)

エンコさまのお兄さまだかも、えらくお美しいです。
リーダー作が非常に美しく叙情豊かで素晴らしいなぁ、と、いうことで、ムタン兄弟とエンコ!って、飛びつきました。(笑)
同じ時期にでた「ジャク&ジョン」は、ちょっと違う顔が拝めます。

で、、、私がリリースを待ってるのはEnhco Brothersのアルバム。
お兄さまはトランペットなんですよ。。

投稿: Suzuck | 2013年10月15日 (火) 12時51分

Suzuckさま

こんばんは。

>なんだか、お久しぶりです。(最近、この挨拶ばかり。。)

はい、最近はついお久しぶりになりがちです。

>エンコさまのお兄さまだかも、えらくお美しいです。

そうなんですか。美形兄弟。

>リーダー作が非常に美しく叙情豊かで素晴らしいなぁ、と、いうことで、ムタン兄弟とエンコ!って、飛びつきました。(笑)

私はエンコのリーダー作は聴いていません。
エンコは容姿に相応しいジャズをやっていますね。
ムタン兄弟とエンコ、私もこの組み合わせには興味がありました。

>同じ時期にでた「ジャク&ジョン」は、ちょっと違う顔が拝めます。

なかなか良いという話が出ていますね。
そういえば私は最近ピアノトリオの新譜を聴いていません。
聴いてみようかな?

>で、、、私がリリースを待ってるのはEnhco Brothersのアルバム。

何となくクラシック色が強そうな予感。

>お兄さまはトランペットなんですよ。。

流麗なトランペットを吹きそうですね。
たまにはそういうのも聴いてみようかな?

トラバありがとうごさいました。

投稿: いっき | 2013年10月15日 (火) 20時45分

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