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2013年10月

アーロン・パークスのピアノ・ソロ。

新譜紹介。アーロン・パークスのピアノが好きなので買いました。

P93アーロン・パークス『アルボレセンス』(2011年rec. ECM)です。メンバーはアーロン・パークス(p)です。パークス初のECMアルバムにしてピアノ・ソロ。でもプロデューサーがマンフレート・アイヒャーではないし、録音も2年前なので、パークスの録音をECMが買い取るような形でアルバム化したんでしょうかね?(ではなくて、プロデューサーのSun ChungはECMの後継者的役割を担っているとのことで、れっきとしたECM録音のようです。)

録音会場はメカニクス・ホール。響きの良いホールで残響音(エコー)もたっぷり入っています。ECM的な人工エコーではなく自然なエコー。録音だけで言えばこれはもうクラシックの世界。ピアノの音が澄んで美しく豊かに響きます。

ソロ演奏の雰囲気はキース・ジャレットの『ステアケース』に似た感じです。まあ私の場合、ピアノ・ソロがそれほど好きではなく、キースのピアノ・ソロ・アルバムは5枚しか持っていないので、その範囲での印象ですからあまりあてにしないで下さい。時折メロディーに合わせて軽く鼻歌を歌っているのが分かります。

曲は全曲パークスが作曲。インプロビゼーション重視というよりはメロディー重視に聴こえます。ライナーノーツに詩が書いてあるのですが、その詩の冒頭に「再び森に入り・・」とあります。曲の雰囲気はまさにそんな感じで、静かで深い森に入った時の情景を描写しているように受け取れます。中には3分くらいの短めの曲もあります。

美しくて瑞々しい情景描写が比較的淡々と進んでいきます。中には盛り上がる場面もありますが、キースのような感情起伏のダイナミクレンジの広さみたいなものは感じませんでした。コントロールされています。私からするとその辺りが少々物足りなくもありません。もちろんECMレベルは十分クリヤしているんでしょうけれど、何かこうもっと聴く者の心にグサリとくるものがほしい気がしました。期待し過ぎだったかも?

悪いとは言いませんが、凄いという程ではありませんでした。

アルバム名:『ARBORESCENCE』
メンバ:Aaron Parks(p)

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今あるカートリッジはこの9個

廉価カートリッジ探究の結果、今手元に9個のカートリッジがあります。

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ビクターZ-1S 針:JICO現行DT-Z1S

ナガオカMP-150(現行品) 針:純正中古JN-P150

オーレックスC-550M 針:大東京宝石新古N-550

オンキョー(オーディオテクニカ)OC-27V 針:純正新古DN-27ST

オットーMG-27L 針:A'pis現行A-1PH

シュアーV15TYPEⅢ 針:大東京宝石新古VN-35E

パイオニアPC-200 針:サウンドジュエル新古PN-400

ローディーMT-24 針:純正新古DS-ST24

デンオンDL-108R 針:折れ

以上の9個。
音だけでなくデザインや希少性、今後の展開性などから残っています。
こんなにあってもレコードプレーヤーは2台ですから、
時々交換しながら楽しんでいこうと思います。

今後の展開としては、
まずDL-108Rの現行針を入手。
V15TYPEⅢはJICOのもっと良い現行針をつける。
JICOのシバタ針やSAS針を付けて聴きたいものあり。

※ その後MP-150以外は全てヤフオクへ。アルミパイプカンチレバーに接合ダイヤ針は音質的に大差なく、古い純正針と現行代替針との比較でも、どちらかに音質的な優位性があるとは思えません。このクラス(MP-150、V15TYPEⅢは除く)であれば現行廉価カートリッジで十分だと思います。わざわざ古いカートリッジを探す必要はないということです。2014.7.1

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廉価カートリッジ探究はそろそろ終わり。

廉価MM型カートリッジの音質について色々探究したきたわけですが、だいたい傾向が分かったのでそろそろ終わりにしようかと思います。で、仕上げとして最近のMM型カートリッジをヤフオクで落としてみました。

ナガオカのMP-150です。このくらいなら出しても良いかなという金額を入札して放っておいたら、それより安い価格で落札できていました。これ、メーカー小売希望価格は\21,000ですからある程度音質重視のカートリッジです。ケースが付いて\2,400で落札できたのはお買い得。送料は宅急便なのでそれなりにかかりました。ナガオカは人気がないんですね~。世の中、シュアーとかのブランド名で買っているような人ばかり、本当の音質(価値)が分かる人なんて少ないのです。

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ケースはヘッドシェル付モデルのものです。取扱説明書も入っていました。カートリッジを取り付けてあったのはオーディオテクニカのホルダー兼オーバーハングゲージ。このカートリッジは正しくはMP(ムービング・パーマロイ)型なので、カンチレバーにマグネットはなくて本体の方にマグネットがあります。下の写真の灰色の円形部分がマグネットです。ベースのプラスチック部分はコツコツ音がする硬質のとてもしっかりしたものです。

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一般的な分類ではIM(インデュースド・マグネット)型になります。このカートリッジは稼働(ムービング)部分が鉄ではなくパーマロイという磁性材が使われているからMP型と言っているのでしょう。ナガオカの拘り。こういうことは私のような工学系の人以外にはどうでも良いことなんでしょうね。使いこなしの上ではMM型ということで問題ありません。

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硬化処理アルミ合金のテーパードパイプカンチレバーにムクの楕円ダイヤモンドスタイラスが付いています。私がこれまで聴いてきたストレートパイプカンチレバーに接合ダイヤモンドスタイラスよりはコストがかかっています。これが音質にどう表れるのか?

このカートリッジのヘッドシェル付モデルはベスタクスのシェルと同じものを使っています。もちろんベスタクスのロゴはありません。今やこの手のものを作っているところは少なく、色んなメーカーで共用(OEM)しています。このカートリッジのシリーズは6機種あり、下位4機種はこのヘッドシェルで、上位2機種はもっと高級なヘッドシェル。私は安く手に入るベスタクスのヘッドシェルに取付けました。シェルリード線は定番のPCOCC。取付けネジは真鍮製をおごってみました。

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カートリッジがヘッドシェルからはみ出していますが、レコードプレーヤー(トーンアーム)のオーバーハング値はこうしないと適合しません。カッコ悪いですけれどやむを得ません。

聴いてすぐに分かりました。これまで聴いてきたカートリッジより高音質です。針(スタイラスチップとカンチレバーなど)にコストをかけているのがそのまま表れていると解釈して良いと思います。念のためいつもの音質比較を実施。同じレコードを2台のプレーヤーでかけて、自作フォノイコライザーの入力セレクタで瞬時切替試聴する方式です。

左 : ビクターZ-1S(針:JICO現行丸針DT-Z1S)
右 : ナガオカMP-150(針:オリジナル)

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MP-150は高音に、例えばシンバルは良く伸びて色艶があります。繊細な感じも漂っています。低音は少し控えめです。全体的には音楽により表情があるように聴こえます。深みがあります。やはり高いだけのことはあると思いました。ではZ-1Sはダメなのかというとそんなことはなく、これはこれで逆に脚色無くそのまま音が出ている良さがあるように聴こえるのです。こういう音質の違い、なかなか微妙なものがありますよね。一概にどっちが良いとは言えません。オーディオって奥が深いです。

今の私は基本的にこの2機種を持っていれば良いという気持ちになりました。MP-150の上位には更に3機種ありますが、私にはこれで十分な感じです。ナガオカの売り文句は「広帯域のパワフルサウンドモデル」。ジャズを聴く私には「パワフルサウンド」がマッチするのだということで納得しました。それにしても\2,400はめっちゃ得した気分。

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ラルフ・アレッシがECMからアルバムを出しました。

前回のニコラス・ペイトンのように黒人音楽としてのジャズがあれば、芸術音楽としてのジャズもあります。最近の芸術音楽としてのジャズはECMレーベル独り勝ちみたいな状況になっていますよね。ベテランから若手まで、年間たくさんのジャズアルバムを出しています。そんなECMの新譜。

P86ラルフ・アレッシ『Baida』(2012年rec. ECM)です。メンバーは、ラルフ・アレッシ(tp)、ジェイソン・モラン(p)、ドリュー・グレス(b)、ナシート・ウェイツ(ds)です。本アルバムのラルフ・アレッシを始めニューヨーク・ダウンタウン周辺のジャズマンは、数年前はマイナー・レーベルからしかアルバムを出せず、そちらを追いかけていないと知り得ない状態にありました。アレッシの場合、前アルバムはCAM JAZZから出たので、それほどマイナー・レーベルというわけではないですが。

それが最近は次々とECMからアルバムを出すような状況になってきて、多くの人の目に触れるようになてきたのは良いことだと思います。まあマンフレート・アイヒャーのプロデュースということなので、きっちりその枠に嵌ったクールな肌触りのジャズに落とし込まれてしまうのですが、元々こういうサウンドとは相性が良い人達なので違和感はありません。

本アルバムのサイドマンであるピアニストのジェイソン・モランはチャールス・ロイドのECMアルバムで重要メンバーとして名を連ねてきたわけですが、次あたりはECMから自身のピアノ・トリオかソロを出すんじゃないかと思っています。モランは今のところブルーノートの専属です。でもモランの音楽性と今のブルーノートの方針を考えると、ECMから出した方が良いように私は思うのですが・・・、モラン本人はやっぱり黒人音楽としてのジャズに拘りがあるのかな?

ベースのドリュー・グレスはECMに録音ありましたっけ?(ECMコレクターの910さんによればあるとのことでした。やはりそうでしょうね。) ドラムのナシート・ウェイツはたぶんこれがECM録音デビューですよね?(こちらはそのとおりとのこと。)本人のリーダー作ではなくても、ニューヨーク・ダウンタウン周辺の人達に、次々と光が当たっていく状況は歓迎すべきことだと思います。世界的な大きいレーベルに録音しないと、やはり知名度が上がらないと思うんですよね。

さて、前置きが長くなってしまいましたのでそろそろ本アルバムの内容にいきましょう。私が感じたのは、トーマス・スタンコのECMアルバムに似た雰囲気のものだということです。スタンコは今年、ニューヨーク・カルテット名義でニューヨーク・ダウンタウン周辺の人と一緒に『Wistawa』を出していますよね。スタンコの場合はヨーロッパならではの格調と哀愁が漂よいますが、アレッシにはさすがにそれはありません。もう少し硬質で端正な感じです。

アレッシが作曲した11曲が収められています。テーマのメロディーは比較的分かりやすいです。テーマをやった後は曲によりアレッシのソロからだったり、モランのソロからだったり、モランとの掛け合いだったり、アレンジを聴かせつつソロをきちんと聴かせます。ソロの部分では時に自由なビートのフリー・ジャズへ突入。アレッシとモランの寄り添いや反応におけるマッチングは良好です。

グレスはベテランの貫禄で落ち着いてサポート、ウェイツは鋭い反応を見せつつも意外と落ち着いた風情。4人のまとまりは良く、ECMの水準は難なくクリアしているアルバムに仕上がっていると思います。全体を通して聴くとちょっと地味かもしれませんね。でもアレッシの端正なトランペットの魅力は音色やフレージングからしっかり伝わってきます。

アルバム名:『Baida』
メンバー:
Ralph Alessi(tp)
Jason Moran(p)
Drew Gress(b)
Nasheet Waits(ds)

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ペイトンの痛快なジャズ

ジャズ新譜紹介です。最近この人をフォローしていますし、面白い編成でやっているということで購入しました。

P85ニコラス・ペイトン『#BAM Live at Bohemian Caverns』(2013年、BMF RECORDES)です。メンバーは、ニコラス・ペイトン(tp, fender rhodes)、ヴィセンテ・アーチャー(b)、レニー・ホワイト(ds)です。何とペイトンはトランペットだけでなく、かなりの部分でエレクトリック・ピアノを一緒に弾いています。ライブ演奏ですから多重録音ではありません。ジャケット内側の写真を見ると、右手でトランペットのバルブを操作しつつホールドして、左手でエレピを弾いています。

タイトルにある”BAM”というのは”Black American MUsic”のことらしいです。このアルバムを聴くと良く分かりますが、ペイトンは黒人音楽としてのジャズをやりたいんでしょう。ただし純粋なバップというわけではなく、エレピを弾いたりレニー・ホワイトを起用したりしていることから分かるとおり、もちろんサウンドもそうですが、70年代のクロスオーバー/フュージョンの影響が強いようです。これまでのアルバムにもそういう傾向があったのでその延長になっています。

冒頭いきなりエレピから始まります。途中からトランペットも吹いて徐々に盛り上がり、レニーの煽りも相まってエキサイティングな演奏が展開。エレピを弾いていてもトランペットの演奏を疎かにするようなことはなく、トランペットのみのソロはかなりの熱演。トランペットの吹きっぷりは良く鳴りっぷりが気持ち良いです。エレピのソロはメローでアダルトな雰囲気を醸し出したり、ワイルドな攻撃性を見せたり、これはこれでまた良し。

トランペット・トリオというシンプルな構成で、自分のやりたいことを上手く構築しているペイトンはなかなかのやり手だと思います。こういう演奏だとレニーのドラムが見事にマッチしますね。熱気溢れるシンプルなグルーヴはカッコいいです。アーチャーのベースもゴリゴリ力強く、エレクトリック・ベースではなくアコースティック・ベースのグル―ヴに、クラブジャズ的現代性と過去のバップへの繋がりのクロスオーバーを見ます。

ペイトンのオリジナル3曲に、マイルスの1曲に、モンクの1曲に、レニーの1曲に、トラディショナル1曲の全7曲。モンクの《パノニカ》はペイトンのトランペットとアーチャーのベースとのデュオ。これは落ち着いたジャジーな雰囲気が良いですね。アルバムの真ん中にあってクールダウンも兼ねています。演奏自体は昔懐かしいとはいえ、こういう形でジャズをやっていくのも一つの選択。迷いなくストレートにやっているから痛快。

黒人音楽としてこの辺の時代のジャズを範とするのは正解かも? 今思えばその頃が一番幸せな黒人音楽としてのジャズだったのかもしれないと思えなくもないからです。80年代に入って黒人音楽としてのジャズは迷走し始めた感がありますからね。迷走を象徴するのがマイルスの復帰とウイントン・マルサリスの登場。で、迷走を決定づけたのがマイルスの死であり90年代。

最初は体調不良、その後セレブリティになってしまい、やんちゃになりきれなかったのがマイルス、やんちゃを封印したのがウイントン、ジャズにあったやんちゃな部分はヒップホップに持っていかれてしまいました。”やんちゃ”というのは”批評性”というより”ストリート性”でしょうね。ヒップホップにおける”やんちゃ”の系譜は、オタクなマッドリブではなく、アンファンテリブルなタイラー・ザ・クリエイターへと脈々と繋がっているのだと思います。

80年代、オーネット・コールマンのハーモロディック一派やM-BASE一派何かはやんちゃな部分を持ってジャズをやっていたように私は思います。日本ではこれらの人達への注目より新伝承派でありM.J.Q.(マンハッタン・ジャズ・クインテット)へ注目したんですよね。中山康樹さん指導で(笑)。

今80年代の雰囲気がジャズ界にも来ているようで、そこに今の黒人音楽としてのジャズ云々が絡むわけですが、私にとっては何となく収まりが悪いと思っていたのです。どうやらそれは、黒人音楽としてのジャズが迷走し始めた80年代以降を範としているからなのかもしれないと、今ふと思いました。何の根拠もないです。ハイッ。

このアルバムに話を戻します。熱いジャズライブ。黒さムンムン。音も会場の熱気を上手く表現していて悪くないです。

Nicholas Payton (tp, fender rhodes)
Vicente Archer (b)
Lenny White (ds)

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面白い針が出ていたので。

ヤフオクではシュアーの針/カートリッジは古びたものでも高いので買う気になりません。ヤフオクでは最近業者らしき人達が暗躍していて、この手のものを国外で高値で売りさばいているようです。私が過去にアナログ関連品を出品すると、その手の業者がかなり高値で落札してくれました。連絡してくるのが外国人で、送付先がその手の会社なのです。落札専門にしている人達もいるようです。売りさばく先はロシアや中国。お金が余っている人達がいるんでしょうね。

そんな状況もあってシュアーの落札価格が高値維持していたりするのでしょう。なのでこんなものでお茶を濁してみようと思いました(笑)。大東京宝石のシュアーV15TYPEⅢ用交換針VN-35E。新古針未開封で¥999という茶目っ気のある価格がついていました。もちろん競合者なし。日本製の針などに興味を持つ人はいないのです。

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定価が¥10,000となっているので、無垢のダイヤモンド針かと期待したのですが・・・。残念ながら接合型のダイヤモンド針でした。それからシュアーのVN-35Eは”E”:elliのとおり本来は楕円針ですが、こちらは表記のとおり0.5milの丸針でしょう。ただしシュアー純正と同じようにテンションワイヤーがあってマグネットは角柱(日本のカートリッジは一般的にマグネットが円柱)、こういう特殊仕様なので交換針としては高くなっているのでしょう。

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私が持っているV15TYPEⅢの本体は黄色文字。本体にも色々なバージョンがあって、うるさい人はより古いものを良しとします。私はそこまでの拘りはありません。ヘッドシェルはオーディオクラフトのものです。シェルリード線はいつものPCOCC。シュアー用の特殊仕様は採用しているものの、スタイラスチップ(針先)やカンチレバーが普通のものなので音は日本製になってしまうのではないかと思います。

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本来シュアーのロゴや針の名前が書いてあるプレートが貼ってないので間抜けに見えます(涙)。これも新古針にもかかわらずダンパがへたっているような感じはなく、問題なくトレースして音が出ます。

いつものリー・リトナー『オン・ザ・ライン』を使ってビクターのZ-1Sと比較してみました。こちらの方が出力レベルは小さいです。音質は高音が澄んでいてテンションワイヤーの効果が出ているように思います。角柱マグネットによる低音増強はないようです。高音の出方からか、音が繊細に広がるようなニュアンスが加味されてハイファイな感じに聴こえます。これはこれで楽しめるのではないかと思います。

サードパーティーのものであっても、日本製はさすがに信頼性が高いですね。トレース性能に関してはメキシコ製シュアー針よりはまともなようです。海外生産による日本の空洞化現象なんて話がありますが、こういう日本のものつくり精神は未来へきちんと継承すべきだと思います。

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好例、カートリッジの比較試聴

好例になりました。カートリッジの比較試聴をしてみました。使うアルバムはいつもの『オン・ザ・ライン』。2台のプレーヤーで2枚を同時にかけて、自作フォノイコライザーの入力セレクタで瞬時切替試聴します。

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今回の比較試聴はまずこれ。入手したばかりのカートリッジと私のリファレンス。

左 : オンキョー(オーディオテクニカ)OC-27V(針:オリジナルDN-27ST)
右 : 日立Lo-D MT-24(針:オリジナルDS-ST24)

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出力レベルはMT-24の方が少し小さいです。OC-27Vは高音が控えめなので、MT-24の方が高音が良く出ているように聴こえます。基本的にはどちらもバランスは良好で明るくナチュラルな音。高音とのバランスからOC-27Vの方が少し濃い音で、MT-24は少し薄い音に感じます。どちらもMM型らしく聴きやすい音です。

で、次が問題のこれ。2つとも兄弟機で音質が似ているとのことなので、片やJICOの現行針、片やオリジナル針の音質比較になるかと思います。ちなみにMT-24のオリジナル針は接合ダイヤの丸針でアルミの2重パイプカンチレバーです。

左 : ビクターZ-1S(針:JICO現行丸針DT-Z1S)
右 : 日立Lo-D MT-24(針:オリジナルDS-ST24)

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出力レベルはMT-24の方が少し小さいですが似た音。高音の出方はだいたい同じで、Z-1Sの方が少し低音が豊です。そのためZ-1Sの方が少し暖かく聴こえ、MT-24は少しクールに聴こえます。この差はダンパの堅さなのせいかもしれませんね。MT-24の方が経年劣化でダンパーが若干硬化して低音が出にくい可能性があります。

その後この差は現行JICO針の音質によるものと分かりました。MT-24は当時の極一般的な音なのだろうと思います。

こうやって比較して聴いてみると、Z-1Sの現行針で十分です。わざわざオリジナル針を求めることはないのではないかと思いました。似たようなアルミパイプカンチレバーに接合型の丸針、このクラスのカートリッジはほぼ同じような表現力なのですから。それからヘッドシェルの差とかレコードプレーヤーやトーンアームの差は私にはあまり分かりません。

結論が見えてきたのでそろそろこのお遊びも終了かな。

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新たに仲間が増えました。

またまた入手してしまいました。全く困ったものです(笑)。今回仲間に加わったのは日立Lo-DのMT-24です。

なぜこいつがほしかったかたというと純正新古針DS-ST24がヤフオクに出ていたからです。本当はビクターZ-1Sの新古針がほしかったのですが、このカートリッジはオークションでも人気が高いようで、新古針の類は既に出つくし買いつくされてしまったのか最近あまりお目にかかれません。純正新古針はまず出てこないでしょう。ならばということで、例のサイトによるとZ-1Sの兄弟機でかつ音質はほとんど変わらないという本機で当時の音を検証しようという魂胆。

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本体も入手しなければならないのですが、しばらくウォッチしていると汚れたジャンク品が格安で出てきました。実は上記新古針は一旦終了してその後ヤフオクに出ていなかったのですが、本体が出たタイミングで再びヤフオクに登場。きっと出品者が本体の出るタイミングに合わせて針を出しているのです。というわけで私は念のためカートリッジを落札してから針を落札しました。

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Lo-Dのヘッドシェルに付いた状態で¥1000未満。薄汚れていたヘッドシェルはマジックリンと無水エタノールで清掃。カートリッジ本体のサビは金属磨きで磨いてご覧のとおりピカピカに。ジャンク/ガラクタも掃除をすれば実用品です。シェルリード線は交換していつものPCOCC。

音を聴く前にちょっと検証。このカートリッジはGLANZ/ミタチのOEM品とのことなので、今持っているGLANZファミリーを並べてみました。左からビクターZ-1S、Lo-D MT-24、GLANZ MG-2Sです。

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針を外して並べてみると分かるように、金属シールドされたボディ部分は同じ形状のように見えます。特にMT-24とMG-2Sは取付け角度がほぼ同じです。MG-2Sとして売り出す前のOEM品のLo-D版にMT-23というカートリッジがあります(MG-2SとMT-23が同じだとしているサイトがありますが実は別物 ⇒ カートリッジMT-23の検証 )。MT-24とMT-23という似たようなカートリッジをLo-Dのプレーヤーに付けて売っていたことになりますね。針を付けるとそれぞれの印象は変わります。

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試しにMG-2Sの針とZ-1Sの針をMT-24に挿してみると収まります。しかしMT-24の針はノブ(プラスチック部)形状のため、MG-2SにもZ-1Sにも挿すことはできません。デザイン的には一番ダサイのがMT-24か? Lo-Dという今となってはマイナーな存在でしかないメーカーの、人気がないカートリッジ故に今回新古針を入手できたのでしょうね。

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透明オレンジ色のノブがなかなか映えます。音はバランス良く自然な音色で、廉価カートリッジとしては標準的な音だと思います。良い音というほどではないです。これまでいくつか新古針を入手して聴いていますがどれもダンパは問題ないようです。適宜保管しておけば意外と長持ちなのかも? いつものレコードを使っての比較試聴をした結果については次回改めて報告します。

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リンダ・オーの新譜は現代クールネス

来週10/19(土)「KOFU JAZZ STRFFT」です。でも今回はパス。理由は簡単で観たいと思う人が来ないから。今年から春と秋の年2回体制になったのは良いのですが、今回は会場が2ヶ所減って4ヵ所。2回にした分内容が薄くなったような気がするのは気のせい? 今回の目玉はTOKUとジャネット・サイデルということで、残念ながら私はどちらもあまり興味がありません。というわけでパスします。ただし一般的なジャズファン周辺に受けるという意味で、こういうジャズイべントにお2人が招かれるのは的確な人選だとは思います。

それより来月が大変。「桜座」 に観たい人が一挙にやってくるのです。11/20(水)高瀬アキカルテット、11/21(木)スガダイロートリオ+志人、11/22(金)山下洋輔ニューヨークトリオ、11/23(土)フルデザインレコード・レビュー2013(日本の錚々たるジャズメンが集合)。何なんだ!この固め打ちは!もっと分散して呼んで下さい。全部観たいけれど毎日は無理。ダイローさんのトリオが初めて甲府にやってくるのが嬉しいです。スガダイロートリオ+志人は是非観たい! この機会にアルバム「刃文」も買わなきゃね。 う~む、高瀬アキさんも観たい。サックスが林栄一さんですしね。これは嬉しい悲鳴です!

今日はフォローしているリンダ・オーの新譜を紹介します。

P74リンダ・オー『サン・ピクチャーズ』(2012年rec. greenreafmusic)です。メンバーは、ベン・ウェンデル(ts)、ジェームス・ミューラー(g)、リンダ・オー(b)、テッド・プア(ds)です。ジャケットには「ベン・ウェンデルtrumpet」って、思い切りミスプリント(涙)。オーの3枚目のリーダー・アルバム。

1枚目『エントリー』はトランペット・トリオで、2枚目『イニシャル・ヒヤ』はカルテットを主体に曲により編成を変えてエレベも弾いていました。今回は全曲カルテットでやっています。ドラマーは毎回変わって今回はテッド・プア。オー自身が書いたライナーノーツによれば、収録曲は最近の旅行の小さなスナップショットであり体験を演奏した音楽とのことです。各曲がどういうシチュエーションで作曲されたのかについても書いてあります。

1曲目《シャッタースピード・ドリームズ》はこのアルバムの収録曲をリミックスしたもので、オーにとって良い挑戦だったとのこと。ミニマルな曲で旅の思い出を虚ろに思い返しているような、もしくは夢見ているようなイメージになっています。2曲目以降は普通のカルテット演奏による現代クールネス・ジャズ。マイナー調の曲ばかりで基本的には落ち着いた雰囲気。

テーマ曲を合奏した後にフロントのソロまたは掛け合いがあります。ジャズの基本的フォーマットによる演奏ですね。リズムは8ビートまたは変拍子というのが現代性。右にギター、左にテナー、盛り上がる場面もありますが基本的には丁寧にクールにソロを展開していきます。ウェンデルもミューラーも特に個性的というのではなく、現代的なマナーをきちんと習得したジャズマンだと思います。

オーのベース・ソロも何回かありますが控えめ。バッキングでは相変わらずウォーキングしない訥々としたベースを弾いています。今回強靭さをあまり感じさせない録音になっているのは、旅行の小さなスナップショットというアルバム・コンセプトに沿っているためかもしれません。ベン・モンダーの新譜にも参加していた私お気に入りのドラマーであるプアは、音楽に丁寧に起伏を付けていきます。

こういう現代クールネス・ジャズは人によっては面白くないという意見がありますよね。私もその意見を理解できますが、こういうものにたまにはじっくり耳を傾けるのも悪くはないのではないでしょうか?

アルバム名:『Sun Pictures』
メンバー:
Linda Oh(b)
Ben Wendel(ts)
James Muller(g)
Ted Poor(ds)

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メンバーチェンジしたけれど相変わらずカッコいいです。

新譜紹介を順次進めていきましょう。ヘボな日本のジャズジャーナリズムはあまり取り上げてくれないグループの新譜です。まあ私が紹介するマニアックなアルバムの多くはそういうものですけどね。日本のジャズジャーナリズムがそんな具合だから、逆にブログの存在意義があるわけなので、ブロガーとして”ヘボ”は大歓迎(笑)。

P73ムタン・ファクトリー・カルテット『ラッキー・ピープル』(2013年rec. PLUS LOIN MUSIC)です。メンバーは、フランソワ・ムタン(upright bass)、ルイ・ムタン(ds)、エマニュエル・コジャ(el-g)、トーマス・エンコ(p)、クリストフ・モニオ?(as, ss)です。これまでムタン・リユニオン・カルテットと名乗っていたのですが、今回はメンバーが5人になりムタン・ファクトリー・カルテットと改名。ひょっとしたらこの2個のグループは並行してやっていくのかもしれません?

コアであるムタン兄弟以外は入替。サックスはリック・マーギッツアからクリストフ・モニオへ、ピアノはピエール・ド・ベスマンからトーマス・エンコへ、ギターのエマニュエル・コジャが増員されてクインテットとなりました。ピアノは初代のバティスト・トロティニョンから2台目ピエール・ド・ベスマンを経てトーマス・エンコへ。フランス人ハンサム・ピアニストの王道系譜?を今回も継承しました(笑)。

トーマス・エンコ って、リンクした日本のホームページでは”仏流美形ジャズピアニスト”と書いてあります(笑)。日本ではこういう売り方しかできないんでしょうね。私、一昨年の東京JAZZの野外ステージで近くからエンコを見ました。”仏流美形”は全くそのとおりだとは思います。美しくてハイセンスなピアノを弾いていました。そんなエンコが今回はワイルドなムタン兄弟のバンドに入ったところが良いではありませんか。ジャケット写真中央とその両脇を参照。

エンコがワイルドな表現もできるエレピを弾かないからなのか、コジャが加わってギターでそいう部分を担当しています。エレガントなピアノとワイルドなギターという具合に、今回は分業体制をとったようにも思います。メンバーが増えれば各人に与えられるソロ・スペースが減るのもあるでしょうが、エンコはバッキングにしてもソロにしてももう少し強く主張してほしい気がします。

基本的なサウンドはこれまでのムタン・リユニオン・カルテットのものを継承。曲はルイの3曲にフランソワの6曲にオーネット・メドレー1曲の全10曲。1曲目は前アルバム『ソウル・ダンサーズ』と同じく、ウェザー・リポートを意識していると思えるタイトル曲です。ジャコ・パストリアスの《スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット》に雰囲気がかなり似ています。最初聴いた時、《スリー・ビューズ・・・》と同じくワルツだと思ったら、よく聴くと5拍子なんですね。5拍子で違和感なく快適にスイングするあたりがムタン兄弟の技。

2曲目《ドラゴンフライ》のソプラノ・サックスは、ウェイン・ショーターの80年代ソロ・アルバムの匂いがします。そして、7曲目《ア・ビジー・デイ》もウェザー・リポート調。と3曲並べた理由は皆ルイが作曲したものだからです。今回のアルバムでやっと気づいたのですが、ウェザー・リポート・サウンドというのは、ルイが志向するサウンドだったようです。

サックスがソプラノとアルトになったこととギターが加わったことで、よりコンテンポラリー(フュージョン)なサウンドになりました。だからといって軟なフュージョンではありませんよ。上記のようにウェザー・リポートだったり、80年代のアコースティック系フュージョンのチック・コリアとかそいうサウンド。コアはフランソワの強靭なベースとルイのキレとパワーのドラミングであり確固としています。私はこういうサウンドがかなり好きです。

ムタン兄弟が志向するのはフュージョンではなくジャズだという証しが、4曲目の《オーネットズ・メドレー》。2人のデュオで演奏されます。前アルバムでも今回と同じく4曲目に配置された《モンクス・メドレー》をデュオでやっていました。オーネットにしてもモンクにしても、現代に違和感なくフィットする曲を作ったジャズ・ジャイアントですよね。今こうして取り上げる意味は察しがつきます。

そしてフランソワが作曲する曲の中に、今回はかなりベタで分かりやすいポップス系哀愁曲が2曲あります。《ソウル》と《ユール・ビー・ファイン》がそれですね。前者ではモニオのソプラノ・サックスを主体に哀愁の歌を奏で、後者ではコジャのギターを主体に哀愁の歌を奏でます。これら2曲はメンバーが変わったことで新しく加わえられたこのバンド味と言えるのではないかと思います。

メンバーチェンジしても相変わらず私好みのカッコいいジャズをやってくれているのが嬉しいです。

アルバム名:『lucky people』
メンバー:
Francois Moutin(upright bass)
Louis Moutin(ds)
Emmanuel Codjia(el-g)
Thomas Enhco(p)
Christophe Monniot(as, ss)

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良い雰囲気のボーカルです。

今日は新譜紹介です。めったに買わないボーカル・アルバム。

P72マンデイ満ちる『ソウルセプション』(2012年rec. ADVENTURE MUSIC)です。メンバーは、マンデイ満ちる(vo, fl, arr)、アダム・ロジャース(g)、ボリス・コズロフ(upright bass)、ネイト・スミス(ds)、アレックス・シピアギン(tp, flh, bass trumpet)、ギル・ゴールドスタイン(accordion)4,9、エド・モッタ(vo)4です。ネットで試聴して気に入ったので、今回初めてマンデイ満ちるのアルバムを買ってみました。

買う気にさせたのはバックを固めるメンバーに負うところが大きいです。だって旦那さんシピアギンのお仲間がずらり。豪華な面子が顔を揃えているんですから。ジャズボーカルとは言ってもスタンダードを歌うわけでも4ビートをやるわけでもありません。アコースティックなものを重視した今時のジャズボーカルアルバムだと思います。ミルトン・ナシメントの曲など他人の3曲に、満ちるのオリジナル8曲の全11曲構成。

冒頭はミニマルな伴奏に詩の朗読。尖がった出だしなのですが、その後は現代のコンテンポラリー系ジャズ・ボーカルが続きます。ジャズ色が強いものから、ボッサ/ブラジル系、ポップなものなど、スキャット系も難なくこなし、心地良いボ―カルが続いていきます。数曲では満ちるがフルートも吹いてい良い味を加味しています。

旦那のシピアギンは曲によってはかなり控えめなものがあり、一方でカッコいいソロをとっているものもあり、陰に日向に奥さんを支えている感じ。で、このアルバムの一番のキーマンはアダム・ロジャース。全編アコースティックギターを優しく奏で、満ちるのボーカルをサポートしていきます。私が知っているロジャースって、自分のバンドやクリス・ポッター・アンダーグラウンドでのゴリゴリ職人技ジャズギタリストだったんで、今回これを聴いてかなり驚きました。ロジャースのこういうギターも素晴らしいですね。

曲によっては満ちるのボーカルとロジャースのアコギだけのデュエットがあり、これなんかはタック&パティの雰囲気で私はかなり気に入ってしまいました。ポップな曲では一時期かなり話題になったフライド・プライドっぽいものもありました。まああちらほどエッジは効いていませんが。2曲に参加するゴールドスタインのアコーディオンは哀愁満載でこれも良い味を出していました。

正直に言ってしまうと、満ちるのボーカル自体は私にとって凄く魅力的というほどではありません。しかし全編に渡って良い雰囲気のボーカルは聴かせてくれていますし、満ちるの曲とアレンジも良く。凄腕メンバーの技は随所に光っていて、アルバムとしてはかなり良い出来だと思いました。

秋の夜長に聴くには最高のアルバムだと思います。オススメ!

アルバム名:『souiception』
メンバー:
Monday Michiru(vo, fl,arr)
Adam Rogers(g)
Boris Kozlov(upright bass)
Nate Smith(ds)
Alex Sipiagin(tp, flh, bass trumpet)
Gil Goldstein(accordion)4,9
Ed Motta(vo)4

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CA-800Ⅱのメンテナンス その3

パワーアンプとして調子良く使っていたヤマハのCA-800Ⅱから、とうとうブチブチノイズが不定期に発生するようになってしまったのは報告しました。代役として控えのビクターJA-S75を使用していたのですが、どうもいまいちしっくりこないのでCA-800Ⅱをメンテナンスすることに。

その前に、電源ランプが切れてしまったので既に交換しています。10年位前に秋葉原で入手した新品の麦球と小型ソケットがあったのでそれを使いました。ソケットにはリード線が付いているので基板の所で半田づけすれば良いのですが、その基板を取り外すのがめんどうなので線を途中でつなぎました。電球が緩むのを避けるため自己融着テープで巻いてからゴムのランプホルダーへ挿入。これで十数年は切れないはず。

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さて、本題のノイズ対策です。パワーアンプ基板に実装されている足が真っ黒になったトランジスタがその原因だろうということは容易に想定できます。初段差動アンプとカレントミラーの3個がそれです。使われているのは2SA763(WL)。このトランジスタは廃盤なので代替品にします。ヘッドホンアンプを作った時に2SA1015(GR)を10個買ったのを思い出しました。規格を見るとこれで代用可能です。

差動アンプに使う場合、本来はhfeが揃ったペアトランジスタを使用するのが望ましいのですが、私が持っているのはバラ。半導体チェッカーでhfeを測定して値が近いものを使うことにしました。この測定では実際に使う状況と異なるので目安程度ということになりますが、厳密に揃えなくても音を聴いて分かるほど歪は増えないと思います。

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交換したのは中央付近の緑の電解コンデンサの上と右。この際なので全半田もやり直しました。半田ゴテを当てて半田をちょっと追加する程度です。再半田はそれ程手間はかからないのですが大変なのはその後、フラックスの除去です。無水エタノールで洗浄します。ヒューミシール(防湿剤)も一緒に取れてしまいますがそのままでも特に問題はないはず。

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左右の基板とも同じように交換。元通り組み直して出力オフセット電圧とアイドリング電流の調整しました。ここで問題発生。B級増幅のアイドリング電流は調整できるのですが、A級増幅のアイドリング電流は左チャンネルだけ必要な電流を流せません。A級増幅は使わないのでこのままでも困らないのですがちょっと気になります。

ということで、バイアス回路のトランジスタで足が真っ黒だったものを交換することに。2SC458(C)が使われていて、これは手持ちがあるのですがDP-3000修理用にとっておきたいので、やっぱりヘッドホンアンプを作った時に買った2SC1815(Y)で代用することにしました。規格は問題ありません。温度特性は異なるのでしょうが、フルパワーで使わないしA級増幅も使わないので問題はないでしょう。問題がなかった右チャンネルも交換。

元々実装されていたのが旧パッケージなので、新パッケージにするとトリッキーな実装が必要になります。これは温度補償用トランジスタなのでトランジスタの平面部分をヒートシンク側にしなければならないからです。なので一度は交換をためらいましたが上記の問題が発生したため交換。足をクロスさせて実装しました。

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組み直して再度アイドリング電流を調整。B級増幅は問題なし。A級増幅はやっぱり左チャンネルが上手く調整できません。ヒートシンクが付いたバイアス用トランジスタが触れなくなるほど熱くなるのも気になります。が、原因を探るのがめんどうになったので、A級増幅はアイドリング電流を流さないよう調整ボリュームを絞り切ってこのまま使用することに。ひょっとするとA級増幅切替スイッチが接触不良なのかも? いつかまた様子を見る予定です。

今回交換したトランジスタは以下の8個。

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しばらく使用して様子をみていますがブチブチノイズは発生しなくなりました。トランジスタ交換で高音がスッキリしたかも? 今はこのCA-800Ⅱの音が気に入っています。中音がしっかり出て押し出し感が強いのでジャズを聴くのに向いているんです。ビクターのJA-S75は高音がとても爽やかで中音が少々引っ込み加減。これはこれで良い音でこちらの方がハイファイな感じはするとは思いますが、今の私にはちょっとしっくりこないのです。

トランジスタを8個交換しただけで、大したコストはかからずにまた良い音を聴けるようになりました。CA-800Ⅱにはまだまだ頑張ってもらいます。気に入ったオーディオ機器を修理しながら使うのもこれまた楽し。

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デノンのカートリッジは大幅値上げされたんですね。

今更やっと気付いたのですが、10月1日からデノンのカートリッジが大幅値上げされています。まあ今のご時世こうなることは理解できるのですが寂しい限りですよね。

下記がデノンのサイトにあります。
カートリッジ希望小売価格改訂のお知らせ

DL-103は26,000円から36,750円へ。おいおい、10,750円も値上げかい!

こんなに値上げしないと商売が成り立たないということは、余程数が売れないということなのでしょう。今やレコードを聴いているのは一部のオーディオマニアだけだということが改めて分かりました。そういうマニアはデノンなんか使わずもっと高級なカートリッジを使っているということも想像がつきます。DL-103は定番として持っているんでしょうけれど、使わないからそれ以上売れません(笑)。DJ用の需要はあってもデノンのカートリッジはそちらには売れませんしね。

他メーカーのカートリッジがモデルチェンジして高騰していく中、デノンは安価にて良いカートリッジを提供し続ける良心的なメーカーだと尊敬していました。でもその尊敬もこれで終わりました。まあデノンのレコードプレーヤーなんかは昔のプライドをかなぐり捨て、早々にライバル会社テクニクスのOEMを販売することになっているのだから、今回の値上げも当然の成り行きと言えばそれまでか・・・。DL-103が今後も販売され続けることを願うならば、値上げはやむなしと理解すべきなのでしょう。

私はと言えば、ご存知のとおり昔の廉価MM型でレコードを聴けば良いと悟りましたので、デノンのMC型が値上げされようがどうってことありません(笑)。DL-103とDL-103Rの音は記憶に刻まれているのでそれでよし。昔の廉価MM型は数がたくさん出たから廉価なのであって、今の数で商売するとなればかなり高くなってしまうんでしょうね。昔の廉価は今の廉価とは意味が異なると思います。

その昔、シュアーのカートリッジは1ドル360円とかの時代だったから高価だったのであって、今の円相場なら3分の1の価値しかないわけです。もちろん昔は大量生産して世界中でたくさん売ったから、高性能カートリッジが安く販売できたことは言うまでもありません。それを日本は高く買わされていたのです。まあ実売価格は定価よりかなり安かったので、意外とまっとうな価格で実売されていたのかもしれませんが。

少し前まではアナログオーディオ再発見とか言ってましたし、昨年はレコードがかなり売れたたとか言っていましたが、最近の状況から察するに、やっぱり一般的にはアナログは衰退の一途をたどっているのではないかと思いつつあります。

世間一般がどうあれ、私はこういうカートリッジでレコードを楽しみ続けていくつもりです。アナログ万歳!

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こんなところに引き継がれていました。

昨日に引き続きオーディオの話。いきなりですが下の写真をよく見て下さい。左がベスタクスのVR-7Sで、右がグランツのMG-2S。これらは同じカートリッジですよね。

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MG-2Sを聴いて、このカートリッジの押し出しの良さはDJ用にいいんじゃないかと書きました。それがそのとおりベスタクスのDJ用カートリッジになっていたのです。どういう経緯でこういうことになったんでしょうね? 理由はどうあれ技術が引き継がれているなんて嬉しいじゃありませんか。

ベスタクスには針形状を変えた2種類があります。VR-7Sが丸針でVR-7Eが楕円針。カートリッジも交換針ももちろん現行品です。MG-2Sにベスタクスの針を付けて聴くのも一興かな。

さて、この手のOEM?は他にも見られます。たぶんメーカーによってチューニングを変えるとかしていなくて、表面の印刷を変えているだけで中身は全く同じものでしょう。価格が安いですからね。

左 : SUMIKO Pearl   右 : SHELTER MODEL201

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その後、SUMIKO PearlがどこのOEM品なのか分かりました。2014.9.24
SUMIKOのMM型カートリッジの正体を暴く。

左 : SUMIKO Oyster  中央 : JICO JR-525C  右 : A'pis AP-12D
定価で売ることはないでしょうがSUMIKOの定価は・・・。私ならA'pisを買いますね。ブランド名にお金を払うのでなく、性能に見合った対価を払う賢い人は自ずと結論が出ることだろうと思います。これは日本製のカートリッジでしょうから、どこかを誇張するのではなく素直な音だと思いますよ。

更にその後、SUMIKO Oysterの正体が分かりました。 2016.2.13
音は廉価品ならではの高出力で明るく元気の良い音。少々がさつです。
このクラスの代表M44Gと同種の音でした。

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Oysterの音をアップグレードしたいなら、JICOの楕円針、S楕円針、SAS針を付ける手もあります。これにSAS針はさすがにアンバランスだとは思いますが、針で音が決まってしまうということを実証するのには面白いトライかもしれません。

この手のオーディオ用カートリッジは数がそれほど出ないでしょうし、廉価品ともなれば利益は微々たるものでしょうから自社独自開発は無理なのでしょう。少しでも数を売らないと、プラスチックモールド部品を成型する金型を減価償却できないはずです。

話は少し変わりまして、気に入って使っていたアンプCA-800Ⅱから不定期にブチブチノイズが発生するようになりました。最近毎日使っていたので、いよいよトランジスタがダメになったようです。足が真っ黒になったトランジスタは交換しなければならないでしょう。凄く古いものなのでしょうがありませんね。今はJA-S75を使用しています。

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新たに仲間が2個増えました。

新譜紹介は一旦休止してオーディオ記事に戻ります。打ち止めだったはずの廉価カートリッジ探究。ところが・・・、新たに仲間が2個増えてしまいました(笑)。

まずはこれ。東芝オーレックスのC-550です。ヤフオクで本体とサードパーティの未開封新古針をそこそこの安さでゲット。(正しくはC-500の本体だと判明。ヤフオクの有名な出品者はここでも適当なことを言ってました。)

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この頃東芝はエレクトレットコンデンサー型カートリッジとか奇抜なものを作って話題になっていました。一方でMM型カートリッジもあり、これは例のサイトによるとエクセルのOEM品らしいです。当時の多くのレコードプレーヤーに付属した廉価なC-210M(これもエクセルのOEM品)というカートリッジがあり、それの改良版のようです。スタイラスチップやカンチレバーに特色があったのですが当時のオリジナル品は今や入手困難。

その後C-210MはナガオカのOEM品だろうという結論に達しました。
拙ブログの下記記事を参照。
オーレックスのMM型カートリッジはナガオカのOEM品?

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これは少し高級なカートリッジなので、オルトフォンのヘッドシェルに取付けてみました。シェルリード線はいつものPCOCC。高級感を演出するために取付けネジを金メッキのものにしてみたのですが趣味悪いですかね? このカートリッジのデザインは記憶の片隅に残っていて、今手元に置いてみたかったのです。

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私の好きな青色の透明ノブがなかなかお洒落だと思いませんか。カートリッジ本体は小ぶりなのに比べ、交換針のノブが大きいのがデザイン上の特徴。高音がきれいに出て明るく自然な音色はビクターZ-1Sに似たものでした。C-500/C-550は接合ダイヤとアルミパイプカンチレバーの針を付けたのではこのクラスの標準的な音です。

その後、無垢ダイヤとカーボンファイバーカンチレバーの針N-550Ⅱを聴いて、このカートリッジはこの針でないとダメだと分かりました。

続きまして三洋オットーのMG-25L。どうせ高値更新されるだろうと思って安易に入札しておいたら、他に入札者がいなかくて落札してしまいました(笑)。シェル付で針は使えるとのことでした。かなり古いものなのでデザインがレトロ。

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これもエクセルのOEM品。エクセルが自社ブランドで販売していたES-70SかES-70Fと共通仕様だと思われます。ヤフオクではエクセルのカートリッジは高めの落札額になりますが、オットーは人気がなく安いのでお得。

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ES-70Sは A'pis Japan  で以前販売していたカートリッジAP-25Dと多分同じもの。A'pisの交換針の型式はMG-25LとAP-25Dで共通のST-25D。JICO で以前販売していたカートリッジJR-45Cとも同じもので、今は交換針JR-29Mだけを販売しています。というわけである意味純正の交換針が今でも入手できる貴重なカートリッジなのです。

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前に入手したMG-27Lと同様、これも本体とベース部分が緩々でした。本体にあるツメで何とか固定されている状態。なのでツメを緩めて本体を外し、本体とベース部分を再接着しました。

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こちらはいつものベスタクスのヘッドシェルへ取付けてシェルリード線はPCOCC。あか抜けないごついデザインはそれほど悪くありません。どうもダンパが軟化してしまっているようで、カートリッジとレコードの隙間がかなり狭いです。反りのあるレコードでも底を擦るまでには至らないのでこのまま試聴可能。明るく爽やかな音ですが少々軽いかも。そのうち現行交換針ST-25Dを入手する予定(結局現行針は入手することなくリサイクル)。

というわけで、入手したカートリッジはとうとう10個に! 私って凝り性だから一旦嵌るとこの有様ですよ(笑)。最前列がエクセルOEM、2列目がグランツ&グランツOEM、3列目がその他。

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カートリッジって集めて並べると楽しい! 実にバラエティーに富んだデザイン。

その後ここに掲載した10個は全てリサイクルしました。今は手元にありません。全てアルミカンチレバーに接合ダイヤ針なので音質的には大差なく、敢えて手元に残すほどの物はなかったからです。過度の期待は禁物。このクラスの音質で良いのであれば現行の廉価品で十分間に合います。音質という観点では、わざわざ劣化した古いものを使う必要はないと思います。2014.7.1

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