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ラルフ・アレッシがECMからアルバムを出しました。

前回のニコラス・ペイトンのように黒人音楽としてのジャズがあれば、芸術音楽としてのジャズもあります。最近の芸術音楽としてのジャズはECMレーベル独り勝ちみたいな状況になっていますよね。ベテランから若手まで、年間たくさんのジャズアルバムを出しています。そんなECMの新譜。

P86ラルフ・アレッシ『Baida』(2012年rec. ECM)です。メンバーは、ラルフ・アレッシ(tp)、ジェイソン・モラン(p)、ドリュー・グレス(b)、ナシート・ウェイツ(ds)です。本アルバムのラルフ・アレッシを始めニューヨーク・ダウンタウン周辺のジャズマンは、数年前はマイナー・レーベルからしかアルバムを出せず、そちらを追いかけていないと知り得ない状態にありました。アレッシの場合、前アルバムはCAM JAZZから出たので、それほどマイナー・レーベルというわけではないですが。

それが最近は次々とECMからアルバムを出すような状況になってきて、多くの人の目に触れるようになてきたのは良いことだと思います。まあマンフレート・アイヒャーのプロデュースということなので、きっちりその枠に嵌ったクールな肌触りのジャズに落とし込まれてしまうのですが、元々こういうサウンドとは相性が良い人達なので違和感はありません。

本アルバムのサイドマンであるピアニストのジェイソン・モランはチャールス・ロイドのECMアルバムで重要メンバーとして名を連ねてきたわけですが、次あたりはECMから自身のピアノ・トリオかソロを出すんじゃないかと思っています。モランは今のところブルーノートの専属です。でもモランの音楽性と今のブルーノートの方針を考えると、ECMから出した方が良いように私は思うのですが・・・、モラン本人はやっぱり黒人音楽としてのジャズに拘りがあるのかな?

ベースのドリュー・グレスはECMに録音ありましたっけ?(ECMコレクターの910さんによればあるとのことでした。やはりそうでしょうね。) ドラムのナシート・ウェイツはたぶんこれがECM録音デビューですよね?(こちらはそのとおりとのこと。)本人のリーダー作ではなくても、ニューヨーク・ダウンタウン周辺の人達に、次々と光が当たっていく状況は歓迎すべきことだと思います。世界的な大きいレーベルに録音しないと、やはり知名度が上がらないと思うんですよね。

さて、前置きが長くなってしまいましたのでそろそろ本アルバムの内容にいきましょう。私が感じたのは、トーマス・スタンコのECMアルバムに似た雰囲気のものだということです。スタンコは今年、ニューヨーク・カルテット名義でニューヨーク・ダウンタウン周辺の人と一緒に『Wistawa』を出していますよね。スタンコの場合はヨーロッパならではの格調と哀愁が漂よいますが、アレッシにはさすがにそれはありません。もう少し硬質で端正な感じです。

アレッシが作曲した11曲が収められています。テーマのメロディーは比較的分かりやすいです。テーマをやった後は曲によりアレッシのソロからだったり、モランのソロからだったり、モランとの掛け合いだったり、アレンジを聴かせつつソロをきちんと聴かせます。ソロの部分では時に自由なビートのフリー・ジャズへ突入。アレッシとモランの寄り添いや反応におけるマッチングは良好です。

グレスはベテランの貫禄で落ち着いてサポート、ウェイツは鋭い反応を見せつつも意外と落ち着いた風情。4人のまとまりは良く、ECMの水準は難なくクリアしているアルバムに仕上がっていると思います。全体を通して聴くとちょっと地味かもしれませんね。でもアレッシの端正なトランペットの魅力は音色やフレージングからしっかり伝わってきます。

アルバム名:『Baida』
メンバー:
Ralph Alessi(tp)
Jason Moran(p)
Drew Gress(b)
Nasheet Waits(ds)

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コメント

ECMらしさなのか、それとも彼らの本質なのか、こういう方向性が自然で、いいアルバムになってました。このレーベルでは珍しく、普通にワン・ホーン・クァルテットの編成なのも良かったです。ラルフ・アレッシはスティーヴ・コールマンのアルバムに参加するようになってから(’95年頃かな)名前は知っていましたけど、注目するようになったのは最近です。そっち方面にも首を突っ込んだ人なので、影響も見え隠れして面白いですね。

Drew Gressは他にもジョン・アバークロンビーやジョン・サーマンのリーダー作でECMでの録音はありますが、Nasheet Waitsはたぶんこれが初参加だったと思います。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2013年10月27日 (日) 07時39分

910さん

こんばんは。
確かに方向性は自然で良いアルバムですよね。
ラルフ・アレッシがスティーヴ・コールマンと共演していたとは知りませんでした。
音楽性としてはそちら方面ですから納得です。
ECMは最近ますますジャズにとって重要なレーベルになっているような気がします。
ドリュー・グレスの録音はありますよね。
ナシート・ウェイツはやっぱりECM初録音参加でしたか。
教えていただきありがとうございます。
TBありがとうございました。

投稿: いっき | 2013年10月27日 (日) 21時14分

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