これまでの路線と変わったデイヴ・ホランドの新譜
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デイヴ・ホランドの『プリズム』(2012年rec. Dare2 RECODE)です。メンバーは、デイヴ・ホランド(b)、ケヴィン・ユーバンクス(g)、クレイグ・テイボーン(p, fender rhodes)、エリック・ハーランド(ds)です。2010年の『パスウェイズ』以来、3年振りの新作ということになると思います。これまでのホーン陣にヴァイブまたはピアノを加えて、ホランドが作った現代性を帯びた楽曲を演奏するという路線から変更になりました。
今回はホーンなしというのが意外ですよね。ギターのユーバンクスを多めにフィーチャ。そこに現代ニューヨーク・ダウンタウン・シーンからメジャーなところまで、活躍目覚ましいテイボーンが加わり、ドラムは重用してきたハーランドという布陣。曲はホランドが2曲、ユーバンクスが3曲、テイボーンが2曲、ハーランドが2曲作っています。つまりメンバー全員がほぼ同じ割合で曲を持ち寄ったことになり、演奏順序もほぼ順番通りに2巡させるという構成。
ホランドが全て仕切るというのではなく、4人が対等な立場で曲を持ち寄り、メンバーが自分の個性を生かしつつ、作曲者の意図に基づいて各曲を料理していくというような作りになっているように思います。曲の作りも必ずしも現代性を強調するようなものではありません(テイボーンの曲を除く)。全体を通して聴くとちょっと時代が後戻りしたようにも感じます。
ユーバンクスの曲はロック色濃厚な2曲とバラード1曲、ホランドの曲はブルース系とフュージョン系(今回ホランドが現代性を持ち込んでいないのは意外)、テイボーンの曲は現代性濃厚な少し捻ったもの、ハーランドの曲は意外とキャッチーなメロディーで黒人性は薄いもの、といった具合になっています。それぞれの個性が出ているので、誰が作曲したのか知ってから聴くとなかなか面白いものがあります。どれも編曲を聴かせつつ各人のソロをガッツリ聴かせる構成。
私が一番気に入った曲はホランドの《ア・ニュー・デイ》。フュージョン系の曲で、ギターは全く異なるのですがパット・メセニー・グループに通じるような解放感と心地良さがあります。タイトルどおり「新しい1日」が始まるワクワク感が溢れていて、聴いていると元気が出てくるのがお気に入りポイント。ジャズとしてのカッコ良さならテイボーンの《スパイラル》が一押し。タイトルどおりの捩れたメロディーで不穏なジャズが繰り広げられます。
まあこれだけの面子が揃っているわけですから、演奏の出来不出来を云々するレベルにあるはずもなく、各演奏に安心して浸れます。特に新しさや刺激とかを期待するのではなく、現代の実力あるジャズメンが集まって、それぞれの技を出してグループ表現したらこういう風になりましたという好例として聴きましょう。もちろん出来は良好。
アルバム名:『PRISM』
メンバー:
Dave Hollando(b)
Kevin Eubanks(g)
Craig Taborn(p, fender rhodes)
Eric Harland(ds)
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コメント
デイヴ・ホランドのバンドというと、ホーンがフロントでピアノレスというイメージでしたが、こういう編成でもけっこう聴かせてくれる素晴らしいアルバムでした。時にロック的にもなったりして。
ホランドの名前が少し大きめですけど、おっしゃる通り、4人対等なのかな、と思わせる曲提供と演奏でした。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2013年10月 8日 (火) 06時52分
910さん
こんばんは。
そうなんですよね。
今回のバンドは従来のホランドのものとは異なっていました。
これはこれでなかなか良いと思うし楽しめました。
ロック色は強めでしたね。
ユーバンクスの好みなのかも?
どうして今回4人対等のようなバンドを組んだのか興味深いところです。
TBありがとうございました。
投稿: いっき | 2013年10月 8日 (火) 20時45分