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新しいリズム陣の活躍に好印象。

新譜紹介です。さっき com-post のページを開いたら、クロスレビューがこのアルバム!あらま、こんなの取り上げるなんて意外です。あちらのレビューはまだ読んでいません。何と書いてあるのか楽しみです。

P192 チック・コリア『ザ・ヴィジル』(2013年、STRETCH RECORDES)です。メンバーは、チック・コリア(p,syn)、ティム・ガーランド(ts,ss,b-cl,fl)、チャールズ・アルトゥラ(el-g,ac-g)、アドリアン・フェロー(b)、マーカス・ギルモア(ds)、パーネル・サターニノ?(per)1,2,3、ゲイル・モラン・コリア(vo)5、スタンリー・クラーク(b)6、ラヴィ・コルトレーン(ts)6です。ジャケットを見て思いました。ロバならぬ老馬にまたがる騎士姿のチックは、ジャズ道精神に従い銀河を旅する現代のドン・キホーテなのかもしれないと・・・。

それはさておき、最近のチック、リターン・トゥ・フォーエバーを何度も再結成したりして、もううんざりです。はっきり言ってそんなチックにあまり興味はありません。今度だって、結局はエレクトリック・バンドの延長なのだろうし・・・。しかし、メンバーを見てこれは聴かなきゃまずいだろうという気持ちになりました。

マーカス・ギルモア(ロイ・ヘインズの孫)の参加です。この人はヴィジェイ・アイヤ・トリオのドラマーであり、ギラッド・ヘクセルマンのアルバムとかに参加する現代先端ニューヨークの人だからです。これまでの旧態依然としたチックのバンドに、まさか参加するとは思ってもいませんでした。チックのバンドが現代先端ニューヨークのドラマーを得てどんな風になるのか? 興味津々でこのアルバムを聴きました。

結果は、ギルモアとフェローの作り出す重厚なグルーヴがカッコいいの一言でした。ともすると軽薄で上滑りになりがちなチックのバンドに深みを与えています。ギルモアが細分化されたビートを巧みに操りグルーヴに繊細な起伏をつけていく様が素晴らしいです。そこにとてもメロディアスなベースながら低く絡み付くフェローがまたいい。ジョン・マクラフリンに「次代のジャコ・パストリアス」と言わせるだけあります。でもジャコにはなかった深く沈み込む感じがあり、私的にはこの沈み込み具合が◎。

サックスのティム・ガーランドとギターのチャールズ・アルトゥラはチックのバンドに参加するだけのことはあり、及第点といった塩梅でしょうか? チックはいつものチックです。1曲目《ギャラクシー・32・スター・4》は、タイトルといいメロディーといいリズムといいキメといいチック節炸裂。2曲目《プラネット・チア》は、これまたチックお得意のスパニッシュ調。アルトゥラのアコギは鉄板/お約束でしょうね(笑)。

3曲目《ポータルズ・トゥ・フォーエバー》はギルモア&フェローが大活躍。こういうミディアム・テンポでたゆたうようなグルーヴはレニー・ホワイトとかには出せませんよね。グルーヴはギルモアに委ね、フェローはとても自由にメロディアスなラインを弾いているように感じます。この2人の関係がカッコいいグルーヴの鍵だと思います。中盤の4ビートのスイング感は柔らかいです。

4曲目《ロイヤリティ》は典型的なチック節ワルツ。物語性を感じさせるような曲とピアノは、エレクトリック・バンドの3作目あたりの雰囲気かも? ギターとテナーはチック・サウンドの範疇にしっかり収まっています。ドラムとベースの柔軟なグルーヴはいいですね。5曲目《アウトサイド・オブ・スペース》はゲイル・モランが登場して懐かしのリターン・トゥ・フォーエバー風味。まあチックはチックなのです。ギルモアは比較的普通に叩いてますね。なのでベース・ラインの美しさが良く分かります。ガーランドのバスクラとアルトゥラのアコギは凡庸。

6曲目《プレッジ・フォー・ピース》はメンバーをがらりと入替。サックスがラヴィ・コルトレーンでベース(アコースティック)がスタンリー・クラーク。スピリチュアルでフリーな雰囲気の出だし、つまりコルトレーン・カルテットですな。コルトレーンの息子がいるわけですし。4ビートに入ってのチックのピアノはマッコイ・タイナーみたいなペンタトニックも(笑)。拍手が入っているけれどこれだけライブ録音?

ギルモアの4ビートは旧態依然のものとはやはり違います。細かいパルスの成分が混入。安易にエルビンをやってしまわないのが◎。スタンリーのベース・ソロは”モコモコ”で冴えが感じられません。バックに回っても存在感は薄いです。で、ラヴィのテナー・ソロ。この部分は『スリー・カルテッツ』を彷彿とさせますよね。良いソロをとっています。でも、ジョン・コルトレーンの血を受け継いだラヴィは、ジョン・コルトレーンのアドリブの方法論を受け継いだマイケルを越えられないのか・・・。チックとギルモアの煽りが強烈。

ラスト《レガシー》はまたまたエレクトリック・バンド。でもフリーっぽい感じがあります。ここでのギルモアのドラミングがやっぱりカッコいいのです。フェローも攻めていますね。現代先端ビートというのがこれなのですよ。エキサイティングなビートに乗って3人が攻めるソロを聴かせます。ラストはギルモア以外の自由な掛け合い。エレクトリック・バンド風味の演奏の中ではこの曲が一番カッコいい演奏かも。

このアルバム、私はギルモアのドラミングがチックのサウンドに新しいものを注入しているところに魅力を感じます。フェローの参加も良い方向に作用していると思います。チック自身は変わり映えしないのですが、ギルモアとフェローを起用したチックには拍手を送りたい。特に3曲目とラストにその成果が表れています。

ロイ・ヘインズと組み、当時としては斬新な『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』というピアノ・トリオのアルバムを作ったチックが、ヘインズの孫を起用して自身のバンドに新しい風を取り入れる時代になろうとは。何か感慨深いものがあります。

アルバム名:『THE VIGIL』
メンバー:
Chick Corea (p, syn)
Tim Garland (ts, ss, b-cl, fl)
Charles Altura (el-g, ac-g)
Hadrien Feraud (b)
Marcus Gilmore (ds)
Pernell Saturnino(per) tracks:1,2,3
Gayle moran Corea(vo) track:5
Stanley Clarke(b) track:6
Ravi Coltrane(ts) track:6

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ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

チック・コリアはいつものペースでの演奏のような感じですけど、やはりベースとドラムスを替えたことで、バンドサウンドがRTFともエレクトリック・バンドとも違う印象に仕上がっているのはさすがだと思います。

ジャケットは、私もちょっとう~ん、となってしまいましたが(笑)、まあ、演奏が良ければいいということで...。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2013年8月17日 (土) 09時17分

910さん

こんばんは。
やっぱりチックはいつものチックですよね。
良くも悪くもそれがチック。
ベースとドラムはこのバンドに良いサウンド変化を与えていると思います。
総評としては良いアルバムなのではないかと思いました。
ジャケットはこういう一種悪趣味がチックらしいと思いました(笑)。
TBありがとうございました。

投稿: いっき | 2013年8月17日 (土) 19時50分

お久しぶりです。

チックコリア購入してもblogにあげないこともあったりしますが、これは、メンバーがメンバーなだけにとても面白かったです。
そして、あまりだめ出しもなく(笑)、、とても楽しく聴けました。
で、、、フェローのベースもすごかったのですが、私の結論はやっぱりロイさまのお孫さま、、Marcus Gilmoreのしなやかな美しい「煽り」♪
6曲目でのチックコリア&ギルモアのソロ奏者の煽り方すごかったですよねぇ。私も、燃えましたよ。
最後の演奏もかなりいけてるぞぉ、と、思いました。

投稿: Suzuck | 2013年9月14日 (土) 10時00分

Suzuckさま

お久しぶりです。

>チックコリア購入してもblogにあげないこともあったりしますが、これは、メンバーがメンバーなだけにとても面白かったです。

Suzuckさまがチック・コリアをあげているので、珍しいと思いました。

>そして、あまりだめ出しもなく(笑)、、とても楽しく聴けました。

そうですよね。そんなに悪くないと思います。私も楽しく聴きました。

>で、、、フェローのベースもすごかったのですが、私の結論はやっぱりロイさまのお孫さま、、Marcus Gilmoreのしなやかな美しい「煽り」♪

やっぱりマーカス・ギルモアのドラミングがこのアルバムのキモだと思います。

>6曲目でのチックコリア&ギルモアのソロ奏者の煽り方すごかったですよねぇ。私も、燃えましたよ。

ですよね。煽りまくってました。チックのこういうガッツ溢れるジャズもなかなか良いと思いました。

>最後の演奏もかなりいけてるぞぉ、と、思いました。

私は新チック・バンドとしてのこういう演奏が好きです。

トラバありがとうございました。
私も後ほどお邪魔します。

投稿: いっき | 2013年9月14日 (土) 12時20分

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