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モフェット弾きまくり。

1週間ぶりの更新は新譜紹介です。これも出てから少し時間が経ってしまいました。

P2 チャーネット・モフェット『SOS スピリット・オブ・サウンド』(2012年rec. MOTEMA)です。メンバーは、チャーネット・モフェット(ac-b,fretless el-b,piccolo bass guitar,vo)、アンジェラ・モフェット(tamboura,spoken word)、チャーネット・”マックス”・モフェット(ds,tabla,vo)、マーク・キャリー(p)、オラン・エトキン(cl,ts)、ババツンデ・リア(per)、アマレイア・モフェット、テッサ・スーザー、ヤナ・ヘルゼン(vocals)です。フォローしている人ではないので最近のモフェットが何をやっているのか未知でしたが、ネットで試聴して面白そうだったので購入。

ライナーノーツを読むと、ドラマーであり息子のマックスと女優であり妻のアンジェラと娘のアマレイアとのモフェット・ファミリー・バンドによるアルバムということのようです。そういう家族の絆を基に、モフェットの音楽観をあらわしたコンセプチュアルなものになっています。サウンド的にはワールド・ミュージックを色濃く反映したジャズ。最初から最後までモフェットが最前面にいて、多重録音も交えとにかくベースを弾きまくっているのが印象的。オーネット・コールマンの《ロンリー・ウーマン》を除く曲はモフェットの作曲。

冒頭《ベースランド》はアコースティック・ベースによる独奏で、その旋律がなぜか津軽三味線を思い起こさせるから面白い。インド的な旋律なんでしょうが、私にはかなり日本的に聴こえます。2曲目《シーカー・オブ・トゥルース》は奥さんアンジェラの詩の朗読が入ってスピリチュアルなムード。これもインド的。アンジェラはtambouraというインドの楽器?も弾いています。殆どの曲にtambouraで参加していてサウンドにインド風味を加味。モフェットはフレットレス・エレベで歌います。

3曲目《オペラ》は娘アマレイアのボーカル(歌詞はなし)が入ります。モフェットのフレットレス・エレベの旋律やドラムのグルーヴからは、オーネットのプライム・タイム・バンド的なサウンドも聴こえてきます。4曲目《ホープ》はまたアンジェラの詩の朗読が入ってインド系。コルトレーンの『至上の愛』にも似たメロディーが出てきます。モフェットはここでもフレットレス・エレベを弾いています。

5曲目《ナチュラル・ヘリテイジ》はカントリー的なのが面白いです。モフェットみたいな今を生きる黒人にとっては、カントリーもアメリカに生きる自分達の”ナチュラル・ヘリテイジ(自然遺産)”になるんでしょうね。6曲目《スイング・ラガ》はタイトルからもわかるようにインド系。ヘルゼンのボーカルが入り、モフェットがピッコロ・ベースをギターのように奏でるこれは、ザビヌル・シンジケートがやっていたワールド・ミュージックに雰囲気がかなり似ています。

7曲目《ブルース・ウォーク・グルーヴ》もインド系。8曲目《オーヴァーパス》はパーカッションが効いてアフリカ的。テナーサックスが入って、グルーヴの具合からはオーネットのプライム・タイム風にも感じます。ベースの旋律からはリチャード・ボナ~ザビヌルの匂いも。9曲目《ロンリー・ウーマン》は、モフェットがフレットレス・エレベでひたすらソロを展開。ハーモニクスも交えつつ、スピリチュアルなジャコ・パストリアスと言った感じか。途中に《至上の愛》のメロディーが入ってました。やっぱりね。

10曲目《フォー・ドーズ・フー・ノウ》は4ビート。マーク・キャリーのピアノが入って所謂ジャズのイメージが最も強い曲。曲やビートからはオーネットを強く感じます。ラスト《スピリット・オブ・サウンド》は冒頭同様アコースティック・ベースでソロ。アルコ(弓弾き)も交えた多重録音。バックにはアンジェラのtambouraがそっと奏でられています。

こんな感じでオーネット、コルトレーン、ザビヌルなんて人物が浮かんでくるサウンドを次々と展開(各曲は最大で6分台と短め)。最初から最後までサウンドには一貫性があります。前面に出るモフェットを家族がバックアップする姿は微笑ましくもあります。私としてはかなり楽しく聴きました。

話題性は薄いかもしれませんが、現代ジャズのルーツを知る上で、とても面白いアルバムになっていると思います。

アルバム名:『SPIRITS OF SOUND』
メンバー:
Charnett Moffett (acoustic upright bass, fretless electric bass, piccolo base guitar, vocals)
Angela Moffett (tamboura, spoken word)
Charnett "Max" Moffett(drums, tabla, vocals)
Marc Cary (piano)
Oran Etkin (clarinet, tenor saxophone)
Babatunde Lea (percussion)
Amareia Moffett, Tessa Souter, Jana Herzen (vocals)

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