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これはアートなジャズ!

新譜紹介です。「綜合藝術茶房 喫茶茶会記」 で定期的に行われている「益子博之=多田雅範 四谷音盤茶会 vol. 09」(私は不参加)のリストを見てチェックした1枚。FM-NHKの「ジャズ・トゥナイト」でも2曲かかって、購入を決めました。

P145 ブノワ・デルベック/フレッド・ハーシュ・ダブル・トリオ『ファン・ハウス』(2012年rec. Songline Recordes)です。メンバーは、ブノワ・デルベック(p)、フレッド・ハーシュ(p)、ジャン・ジャック・アヴェネル(b)、マーク・アライアス(b)、スティーヴ・アルゲイエス(ds,live electoronics)、ジェリー・ヘミングウェイ(ds)です。フランスのトリオとニューヨークのトリオが左右に分かれてフリー・ジャズを繰り広げます。ハーシュ率いるのがアライアスとヘミングウェイとは激渋! ニューヨーク・ダウンタウンの一癖あるこの2人、私はアライアスのリーダー・アルバムとヘミングウェイのリーダー・アルバムを持っていますが気に入ってます。

ジャケットに記載はないのですが、「四谷音盤茶会」のリストにあるように向かって右がフランス・トリオで向かって左がニューヨーク・トリオでしょう。エレクトロニクス音が右から聴こえますし、ラスト曲《ロンリー・ウーマン》のテーマを弾くのがハーシュだろうということで、そのように納得しています。

全10曲中8曲がデルベックの曲で、1曲がデルベックとアルゲイエスの共作、もう1曲がオーネットの曲です。多分簡単なテーマや進行順序程度を決めて、後はほとんど即興演奏になっていると思います。6人の音が適度な間合いで、離合集散を繰り返しながら進んでいくのが気持ち良いです。お互いの音がぶつかりあうのではなく、お互いの音を生かしていく感じで、落ち着いた雰囲気の曲が続きます。

このアートなサウンドに大きく貢献しているのが録音。クリアで芯がしっかりした音はオーディオ的にかなりの好録音です。シンバルの金物感、スネアの弾け具合、ベースの弦のうなり、ピアノの打楽器感とクリーンな響き、気持ち良い音が次々に現れては消えていく、音だけを追いかけていっても十分楽しめます。

フランスのトリオとニューヨークのトリオが全く違和感なく統一された意思の基に演奏しています。ドラム同士、ベース同士、ピアノ同士、またある時は、ピアノとベース、ピアノとドラム、ベースとドラムなど、6人が呼応する相手を変えつつ組んず解れつする展開もあり、展開をおいかけていくのが楽しいです。さり気なく混入されるエレクトロニクス音もセンスが良いいと思います。

メロディー、リズム共に不定形な演奏が多く、似たような雰囲気が続くので、ボケッと聴いていると飽きる可能性もあります。そんな中にあって《ナイト・フォー・デイ》のみは4ビートでメロディーも比較的はっきりしているので、6人のジャズ的アプローチが分かって面白いです。フランスだからどうとかニューヨークだからどうとかではなく、ジャズ的アプローチというのは最早ワールド・ワイドなものであることがよく分かります。

ラストの《ロンリー・ウーマン》は多分ハーシュのリクエストだろうと思われます。ハーシュがテーマを崩しながら弾いていき、デルベックも含め5人が伴奏に回ってこの曲の美しさを綴っていくところが面白いです。

益子さん、相変わらず渋いアルバムを選んでいますよね。6人が創り出すアートな空間に浸って下さい。なかなか良いです。

アルバム名:『FUN HOUSE』
メンバー:
Beboit Delbecq(p)
Fred Hersch(p)
Jean-Jacques Avenel(b)
Mark Helaias(b)
Steve Arguelles(ds, live electoronics)
Gerry Hemingway(ds)

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