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2013年6月

ジャズ喫茶「A&F」の遺産

だいぶ前にもこのネタについて書いたのですがもう一度書きます。タイトルはちょっと大袈裟かも(笑)。吉祥寺にあったジャズ喫茶の名店「A&F」が閉店した時、お店のCDが吉祥寺ディスクユニオンで一挙に販売された時がありました。その時に買ったCDが「A&F」の遺産というわけ。

P139 ロバート・スチュワート『ザ・フォース』(1996年rec. Quest Records)です。メンバーは、ロバート・スチュワート(ts,fl,syn)、エド・ケリー(p)、レジナルド・ヴィール(b)、ジェフ・”テイン”・ワッツ(ds)です。基本的にはワン・ホーン・カルテット。時々シンセのストリングス・オーケストラやエフェクト音が加わってサウンドに彩を添えています。

スチュワートは癖がある独特の節回し。サブ・トーンも”ズズズッ”って感じ。スピリチュアルなサウンドに乗せて、演歌のコブシを効かせるようにテナーを朗々とコテコテに吹いていきます。買った直後に聴いた時はこの癖が何か耳にこびり付いてしまい、何度も聴く気が起きなくなりました。とはいえ、「A&F」の遺産という意味で貴重なので売らずに手元に置いておきました。

久しぶりに聴いたのですが、結構このコテコテ・サウンドが良い(笑)! バラードにおけるサブ・トーン”ズズズッ”も悪くありません。男の色気溢れるテナー。最近はこの人の名を聴きませんが、どうしているのでしょうか? ワッツのダイナミックなドラミング、ヴィールの”ゴリンゴリン”ベース、2人に比べるとちょっと大人し目のケリーのピアノ、なかなか気持ち良いです。

さて、「A&F」の遺産の貴重なポイントを披露します。それは裏ジャケットにあります。

P140

曲名の頭のいくつかにマジックで印が付けてあります。多分これはお店でかける曲なのだろうと思います。CD全部を垂れ流すわけにはいかないので、LPレコードで言えば片面に相当するくらいの時間分、このCDからピックアップしてお客さんに聴かせてあげようというわけ。A&Fのマスター大西さん、結構マメな人なのだろうと思います。こういうマメな人って女性にはもてるはず(笑)。

ケースやライナーがタバコのヤニで黄色っぽくなっていたりするのもジャズ喫茶のCDらしいところ。タバコを吸わない私は、ケースをプラスチック・クリーナーと無水エタノールでクリーニングしたのは言うまでもありません。ただし印が消えないようにしました。

今、A&Fの遺産は4枚持っています。実は1枚だけ売ってしまいました。なのでセールの時には5枚買ったのです。もっとたくさん買っておけば良かったかも?

アルバム名:『the force』
メンバー:
Robert Steweart(ts, fl, syn)
Ed Kelly(p)
Reginald Veal(b)
Jeff "Tain" Watts(ds)

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ポップな風味が面白い。

新譜紹介です。ディスクユニオン・ジャズ館のサイトで試聴したら面白そうだったのでAmazonで買いました。

P138 ディエゴ・バーバー、ヒューゴ・サイプレス『411』(2011年rec. ORIGIN RECORDS)です。メンバーは、ディエゴ・バーバー(el-g,classsical-g,b)、ヒューゴ・サイプレス(desktop)、シーマス・ブレイク(sax,EWI)、ヨハネス・ワイデンミューラー(doble bass)、アリ・ホニック(ds)です。エレクトリック音や現代的ビートを取り入れたアルバム。

2作前のアルバムとはだいぶ印象が異なるアルバムになっています。
2作前のアルバムはこちら⇒ 哀愁のギタリスト、ディエゴ・バーバー。

バーバーのギターよりもサイプレスが操るデスクトップのエレクトリックなサウンドを主体にして作られたアルバムです。全曲バーバーとサイプレスの共作。冒頭《Timanfaya》はエレクトリックなサウンドとホニックの現代的なビートのデュオから始まります。ホニックの打ち込みビートを意識したようなビート感覚がカッコいい。これが2分少々のイントロ。

続く曲《オール・イン》はファンキーな現代ビート。アコースティック・ベースとバスドラのファットな感じはクラブ・ミュージックを意識させます。この曲が何となくエレクトリック化した頃のステップス・アヘッドみたいで懐かしいなあと思っていたら、クレジットを見て納得。ブレイクがEWIを演奏していたのです。これがステップス・アヘッドのマイケル・ブレッカーみたい(笑)。バーバーのギターはエフェクトぽいものが多分それでしょう。この曲好き。

3曲目《ポンチョ》は、ホニックの打ち込みっぽいブラシのビートが心地良いです。リバーブがかかったギターのカッティングが印象的。途中サイプレスのエフェクトがソロをとったり、何となく夢の中にいるようなサウンドが面白いです。

4曲目《ウォーク!》は、その名のとおりの歩くようなビートに乗って、ファンキーなギターで始まります。ジョン・スコフィールドがやるジャム・バンド系のサウンド。どこかすかした感じのブレイクのテナーがいい味出しています。

5曲目《ニュー・ヨーク・シティ》は、ヒップホップ系のビート。ギター?の”キャン、キャン”という音は、ドクター・ドレーのGファンクっぽいです。尖がったファットなビートの中、バーバーがクラシック・ギターをかき鳴らしているのが妙にマッチしていて意外。こういう意外な組み合わせがこのアルバムの各所にあって、なかなか一筋縄ではいかないのです。ここでもとぼけたブレイクのテナーがいい感じです。

6曲目《ターン・イット・オン》は、4つ打ちビート。私はこの手のユーロビート調が嫌いだと前に書きましたが、これは許せます。ホニックがブラシで叩いているのが面白いです。こういう打ち込みにブラシのビートがマッチしてしまう妙。ホニックって打ち込みビートとの相性が凄くいいです。ベースの単調なフレーズの繰り返しはヒップホップ的。これまたブレイクのテナーがいい味出しています。

ラスト《イースト・サイド・ストーリー》は、ヒップホップ系ビートをホニックが叩きます。ホニックのビートがやけに心地よいのはこのアルバムの肝。途中からファンクビートに変わり、またまた登場しました。ブレイクのEWI。これを聴くとやっぱり、ステップス・アヘッドのマイケルが浮かんでしまいます。EWIでザビヌルっぽいフレーズが出て来たりして、私は思わすニンマリ。う~ん、楽しい。ノリノリ。

トータル約36分という簡潔さ。80年代ジャズ/フュージョン~ヒップホップ/テクノ・ビートという、私にとってはかなりツボなサウンドでした。ポップでちょっぴりチープな雰囲気があるのはご愛嬌。よく聴くと凝っているけれど頭でっかちにはなっていない、体に来るグルーヴが良い感じです。

アルバム名:『411』
メンバー:
DIEGO BARBER(electric & classical guitars, bass)
HUGO CIPRES(desktop)
SEAMUS BLAKE(saxophone, EWI)
JOHANNES WEIDENMUELLER(double bass)
ARI HOENIG(drums)

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CA-800Ⅱのメンテナンス その1

ヤフオクで落札したYAMAHAのCA-800Ⅱを少しメンテナンスしました。このアンプは木製ケースなのでシールドが効きません。なので、内部のフレームにシールド構造を備えています。

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中央右側の鉄板に覆われた部分にフォノイコライザー基板があります。下はプリアンプ部でここも鉄板で囲んでいます。つまり小信号を扱う部分は鉄板で囲んでシールドしているのです。パワーアンプ部は左右に分けて実装してあります。ここはシールドなし。電源トランスは1個でそれなりに大きいもの。コンデンサは10000μFが2本。特別強力な電源部というわけではありません。

P134

下からみるとがっちりしたフレームであることがわかります。へこんだ部分にあるのが定電圧電源/スピーカー保護回路基板。このアンプはA級増幅とB級増幅が切り替えられます。その切替スイッチにはマイクロスイッチを使用。トランスの真下には木製ケースと固定するネジが切られています。つまり木製ケースとの固定は4隅のネジとトランス下のネジの計5個で行います。

これはとりあえずパワーアンプ部と定電圧電源/スピーカー保護回路部のみをメンテすることにして、先日上京の際に秋葉原で部品を揃えました。ところが今回は交換部品をリストアップする際にいくつかミスがあり、バイポーラ電解コンデンサが必要なところに普通の電解コンデンサを入手してしまったり、電解コンデンサの耐圧が低いものを入手してしまったりという具合。しょうがないので通販で部品を再購入するはめに。トホホ。

まずは定電圧電源/スピーカー保護回路基板のメンテナンスをしました。電解コンデンサの被覆が縮んでいたのはこの部分の放熱性の悪さのためでしょう。バイポーラ以外は105℃仕様のものに交換。リレーはDC12V/2C接点です。ここは基板実装スペースの高さ制限があるため、リレーソケットとソケット用パワーリレーは実装できません。基板実装タイプの新品リレーが入手できたのでラッキーでした。この基板の全半田付けもやりなおしました。ヒューズ抵抗は5個あります。これが切れると入手がやっかい。

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続いていつものとおりスピーカー端子をバナナプラグ対応のものに交換。これは端子間がかなり狭いでので、スピーカーケーブル接続でショートしないように注意が必要です。アルミ板を切って黒色塗装して使用しています。近くの電源トランスとのクリアランスはぎりぎりセーフでした。

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スピーカー端子は@150円の安いもの。これで十分です。RCAジャックは磨きましたがサビが浮いたりして表面はデコボコ。ここは深追いしませんでした。一応接触不良なくつなぐことができています。今回のメンテナンスはこれだけ。

パワーアンプ部のアイドリング電流と出力オフセット電圧を再調整しました。ネット上を探すとCA-800とCA-1000Ⅱのサービスマニュアル(英語版)があるので、それを参考にして調整しています。残念ながらCA-800Ⅱのものはありません。パワーアンプ部の回路や部品配列はCA-1000Ⅱと同じですが、電源電圧やトランジスタの定格などは低くなっています。

B級増幅のアイドリング電流は安定していますが、A級増幅では右チャンネルのアイドリング電流が若干不安定です。ここはA級増幅を使用しない方が安全でしょう。B級増幅でも特に音質に不満はありませんし、夏は発熱が多いA級増幅にする気にはなりませんからそれで良いです。

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で、ラックに乗せて聴いてみました。いつものようにパワーアンプとして使用しています。ここまでJA-S75、KA-7300D、AU-607と聴いてきましたが、このCA-800Ⅱが一番私好みの音で鳴ります。充実した中音を中心に適度に伸びたはっきりした高音としっかりした低音で、帯域バランスがとても良いです。一言で言うと濃い音。クォードのスピーカーに合っているとも言えます。

そういえば昔使っていたA-950の音もかなり気に入っていたし、10年くらい前にはヤフオクでA-950を再度入手して音の良さを確認。A-750も同じくヤフオクで入手して音は気に入りました。B-4もヤフオクで入手後メンテして、不定期のノイズが発生するまで使っていました。C-2aもサブ機として昨年まで使っていました。YAMAHAアンプの音は私と相性が良いのかも?

デザイン優先で落札したのに、パワーアンプ部の音が気に入ったので手元に残しておきたいアンプになりました。特に問題はないのでこのまま当分使用して、パワーアンプ基板のメンテナンスはいずれまたということにします。

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サウンド・タペストリー

今年の1月末に開催された 「益子博之=多田雅範 四谷音盤茶会」 で紹介されたアルバムを買うはずだったのですが、間違えて前アルバムを買ってしまいました。その時紹介されたアルバムは、Amazonで未だMP3しかないのでした(涙)。

P132 ジョバンニ・ディ・ドメニコ/アルヴェ・ヘンリクセン/山本達久『CLINAMEN』(2010年rec. Off & Rat Recordes)です。メンバーは、ジョバンニ・ディ・ドメニコ(p,fender rhodes,syn,electoronics,editing)、アルヴェ・ヘンリクセン(tp,voice,electoronics)、山本達久(ds,per)です。ドメニコはイタリア人でベルギー在住。ヘンリクセンはノルウェーの音響系トランペッター、山本はノイジーな演奏や歌もので叩く、即興系の凄腕ドラマー。

「四谷音盤茶会」で紹介されたアルバム同様、このアルバムもほとんど即興演奏だと思います。3人の意識は上手く共鳴して、深い表現になっているように感じます。こちらの方がリズミックな演奏ということで、確かにリズムがはっきりした演奏がいくつかありますが、一方でリズムが希薄で静かな音響系の曲もあります。

エレクトロニクス音、音響系の触覚的なトランペット、柔らかな歌声、散りばめられたパーカッションなどがタペストリーのように空間的に広がる中に、ピアノまたはエレピが短いイマジネイティブなフレーズを繰り返し静かに綴っていくようなサウンドになっています。リズミックな曲でも押しつけがましいようなところはなく、柔らかい雰囲気が漂って聴く者の心にじんわり染みこんでくるところが素敵です。

目の前に現れては消えていく様々な音群に身を任せていれば、ヒーリング効果もありそうなサウンド。だからと言って決して安っぽいフュージョンではありませんし、また難解なサウンドというものでもありません。柔らかい雰囲気の中に感じるアートな佇まいが、表現の深さに繋がっているように思います。

サウンドにじっくり浸ってほしいアルバム。おすすめ!

アルバム名:『CLINAMEN』
メンバー:
Giovanni Di Domenico(p, fender rhodes, syn, electoronics, editing)
Arve Henriksen(tp, voice, electoronics)
Tatsuhisa Yamamoto(ds, per)

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ムード・サックスっぽくもあるが。

新譜紹介をこなしていきましょう。

P131 ジョシュア・レッドマン『ウォーキング・シャドウズ』(2012年rec. Nonesuch)です。メンバーは、ジョシュア・レッドマン(ts,ss)、ブラッド・メルドー(p,vib:3 10,tubular bells:10)、ラリー・グレナディア(b)、ブライアン・ブレイド(ds)、オーケストラ(1,2,5,7,10,12)、指揮:ダン・コールマン、ストリング・アレンジメント:ダン・コールマン、ブラッド・メルドー、パトリック・ジメルリです。一応ジョシュアの新譜はフォローすることにしているので買いました。

基本はワン・ホーン・カルテット、半分の曲でオーケストラと共演。ベースとドラムが抜ける曲、ピアノとのデュオ曲もあります。スタンダード、ジャズマン・オリジナル、クラシック曲、ポップス曲、メンバー自作曲など、様々な曲をジョシュアがバラード演奏していくという趣向のアルバムです。この人はよく言われるように器用貧乏というか、色々なことがそつなくできて各々のクオリティは高いのですが、今これをやりたいという何かが希薄です。

ジョシュアのここ3作を見ると、物議を醸した現代的表現の『コンパス』、コンテンポラリー・バップ・カルテットの『ジェームズ・ファーム』、そしてこれです。別に同じことをやる必要はないとは思いますが、コンセプトがこうもコロコロ変わると何をやりたいのかさっぱり分かりません。今回はまあ、ジョシュアがこういうアルバムを出せる歳になったんだなということで了解はしています。

内容は悪くないです。特に奇を衒うことなく、堂々と自己のサックスでメロディーを大切にして素直に歌っていくジョシュアの姿は一聴の価値ありです。このアルバムの目的であろうサックスで歌を聴かせるということはきちんと達成していると思います。メルドーが控えめにサポートしているのは好感が持てます。きちんとジョシュアを立てているのが良いです。プロデューサーとしての見識なのでしょう。ヴァイブやチューブラーベルを叩く曲もあり、この人ならではの美意識も見せます。

グレナディアのベースはきちんと役割をこなしています。《アダージョ》での落ち着き払ったベースが良いです。そしてこれはもう誰もが言うと思いますし、またかと言われてしまいますが、やっぱりブレイドのドラミングは素晴らしい。演奏を映えさせるツボを心得ているのです。この人が叩いているだけでアートな雰囲気が醸し出されてしまうというのは凄いことだと思います。《ストップ・ディス・トレイン》(この曲だけバラードではない)での電車が進む雰囲気と小気味良く心弾むグルーヴなんてもう最高ですね。

ストリング・アレンジは3人が行っていて、誰がどの曲をやっているかは分かりませんが、いずれも上質なアレンジになっています。私は《ラッシュ・ライフ》のちょっぴり尖がったアレンジが好き。ノンサッチならではの録音の良さも聴き所で、サックス、ストリングス、ドラムのブラシなど、クリヤで音の表情の細部が良く伝わってきます。

まあちょっぴりムード・サックス風にも聴こえますが、ここにある音楽ときちんと向き合えば、決してそれだけではないことが分かるでしょう。たまにはこんな音楽に浸るのも悪くないと思います。

アルバム名:『WALKING SHADOWS』
メンバー:
Joshure Redman(ts, as)
Brad Mehldau(p, vib: 3 10, tubular bells: 10, string arrangements)
Larry Grenadier(b)
Brian Blade(ds)
Orchestra(1,2,5,7,10,12)
Dan Coleman(conduct, string arrangements)
Patrick Zimmerli(string arrangements)

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主張を感じるジャズ

そろそろ新譜が溜まってきたので消化していきます。ディスクユニオンのサイトの「ニュー・リリース」で試聴して購入を決めました。買ったのはいつものようにAmazon(笑)。だって安いんだもん。

P130_2 キット・ダウンズ『ライト・フロム・オールド・スターズ』(2012年、Basho Records)です。メンバーは、キット・ダウンズ(p,org:3,5,8)、ジェームズ・オールソフ(ts,cl,b-cl)、ルーシー・レイトン(cello)、カーム・ゴウレイ(b)、ジェームズ・マッドレン(ds)です。カタカナ表記は参考程度と思って下さい。チェロを含む変則カルテットによる演奏。

タイトルの”古い星からの光”をテーマにしたコンセプト・アルバム。今時のコンポーザー・タイプのピアニストであるダウンズが全曲を作曲しています。タイトルやチェロが入っていたりしていることから、静かなアルバムを想像してしまいますが全然違います。曲構成などは良く練られているものの、演奏自体はアドリブ重視で勢いがあります。テンションも高く維持されていて聴き応え十分。

ダウンズはイギリス人のピアニストとのこと。たぶんメンバーもイギリス人なのでしょう。私は今回メンバー全員の名前を初めて知りました。でもこのアルバムのテイストは現代ニューヨーク。ちょっとユダヤ系でクラシカルな匂いを残しつつ、曲によってはフリー・ジャズの要素が強め、変拍子の扱いなどは現代ニューヨークでしょう。日本のジャズマンがそうであるように、イギリスのジャズマンも、いや世界各地に、最早現代ニューヨークと同じようなコンセプトを持って演奏する人達はいるのだろうと思います。

コンテンポラリーな要素はあまりなく、少し古いタイプのサウンドような感じはしますが、実はそこがジャズとしての匂いを強く放つ結果に繋がっているように思え、私は高く買います。どこからどう聴いてもジャズ。そこがいいんじゃないでしょうか。チェロやクラリネットの使い方はこなれていて、アートな雰囲気を上手く放っていると思います。ベースとドラムは変拍子を難なくこなし、ビートはしっかりしています。特にドラムは今時のパルシブなビート感でキレも抜群。今や優秀なドラマーはどこにでもいるみたいです。

最後になってしまったのですが、ダウンズのピアノはガッツがあって良いです。粒立ちが良くて一音一音に力が漲り、低音弦(左手)のパワーもあって、サウンドの真ん中にドッシリ居座っています。コンポーザー型のピアニストの中にはピアノの存在感が弱い人がいますが、この人はそれがありません。ピアノの存在感や曲調からはボヤンZを連想させます。かすかにうなり声が入っていて、そのアドリブからキースを彷彿とさせるような場面もありました。そこでのドラムはディジョネットっぽく聴こえキース・トリオみたい。

個性と主張を感じるジャズです。かなりカッコいい演奏をしていると思います。
日本での知名度はほとんどない人でしょう。でも私はお薦めしたい!
ついでに前作も聴いてみたくなって早速Amazonに注文しました。

アルバム名:『Light from Old Stars』
メンバー:
Kit Downes(p, org:3,5,8)
James Allsopp(ts, cl, b-cl)
Lucy Railton(cello)
Calum Gourlay(b)
James Maddren(ds)

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300円中古CDを楽しむ。

先週上京した際、いつものようにディスクユニオン新宿ジャズ館でCDを買取ってもらいました。今回は人気ピアノ・トリオもあったのでそこそこの値段で買い取ってもらって満足。店頭ではポータブル・レコードプレーヤーと300円中古CDを販売していました。

この手のレコードプレーヤーは懐かしいです。40数年前のことですが、どこの家にもポータブル・レコードプレーヤーが1台くらいはあり、子供はEPやソノシート(色付きのペラペラビニールレコード)で童謡やアイドルの歌(当時は天地真理、浅田美代子、アグネスチャン、麻丘めぐみ、南沙織など)を聴いていました。これこそ私のオーディオ原体験です。親からすれば子供の情操教育ということになるでしょう。何か時代が過去に戻ったみたいで笑ってしまいます。

結構気温が上昇して暑かったのですが、300円中古CDを一通りチェック。気になるものがあったので、2枚ゲットしてきました。これからその2枚を紹介します。

P128まずはステファノ・ディ・バティスタ『ア・プリマ・ヴィスタ』(1998年rec. BLUE NOTE)です。メンバーは、ステファノ・ディ・バティスタ(as,ss)、フラヴィオ・ボルトロ(tp)、エリック・レニーニ(p)、ロザリオ・ボナコルソ(b)、ベンジャミン・エノック(ds)です。300円らしくジャケットは擦れて、カビありとのことでした。帰ってから盤を見るとカビはほんの少しで、CDクリーナーで簡単に取れました。

最近はこの手のオーソドックスなハードパップ・アルバムを買わないのですが、バティスタは気に入っているサックス奏者ですし、脇を固めるボルトロ、レニーニ他は手堅いメンバーなのでハズレはないだろうということで購入。実は買う気を起こさせたのは、ドラマーのエノックです。この人はプリズムというピアノ・トリオのドラマーであり超絶技巧派。この人のキレのあるドラミングが聴きたかったのです。そういえばフラヴィオ・ボルトロって今来日しているんですよね。

このアルバムはバティスタがフランス・ブルー・ノートに移籍しての第一作。この前に同メンバーでラベル・ブリューから『ボラーレ』というアルバムを出しています。ラストのアルト・ソロ《ラッシュ・ライフ》以外はメンバーのオリジナル。ジャズ喫茶「メグ」の寺島靖国さんに言わせれば「もっとスタンダードを入れろ。」という感じでしょう(笑)。でもご安心あれ、21世紀前夜なので難解な曲は皆無。気持ちの良いハードバップをメンバー一丸となって展開してます。

これはこれで楽しいじゃありませんか。

P129 続いてパブロ・ボブロウィッキ『ホエア・ウィー・アー』(1999年rec. RED)です。メンバーは、パブロ・ボブロウィッキ(g)、マーティン・イーナコーン?(b)、ホセ・M.・”ペピ”・タヴェイラ(ds)です。誰も聴いたことがない名前のギタリストですよね。でも私は知ってました。前にこの人のアルバムを買って気に入っていたのです。

これがそのアルバム ⇒ 渋~い味わいを放つギター・トリオ

ポブロウィッキ、何とも渋くて独特の味を醸し出すギタリストなのです。癖のあるフレーズでどこまでも単音で勝負するギタリスト。そうか、このアルバムは前に気に入ったアルバムのちょうど10年前のものですね。こちらのほうがまだ普通っぽいフレージング。でも独特の味わいは醸し出しています。

曲はエリントン、モンク、グリフィン、コルトレーン、ガレスピーなどのジャズマン・オリジナルを中心に自分の曲を加えたものです。ベーシストがエレクトリック・ベースを弾いているので、膨らみ緩み加減の音が緊張感を少し落とす感じになっているのは個人的に残念。

これを聴いているとジャズは個性と味わいの音楽でもあることを実感します。

この2枚、計600円でこれだけ楽しめればコスパ文句なし!

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秋葉原で買い物

先週の土曜日、ジャズ喫茶「いーぐる」の連続j講演へ行く前に、ジャンクアンプCA-800Ⅱのメンテナンスパーツを買うために秋葉原へ行ってきました。

まずは閉店したヒノオーディオの店舗があったところがどうなっているのか視察。スピーカークラフト店があったところは、地下へ降りる階段の入口あたりが荒れていたので深追いはせず、真空管アンプ店のところを見に行きました。するともう新しいお店が営業していました。

P126

Le Tabou(ル・タブー)というお店です。店頭の看板によると、CD、LP、書籍、オーディオ機器を扱う音楽のセレクトショップだそうです。今時なお洒落なお店。秋葉原には似合わないというか、新しい秋葉原に似合うこんなセレクトショップがあるとは思いませんでした。私の目的は別にあったので、店内には入らず写真だけ撮っておしまい。

近くにはこんなお店もありました。

P127

こちらは秋葉原らしい中古オーディオ店。秋葉原オーディオ(株)。なんちゅうベタな名前じゃ(笑)。最近はこの手の中古オーディオの方が人気があるのかもしれません。

この後は本題のパーツ購入。まずは千石電商へ。電解コンデンサをここで全て揃えようと思ったのに必要な値のものが揃わず、足りない分は近くの秋月電子で購入。スピーカーターミナル(ジョンソンターミナル)もここで一緒に購入しました。こちらの2件にはちょっと特殊な仕様の半固定抵抗がなかったのでラジオデパートへ。

ラジオデパートではスピーカー保護リレーも探しました。基板実装用リレーってここらあたりにしか売っていないんですよね。お~っ、3階にあるお店で売っていましたよ。DC12V2回路。半固定抵抗の方はなかなか見つからず、ラジオデパートとガード下のラジオセンター/ストアーの数件を巡ったけれどなし。結局ちょっと違う仕様のものを工夫して使うことに。いつもお世話になっているラジオデパート内の海神無線で購入。

まだ時間があったので鈴商を覗いてみました。何と探していた仕様の半固定抵抗が、それも安く売っているではありませんか!ただし必要な抵抗値のうちの1種類のみですけれど。まあ、高い部品ではないのでだぶってしまいますがそれを購入。ここには製造中止型番のトランジスタがまだ売っています。メンテに必要なものをリストアップして、次回もう一度買いにくることにしましょう。

う~む、最近は秋葉原に行かないので、今回のパーツ集めは右往左往してしまいました。まあ、それが面白かったりするのですが。私が好きな電気街秋葉原はまだまだ健在。路地に立つ勧誘のメイドさんをチラ見しながら、電気パーツを探すオッサン一人。私にとって秋葉原は魅力的な街です。

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今更ですが、私にとってのクラブジャズとは?

今年の1月末、上京する際にいらないレコードを買取りに出そうと思い、レコード棚をチェックしているとこんなレコードが出てきました。

P124 ジョン・シーミス『ファンタジック・モーニング(原題:ULYSEES AND THE CYCLOPS)』(1985年)です。内容はフュージョン。タスキを捨ててしまったので、このジャケットからは誰の何というアルバムかがさっぱり分からず、仕方がないのでライナーノーツを読むことにしました。そこにこんなことが書いてあったのです。(ちなみにこのアルバムは全く面白くなかったので売り払いました。)

「このアルバムはキャニオン/コーダ提携による《おしゃれサウンド革命》の第2回日本発売分に選出された。」

《おしゃれサウンド革命》? いかにも80年代を象徴するようなキャッチコピーです。ライナーノーツ片面にはこのアルバムの内容が書かれていて、裏返してみると今度はその《おしゃれサウンド革命》についての説明が書かれていました。

P125

”レコードは聴く時代から活用する時代へ”、”活用する”、ここに興味を持った私は一体どういうことなのか、中身を読んでみることにしました。実に興味深いことが書いてありましたので、最初の方をそのままここに書き写します。

 キャニオン/コーダ提携に依る《おしゃれサウンド革命》とは、我が国のキャニオン・レコードが英国のジャズ/ファンク・レーベル、コーダとの販売契約成立を機に同シーンのサウンドをレコードとしてただ聴くだけのものからミュージック・マテリアルとしてもっと立体的に活用し且つ、楽しんでもらおうといった前向きな企画で誕生した言わば、《レコードは聴く時代から活用する時代へ》のキャッチ・フレーズをモットーとする1億総サウンド・スタイリスト・キャンペーンである。
 とは言え、音楽を活用するなんて技は無声映画時代からあるにはあった。
 けれどそれが一般消費者(リスナー)の次元でやれテープに詰めてドライブだの、風景に合わせてウォークマンで楽しむだのと取沙汰されるようになってきたのは言うまでもなく猫も杓子も、のヴィジュアル時代に突入した昨今のことであろう。
 その好例が80年代を境に爆発したブリティッシュ・ジャズ/ファンク・ムーヴメントと、少し遅れてやって来た米国のウィンダム・ヒル・サウンドだ。
 前者の主役はむろんシャカタク、後者は当然ながらジョージ・ウィンストンである。
 彼等の音楽をスピーカーと向かい合って聴いているというファンを僕は未だかつて知らない。
 シャカタクやジョージ・ウィンストンを愛聴している音楽ファンは9割近くが自分のTPOに合った ”美GM” としてそれを活用⇒スタイリングしている人々である。
 否、シャカタクやジョージ・ウィンストンに限らずどんなジャンルにせよ、レコード購買層は聴く人々より活用する人々がその主流をしめていると今や断言していいだろう。
 つまり”レコード(音楽)はオーディオ・ルームから街へとび出した”のだと―――。
 現代においてレコードはもはや聴覚だけでなく、視覚、触覚、臭覚、味覚の5覚全体で楽しむものへと変わってきている。
 その料理人は当のアーティストでもなければ、評論家でもない。
 リスナー自身なのである。
 そしてそんなミュージック・マテリアルの一般ニーズの高まりをいち早く察知し、そうした1億総サウンド・スタイリスト達の要望に応えるべく誇らかに”マテリアル感覚のおしゃれサウンド”革命を宣言したのが、キャニオン/コーダ両レーベルの画期的な提携契約による《おしゃれサウンド革命》というワケだ。

”1億総サウンド・スタイリスト”、”美GM”、って(笑)。私はこれを読んで”ピンッ!”ときました。ここに書かれていることはほとんど今に当てはまると思うのです。そしてここで対象にしている音楽を”レアグルーヴ~クラブジャズ”に置き換えてみても収まりが良いと思います。目から鱗が落ちたというか、霞が晴れてはっきり見えたというか。”なるほどな~”と思いました。あれから約30年経った今、80年代の雰囲気が来ているという意見に、これを読んでやっと同意できる気分になりました。

クラブジャズの音源/レコードは踊るために活用する音楽素材、イギリス発の動きだということ、オーディオ・ルームの大きいものがジャズ喫茶、”聴く”は”鑑賞する”ということ、”1億総サウンド・スタイリスト”は”1億総DJ”ということ、ファッション性との関連性、アーティストでも評論家でもなくリスナー、などを考えると実に腑に落ちるのです。あちゃ~っ、新しいと思っていた価値観が実はもう体験済みだったという(笑)。当時のジャズ/フュージョン・シーンをきちんと評価していないから、当時のシーンに何が起こっていたのか、今やほとんどの人は知らないということを実感。

80年代、ジャズ誌/ジャズ評論家/ジャズ喫茶の頑固オヤジは、シャカタクは当然の如くフュージョン(=ジャズではない)扱いでしたし、ジョージ・ウィンストンはジャズか否かで激論になっていました。私がジャズに憧れて20代を過ごしたのは正にその時代。私はもちろん”清く正しいジャズリスナー”を目指して修行中でしたから、「シャカタク/ジョージ・ウィンストンだっ?そんなもんジャズじゃねーっ!」とミエをはっていました(笑)。つまり私はジャズについては「活用する」のではなく「聴く」を選んだのです。まあシャカタクはフュージョンとして好きでしたけどね。ジョージ・ウィンストンの流れは一時期(今も?)流行りの雰囲気重視のピアノ・トリオ需要だと思っています。

そういう時代を若者時代に過ごして来た私のようなジャズリスナーは多いはず。当時は「難しいジャズを聴いてやろうじゃねーか。」という反骨精神もありました。当時からのジャズリスナーは、そういう気骨溢れる人が未だにジャズリスナーとして残っているとも言える気がします。だからクラブジャズをそう簡単に受け入れられないのです。こればかりは頭で受け入れようとしても、体が拒絶反応を起こします。私が前から言っている「クラブジャズ ≒ フュージョン」も再認識できたと思います。

さて、ここから更にとんでもないことを書きます。

ちょっとした喩話をします。そうすれば少しは客観的に眺められると思うのです。この喩はクラブジャズ・サイドからすれば「ちょっと待ってくれよ。」と言いたくなるでしょう。ですが、私にとっては自分の心の内を上手く反映しています。

チャーリー・パーカーに端を発するアートなジャズ ⇒ 絵画

「踊れるかどうか」を唯一の価値基準にして選別するクラブジャズ ⇒ 「銭湯(公衆浴場)の壁に似合うかどうか」を唯一の価値基準にして選別するインテリアとしての絵

あまりに差別的な喩(笑)。でもこのくらい極端でないと本質があぶり出せません。ジャズ喫茶は美術館とでも考えてもらえれば良いでしょう。で、以下のようなことを並べてみます。こちらも分かりやすいように単純化してあります。どう思われます?

銭湯に似合うかどうかは雰囲気で決めることになります。
銭湯には富士山が良く似合うというような傾向があります。
C/D級の絵もそこでは関係ありません。
銭湯に入らないと分からない雰囲気というものがあるでしょう。
最近は銭湯の壁がゴッホ、セザンヌ、ピカソ、ダリの絵画だったりします。
銭湯から美術館に持って来れば湯煙がないので絵の細部が良く見えます。
少数派ですが銭湯で絵を鑑賞する人達もいます。
絵画は筆のタッチ、色使い、構図、個性、強度、細かいことを鑑賞されます。
絵画には絵画の、脈々と受け継がれた鑑賞手法というものがあります。
一方で時代に即した鑑賞手法を模索している方もいます。
美術館に銭湯に似合う絵が展示されれば当然鑑賞の対象です。
美術館に展示された銭湯に似合う絵を見た館長が鑑賞手法を変えちゃうとか。
美術館にアンティークやおもちゃを展示するなら鑑賞手法が変わって当然。
私はプライベート美術館を持っています。

以上、分かる人には分かると思います(笑)。クラブジャズ・リスナーとジャズ・リスナー、世代間の差に押しこめきれない信条の違いがあると思います。単純に新しい感覚と古い感覚の違いとも思えません。両者の溝は簡単には埋められないような気がします。

数か月間、書こうかと思いつつまあどうでもいいかとも思っていたのですが、とうとう書いてしまいました。偏屈ジャズオヤジの戯言。とは言え、イッキデラックスに登場いただくまでもありませんでした(笑)。大半の人にとっては、どうでもいいっちゃー、どうでもいい事でしょう。

コメント欄も面白いのでどうぞ ⇒ 今更ですが、私にとってのクラブジャズとは?
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ジャズ喫茶「いーぐる」の『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました(後編)。

先日 ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演のレポートの続きです。

私なりににヒップホップを勉強してきたとはいえ、ヒップホップについての理解は未だ初心者より少しましな程度。また単に私の理解力不足もあるわけでして、そのあたりはご了承いただいたうえでお読みいただければ幸いです。当然ですが講演の全てではなく私なりの編集が入っています。いつものように音楽を聴いての感想などはピンク文字。

前半はヒップホップの歴史と特徴を駆け足で紹介する内容でした。後半は日本にはじまり世界に広まったヒップホップを紹介する内容になっていました。

P123_2 KEYWORD3 日本におけるリアルの意味

時間が押していたため、この章は大幅にカットされてしまったのが残念です。4曲カットされてかかったのは1曲のみ。まあ、日本については聴こうと思えば簡単に聴くことができるので、それよりは聴いたことがない世界のヒップホップの紹介を優先されたのは了解できることです。

11.DCPRG with Simi Labの《Uncommon Unremix》2012年
これはシミ・ラボのラップ以外は、マイルスがキーボードを弾いている時の70年代マイルス・バンドのコピー。菊地成孔さん、好きなのは分かるけれど、どうなんでしょうね、これ? まあ、シミ・ラボとのマッチングは良いので良しとしておきましょう。私、基本的にこういうサウンドは好きですよ。

原さんから、先日ニューヨークへ行った時、乗ったデルタ航空の機内ラジオにはヒップホップというジャンルがなくて、アーバン・ソウルに含まれているという話がありました。ティンバランドが登場以降、ジェイ-Zやカニエ・ウェストはゴージャスになりセレブ系音楽になったという話もありました。

KEYWORD4 移民(イミグラント)たちの表現としてのラップ

ここではアメリカ以外の世界に広まったヒップホップを紹介。これは関口さんならではの切り口であり、著書『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』にいおいても重要な視点です。

世界的に経済難民が移民する現象が起こっていて、モロッコ人はフランスへ、パキスタン/バングラディシュ人はイギリスへ、トルコ人はドイツへ移民。こういった移民が権限を主張してヨーロッパとぶつかり、移民の自己主張の手段がヒップホップとなっている。

※以下に紹介するラッパー/MCなどの詳細はウィキペディアを参照下さい。

アブダル・マリックはフランスに移民したコンゴ人。
12.Abd al Malikの《Mon Amour》、アルバム『Chateau Rouge』2010年から
女性ボーカルから昔懐かしい長山洋子の《ヴィーナス》を連想。あの頃はテクノだったけれど今はヒップホップ。途中にマリックのラップが入る。このポップス性はJ-POPを聴く人には受け入れやすいかも。

M.I.A.はスリランカ人。イギリスで活動。ディプロがサポートしているアルバムから。
聴いた後、原さんから、アメリカ以外のビートはダサイがM.I.A.は新しいビートをやっているという指摘があって、私も納得。
13.M.I.A.の《Mon Amour》、アルバム『Arular』2005年から
南部ビート。サウンド的にはアメリカのヒップホップとして聴ける。

マルクスマンはアイリッシュ。アイリッシュ民族音楽とヒップホップの融合を図っている。関口さんはアイルランドの可能性に注目。ヒップホップ・ミュージシャンがヨーロッパ全体で活躍して競争する中で、マルクスマンのような人がヒップホップを面白くしていくのではないか。
14.Marxmanの《Bucky Dung Gun》、アルバム『33 Revolution per Minutes』1993年から
オーソドックスなヒップホップ・ビート。録音が古いから。

タンザニアのヒップホップ。ボンゴフレーバーはダンス・ミュージックで、正確にはヒップホップではない。歌詞はタンザニア賛歌。スワヒリ語でラップ。
15.Bongo Flavaの《Umoja Wa Tanzania》、アルバム『Bongo Flava』2004年から
語感が何となく日本語っぽくて、フローは日本語ラップを聴いているように聴こえる。

ケイナーンはソマリア人。アルバム名『トルバドール』は放浪者という意味。
聴いた後、原さんから、トラックは地域の格差がなくなっていると指摘があって、これも納得。
16.K'Naanの《ABC》、アルバム『Troubadour』2009年から
ビートは新しい。「文化系のためのヒップホップ入門」で散々聴いた祭囃子系。大太鼓みたいな緩いドラム音が活躍。

ここで、高円寺で行われた原さんが参加したイヴェントの話題。そこに関口さんも行ったそうで、とても面白かったそうです。数名のトラックメイカーが、生演奏をしているのをその場でサンプリングしてビートを作り競うというもの。本当に色々なものが出くるとのことでした。私は全くそういうシーンに疎いのですが、お2人の話を聞いて興味が湧きました。

マルセロ・D2はブラジルで圧倒的に支持されている。コンテンポラリー音楽が発展したブラジルらしい工夫(ノイズを入れるなど)が凝らされているブラジルのヒップホップ。
17.Marcelo D2の《Pra Posteridade》、アルバム『Looking For The Perfect Beet』2007年から
ボッサ・ミーツ・ラップという感じ。

ドランクン・タイガーはUSコリアン。歌謡性が凄い。メロディー性が凄くて、こんなのがあったのかという感じのもの。
18.Drunken Tigerの《Pra Posteridade》、アルバム『Drunken Tiger4』2003年から
歌謡性ありまくり。こういうのを聴くと私には久保田利伸が浮かぶ。日本の歌謡性をひっさげてニューヨークでそれなりに受けた人だから。メロディーは哀愁マイナー調。私的にはいつもブログに書いている”セツネー”の極致(笑)。

スヌープ・ドッグがジャマイカに急接近。ヒップホップは世界を巡ってカリブに戻るのか?
19.Snoop Lion feat. Drakeの《No Guns Allowed》、アルバム『Reincarnated』2013年から
レゲエ・ビート。カリブに戻る。なるほど。 私はなぜかレゲエが苦手。基本的にエッジが効いたリズムが好きなのでノホホンとしたレゲエは魅力薄なのでしょう。

原さんによると、最近日本ではアメリカのヒップホップは聴かないとのこと。とうとうこのシーンでも”洋楽離れ”現象が始まったということなのでしょうね。

最後に関口さんから、この本を書くにあたって協力していただいた2人の女性と出版社の社長への感謝の弁があり、いらしていたので皆さんで拍手を贈り講演は終了。

<質問コーナー>
まずは後藤さんから指名された柳樂さんから質問。
Q: オバマ大統領以降のヒップホップの傾向は?
A: (いまいち私の頭に入っておらず、ごめんなさいm(_ _)m)

レゲエ系の音楽に詳しい方?から質問
Q: 今回レゲエにあまり触れなかった理由は?
A: 2000年以降ダンスホール・レゲエからの影響はあるが意識的に外した。

私から質問。
Q: ヒップホップが移民の権限主張の手段になった理由は? 単に今世界的に流行っている音楽というだけで、ヒップホップでなければならない理由はあるのか? 過去にはロックがそうであったし、日本ではかつてフォークがそういう音楽だった時期もある。
A: ヒップホップでなければならない理由はある。ラップは権限を主張しやすく歌に比べれば簡単だから。私から「メロディーというテクニックを要求される縛りがなく、より感情表現しやすいからかもしれない」ということを伝えて納得。今加えれば、ヒップホップが持つに至ったメッセージ性という文化が他の国でも共有されやすいのかもしれません。

後藤さんから質問。
Q: 中山康樹さんの「ジャズ・ヒップホップ・マイルス」、大和田俊之さんと長谷川町蔵さんの「文化系のためのヒップホップ入門」についての感想は?
A: (ここは敢えて伏せさせていただきます。笑)

<今回の講演を聞いて>
ヒップホップはアメリカの売れ筋の(メジャーな)音楽にとどまらず、世界中の音楽シーンに広まっているということを今回実感しました。まあそれは日本の状況からも何となく察しがつくことです。世界で多様化していくヒップホップをフォローするというのは、今だからこそできるヒップホップの聴き方としてとても面白いと思います。
ラップの重要性を改めて認識。ラップを手法のひとつとして片づけてしまうことに疑問を抱いていた私には納得できる内容でした。
今回はポップなものが多くて聴きやすかったです。それは主張(メッセージ)をより多くの人に聞いてもらうという目的を考えれば、理にかなっている気がします。
ヒップホップと一言で言っても売れ筋(ポップなもの)からマニアックなものまで様々。DJサイドからクラブシーンとの結びつきで語ることもできるでしょう。で、それはどうしてもサウンド志向の需要になりがち。これまではむしろそうい切り口で語られてたものが多かったようです。しかしクラブシーンを知らない私からすれば、今回の関口さんや以前講演を聞いた大和田さん/長谷川さんの切り口の方が分かりやすい気がします。
原さんもおっしゃっていましたが、関口さんが世界中のヒップホップを聴きまくっているのは凄いと思いますし音楽に対する並々ならぬ愛情を感じました。
『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』はこれからじっくり読ませていただきます。

今回かかった曲のリストや後藤さんのレポートは ジャズ喫茶「いーぐる」「blog」を参照願います。

今回の講演、とても楽しく聞きました。
打ち上げにも参加させていただき色々な情報が得られました。
皆様どうもありがとうございました!

「いーぐる」の連続講演は何と今回が500回目!
500回とは凄い!後藤さんに拍手、そして、感謝であります。

余談ですが、後藤さんがみんなの党代表渡辺吉美風ヘアスタイル(ソフトモヒカンみたいな感じの)になっていてビックリ!似合っていましたので今後も続くけてほしいです。

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ジャズ喫茶「いーぐる」の『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました(前編)。

昨日は久しぶりに ジャズ喫茶「いーぐる」『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました。その前に秋葉原で買い物をしてきたのですが、それについては後日書きます

P122_2 「いーぐる」の前に来るとハッピ姿の人がたくさんいました。近所でお祭りをしていたのです。お店の中に入って後藤さん他に軽く挨拶。一番良い席が空いていたので迷わずそこに座りました。パット・メセニーの『TAP』がかかっている最中。やっぱり「いーぐる」で聴くといい感じですね。売っていた『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』を購入。

今回の講演は『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』刊行記念イヴェントです。著者の関口義人さんとゲストの原雅明さんがトーク形式で進行して行きました。最初に今回の講演について後藤さんから説明があった後にお2人が登場。入場曲がYMOの《ラップ現象》という趣向に思わず笑みが。

この本が刊行されるというのは、昨年の「いーぐる」年末ベスト盤大会の時に関口さんから伺っていて、その時に私は「本を買います。」と言ったので、その流れで今回参加したわけです。拙ブログを読んでいただければ、私のヒップホップ興味の延長だということも分かっていただけるでしょう。

さて、これから講演について書いていくわけですが、私なりににヒップホップを勉強してきたとはいえ、ヒップホップについての理解は未だ初心者より少しましな程度。また単に私の理解力不足もあるわけでして、そのあたりはご了承いただいたうえでお読みいただければ幸いです。当然ですが講演の全てではなく私なりの編集が入っています。いつものように音楽を聴いての感想などはピンク文字。

最初、原さんからヒップホップのプロパーでもない自分がなぜゲストとして指名されたのかと言う問いがあり、関口さんからヒップホップより広い目線で見られる方ということで敢えて原さんを指名したという回答がありました。原さんからは『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』にはアメリカのヒップホップの歴史から世界のヒップホップまで物凄い情報量が入っているという話、関口さんからはこの本の章立てについての説明などがありました。第8章は世界中のヒップホップについて書いてあり80ページも割いてあるそうです。

関口さんから、90年くらいからヒップホップに入れ込んで聴いていること、この本のテーマは「ヒップホップ=移民の言葉」、ヒップホップはアフロ・アフリカン・カルチャーというよりはアフロ・カリビアン・カルチャー、というような説明もありました。今回の講演では本に書いていないことを主に話すとのことで、本の内容は本を買って読んでほしいとのことでした。

KEYWORD1 ”言葉”としてのヒップホップ

故中村とうようさんがヒップホップのルーツはジャイブ/ジャンプと言っていたそうで、ヒップホップのルーツかな~ということで。
1.Half-Pint Jaxsonの《Down At Jasper's》1928-40年
おっしゃるとおりそんな感じでした。

ヒップホップのラッパーのほとんどが尊敬しているというLangston Hughes。
2.Langston Hughesの《The Story Of Blues》1954年
これもなるほど。

ポエトリー・リーディング、こちらもラッパーの口に上ることが多いGil Scott Heron。
革命はテレビで報道されるようなところではなく、身近で起こっているというもの。
3.Gil Scott Heronの《The Revolusion Will Not Be Televised》
ファンキーなサウンドは私好みでした。

ヒップホップの勃興を決定づけた曲
聴いた後で原さんから、いーぐるで聴くと90年くらいまでのヒップホップ(高級なスタジオ機材を使って良い音で録られている)が凄く良く聴こえるとのコメント。
4.Run DMCの《Walk This Way》1986年
これは私もリアルタイムで試聴。当時から結構好きでした。
けれどヒップホップには嵌りませんでした。

アフリカ回帰の強いグループ。
5.Arested Developmentの《Afrika's Inside Me》1994年
かなりポップ。ジョー・サンプルの《野生の夢》がサンプリングされていました。
ここで関口さんはポップな曲がお好きなんだなと直感。

アフリカ・バンバータはカリビアンですが、ズール・ネイションからネイティブ・タンと来てアフリカ回帰していきます。
ハイチ出身のカリビアン。曲目《トゥ・ザイオン》の”ザイオン”は”シオン”聖地。
カルロス・サンタナのアコースティック・ギターをフィーチャ。
6.Lauryn Hill feat.C.Santanaの《To Zion》1998年
女性コーラスが入ってエスニック。カリブな感じでした。

ボブ・マーリーの息子ダミアンが入っている曲。
7.Cypress Hill feat. Damien Marleyの《Ganja Bus》2004年
「文化系のためのヒップホップ入門」で触れられていた南部ビートですね。

ブルース(奴隷の歌)、ゴズペル(霊歌)、ソウル(愛を歌う)ときて、ヒップホップは政治言論であり黒人の社会的言語。DJの名前に使われるグランド・マスターは当時アメリカで流行ったカンフー映画、少林寺拳法の師匠(グランドマスター)から来ている。グループ名:パブリック・エネミー(大衆の敵)、N.W.A.(ニガーズ・ウィズ・アティテチュード)などは、黒人の自虐性であり偽悪性。原さんからは、ヒップホップにはディスの文化があり、それはゲーム感覚でもあり、カンフー映画に通じる娯楽性でもあるなどの話がありました。

KEYWORD2 エディットされる文化、DJ/Producerの役割

日本ではディスコとクラブの区別があいまいな頃からDJが出てきた。原さんによると、最初はレコードが店にあったが(DJが店のお金で買って揃える)、だんだんそういうものとは別なものをかけるようになり、DJがレコードを持つようになったとのこと。六本木や西麻布のクラブでは色々なものがかかった。80年代後半にはハウスとかテクノとかが出てきて、それまでテクノポップと言われていたものがテクノと呼ばれる。石野卓球など。当時はヒップホップとテクノの区別があいまい。日本ではダンスの影響が大きく、音楽よりダンスが先に入ってきてその後「ダンス甲子園」とか流行る。

関口さんが大尊敬するDJ Krush。
8.DJ Krushの《The Beginning》2004年
アブストラクト・ヒップホップ。北欧フューチャージャズ似。こういうのは好き。

Krushさんはアメリカで影響を与えている。インスト・ヒップホップ~トリップ・ヒップホップ。Krushさんは動きとかが武士道的でそこに日本性を強く感じる。原さんによると、バカにされていた時期が長くあったがアメリカで受けて2000年以降影響力を増す。ジャズプレーヤーに近い感じだそう。

豪華でゴージャス。
9.Timbaland with Drakeの《Say Something》2004年
ティンバランドらしい南部ビート。ボコダーが懐かし風味。

全く新しい概念でヒップホップを捉えなおす。
10.N*E*R*Dの《Things Are Getting Better》2002年
パッと聴き8ビートのフージョン。う~む、まあポップで楽しいことは事実。

原さんから、今のようにPC編集などはなかったので最初はテープ編集で宅録でローファイな作りだった。ダンスさせるためにB.P.M.(ビート・パー・ミニット:テンポ)は上がりがち(テンポが速い)だったが、最近はB.P.M.が下がって(テンポが遅い)きて、それで踊れるようになってきたという話がありました。

長くなりすぎると読んでもらえそうにないのでここで一旦切ります。
後半は次回。

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CA-800Ⅱをきれいにしました。

ヤフオクで落札したYAMAHAのCA-800Ⅱを掃除しました。中身はまだ全然いじっていません。けれど見た目だけ良くしておこうということで先週末にお掃除。

ご覧のとおりかなり見られるようになりました。マジックリンで洗浄しています。汚れ落としはマジックリンが最高。タバコのヤニも難なく落ちます。

P120

下にあるのはTRIOのKA-7300D。この2台はサイズ的にかなり近いです。フロントパネルの仕上げが異なっています。CA-800Ⅱの方がきめ細かくて白っぽく、この質感が上品さを醸し出しています。TRIOの武骨なメカメカしさとは好対照。私はYAMAHAの上品なデザインのほうが好きです。同じような数のスイッチでもデザインによって印象がだいぶ異なりますよね。CA-800Ⅱはボリューム以外のノブもアルミ無垢で高級感があります。

明日は久しぶりにジャズ喫茶「いーぐる」の連続講演に行きます。講演のネタがヒップホップなので興味があるのです。「いーぐる」に行く前に秋葉原でCA-800Ⅱメンテナンス用のパーツを買ってこようと思っています。秋葉原パトロールも実施。移りゆく秋葉原を観察してきます。

で、今の私のオーディオシステムはこんな感じです。

P121

ラックには接続していないアンプを乗せたりしているので、縮小どころかまたまた込み合ってきました。機器の位置も少し入れ替えています。真空管アンプは未接続。ラック左下が常用のAU-607で、右下が控えのJA-S75(未接続)。上記CA-800ⅡとKA-7300Dと合わせて往年の売れ筋価格帯プリメインアンプが手元に4台も揃ってしまいました。今のところこれ以上増やす気はありません。打ち止め。

余談ですが、レコードプレーヤーは使わない時には布を被せてあります。これが埃や汚れや傷からダストカバーを守る最良の方法だと思います。スピーカーを交換してからもう8ヶ月経ちました。すっかり馴染んで良い感じで鳴ってくれています。特に不満はありません。B級オーディオまっしぐら!

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前衛アートなDVDが付いています。

新譜紹介です。ディスクユニオンのサイトで試聴してからAmazonで買ったのですが・・・。

P118 ロブ・マズレク エクスプローディング・スター・エレクトロ・アコースティック・アンサンブル『ザ・スペース・ビトゥイーン』(2013年rec. delmark)です。メンバーは、ロブ・マズレク(electoro acoustic composition,written scores,hidden scores,video scores,paintings,cornet,main electoronics,text)、マリアン・M・キム(video,choreography,dance)、トッド・カーター(live sound recording and sonic manipulation,recording and mixing engineer)、デモン・ロックス(voice,electoronics,text)、ニコル・ミッチェル(fl)、マット・バウダー(electoronics)、ジェフ・コヴァルコスキー(p,el-p)、キャリー・ビオロ(per)、マウリシオ・タカラ(electoric cavaquinho)、ギレルム・グラナド(sampler)、ジョン・ヘーンドン(ds)です。DVDが付いています。

マズレクが全8曲を作曲。曲は切れ目なしに演奏されます。楽譜に書かれている部分が多そうで、サウンドからすると現代音楽。電子音を中心に色々な音響が現れては消えていくような展開が続きます。聴き始めは面白いと思ったのですが、聴き進めるうちにだんだん飽きてきてしまいました。スピーカーとにらめっこして聴くよりは、B.G.M.的に流しておいたほうが良いかも?

DVDの映像は完全に前衛アート。抽象的な映像を中心にキムとマズレクのパフォーマンスが組み合わされています。バックに流れるのはCDに収録されている曲。何か昔懐かしい感じのもので、私にはちっとも面白くありませんでした。よって超早送りで見ることに(笑)。う~む、なんで今更こんなことをやっているんでしょうかね~?

これを聴いていて思い出したのが、『長岡鉄男の外盤A級セレクション』(またまた登場)で推薦されていたアルバム。現代音楽です。

P119 シュトックハウゼン『デア・ヤーレスラウフ』。79年ケルン放送局での録音。14人の演奏者と、テープと、サウンド監督による音楽。カールハインツ・シュトックハウゼンは現代音楽の作曲家です。元々は東京の国立劇場の委託による作品で、77年の初演は雅楽の楽器を使用して能役者も使ったそうです。この演奏は洋楽器によるバージョン。

この盤の表題は『シュトックハウゼン得意の東洋趣味、特に音場感のよい超A級録音』。当時の私は”音場”と”超A級”という言葉に弱かったみたいです(笑)。前に紹介したこの本に掲載されている盤にも同じような言葉がありましたよね。私はオーディオの醍醐味のひとつに自然な音場再現を上げたいと思います。オーディオの昔の呼び名:ステレオ=立体音響ですからね。現代の打ち込み主体の音楽では忘れられてしまっている世界です。逆に映像では今3D(立体映像)が話題なのは面白いところ。

テープ録音されたライオンの咆哮、バイクのエンジン音、雷鳴などが効果音として使われています。舞台を移動する足音が超リアル。演奏の大半は雅楽のような雰囲気のものです。ソプラノ・サックスが活躍したり、ラストの方では薄くジャズのビッグバンド演奏(テープ録音)が被さったり、ジャズの集団即興みたいな演奏(楽譜に書かれているとは思いますが)へ突入したりと、意外とジャズ的な要素があります。

とにかく音と音場が生々しくて、眼を閉じればまるで目の前の舞台でパフォーマンスが繰り広げられているような錯覚に陥ります。電子音と多重録音による人工的な音場も面白いのですが、生楽器による自然な音場の面白さにはやはりかなわないと思います。物によるとは思いますが、これなんかは面白く聴ける現代音楽です。

こんな曲/演奏です。これよりレコードのバージョンのほうが面白い演奏です。

アートな現代音楽も当然のことながら色々あります。

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独特な美意識に貫かれたピアノ・トリオ

ディスクユニオンのアウトレット品リストに入っていたものを、サイトで試聴して購入を決めたアルバム。ただし購入したのはHMVのマルチバイ特価セールです。ディスクユニオンさんゴメン! この人の名前は前から知っていて気にはなっていました。

P117 ジャンゴ・ベイツ・ビラヴド『コンファメーション』(2011年rec. DJANGO BATES)です。メンバーは、ジャンゴ・ベイツ(p)、ペッター・エルダー(b)、ピーター・ブラウン(ds)、スペシャル・ゲスト:アシュレイ・スレーター(vo)ラスト曲のみです。昨年出たアルバム。全員今回初めて聴きました。独特の美意識に貫かれたイギリス産ピアノ・トリオ。

タイトルにもなっている《コンファメーション》の他、《ドナ・リー》《ナウズ・ザ・タイム》というチャーリー・パーカーの3曲をやっています。パーカーの1曲を演奏したらベイツのオリジナル2曲を演奏するというパターンが3回繰り返される構成。ラストのみはヴォーカル入りでバート・バカラックの曲を演奏。ラスト曲が始まるまでに30秒以上の時間がとられているので、ラスト曲はオマケみたいな感じです。

パーカーの曲もベイツの曲も同じ方法論で演奏していて、その方法論はパーカーの曲を聴けばよく分かります。メロディーはオリジナルを残しながら適度にアブストラクトに再構築。テンポは1曲の中で自由に変化して適度な緊張感を維持。なのでどちらかと言えばフリー・ジャズ。こう書くと何か難しいことをやっていそうですが、意外と耳に馴染みやすいサウンドです。その耳に馴染みやすさは何に由来するかと言えば、最後にバカラックの曲を持ってくるベイツのポップなセンスなのでしょう。

ベースとドラムのソロはありません。始終3人によるインター・プレーで演奏が展開されます。ピアノは粒立ちの良い高音と歯切れ良くて力強い低音が魅力。ベースは程よくタイトでアーティスティック、ドラムはパーカッション的で適度に華やか。もちろんピアノが主役なのですが、3人は誰かが突出することなく一体感のある演奏です。ベイツの曲《センサ・ビターネス》と《ピーニズ・アズ・プロミス》などは美メロで、比較的オーソドックスなゆったりしたバラード演奏になっていたりします。

普通のピアノ・トリオばかり聴いていると飽きるので、たまにはこういう異色なピアノ・トリオを挟んで聴くと良いと思います。私はこのピアノ・トリオが気に入りました。

アルバム名:『CONFIRMASION』
メンバー:
Django Bates(p)
Petter Eldh(b)
Peter Bruun(ds)
Special Guest: Ashley Slater(vo) final trrack

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安心して聴けるバートンの新譜

ゲイリー・バートン・グループの新譜を紹介します。前作が気に入っていたので迷わず買いました。

P116 ゲイリー・バートン・カルテット『ガイデッド・ツアー』(2013年、MAC AVENUE)です。メンバーは、ゲイリー・バートン(vib)、ジュリアン・レイジ(g)、スコット・コリー(b)、アントニオ・サンチェス(ds)です。鉄壁のメンバー。

もうこれ一言で終わってしまう感じだと思います。”オーソドックスな現代バップ好アルバム”。このカルテット2作目にして既に完成形。このメンバーでバートンの意思の下に自分達の音楽性をぶつければ至極当然の帰結である気がします。なので安心してこのグループの音楽性に浸れるのです。何か新しいことや刺激を求めると物足りないことは確かなのですが、まあ良しとしましょう。

バートンの曲が2曲、レイジの曲が3曲、コリーの曲が1曲、サンチェスの曲が2曲、フレッド・ハーシュの曲が1曲に、ミシェル・ルグランの曲が1曲の全10曲構成。4人それぞれが良い曲を書いてますし、似たようなセンスで作曲していますから、全く異質感なく曲が進みます。前作に見られたほのかな暗さは払拭され、爽やかさと適度な哀愁が心地良く流れて行きます。

バートンの《ジェーン・フォンダ・コールド・アゲイン》は6/8拍子のモロにバートン節で笑ってしまいます。ハーシュの曲《ジャックアロープ》はサンチェスの曲かと思うほど、サンチェスのドラムがマッチ。レイジの曲はすっかりバートン調。コリー作《レガシー》は彼らしい素敵なバラード。ラストのサンチェス作《モンク・フィッシュ》のみは、タイトルどおりモンク的ユニークさを持っていてちょっと異色。4ビートで快適にスイングして終わるのは気分が良いですね。

バートンのヴァイブはもう説明不要。いつものバートン以外の何者でもありません。前作で感じられたレイジのクラシック寄りな音選びはあまり感じられなくなり、メセニー調もなく、こうなってくるとどうも個性が乏しくなってしまいます。ギターは上手いので個性の確立が今後の課題かも? コリー/サンチェス・コンビはもう色んなところでやってますから、何の危なげもなくいつものしなやかでアートなグルーヴを展開。

最初から最後までとにかく安定しています。クオリティは言うまでもなく高く、タイトルどおり安心して聴けます。定番ジャズでしょう。

アルバム名:『GUIDED TOUR』
メンバー:
Gary Burton(vib)
Julian Lage(g)
Scott Colley(b)
Antonio Sanchez(ds)

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