ジャズ喫茶「いーぐる」の『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました(前編)。
昨日は久しぶりに ジャズ喫茶「いーぐる」 の『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』出版記念講演へ行ってきました。その前に秋葉原で買い物をしてきたのですが、それについては後日書きます
「いーぐる」の前に来るとハッピ姿の人がたくさんいました。近所でお祭りをしていたのです。お店の中に入って後藤さん他に軽く挨拶。一番良い席が空いていたので迷わずそこに座りました。パット・メセニーの『TAP』がかかっている最中。やっぱり「いーぐる」で聴くといい感じですね。売っていた『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』を購入。
今回の講演は『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』刊行記念イヴェントです。著者の関口義人さんとゲストの原雅明さんがトーク形式で進行して行きました。最初に今回の講演について後藤さんから説明があった後にお2人が登場。入場曲がYMOの《ラップ現象》という趣向に思わず笑みが。
この本が刊行されるというのは、昨年の「いーぐる」年末ベスト盤大会の時に関口さんから伺っていて、その時に私は「本を買います。」と言ったので、その流れで今回参加したわけです。拙ブログを読んでいただければ、私のヒップホップ興味の延長だということも分かっていただけるでしょう。
さて、これから講演について書いていくわけですが、私なりににヒップホップを勉強してきたとはいえ、ヒップホップについての理解は未だ初心者より少しましな程度。また単に私の理解力不足もあるわけでして、そのあたりはご了承いただいたうえでお読みいただければ幸いです。当然ですが講演の全てではなく私なりの編集が入っています。いつものように音楽を聴いての感想などはピンク文字。
最初、原さんからヒップホップのプロパーでもない自分がなぜゲストとして指名されたのかと言う問いがあり、関口さんからヒップホップより広い目線で見られる方ということで敢えて原さんを指名したという回答がありました。原さんからは『ヒップホップ~黒い断層と21世紀』にはアメリカのヒップホップの歴史から世界のヒップホップまで物凄い情報量が入っているという話、関口さんからはこの本の章立てについての説明などがありました。第8章は世界中のヒップホップについて書いてあり80ページも割いてあるそうです。
関口さんから、90年くらいからヒップホップに入れ込んで聴いていること、この本のテーマは「ヒップホップ=移民の言葉」、ヒップホップはアフロ・アフリカン・カルチャーというよりはアフロ・カリビアン・カルチャー、というような説明もありました。今回の講演では本に書いていないことを主に話すとのことで、本の内容は本を買って読んでほしいとのことでした。
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KEYWORD1 ”言葉”としてのヒップホップ
故中村とうようさんがヒップホップのルーツはジャイブ/ジャンプと言っていたそうで、ヒップホップのルーツかな~ということで。
1.Half-Pint Jaxsonの《Down At Jasper's》1928-40年
おっしゃるとおりそんな感じでした。
ヒップホップのラッパーのほとんどが尊敬しているというLangston Hughes。
2.Langston Hughesの《The Story Of Blues》1954年
これもなるほど。
ポエトリー・リーディング、こちらもラッパーの口に上ることが多いGil Scott Heron。
革命はテレビで報道されるようなところではなく、身近で起こっているというもの。
3.Gil Scott Heronの《The Revolusion Will Not Be Televised》
ファンキーなサウンドは私好みでした。
ヒップホップの勃興を決定づけた曲
聴いた後で原さんから、いーぐるで聴くと90年くらいまでのヒップホップ(高級なスタジオ機材を使って良い音で録られている)が凄く良く聴こえるとのコメント。
4.Run DMCの《Walk This Way》1986年
これは私もリアルタイムで試聴。当時から結構好きでした。
けれどヒップホップには嵌りませんでした。
アフリカ回帰の強いグループ。
5.Arested Developmentの《Afrika's Inside Me》1994年
かなりポップ。ジョー・サンプルの《野生の夢》がサンプリングされていました。
ここで関口さんはポップな曲がお好きなんだなと直感。
アフリカ・バンバータはカリビアンですが、ズール・ネイションからネイティブ・タンと来てアフリカ回帰していきます。
ハイチ出身のカリビアン。曲目《トゥ・ザイオン》の”ザイオン”は”シオン”聖地。
カルロス・サンタナのアコースティック・ギターをフィーチャ。
6.Lauryn Hill feat.C.Santanaの《To Zion》1998年
女性コーラスが入ってエスニック。カリブな感じでした。
ボブ・マーリーの息子ダミアンが入っている曲。
7.Cypress Hill feat. Damien Marleyの《Ganja Bus》2004年
「文化系のためのヒップホップ入門」で触れられていた南部ビートですね。
ブルース(奴隷の歌)、ゴズペル(霊歌)、ソウル(愛を歌う)ときて、ヒップホップは政治言論であり黒人の社会的言語。DJの名前に使われるグランド・マスターは当時アメリカで流行ったカンフー映画、少林寺拳法の師匠(グランドマスター)から来ている。グループ名:パブリック・エネミー(大衆の敵)、N.W.A.(ニガーズ・ウィズ・アティテチュード)などは、黒人の自虐性であり偽悪性。原さんからは、ヒップホップにはディスの文化があり、それはゲーム感覚でもあり、カンフー映画に通じる娯楽性でもあるなどの話がありました。
KEYWORD2 エディットされる文化、DJ/Producerの役割
日本ではディスコとクラブの区別があいまいな頃からDJが出てきた。原さんによると、最初はレコードが店にあったが(DJが店のお金で買って揃える)、だんだんそういうものとは別なものをかけるようになり、DJがレコードを持つようになったとのこと。六本木や西麻布のクラブでは色々なものがかかった。80年代後半にはハウスとかテクノとかが出てきて、それまでテクノポップと言われていたものがテクノと呼ばれる。石野卓球など。当時はヒップホップとテクノの区別があいまい。日本ではダンスの影響が大きく、音楽よりダンスが先に入ってきてその後「ダンス甲子園」とか流行る。
関口さんが大尊敬するDJ Krush。
8.DJ Krushの《The Beginning》2004年
アブストラクト・ヒップホップ。北欧フューチャージャズ似。こういうのは好き。
Krushさんはアメリカで影響を与えている。インスト・ヒップホップ~トリップ・ヒップホップ。Krushさんは動きとかが武士道的でそこに日本性を強く感じる。原さんによると、バカにされていた時期が長くあったがアメリカで受けて2000年以降影響力を増す。ジャズプレーヤーに近い感じだそう。
豪華でゴージャス。
9.Timbaland with Drakeの《Say Something》2004年
ティンバランドらしい南部ビート。ボコダーが懐かし風味。
全く新しい概念でヒップホップを捉えなおす。
10.N*E*R*Dの《Things Are Getting Better》2002年
パッと聴き8ビートのフージョン。う~む、まあポップで楽しいことは事実。
原さんから、今のようにPC編集などはなかったので最初はテープ編集で宅録でローファイな作りだった。ダンスさせるためにB.P.M.(ビート・パー・ミニット:テンポ)は上がりがち(テンポが速い)だったが、最近はB.P.M.が下がって(テンポが遅い)きて、それで踊れるようになってきたという話がありました。
長くなりすぎると読んでもらえそうにないのでここで一旦切ります。
後半は次回。
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