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Tzadicレーベルから出たメセニーの新譜

ツァディック・レーベルからメセニーの新譜が出るとは思いませんでした。意外な組み合わせですが、これが全く違和感なく融和しています。メセニー、ゾーン共に懐が深い人達なのでこういうことができるのでしょう。

ところで今頃になってですが今年のグラミー、メセニーのユニティ・バンドはベスト・ジャズ・インストウルメンタル・アルバム部門賞を受賞していたんですね。まあ順当なところか。で、エスペランサはベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム部門賞とベスト・インストゥルメンタル・アレンジメント・アカンパニング・ヴォーカリスト部門賞を受賞。ほらねっ、エスペランサはシンガー・ソング・ライターとして評価されてるじゃないですか。『ラジオ・ミュージック・ソサイエティ』ってそういうアルバム。私が言ったとおりです。

話を戻してメセニーの新譜紹介。

P115 パット・メセニー『タップ ジョン・ゾーンズ・ブック・オブ・エンジェルズ VOL.20』です。メンバーは、パット・メセニー(ac-g,el-g,baritone-g,sitar-g,tiples,b,p,orcchestrionic marimba,orcchestra bells,bandoneon,per,electoronics,flh)、アントニオ・サンチェス(ds)です。まさにメセニーらしくて一人で何でも演奏しちゃってます。メセニーの多重録音にサンチェスのドラムが共演。ゾーンのツァディック・レーベルとメセニーが所属するノンサッチ・レーベルの両方から併売という形になっています。私はAmazonで一番安かったノンサッチ盤を買いました。

このシリーズは初めて買いましたが、ゾーンの「マサダ」楽曲を色々なミュージシャンが演奏するシリーズのようです。もう20作目なんですね。プロデュースとアレンジはメセニーがやっているのですが、出てきたサウンドはツァディック・レーベルらしいアバンギャルドも感じさせるものになっていて、これはゾーン、メセニー2人の暗黙の了解なのでしょう。

1曲目《MASTEMA》はゾーンの楽曲らしいユダヤの匂いがするもの。シタールを弾いていてエスニック感満載。変拍子が炸裂するあたりが今時。サンチェスは難なく気持ち良くグルーヴさせていますね。ギンギンなロック・ギターが登場すると一挙にアバンギャルドな雰囲気に。ラストに向かっては尖がったエレクトロニクスが絡んで、かなりカッコイイ演奏になっています。

2曲目《ALBIN》は、一転してアコースティック・ギターを生かした美しいバラード演奏。メセニーが選ぶだけのことはあるとても美しい曲です。チャーリー・ヘイデン・レベルとまではいきませんが、ベースの音選びもそこそこいい線いってます。バンドネオンの哀愁はヘイデンのアルバム『ノクターン』の雰囲気に通じますよね。メセニーはこういうのが一人でできてしまうのです。サンチェスのドラムはもちろん自分らしい主張をしていて、やっぱり今のメセニーにベスト・マッチ。ラストにほんの少しオーケストリオニック・マリンバとベルが登場。

3曲目《THARISIS》はもろにユダヤ・エスニック曲。これも変拍子。前曲ラストに登場したオーケストリオニック・ベルが活躍。賛否はあるにせよ。こういう風に使い込んで行き自分のサウンドのアイコンと化してしまうメセニーのやり方は好きです。ピカソ・ギターという変なギターも今やメセニーの顔。同様にして早くからアイコン化したギター・シンセの、伸びやかで気持ち良いソロが聴けます。サンチェスのドラムも大活躍。オーケストリオニック・ベルとの共演も違和感なし。

4曲目《SARIEL》もユダヤ・エスニック曲。アコースティック・ギターのアンサンブルでしばらく進んで、途中から曲調が変わりロックなギターが登場するあたりの場面転換は正にメセニー流。普段よりロックっぽいギターを弾くメセニーがツァディック・レーベルらしさを演出していると思います。こういうロック・ギターが好きです。ラストはロック・ギターとドラムのバトルが少々。

5曲目《PHANUEL》はバラード演奏。アコースティック・ギターを中心に、こちらは空間を感じさせるイマジネイティブなサウンド。途中に現れる色々な音響の断片の散りばめ具合がアートしてます。こういうところ、やっぱりメセニーはセンス良いんですよ。後半のアコースティック・ギター・ソロはいつも通りで美しい! メセニーのベース、サンチェスのドラムが上手く盛り上げ、バックに薄く被さるシンセ・ストリングスが上質感を漂わせます。

6曲目《HURMIZ》はいきなりピアノから入ってフリー・ジャズへ突入。メセニーのピアノの音に説得力があるかと言われれば、そこまでは行ってないと思います。ここは正直に言ってしまえばピアニストには負けているでしょう。でも、サンチェスのドラムと果敢にバトルを繰り広げるメセニーのピアノは単なるお遊びレベルではないと思います。大真面目にピアノを弾いていそうなメセニーの姿が浮かんできて、「らしいなあ。」と納得します。

なかなか面白い仕上がりのアルバムです。最近のメセニーは自分の枠からあまりはみ出さない演奏が多かったので、今回は新鮮に響きました。ツァディック・レーベルのレーベル・カラーに上手く融合したメセニー・サウンド。聴いてみて下さい。

アルバム名:『TAP JOHN ZORN'S BOOK OF ANGELS | VOL.20』
メンバー:
Pat Metheny(ac-g, el-g, baritone-g, sitar-g, tiples, b, p, orchestrionic marimba,
orchestra bells, bundoneon, per, electronics, flh)
Antonio Sanchez(ds)

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コメント

トラバありがとうございました。

やっぱ、皆さん、ちょっとびっくりしてますよね。

しかし、、これは痛快な作品でございましたね。
ホント、様々な楽器と様々なギターを使って、とことん自己表現してました。しかも、それが、とっても魅力的な演奏でした。
それって、サンチェスの貢献も大なのですが、、でも、こうなると、、
何時、パットメセニーがドラムに手を出すか。。。
ちょっと、興味がわいてきます。(爆)

このあらゆる楽器を制覇しようとする性格は、もっと、オーケストリオンを極めようと、、している、、姿に重なります。。
才能ももちろんですが、やはり、凄い集中力があるのでしょうねぇ。。

ありがとうございました。

投稿: Suzuck | 2013年6月28日 (金) 17時20分

Suzuckさま

こんばんは。

>トラバありがとうございました。

いえいえどういたしまして。

>やっぱ、皆さん、ちょっとびっくりしてますよね。

まさかツァディック・レーベルからメセニーのアルバムが出るとは思いませんでしたよね。

>しかし、、これは痛快な作品でございましたね。

アバンギャルド寄りのメセニー全開。

>ホント、様々な楽器と様々なギターを使って、とことん自己表現してました。しかも、それが、とっても魅力的な演奏でした。

はいそのとおりでした。
私はこのメセニー・サウンドが気に入っています。

>それって、サンチェスの貢献も大なのですが、、でも、こうなると、、
>何時、パットメセニーがドラムに手を出すか。。。

ドラムまでやってしまうんでしょうかね・・・。
メセニーのことですから、やってもおかしくはないとは思います。

>ちょっと、興味がわいてきます。(爆)

かなり興味が湧きます。

>このあらゆる楽器を制覇しようとする性格は、もっと、オーケストリオンを極めようと、、している、、姿に重なります。。

なるほど、確かに重なりますね。

>才能ももちろんですが、やはり、凄い集中力があるのでしょうねぇ。。

集中力もでしょうけれど、やり始めたらとことんやらないと気が済まないのだろうと思います。
私はそこに凄く共感します。
性格的には似たものを持っているような気がしています(笑)。

トラバありがとうございました。

投稿: いっき | 2013年6月28日 (金) 20時32分

ジャケ写を見ていると、皆さんNonesuch盤を入手されたようですね。私はTzadik盤を入手しました。昔はジョン・ゾーンの追っかけもやってましたが、あまりにも膨大な新譜が出るためあきらめてしまいました。

このアルバム、聴く前はジョン・ゾーン色のかなり強いアルバムかと思ってましたが、メセニーのアルバムとして、ドラマチックな多重録音など、けっこう楽しめました。これなら両レーベルで併売もできるし、けっこう売れるんではないだろうか、と思います。それでも6曲目などフリー色が強く、自由にやっているところもあるな、と思いました。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2013年7月 7日 (日) 06時45分

910さん

こんばんは。
Nonesuch盤の方が安かったですからね。
私はメセニーファンとして、メセニー所属レーベルの方から買うという意図もありました。
確かにジョン・ゾーンをフォローするのは大変でしょう。

ゾーン色というかレーベル・カラーは意識した上で、メセニーらしさをきちんと発揮していますよね。
メセニー・ファンにはそれなりに売れると思います。
でもこれを聴いたからと言って、ツァディック・レーベルを追いかけてみたいという人はあまりいないでしょう。
良い出来のアルバムだと思います。

TBありがとうございました。

投稿: いっき | 2013年7月 7日 (日) 20時57分

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