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ノンサッチ・レーベルのA級外盤

ノンサッチ・レーベルと言えば、ジャズ・ファンにとってはパット・メセニーやブラッド・メルドーやジョシュア・レッドマンが所属するレーベルということになると思います。しかし、私がこのレーベルと出会ったのは30年ほど前のことです。この辺のことについては前に何度か少し触れています。今日はもう少し詳しく書いてみます。

P111_2 私とノンサッチを出会わせてくれたのがこの本。故長岡鉄男さん著「長岡鉄男の外盤A級セレクション」です。長岡さんはご存知のとおりオーディオ評論家で、独自の視点から評論活動をしていて多くの支持者がいました。支持者の人達は後に長岡教徒なんて言われたりしました。私もそのはしくれです。

この本が出たのが1984年、私は21歳でした。アルバイトのおかげでオーディオも満足できるものが揃えられ、楽しいオーディオ・ライフを過ごしていた頃です。私は既にジャズにドップリ嵌っていたので、必ずしもオーディオのために音楽を聴いていたわけではありませんが、たまにはオーディオ用の音源を聴くこともありました。

そこにこの本が登場したのです。嵌りましたね。この本は隅から隅まで何度も読み返しました。そして「外盤がほしい!」となったわけですが、甲府在住の私が簡単に入手できるはずもなく、どうしようかと思っているところに、秋葉原の石丸電気にこの本の外盤を揃えたコーナーがあるというのを、オーディオ誌で掴むわけです。当時からマニアックな私ですから、「それならば秋葉原の石丸電気へ買いに行こう!」ということになったのです。

当時の私はお金はなかったけれど時間はあったわけで、秋葉原までは普通列車(各駅停車)に乗って3時間半くらいかけて行きました。私はこの時初めて秋葉原へ行ったのです。あれから約30年、秋葉原も変わりましたね。昨日ブログに書いたようにオーディオ関係は先細り、皆さん御承知のとおりで、今の秋葉原は「電気街」から「オタクの聖地」になったのです。NHKのTV番組「ブラタモリ」で、秋葉原は時代と共に変化し、今も変化し続ける街だと言っていましたが、それを目の当たりにしてきました。

話を戻しまして。石丸電気のこのコーナーは盛況でしたよ。さすがは東京だと思いましたね。結局石丸電気には3回ほど行って11枚の外盤を買いました。その中に今日の話題のノンサッチ盤が2枚あります。そのうちの1枚を今日紹介します。

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『中世のクリスマス』ジョエル・コーエン指揮、ボストン・カメラータ。ボストン美術館での録音。宗教音楽です。普通の人はこういうのは聴かないですよね。長岡さんは何でも聴く人だったので、上記の本には現代音楽を中心に、古楽、民族音楽、宗教音楽などがたくさん紹介されています。逆にジャズとかロックは数枚しかありません。

私はオーディオ的なら何でも聴こうと思っていたので、こういう音楽にそれほど抵抗感はありませんでした。それよりは本に記載された内容の良し悪しで買いました。この盤の表題は『「本物」を感じさせるリアルでナチュラルな録音は超A級』。”超A級”ですよ。あの長岡さんをして”超A級”ですから、とんでもない好録音盤なのです。

聴きどころの第1はホールエコー。その広がりは3次元的で広大な音場。第2は音像。極めてリアルでソリッドで自然なサイズを持っています。第3は移動感が極めてリアルでナチュラル。左から右へ、右から奥へと歌いながら静かに移動。第4はかなりのオフマイクのはずなのに直接音が鮮烈、強烈。特にベルの音は強烈無比。ということです。

オーディオでこんな音が聴けるんですよ。ただしきちんと再生できるオーディオ装置とリスニングルームは必要。私みたいにそれなりの装置で小音量で小部屋で聴いていたのではその何分の一くらいしか体感できません。演奏内容は結構面白くて、通して聴いても意外と飽きません。本物の良い音とは何なのか?何事においても本物の良さを知っていないとお話にならないように思います。

P113 ついでにもう1枚紹介しておきましょう。掲載されている数少ないジャズ/ロックの中から1枚。ピンク・フロイド『ザ・ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン(狂気)』。これは30年前に買ったわけではなく、8年くらい前に急にこの手の音楽が聴きたくなって買いました。私が持ているのは米ハーベスト/キャピトル盤の中古で、安価入手したはずです。たまたまお店で手にしたのがこれだったというだけ。今日この本を読んで気付いたのですが、長岡さんが聴いていたのもこの盤のようです。偶然の一致。

この盤の表題は『スピーカーのテストにも使われたピンク・フロイド頂点の作品』。このアルバムのA面冒頭に心臓の鼓動の音が入っていて、それがスピーカーのテストに使われたというわけ。長岡さんの解説によれば、「ふつうのパーカッションだと、低音と同時に中高音も出ているので、トゥイーター、スコーカーがしっかりしていれば、立上がりのよい音に聴こえる。ところが低音だけの合成ではウーファーの立上がりがもろに出てくるので、このレコードの再生は意外にむずかしい。」とのこと。そうなんですよね。

「長岡さんは音楽を聴かないで音を聴いている。」と言われたりしましたが、そんなことはなくて、このレコードについても以下のようなことが書いてあります。「おそらくピンク・フロイドの頂点の作品。その後の”アニマルズ”は曲、演奏、録音、3拍子揃った駄作だったし、”ザ・ウォール”が録音で買えるが、”ザ・ファイナル・カット”は効果音入りビートルズといった感じで、才能の枯渇を思わせる。」と。こういうことは音楽を聴いていないと書けないと思います。

これは録音がどうのこうのという感じで私は聴きません。何ともレイジーで退廃的な空気感に惹かれます。70年代前半の時代の音だと思います。ジャズっぽいサックスとか入っていたり、何となく黒さを感じさせるグルーヴもあり、ブルージーでもあり、ジャズ好きで70年代エレクトリック・マイルス好きな私の心をくすぐる要素が多々あります。

レコード・コレクターズ2007,6「70年代ベスト100」で、このアルバムは11位。アルバム評の最初にこんなことが書かれています。「プログレを代表する傑作には違いないが、これは絶対にサンタナ『キャラバンサライ』への返答。」と、これを書いているのは和久井光司さんです。なるほどと思います。まあ私はサンタナを一度も聴いたことがないので、中山康樹さんの本のマイルス~サンタナ繋がりの話や、「狂気」とエレクトリック・マイルスを聴いての推測。封じ込められている空気感なんですよね。

上記の2枚、「長岡鉄男の外盤A級セレクション」で紹介されている100枚中の、最初から2枚目が『中世のクリスマス』で、最後から2枚目が『狂気』です。面白いでしょ。

それにしてもまさかノンサッチからメセニーのアルバムが出るとは思いもしませんでした。世の中、想定していないことが色々起こりますよね。

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コメント

いっきさん、こんばんは。

いっきさんが、「サンタナを一度も聴いたことがない」というのは意外でした(笑)。サンタナ好きなオレ!!
是非一度、ジャズに接近している『キャラバンサライ』『魂の兄弟たち』『ロータスの伝説』は、レンタルCDでお聴きください。買う必要はないでしょうが・・・。

投稿: tommy | 2013年5月26日 (日) 22時54分

tommyさん

こんばんは。
サンタナとはなぜか縁がなかったのです。
中山さんの本でその3枚が出ていたりして、聴こうかと思ったりしましたが、未だに実現していません。
一度くらいは聴いてみようと思います。

投稿: いっき | 2013年5月27日 (月) 00時03分

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