カッコつけてるよね。類家さん!
「KOFU JAZZ STREET」で観て気に入ったので買いました。
類家心平4ピース・バンドの『セクターb』(2011年rec. PROJECT LAMU Inc)です。メンバーは、類家心平(tp)、ハクエイ・キム(p)、鉄井孝司(b)、吉岡大輔(ds)です。「KOFU JAZZ STREET」で観たと時とはピアノが異なっています。キムは自分自身の活動が忙しいでしょうからメンバーから抜けたのかもしれません。
類家はジャケット写真のとおり今時の若者です。カッコつけてるよね(笑)。演奏もカッコつけてます。悪い意味ではありません。私はこの人にリー・モーガンにも似たやんちゃな匂いを感じ、そこが良いと思っています。表現に対しては真摯だと思いますが、排他的ではなくてエンターテインメント性を持っています。魅せることを忘れていないんです。
ライブではそれが良く分かるのですが、こういうスタジオ録音のアルバムではその全貌が捉えきれない部分があるように思います。とは言ってもアルバムには類家の魅力がたくさん詰まっています。尖がったオープン・トランペットの激しい吹奏からミュート・トランペットの哀愁まで、ダイナミックレンジも広いと思います。
4曲が類家の曲、1曲が菊地成孔の曲、1曲がレディー・ガガの曲、1曲が三輪裕也(私は未知)の曲で全7曲が収録されています。
冒頭《オブセッション》はドラムンベースのリズムに乗って鋭いトランペットから入ります。モーダルな曲はちょっとミステリアスで不穏なムード。クラブミュージックも意識下にあると思われる今時のカッコ良さですね。キムのピアノ・ソロも鋭さを維持。ライブで聴くともっと迫力があります。
続く《GL/JM》は4ビートで始まるモーダルな曲。60年代末のマイルスを意識しているように聴こえます。と思ったら菊地の曲だったんですよね。どうして菊地はこうもベタになっちゃうんでしょう。そこが取り柄だからしょうがないか(笑)。ちなみにこのアルバムのプロデューサーは菊地成孔です。
次の《カオティック・テリトリーIV》は、高速4ビートに乗ってひたすら疾走する類家がカッコいい。キムも負けじと尖がったピアノ・ソロをとります。これはストレートなバップ。力いっぱい吹き切る類家はライブで観るとその熱さがビシビシと伝わってきます。
4曲目《ポーカー・フェイス》はレディー・ガガの曲。前半はキムとのデュオです。類家のリリカルなミュートは儚げで寂しげで、胸にじんわりきます。キムのピアノも美しくやさしく響きます。ここまで3曲飛ばしてきたのでその熱を冷ます感じ。
5曲目《ATOM》は三輪裕也の曲。曲は《タイム・アフター・タイム》に似ています。マイルスがやった《タイム・アフター・タイム》がオーバーラップしてきます。これはプロデューサーの菊地がマイルスを意識して類家にやらせたのではないかと勘繰りますね(笑)。切ない良い曲で私はこの曲が好き。
6曲目《フロー》は、なんとなく「ミッション・イン・ポッシブル」のテーマを思い浮かべます。なかなかカッコいい曲ですよ。こういう曲をやるところに類家のエンターテインメント性が出ていると思います。勢いに乗った演奏がスリリング。
ラスト《Coerulea》はバラード。またまたミュートが切ないです。大部分がキムとのデュオ。単に甘いのではなくリリカルで落ち着いた演奏でしっとりと聴かせてエンディングへ。
このバンドはあくまで類家のバンドですね。ベースとドラムはサポートに徹しています。ピアノのキムは対等に近い関係だと思うのですが、アルバムを聴き終えるとやっぱり主役は類家であり、キムは類家を食ってしまうようなところはありません。
カッコいい類家のトランペットはいかが。
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