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メセニー・ワールドとしか言いようがない。

新譜紹介です。メセニー・ファンの私としては聴かねばなりません。

P3パット・メセニー『ザ・オーケストリオン・プロジェクト』(2010年rec. NONSUCH)です。メンバーは、パット・メセニー(g,orchestrionics)です。コンピューター・コントロール・ミニ・オーケストラの楽器名はオーケストリオンではなくて”オーケストリオニクス”。オーケストラとエレクトロニクスを合わせた造語でしょうね。ジャケット写真を見ていただければ分かるとおり凄いことになってます。

音を聴いただけでは、メセニーがオーケストリオニクスに合わせているのか、オーケストリオニクスがメセニーに合わせているのか、よく分かりません。これのDVDが出ているので、それを見れば少しは分かるのかもしれませんが、きっとよく分からないと思います。

神保彰のワンマン・オーケストラみたいに、どのようにプログラミングされていて、どうやって起動するか解説があれば、少しは謎が解けるのではないかと思います。でもそれってきっと理科系のセンスが必要です。失礼ながら文化系の人は仕組みを説明されたとしても、凄い程度の感想になってしまうことでしょう。まっ、そんなことはどうでも良いことだと思いますが。

実は前に出た『オーケストリオン』はあまり気に入りませんでした。だってサウンド自体はパット・メセニー・グループの範疇で、何でわざわざ機械(オーケストリオニクス)を作ってまでやらなきゃいけないか疑問だったからです。そんなわけで、これも買うかどうか悩みました。でも、私はメセニー・ファンのなので、一応全部聴いておかなきゃいけないという使命感にかられました(笑)。

P4
内ジャケ写真はまるでSFに出てくる宇宙船の操縦室のようです。メカ好きの私には猛烈に萌え~な写真(笑)。こんな凄い仕掛けを作ってライブ演奏してしまうんだからビックリ仰天。

聴いてみたらこれはなかなか気に入りました。まず全体的にメカメカしくありません。前のアルバムはいかにもメカが演奏しているといった具合で、まあこれは、こういうものを作ってしまうと最初は効果を強調してしまうという、ありがちな発想だったのだろうと推測できるわけですが、今回はサウンドが自然です。録音場所の教会の響きと録り方でだいぶ印象が違います。前の録音では色気がなくて違和感があったベースの音も、今回はふっくらしていていい感じになっています。

アレンジの仕方も、一度に鳴る音を少なめにしたり、シンセを程良く入れたり、マリンバや鉄琴の響きを生かしたり、ピアノの登場場面を増やし、ピアノの低音でベースの弱さをカバーしたり、たぶんブロウン・ボトルだと思うのですが、オルガン風のエフェクト音を薄く流したり、ギターボットとの2人メセニーみたいな共演があったりと、色々工夫の程がうかがえます。そういう工夫がメカメカしさを緩和していると思います。

サウンドは良いとして、相変わらずオーケストリオニクスでわざわざやる意義は今回も見い出せなかったわけですが、こんなバカげたことはメセニーだからできるわけで、またメセニーだから許されるということで了解しましょう(笑)。基本的にメセニー・ワールド全開でして、メセニー・ファンの私としては素直に良いと受け入れることにしました。

旧作からの曲もとりあげたりしていてなかなか良い演奏になっています。
輸入盤ならば安いので一聴の価値はあると思います。

アルバム名:『THE ORCHESTRION PROJECT』
メンバー:パット・メセニー
g, orchestrionics(vib, orchestra bells, basses, guitarbots, per, cymbals, ds,
blown bottles, other custom-fabricated acoustic mechanical instruments),
robotic, angeli guittar

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ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。宜しくお願いします。
私はDVDバージョンのオーケストリオンを購入しました。
結論を先に言うと、この作品はすごく気に入っています。
今までの作品も何枚か持っていますが、それはあまり好きではなかった。
その理由。
アメリカの広大な大自然を思わせるような、カントリーともちょっと違うけれど、アメリカン・ナチュラル・ミュージックみたいな曲を、わざわざメセニーほどの才能が溢れるアーティストがやるのはちょっと合わない感じがした。
次に、彼独特のリバーブが多めにかかったギターサウンドが好きではない。
幻想的な曲ならともかく、ジャズには余計だと思う。
最後に、共演者があまり好きなタイプのミュージシャンではなかった。
しかし、このオーケストリオンは彼100%だと思う。
コンピューターにリズムやフレーズの譜面を入れて、鳴らしてみてすぐOKと言う訳ではなかっただろう。
生楽器のレスポンスや、ソレノイド(発音させるための駆動部分)のダイナミクスなどの微調整に結構時間がかかっていると思う。
特にEXPANSIONの幾何学的なフレーズが気に入っています。

投稿: Log | 2013年4月 6日 (土) 12時21分

Logさん

こんばんは。はじめまして。
私はメセニーの曲想やギターの音が好きです。
それらをひっくるめてメセニー・サウンドとして愛しています。
それから人選はともかくとして、私は人間同士がコミュニケーションによって生み出す音楽のほうが好きです。
なのでオーケストリオンには未だ懐疑的。
まあただおっしゃるとおりでオーケストリオンはメセニー100%であることは間違いないと思います。
またオーケストリオニクスをここまで鳴らすには相当な手間がかかっているだろうことは、おっしゃるとおりだと思います。
《EXPANSION》はオーケストリオンに似合う曲ですね。
色々書きましたが私はこのアルバムを気に入っています。

投稿: いっき | 2013年4月 6日 (土) 18時54分

どうも有り難うございます。
パットのグループは年代に応じてメンバーが総入れ替えされたりしますが、ベースのリチャード・ボナはいろんな所でサンバをやったりフュージョンをやったりして注目されていますが、「世間で言う程、味があるかなぁ…」と思うのです。
テクニック先行で無機質に聞こえる。

アルバムではどの曲もオーケストリオンをフルで使っていますが、Unity Villageだけは小さなシンバルだけをリズムキープに使っています。
編成を変えたオーケストリオンの可能性にも期待します。
パットはかなり初期からギター・シンセを積極的に使っていますが、彼は最近のインタビューで「シンセサイザーを使っても、その音は2つのスピーカーの間にしか存在しない。音の存在感を大切にしたいから生楽器をコントロールする事にしたんだ」という意味の事を言っています。
彼は小さい頃に見た自動演奏装置をただ再現するのだけではなく、自分の音楽を隅々まで自分の音だけで構築するためのオーケストラとして、どうしても現実化したかったのでしょう。

投稿: Log | 2013年4月 6日 (土) 20時49分

リチャード・ボナは私もあまり好んで聴きません。
メセニーのグループでは主にボーカル要員でしょうから拒否するほどでもないです。
編成を変えたオーケストリオンという意味では、ユニティ・バンドでの使い方(1曲のみ)が私は気に入ってます。
「自分の音楽を隅々まで自分の音だけで構築するため」そういうメセニーの考え方が、その音楽を重くしているというような意見もあるようです。
私はそれはそれで良いと納得していますけど。

投稿: いっき | 2013年4月 6日 (土) 22時19分

今だったら、コンピュータとシンセ系統の電気楽器で何でもできると思うのですが、あえてメカ式で挑戦して、しかもけっこう凝った曲もあるのが、やっぱりパット・メセニーだなあ、と思いました。こだわりなんですね。しかも大きい。メカと指令部分の同期はPCなどで取っているのでしょうが、それでもスゴいです。

思い出してみればグループの時もMIDIを使わない最後のグループ、という言葉をどこかで目にしたことがありました。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2013年4月25日 (木) 07時15分

910さん
こんばんは。
メカでやるというレトロ感、一方で駆動にはコンピューターを駆使するという最新鋭、このちぐはぐ感は面白いですよね。
そこに目を付けて徹底的にやるのがメセニーというアーティストなのでしょう。
疑いなく凄い人だと思っています。
「MIDIを使わない最後のグループ」、そんなことを言っていたんですか。メセニーはやっぱりちょっと変なところがあって、そこが魅力です。
TBありがとうございました。

投稿: いっき | 2013年4月25日 (木) 20時16分

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