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現代サウンド万華鏡!

「益子博之=多田雅範 四谷音盤茶会」前編「益子博之=多田雅範 四谷音盤茶会」後編 でかかった1枚を紹介します。私は凄く気に入りました。

P180ラフィーク・バーティア『イエス・イット・ウィル』(2012年、REST ASSURED)です。メンバーは、ラフィーク・バーティア(el-g,ac-g,loops,syn,wuritzer)、ジェレミー・ヴァイナー(ts)、ジャクソン・ヒル(b)、アレックス・リッツ(ds)、ビリー・ハート(ds)、ヴィジェイ・アイヤ(p)、コリー・キング(tb)、ニーナ・モフィット(vo)、ピーター・エバンス(tp)、クレア・チェイス(fl)、ジョシュア・ルビン(cl)、カリブ・バーンズ(violin)、クリストファー・オット(violin)、ヴィクター・ローリー(viola)、ケビン・マクファーランド(cello)、アレクサンダー・オヴァリントン(proccessing,samples,syn,wuritzer)です。四谷音盤茶会の2012年ベスト2位。納得の順位です。

バーティアは借金の形としてインドからアフリカに渡った人の末裔で、イースト・アフリカン・インディアンとのこと。ニューヨークのインド系の人達にありがちなインド・メロディーは感じません。1曲目こそエスニックな風味がありますが、それはバス・クラリネットの感じから私にはバルカン音楽みたいに聴こえます。他の曲にはあまりエスニック臭はありません。全7曲中6曲をバーティアが作曲。ラストの曲のみ弦楽4重奏が加わったバラードでサム・クック作曲。

バーティアはコンポーザー・タイプのギタリストです。なのでギター・ソロがない曲がいくつかあります。現代の若者が聴いてきたであろう色々な音楽の要素が混じった楽曲は正にサウンド万華鏡なのです。聴きどころが色々あって飽きません。とにかくサウンドが面白いです。それはプロデューサーのオヴァリントンの志向するところでもあるのかもしれません。

リズムは変拍子炸裂、曲によってはモロにM-BASEな曲もあります。ベースとドラムの音の肌触りはヒップホップのサンプラーで作り出す粗っぽい感じそのもの。全編弾いているアコースティック・ベースはア・トライブ・コールド・クエスト辺りのテイストです。デトロイト・テクノともつながる感じです。私はデトロイト・テクノに詳しくないので、唯一アルバムを持っているインナー・ゾーン・オーケストラの『プログラムド』とのサウンド類似性からそう言っています。

基本はギター/ベース/ドラムのトリオ。エレクトリック・ギター・ソロのフレージングは正に現代的。ギター・トリオを核に、ホーンのアンサンブルが入ったり、アイヤの尖がったジャズ・ピアノが入ったり、ミニマル系の音響があったり、ベース・ソロ主体でコーラスが入ったり、爆裂ボントロ&テナー・ソロあり、ベースとドラムのヒップホップ的肌触りのリズムを中心にミニマルなギターが鳴ったり、トロンボーンとテナーの音響的なものも含めた掛け合いがあったり、現代音楽的音響演奏があったり、ビル・フリゼール的カントリー色あり、弦楽四重奏が加わったり、更に編集やサウンドエフェクトがさり気なく入ったりと、とにかく種々雑多。

色々なサウンドがありますが、間違いなく発想はジャズ。色々なサウンドを取り入れているのは他にもありますが、そういうものでもジャズにきちんと軸足を乗せていないものを私は評価しません。だってそれはジャズではないですから。しかしバーティアはサウンドがヒップホップであろうがテクノであろうが現代音楽であろうが、ジャズ! それは作った感がなくサウンドがスポンティニュアスだからかもしれません。これからが楽しみな才能です。こういうのを見つけてくる益子さんのアンテナは凄いです。

現代ジャズはつまらないと言っている人、これを聴いてみて下さい。
これがつまらないと言うのなら、それはあなたの頭が古すぎるからです。

アルバム名:『Yes It Will』
メンバー:
Rafiq Bhatia(el-g, ac-g, loops, syn, wuritzer)
Jeremy Viner(ts)
Jack Hill(b)
Alex Ritz(ds)
Billy Har(ds)
Vijay Iyer(p)
Corey King(tb)
Nina Mofitt(voice)
Peter Evans(tp)
Claire Chase(fl)
Joshua Rubin(cl)
Caleb Burhans(violin)
Christopher Otto(violin)
Victor Lowrie(viola)
Kevin McFarland(cello)
Alexander Overington(processing, samples, syn,wuritzer)

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