素敵なブラジリアン・ピアノ・トリオ。
クリポタとルドレシュ・マハンサッパの新譜を紹介する前に紹介しておきたいアルバム2枚のうちのもう1枚がこれ。柳樂光隆さんがツイートしていたのを見て、ディスクユニオンのサイトで試聴してから購入を決めました。私はピアノ・トリオのエスペランサを聴いたことがなかったので、それも興味のポイント。
ナンド・ミシェリンの『レインコントロ~再会』(2007年rec. AGATE)です。メンバーは、ナンド・ミシェリン(p)、エスペランサ・スポルディング(b,voice)、リッチー・バーシャイ(ds)、ティアゴ・ミシェリン(ds m6, 10)、リーラ・ヴォート(voice m7,10,background voise m1,tp m4)です。ライナーノーツは柳樂さんが書いています。録音は2007年ですが発売は2010年のようなので、今回は再発ということか。
最初に聴いた時の印象はマイナー・ピアノ・トリオ。自分の出自を生かしてジャズをやる欧州のそれと発想的には同様と思います。ただしこれは欧州風味ではなく南米風味。その理由はミシェリンが南米ウルグアイ出身だからです。コーヒー豆が南米大陸型に並べらたジャケットにその趣向が表れています。ミシェリンの現在の活動拠点はアメリカだそうです。
南米と言っても色々ありますが、ミシェリンが影響されているのはブラジル音楽。ミシェリンのオリジナル曲、またエスペランサのハミングを取り入れたサウンドからは、ウェザー・リポート脱退前後のウェイン・ショーターやブラジル色が濃厚だった頃のパット・メセニー・グループのサウンドと共通項が見えます。
最近ジャズ界(だけでなく?)でブラジル音楽がちょっとしたブームらしいのですが、前述のショーター、メセニーから四半世紀ほど経って、またブームが再来しているんでしょうかね? ブームなんてものはどこからともなく現れて、しばらくすれば必ず消えて行く、そんなものです。私はブームをいちいちフォローすることにあまり興味がありません。音楽をファッション的に捉えるのが嫌いなんですよね。そういう楽しみ方を否定する気はありませんが。
このアルバムはブラジル音楽をセンス良く取り込んだ好アルバムと捉えればO.K.。マイナー・ピアノ・トリオの楽しみ方でいきましょうよ。ナンドの曲《Paula》なんかは哀愁溢れる良い曲です。エスペランサのベースもいい感じ。私はかなりお気に入りの曲。寺島靖国さんが聴いたら絶対気に入る曲だと思います。寺島さんお得意の「この1曲から聴け!」てな具合でお薦めしたほうが、このアルバムは売れるのではないでしょうか(笑)。
ナンドの曲《Oxossi》はエスペランサのベースがなかなか逞しくからみ、バーシャイに替わってナンドの息子ティアゴがドラムを叩いていますが、パーカッシブにはしゃぎ気味に煽るところは微笑ましいです。3人のインタープレイが良いです。こういうインタープレイは寺島さんも好きなのではないでしょうか? 1曲だけ入っているバーシャイの曲《Sycamore》はバラードで、エスペランサのベースを中心にした3人のインタープレイがここでも素敵。バーシャイのドラミングのほうがやっぱりティアゴよりは1枚上手。
ほとんどの曲にハミングが入っています。エスペランサが歌っている曲もあれば、リーラ・ヴォートが歌っている曲もあります。しかしそれはあくまで調味料。中心は爽やかでありながら決して軽く流されない骨格のしっかりしたナンドのピアノです。聴けば聴くほど味が出てきます。陰影感が良いのです。
エスペランサのベースはとてもアーティスティック。やっぱりこの人はセンスがいいんだと納得。ドラムのバーシャイがいいです。リズムのさばき方は今時のパーカッシブなもので、それほど手数が多くなくても熱気を孕みつつ盛り上げていけるのがこの人の美点。こういうドラミングはブライアン・ブレイドあたりと似ています。
オーディオ的に録音がいまいちなのが残念。混濁気味なのです。もう少しクリアに録音できていたらオーディオ的にも楽しめて、寺島さんの推薦盤になったのではないでしょうか(笑)? マイナー・ピアノ・トリオということで聴かせながら、実は演奏の質も高いというのが良いではありませんか。
佳い曲と美味しい3人のインタープレイが詰まっています。お薦めピアノ・トリオ!
アルバム名:『Reencontro』
メンバー:
Nando Michelin(p)
Esperanza Spolding(b, voice)
Richie Barshay(ds, except 6, 10)
Tiago Michelin(ds, on 6, 10)
Leala Vogt(voice on 7, 10, background voice on 1, tp on 4)
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コメント
いっきさん。こんばんは。
このアルバムは聴いてみたいと思った。
きっと、このレビューが分かりやすかったのだと思います。
サンキュ〜。見つけたら聴いてみます!!
投稿: tommy | 2013年2月 6日 (水) 23時29分
tommyさん
こんばんは。
>このアルバムは聴いてみたいと思った。
なかなか良い感じです。
>きっと、このレビューが分かりやすかったのだと思います。
どうもありがとうございます。
どう書いたら良いのか、日々色々な語り口にトライしてます。
>サンキュ〜。見つけたら聴いてみます!!
いえいえどういたしまして。
あんまり期待しないで聴いてみて下さい。
もし内容がダメだったなら私の騙し方が良かったということで(笑)。
投稿: いっき | 2013年2月 7日 (木) 00時11分
あれ、これって輸入盤じゃないんですね。
『Reencontro』輸入盤もMP3ダウンロードもあって、ちょい試聴もありました。いい感じです〜ハミングのせいか、初期リターン・トゥ・フォーエバーのような(笑)。
>どう書いたら良いのか、日々色々な語り口にトライしてます。
それはいいことですね。日々研究!!
投稿: tommy | 2013年2月 7日 (木) 00時33分
tommyさん
こんばんは。
>あれ、これって輸入盤じゃないんですね。
はい。だから柳樂さんがライナーノーツを書いています。
>いい感じです〜ハミングのせいか、初期リターン・トゥ・フォーエバーのような(笑)。
そういう感じもします。
>それはいいことですね。日々研究!!
やっぱり何か考えながらやらないと面白くないんすよ。
投稿: いっき | 2013年2月 7日 (木) 19時35分