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ゆったりした王道サックス・トリオ

昨年出た新譜の紹介です。前々回の記事でマイケル・ブレイクのアルバムを紹介しました。Amazonを見ていたらこの人のサックス・トリオが出ていたので買ってみました。

P156ベン・アリソン/マイケル・ブレイク/ルディ・ロイストン『ユニオン・スクエア』(2012年rec. ABEAT Records)です。メンバーは、ベン・アリソン(b)、マイケル・ブレイク(ss,ts)、ルディ・ロイストン(ds)です。3人併記なのでリーダーは特にいないようです。ブレイクの曲が4曲、アリソンの曲が2曲、ロイストンの曲が3曲にエリントンの1曲を加え計10曲が収録されています。

マイケル・ブレイクのサックス・トリオ・アルバム 『ライト・ビフォー・ユア・ベリー・イヤーズ』 とはドラマーがチェンジしています。今回参加しているロイストンは、宣伝文によると”ポスト・ブライアン・ブレイドの1番手との声も高い気鋭”とのこと。私が持っているアルバムではスティーブ・カーディナス(g)の『ウエスト・オブ・ミドル』、リンダ・オー(b)の『イニシャル・ヒア』、レイナルド・コロン(tp)の『ライズ』に参加していました。リンダとコロンのアルバムは私も高評価なので、このロイストンには今後注目していきたいと思います。

冒頭、ブレイク作《ストレイズ》はノホホンかつトホホなメロディーなのでちょっと拍子抜け。タイトル「ストレイズ」の意味を調べたら「迷子、放浪者」という意味なので、なるほど確かにそういう感じだと思いました。ブレイクの落ち着き払ったテナー、逞しいアリソンのベース、パルシブで繊細なロイストンのドラムが絡んでゆったりした時が流れていきます。この曲調がこのアルバムを象徴していると思いました。

収録されているのはミディアム~スローな曲がほとんどで、メロディーや曲の雰囲気を大事にしつつ3者がじっくり各曲を料理していきます。ゆったりしていますが緩くはありません。白熱する場面も現れます。リズムは基本的に4ビートと8ビートで、フリーな演奏はありませんから王道バップでしょう。ブレイクの『イン・ザ・グラウンド・スキーム・オブ・シング』と同様、フレージングのテクニックをひけらかすようなことはせず、メロディーを大事にしつつそのバリエーションでアドリブを展開。

ブレイクの《フラッパー》はユーモラスな曲で、私の頭にはドン・チェリーの『コンプリート・コミュニオン』が浮かんできました。4ビートで快調に飛ばし、ラストはテナーの無伴奏ソロで終了するオーガニックな演奏。ブレイクが娘イリスのために書いたホンワカ優しい曲《ビッグ・スマイル》がこのアルバムにも入っていました。娘の笑顔を見るとこんな気持ちになるのでしょうね。何となくボブ・ディランが作りそうな曲調です。こちらはソプラノ・サックスで包み込むような感じに演奏。

エリントンの《ウィグ・ワイズ》はソプラノ・サックスでしっかりスイング。ソプラノ・サックスがクラリネットのようでもあり、古き佳さを感じさせます。ロイストンの《ラッキー・マン》はアルバム中唯一の変拍子。ドラマーが作る曲らしく、ドラムが暴れ回ります。これもロイストンの《ラン・サザン・ボーイ》は4ビートでベースがかきむしり、曲調(特にドラミング)はあのアンリ・テキシェ『粘土の城壁』の《サクリファイス》みたいな感じがします。朗々とテナーを歌わせるブレイクが素敵。

地味目テイストのアルバムだと思いますが聴くうちに良さがじんわり染みてきます。
現代味を持つ王道バップ・サックス・トリオとしておすすめ。

アルバム名:『UNION SQUARE』
メンバー:
Ben Allison(b)
Michael Blake(ts, ss)
Rudy Royston(ds)

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