« 改めて自分のジャズ耳を認識 | トップページ | ブログデザイン変更! »

リオーネル・ルエケの新譜

今日は新譜紹介です。

P39リオーネル・ルエケ『ヘリテイジ』(2012年、BLUE NOTE)です。メンバーは、リオーネル・ルエケ(g,vo)、ロバート・グラスパー(p,key,rhodes)6曲、デリック・ホッジ(b)、マーク・ジュリアーナ(ds)、グレッチェン・パーラト(vo)2曲です。プロデュースはロバート・グラスパー。

サイドマンとしてはいくつかのアルバムで聴いていますが、ルエケのリーダー・アルバムを買うのは今回が初めてです。グラスパーがプロデュースしていることもあって買いました。

アフリカ生まれにちなんでアフリカ色を全面に出して歌っている曲とフュージョン調の曲が収録されています。2曲はグラスパーが提供していてそのシンセ音と弾き方からすぐにグラスパーの曲と分かります。ラストを飾るグラスパーの曲はモロに彼のグループ「エクスペリメント」のような演奏。ルエケのほうがゲスト参加している感じです。ハードなソロもあるにはあるのですが、全体的なサウンドとしては心地良さを主体にしている感じ。それはプロデューサーであるグラスパーの志向でもあるのだろうと思います。

冒頭のアフリカンな曲ではソロ部でギターの音にシンセを同期して音を出しているのか?まるでシンセを弾いているようです。他にも同じような使い方をしている部分があります。この音が私はどうも気持ち良くないんですよね。他の演奏でもそうなのですがどうもこの人のギターの音は”ペナペナ”した薄っぺらい音で、今までギターの音を嫌だと思ったことはないのにこのギター音だけはどうも苦手です。

ルエケのギターは音が個性的な割に演奏そのものは意外と特徴が少ないように聴こえます。結果テクニックは相当なものであるのに希求力が少ないように感じるんですよね。グラスパーもデリケートなサポートが多く、まあそれはそれで洒落たセンスとして聴きどころではあるのですが、私としてはいまひとつ来てくれないもどかしさが残ります。グレッチェン・パーラトの極軽いスキャット・コーラスでの起用法にそれが象徴されている気がします。

《アフリカン・シップ》だけはグラスパーのテンション高めのインプロを全面に出した曲で、ハービー・ハンコック調のピアノはなかなか良い感じです。ラストに”イェ~ィ、フッフ”みたいな声が入っていて、彼らにとっては「やってやったぜ!」なんでしょうけれど、私にしてみれば「この程度で?」なのでした。う~む。にしてもこの曲やラストの曲など、グラスパーは目立ちたがりでいやらしいな~(笑)。

結局のところ私が良いと思うのは、ホッジの良くグルーヴする腰の据わったエレベと今時なリズム感のジュリア―ナの巧みで闊達なドラミングです。ジュリア―ナのドラミングは特に気に入りました。ラストの「エクスペリメント」的な演奏においてはクリス・デイヴにも負けない魅力的なビートを提供していて、なるほど今はこういうビートが叩ける人は他にもいるんだなということが分かりました。

ちょっと反れますがウェイン・クランツのバンドでのジュリア―ナのドラム・ソロを貼り付けておきます。カッコいいじゃありませんか。シンバルの上に何か乗せるのって今流行りなのでしょうか?スネアの上にアルミ灰皿などを乗せるのは、外山明さんがやっていたのを見たような気がします。長いバスドラも外山さんと同じ。

アルバムの話に戻ります。私としては結局ギターの音のところでつまづいてしまうため、そこからなかなか評価が上がりません(涙)。残念ながらこのアルバムと私は相性が良くないようです。

アルバム名:『HERITAGE』
メンバー:
Lionel loueke(g, vo)
Robert Glasper(p, key, rhodes) 2,3,4,6,8,10
Derrick Hodge(b)
Mark Guliana(ds)
Gretchen Parlato(vo) 3,4

|

« 改めて自分のジャズ耳を認識 | トップページ | ブログデザイン変更! »

ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

こんばんわ、いっきさん

>シンバルの上に何か乗せるのって今流行りなのでしょうか?

これJAMES FARMのエリック・ハーランドもやってました。
プリペアド・ドラムっていうらしいですね。
検索したらリズム&ドラム・マガジンでも特集されたことがあるようです。

投稿: とっぽぎー | 2012年9月20日 (木) 21時44分

とっぽぎーさん
こんばんは。
>これJAMES FARMのエリック・ハーランドもやってました。
JAMES FARM観たんですか。いいですね。
>プリペアド・ドラムっていうらしいですね。
なるほど。プリペアド・ピアノのドラム版というわけですね。
>検索したらリズム&ドラム・マガジンでも特集されたことがあるようです。
最近はドラム・セットがシンプルなので、サウンドにバリエーションを加えるためにやる人が多いということなのでしょうね。

投稿: いっき | 2012年9月20日 (木) 22時25分

観ました。ジョシュアは良い仲間を得て嬉しそうでしたよ。
クリス・ポッターも行きたかったのですが時間が合いませんでした(残念…)。今年って本当に良いミュージシャンが来日してますよね

>最近はドラム・セットがシンプルなので、サウンドにバリエーションを加えるためにやる人が多いということなのでしょうね。

これは盲点でした。フュージョンやポストバップを通過して、最小限の機材で最大限の効果を…っていうのが今の流れなのですかね。

投稿: とっぽぎー | 2012年9月21日 (金) 21時16分

とっぽぎーさん
こんばんは。
>ジョシュアは良い仲間を得て嬉しそうでしたよ。
私も観たかったです。
>クリス・ポッターも行きたかったのですが時間が合いませんでした(残念…)。
同じ頃来てましたね。
私は迷わずクリポタを選択したんでした。
>今年って本当に良いミュージシャンが来日してますよね
確かにそうですよね。
>フュージョンやポストバップを通過して、最小限の機材で最大限の効果を…っていうのが今の流れなのですかね。
多分に経済的な理由からなのではないでしょうか。
ジャズってそんなに儲からないわけで、大きなドラムセットを持ち歩くコストはバカにならないでしょうし、維持費だってより多くかかるでしょう。ライブハウスも広くないところが多いでしょうから、ドラムセットは場所を取らないほうが良いのではないでしょうか。
ロックのようにお金が儲かって大ホールコンサートが多いならドラムセットも大きくなるのでしょう。サイモン・フィリップスみたいに(笑)。

投稿: いっき | 2012年9月21日 (金) 22時29分

いっきさん、こんばんは
一部のロックとかフュージョンのドラマーって、そのままお店が開けるくらいのドラムセットをライブに持ち込みますよね笑(まあ会場の貸しもあるんでしょうけど…)

確かに世界中を飛び回るミュージシャンにとってドラムやウッベなど大型の楽器の運搬は問題なんでしょうね。
NYには行った事はありませんが、ライブハウスの狭さについても言及している人が結構いる気がします。

投稿: とっぽぎー | 2012年9月23日 (日) 01時50分

とっぽぎーさん
こんにちは。
>一部のロックとかフュージョンのドラマーって、そのままお店が開けるくらいのドラムセットをライブに持ち込みますよね笑
そうですね。
>確かに世界中を飛び回るミュージシャンにとってドラムやウッベなど大型の楽器の運搬は問題なんでしょうね。
どうだと思います。
>NYには行った事はありませんが、ライブハウスの狭さについても言及している人が結構いる気がします。
com-post益子さんの「NY放浪記」とかを読むと狭いライブハウスの様子などが出てきますね。

投稿: いっき | 2012年9月23日 (日) 12時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: リオーネル・ルエケの新譜:

« 改めて自分のジャズ耳を認識 | トップページ | ブログデザイン変更! »