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なるほどこういうアルバムだったのか。

先月、ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた連続講演「1990年代のジャズ」に参加した時、「いーぐる」の壁に90年代のベスト盤が飾られていました。その中の1枚が今日紹介するアルバム。これはマスター後藤さんの本にも紹介されていましたが買いそびれていたものです。

P33 アンリ・テキシェ『マッド・ノマド(ズ)』(1995年rec. LABEL BLEU)です。メンバーは、セバスチャン・テキシェ(as,cl)、ジュリアン・ルロー(ts,as,ss)、フランソワ・コルヌルー(bs,as)、ノエル・アクショテ(g)、ボヤン・ズルフィカルパシチ(p,syn)、Jacques Mahieux(ds,per)、トニー・ラベソン(ds,per)、アンリ・テキシェ(b,oud,per,voice)です。ライナーノーツがフランス語なので内容が良く分かりませんが、ノマド(遊牧民)をテーマにしたコンセプト・アルバムだろうと思います。

テキシェはご存知のとおり、その昔フィル・ウッズのヨーロピアン・リズム・マシーンでベースを弾いていた人。今や重鎮ベーシストです。そんなテキシェが息子セバスチャンをはじめジュリアン・ルロー、ノエル・アクショテ、ボヤンZ、トニー・ラベソンといった気鋭を集めて作ったアルバム。

聴く前はタイトルとジャケットからかなりエスニック色が強いアルバムだと思っていたのですが意外とオーソドックスなジャズでした。もちろんメロディーとかにはエスニック色はありますが、それを目的としていないように感じます。冒頭を聴いた瞬間、中国風パーカッションが鳴って「なんだこれは?」となりますが、その後は普通のジャズになりますのでご安心を。

色々な演奏形態が入っています。8人参加したビッグ・コンボ、ドラムとパーカッションのデュオ、ワン・ホーン・カルテット、ピアノとドラムのデュオ、ベースとドラムのデュオ、ピアノ・トリオなど様々あって飽きさせないです。

ジャズの要素も色々詰まっています。3管の厚いホーン・アンサンブル、ホーン陣のフリーキーな音の交換、アバンギャルドでロックなギター、フリーで尖がったエレピ、ピアノとドラムの丁々発止、オーソドックスなピアノ・トリオやワン・ホーン・カルテットのジャジーな味わい、スピリチュアルに迫る熱演、ドラムとパーカッションによるリズムの妙味、フリーなピアノの乱打にからむ強烈なベースとドラムなどなど、聴かせ所は満載です。

このアルバムはノマドをテーマにしたトータル・サウンドを聴かせる趣向なんでしょうけれど、実はジャズが持つ聴かせ所を色々な形態で聴かせるということになってしまっているのが面白いのです。90年代におけるジャズ総括みたいな側面があります。このアルバムを聴いているとジャズの魅力って色々あるんだなと再認識させられますよ。

そういう意味でメタな視線(ジャズを一旦かっこに括って外から見る)を感じます。でもそれが単にクールで過去をなぞったつまらないジャズになっていないところが興味深いですね。面白さとしてきちんと魅せてくれています。それを可能にしているのが楽器を操るテクニックの高さであり、高度なテクニックを表現するという目的にしっかり生かしている意思にあるように感じます。ジャズを体現しているアンリ・テキシェの目配せもあるのでしょうね。

そしてラベル・ブリューのクリアな録音によってそれが上手く提示されているのです。サックスのきれいな響き、凄みのあるベースの弦の音、キレの良いシャープなドラミングなどを余すことなく捉えています。私的にはドラムが刻むフラットでシャープなリズムが特に快感。やっぱりジャズはリズムが重要なのだと実感します。それから《S.O.S HOZHO》という曲には太鼓の超低音が入っていてオーディオ的に魅力的なソースです。

ジャズというものはどういうものであるかをわきまえたうえで、現代感覚や当地感覚でやる質の高いジャズ。90年代から今につながる状況下で、ジャズのひとつのやり方を提示してくれている気がします。とは言っても録音から既に17年経過してますが。

面白いアルバムです。気持ち良いジャズやってます。

アルバム名:『MAD NOMAD(s)』
メンバー:
Sebastien Texier(as, cl)
Julien Lourau(ts, as, ss)
Francois Corneloup(bs, as)
Noel Akchote(g)
Bojan Zulfikarpasic(p, syn)
Jacques Mahieux(ds, per)
Tony Rabeson(ds, per)
Henri Texier(b, oud, per, voise)

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