改めて自分のジャズ耳を認識
デトロイト・テクノを紹介します。お盆前に参加したジャズ喫茶「いーぐる」の講演 「90年代のジャズを聴く」 で聴いて気に入った1枚です。このアルバムをセレクトしたのは柳樂光隆さん。その講演のレポートは以下を参照願います。
インナーゾーン・オーケストラの『プログラムド』(1999年、TALKIN LOUD/MERCURY RECORDS)です。インナーゾーン・オーケストラはデトロイト・テクノのカール・クレイグのプロジェクト名。プログラミング・サウンドや打ち込みビートに生演奏を加えたものです。
私が買ったのはたまたま日本盤の中古CDだったので帯が付いていました。その帯にはこんな宣伝文句がありました。
―それは、未来からやってきた、最も進化した音楽。
トーキング・ラウドが送る1999年<最大の衝撃作>!彼の名はカール・クレイグ。21世紀から来た男
なんとまあベタで下手な煽り文なんでしょう(笑)。”トーキン”なのに”トーキング”って誤記してますしね。いかに日本の発売元が音楽をいい加減に捉えていたかが分かってしまいます。こういうことの積み重ねが、結局日本の音楽需要の体たらくを招くことになっていったのだろうと私は思います。売る側は単なるお仕事でそこに愛情がないのです。
またしても愚痴が・・・、困ったものです最近愚痴ばかり(笑)。
柳樂さんがかけたのはこの曲。
アルバムのラスト曲(ボーナストラック除く)でした。
ドラムのビートがカッコいいですよね。この尖がり具合が素敵です。ドラムとベース、特にベースがジャズっぽさを出していると思ったら、ベースを弾いているのはジャズ・ベーシストのロドニー・ウィッテカーでした。ドラムはサン・ラのバック・バンドも経験しているフランシス・モラ。私はこのドラマーを始めて聴きました。
全部がこういうビート主体の音楽というわけでありません。ラテン調あり、ナレーション/ラップあり、アンビエントあり、ジャズ/フュージョン調あり、カントリー/ロック調(スタイリスティックスのカヴァー)の歌あり、といった具合で短めの曲が次々と現れては消えていく構成。必ずしもいわゆるテクノが全面に出ているわけではありません。
この手の音楽は、いかに聴き手に想像力を喚起する音を並べられるか、気持ち良いビートを提供できるか、が肝なのだろうと思います。私はこの手の音楽に詳しくないので、あくまで個人的なレベルでの判断になりますが、想像力は喚起させられましたし、ビートに気持ち良くのることができました。
最初は何も知らずに聴いたのですが、曲によってはザビヌル風シンセやウェザー・リポート風サウンド、70年代マイルス・サウンドとチック・コリア風エレピ、ファンクにおけるハービー・ハンコック風ピアノみたいな演奏があって、そういうジャズ要素にやたら反応してしまいました。
後でインナー・スリーブと日本語ライナーノーツを読んでビックリ。全てクレイグ・テイボーンが弾いていました。そうなんですよ。私が反応してしまったジャジーな音はジャズ・ピアニストのクレイグ・テイボーンがその正体だったのです。”ジャズ耳”が見事に反応していたわけです。改めて私の中にあるジャズ耳の存在を認識しました。
このアルバムはカール・クレイグがジャズに挑戦したアルバムということらしいのですが、結局はジャズ・ミュージシャンの起用によってそれをなしているというのが私の印象。
この曲なんかは結構気に入りました。
70年代マイルス系サウンド&チック調エレピ。
ヴァイオリンはジョン・マクラフリンのマハビシュヌ・オーケストラ風。
サウンド・コラージュという部類の音楽ですね。
なのでコラージュする素材選びと配列の仕方が肝。
センスは悪くないと思います。
私はこのアルバムがかなり気に入りました。
アルバム名:『PROGRAMED』
グループ名:INNERZONE ORCHESTRA
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コメント
いっきさん、こんばんは。
この曲はチック・コリア風エレピ〜70年代ですね。
どちらにしろ90年代のジャズに入れなくても、
すでにコンセプトが似たようなのはいっぱいありますよね。
コラージュ試作にもなっていない感じなんだけどなぁ。
投稿: tommy | 2012年9月17日 (月) 02時25分
いっきさんこんばんは。
2つ目の動画のテイボーンのちょっとおちゃめなエレピが気に入りました。
にしてもえぐいドラマーですね…^^;サン・ラ出身とは…!?
彼らにとってはコラージュかつこれも普段着の音楽なんでしょうね。
こういう肩肘張らないクロスオーバー(?)はストレートアヘッド系ジャズファン(私のことです)も聴けると思いました。
余談ですが最近テクノ(エレクトロニカ)とかポストロックを聴けばkurtとかmehldauのやっていることをより理解できるんじゃないかと考え中です。
柳樂さんに知られたら「今更かよw」って笑われそうですが;;
投稿: とっぽぎー | 2012年9月17日 (月) 03時14分
tommyさん
おはようございます。
21世紀直前ともなると似たようなコンセプトはあったでしょうね。
こういう曲ばかりではありませんから当時としては面白いサウンドのアルバムになっていると思うんですよ。
この曲についても70年代と違い90年代らしい洗練があってフィーリング的には当時新しかったのではないかと思います。
ジャズ周辺としてこういうものも1枚くらいは入れてもいいんじゃないかと思いますけど。
投稿: いっき | 2012年9月17日 (月) 08時13分
とっぽぎーさん
おはようございます。
>彼らにとってはコラージュかつこれも普段着の音楽なんでしょうね。
そうだろうと思います。
>こういう肩肘張らないクロスオーバー(?)はストレートアヘッド系ジャズファン(私のことです)も聴けると思いました。
そうですか。肩肘張らないところをどう受け取るかによるでしょうね。
>余談ですが最近テクノ(エレクトロニカ)とかポストロックを聴けばkurtとかmehldauのやっていることをより理解できるんじゃないかと考え中です。
色々なジャンルを聴けば音楽解釈の幅は広がると思います。
一方でそのジャンルを聴き込まなければ分からない領域もあるでしょう。
聴く時間は限られますから、なかなか広く深くというわけにはいかないですけど。
投稿: いっき | 2012年9月17日 (月) 08時29分