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ジャズ喫茶が似合うB級アルバム

最初にちょっと余談。

今売れているジャズミュージシャンって結局、個人のファンに支えられているんだろうと思います。例えば上原ひろみのファンはジャズファンではなくて上原ひろみファンであり、菊地成孔のファンはジャズファンではなくて菊地成孔ファンなのです。

ジャンルが拡大していくと最早ジャンルのファンはいなくなり、各ミュージシャンのファンのみが存在するようになっていくのだろうと思います。上記ジャズの例に限らず、ロックとかフォークとか他のジャンルも似たような状況にあるのではないでしょうか。

ポップスなんて前からそうですよね。ポップスファンはいなくてマイケル・ジャクソン・ファンがいるのです。J-POPファンはいなくてAKB48ファンがいるのです。ジャズファンとかフュージョンファンとかプログレファンとかフォークファンとかのジャンルファンはもう中年以上のオジサンやオバサンの話だろうと思います(笑)。

だからもし自分の人気や売り上げを上げたいのなら、ジャンル内からではなくジャンル外の広範囲から自分のファンを獲得しなければいけないのです。そして、ジャンルのファンを増やそうとするなら、例えばジャズの場合は第二、第三の上原ひろみや菊地成孔の登場を願うしかないのだろうと思います。あっ、でも同ジャンルの違う人を聴かないから結局大して意味はないかも。単に数の話になってしまいますね。

余談はこれくらいにして本題。

東京のジャズ喫茶に行くようになって、ジャズ喫茶に似合うB級アルバムというのがあることを知りました。ジャズ紹介本とかにはまず出てこないけれど、ジャズ喫茶という空間にその音が鳴ると、なんとも心地良い雰囲気につつまれ、「やっぱジャズっていいよね。」と独り呟いてしまう。そんなアルバムがあるのです。今日紹介するのはそんな1枚。

P30 サム・ジョーンズ『サムシング・イン・コモン』(1977年rec. MUSE RECORDS)です。メンバーは、サム・ジョーンズ(b)、ブルー・ミッチェル(tp)、スライド・ハンプトン(tb)、ビリー・ヒギンズ(ds)、シダー・ウォルトン(p)です。どうですこのメンバー。B級な一同揃い踏みです(笑)。ここまで見事に顔を揃えているアルバムはなかなかありません。ミューズはこういう憎いところを突いてくるレーベルです。

これは渋谷の「JBS」で聴いて惚れました。「JBS」はこういうのがしょっちゅうかかります。サム・ジョーンズを始めとして、このアルバムに入っているメンバーの一人が入っているアルバムが次から次へと芋づる式にかかるのが素敵なんですよ。

そんなメンバーの中で私が特に気に入っているのはボブ・バーグ。この人はマイルスのグループへ入った後はコンテンポラリー系へ向かい、マイケル・ブレッカーと何かと比較されることになりますが、それまではバリバリのバッパーでした。とにかく吹きだしたら止まらない盛り上がりがこの人の良さ。痛快なのです。そういう性格はコンテンポラリー系になっても維持していて、『アナザ・スタンダード』ではそういう面が良い形で出ています。2002年に交通事故で亡くなってしまったのは残念としか言いようがありません。

このレコードはCD化されているようですが廃盤みたいですね。私ははなからレコードを探していて、例の 「discland JARO」 の通販リストにこれを見つけてすかさず注文しました。安かったですよ。レア盤とかではないですから。こういうのはレコードで聴くに限りますよね。皆さんレコードを聴きましょう!

サム・ジョーンズの良く歌うベースを軸に、小気味良い4ビートをこなすヒギンズ、そつなくスインギーなバップピアノを弾くウォルトンがリズム隊を構成し、そこにブリブリ熱く盛り上げるバーグのテナー、哀愁溢れるミッチェルのトランペット、熱気を孕ませたハンプトンのトロンボーンが乗っかれば、それはもう「ジャズっていいよね。」な湯気が立ち昇って、温泉に浸かっている気分になれるのです(笑)。ジョーンズの力強いベース・ソロもしっかり入ってます。

ジョーンズの曲が1曲、ウォルトの曲が2曲、ミッチェルの曲が1曲、ハンプトンの曲が1曲にスタンダード1曲の全6曲。オリジナルはそれぞれ良い曲ですがやっぱりウォルトンの2曲が抜け出ています。アルバムタイトル曲《サムシング・イン・コモン》に《ボリビア》、哀愁漂う良い曲達です。はいっ、大好きな曲《ボリビア》が入ってます!もうこれだけで買いです。

この手のアルバムではこちらも素敵です。⇒ 見つけました!
シダー・ウォルトンの『イースタン・リベリオン』シリーズも良いです。
サム・ジョーンズの『ヴィジテーション』もおすすめ。

もうありとあらゆるジャズを聴いて良さを見つけてしまう私。
これぞ王道ジャズファンです!

アルバム名:『Something In Common』
メンバー:
Sam Jones(b)
Blue Mitchell(tp)
Slide Hampton(tb)
Bob Berg(ts)
Billy Higgins(ds)
Cedar Walton(p)

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コメント

いっきさん、こんばんは。

上原ひろみファンのkimtです。

>>例えば上原ひろみのファンはジャズファンではなくて上原ひろみファンであり、菊地成孔のファンはジャズファンではなくて菊地成孔ファンなのです。

実は僕も自分のことをジャズファンではなく単なる上原さんのファンなのではないかと思ったことがあります。ただ一応僕の場合他のジャズアーティストも聴くのでジャズファンを名乗っていますが。

>>だからもし自分の人気や売り上げを上げたいのなら、ジャンル内からではなくジャンル外の広範囲から自分のファンを獲得しなければいけないのです。

上原さんの場合ジャンル外のアーティストと共演することによって、ジャズファンではない層を取り込んでいますね。実に賢明なやり方だと思います。他アーティストの共演は上原さん側からのアプローチなのか、それとも他アーティストからのアプローチなのか興味深いところです。

そしていよいよ上原さんトリオの新作「MOVE」の発売日が近づいて来ました。
上原さんも精力的にテレビやラジオに出演するみたいです。僕も可能な限り録画/録音して楽しむつもりです。雑誌も「JAZZ JAPAN」「CD ジャーナル」「Interview file CAST」の3冊を注文しました。また、「PARCO」のCMにも出演するのには吃驚です。

そういえば「Jazz Life」の8月号でUNITY BANDの特集をやったみたいですが、ご存知でしたか。

投稿: kimt | 2012年9月 3日 (月) 23時42分

kimtさん
こんばんは。
>ただ一応僕の場合他のジャズアーティストも聴くのでジャズファンを名乗っていますが。
私の話はちょっと強調していますので、上原ファンが全員ジャズファンではないとは当然思っていません。私みたいにジャズファンで上原ファンはたくさんいると思います。もちろんkimtさんも私たちの仲間だと思っています。
>そしていよいよ上原さんトリオの新作「MOVE」の発売日が近づいて来ました。
そうですね。ワクワクしてます。
>僕も可能な限り録画/録音して楽しむつもりです。雑誌も「JAZZ JAPAN」「CD ジャーナル」「Interview file CAST」の3冊を注文しました。
凄いですね。その入れ込み具合。上原ファンの鑑です。
つまりそういう人を多く獲得するのが勝ちってことです。
>「PARCO」のCMにも出演するのには吃驚です。
らしいですね。上原ひろみの今の人気なら当然という気もします。
>そういえば「Jazz Life」の8月号でUNITY BANDの特集をやったみたいですが、ご存知でしたか。
はいっ、インタビュー記事は本屋でしっかり立ち読みしました。
最後の”ロバート・グラスパーよりメルドーでしょ。”みたいな回答がメセニーらしくて我が意を得たりでした(笑)。

投稿: いっき | 2012年9月 4日 (火) 01時36分

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