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2012年9月

我が家に新しいスピーカーがやって来た。

私、思い立つとやることが速いですね(笑)。
我が家に新しいスピーカーがやって来ました!
スピーカーはQUADの12L2です。
コンパクトなスピーカー。

箱を開けるとうわさ通りの梱包。
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ちょっと不謹慎ですけれど骨壺みたいな感じ(笑)。
まあ、高級といえば高級感はあるんですけどね。

そしてこれもうわさ通りで、白手袋が入ってました。
P46_3

注意書きによると素手で触ると塗装に良くないとか。
しょうがないので手袋をはめてスピーカーを扱いましたよ。

このスピーカーは小っちゃいです。
これまでメインで使っていたタンノイのスターリングと比較してみました。
1/4以下のサイズです。
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こんなんで満足できる音が出るんでしょうか?

セッティングの前に真空管アンプの出力インピーダンスを8Ωから6Ωに変更。
去年作ったアンプの出力トランスには6Ω端子があるので安心してつなげます。
オーディオラックの位置も少しずらしました。
ずらした理由は後程。

もちろんバイワイヤリング接続です。
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スピーカーケーブルは日立電線のLC-OFC。
武骨になりがちなオーディオにおいてピンク色ってのがカワイイ。
同じ太さに見えますが低音側に導体の太いものを使っています。
端子が金ピカ!背面まで仕上げは美しいのでした。
バスレフポートは2個あります。

バーズアイメイプル仕上げって大理石みたいで高級感アリアリ。
P49

無垢の突板に7回も塗装と研磨をしたツルピカ仕上げなのです。
あ~あっ、麗しいスピーカーの上には鉛インゴットと小物が(笑)。

ユニットも高級感出てます。
精悍なツラ構えです。
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前はメイド・イン・チャイナってシールが貼ってあったようですが、
今はアッセンブリード(組立)・イン・チャイナになっています。
ユニットは自社生産しているらしいですからね。

マイ・オーディオはこんな感じになりました。
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向かって右側中段にある大きいアンプは接続されていません。
自作品に新旧既製品が入り混じった唯一無二の無手勝流オーディオ(笑)。
ターゲットオーディオのラックが実は結構高級品なのです。

さてさて、問題のスピーカー、音はどうだったのでしょうか?
これが何ともあっさり最初からそれなりの音が出てしまったのでした。
長年オーディオをやっていると試聴しなくてもそれなりの音が出せちゃう(笑)。

低音は出過ぎるくらいです。
今時のAV併用スピーカーは小型でも低音がきちんと出るんですね。
ただし普通の低音域で、その下の空気感はさすがに出ません。
ベースの音は十分ブーミーに鳴ります。
締まりもそれなりにあるので気持ち良いです。

高音は軽くてシンバルの金属感も良く出ています。
クリアに出ていつつ、きつくならない感じです。

低音と高音のバランスから中音は若干控えめに聴こえます。
出ていないというわけではなく、押しつけがましさがないのです。
全体の音は結構明るくて前に出て鳴るので、
この中音の出具合がジェントル感を演出する絶妙なバランスなのでしょう。
正にここがQUADの音作りだろうと思います。
これは美音だと思います。

ただし今のところまとまりはなくて、出っ放しという感じです。
こればかりは鳴らし込んでエージング効果を待つしかありません。
まとまり感を持つようになるまでにはそれなりの時間を要するでしょう。
エージングしながらセッティングも詰めていこうと思います。

これなら大きいスピーカーはいらないですね。
部屋が狭くてニアフィールド・リスニングなのでむしろこれが正解でしょう。

今回のスピーカーのダウンサイジングには副次的な効果があります。
開いたスペースにCDラックが置けることになりました。
300枚くらい積み上げたCDがあるのでそれらがスッキリ収まります。

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回転タワー式CDラックです。そびえています(笑)。
CD収納は後程やる予定。

回転式マルチタワーラックはこちらのものです。

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私的にこいつはかなりいい。

以前YouTubeで聴いて驚いた曲が入っているアルバムをとうとうゲットしました。CDなら簡単に入手できるのですが、私はレコードを買いたかったので時間がかかっちゃいました。

P44ハービー・ハンコック『セクスタント』(1973年rec. CBSソニー)です。メンバーは、ムワンディシ=ハービー・ハンコック(fender rhodes,el-p,hohner D-6 clavinet whith fender fuzz-wah and echoplex,danka-di-bello,melotron,p,hand clap)、ムウィル=ベニー・モウピン(ss,b-cl,piccolo,afuche,hum-a-zoo)、ムガンガ=エディ・ヘンダーソン(tp,flh)、ペポ=ジュリアン・プリースター(b-tb,t-tb,a-tb,cowebell)、ムチャザジ=バスター・ウィリアムス(el-b with wah-wah and fuzz,b)、ジャバリ=ビリー・ハート(ds)、ドクター・パトリック・グリースン(ARP-syn)、バック・クラーク(congas,bongos)です。イスラム教名が併記されているのが時代を感じさせます。

YouTubeで聴いて驚いたのはこの《レイン・ダンス》。

インベーダーゲームもない頃にこのゲーム・ミュージック的なサウンドにはビックリ仰天。テクノでもあります。途中にフリーな咆哮が入ったりしてアグレッシブ。リズムがブレイク・ビーツっぽいところにファットなバスター・ウィリアムス(この人ロン・カータのそっくりさんです。笑)のアコースティック・ベースが切り込んでくるところはヒップホップですよ。ハービーって一体何年先取りしていたのか・・・。その後の音楽を知った今これを聴くと、未来の音楽要素が入ってることが分かります。

A面2曲目は《ヒドゥン・シャドウ》。

何なんだこの変拍子ファンクは。気持ち良すぎるぜっ!変拍子をこれだけレイジーにグルーヴさせるのってかなり難しいと思うんですけど。これ、ほとんどグルーヴだけを聴かせていて、その上に色んなサウンドがカッコ良く散りばめられているという、激しくセンスを問われる曲です。

以上がA面の2曲。B面は《オーネット》1曲のみです。

これを聴いてまた驚き。だって日野皓正の『ダブル・レインボー』(1981年)に入っている《メリー・ゴー・ラウンド》にかなり似ているからです。菊地雅章とヒノテルの81年当時としては最先端コラボだったはずなんですけど・・・。これをパクッたと言われても仕方がないような気がします。エディ・ヘンダーソンのソロとヒノテルのソロだってよく似た雰囲気ですよ。

ちなみに私が生まれて初めて買ったジャズアルバムこそがこの『ダブル・レインボー』です。フュージョンだと思って買ったらこれですから、最初は聴きどころが分からず戸惑いました。でもなぜか繰り返して聴いてしまったのです。

《メリー・ゴー・ラウンド》はこちら。

似てますよね。雰囲気が。私この曲が大好きです。滲み出るパワー。

こうして『セクスタント』を聴いてみたら、当時としてはかなり先取りのサウンドだったことが分かります。でも、でもですよ。このアルバムはほとんど話題になったことがありません。それは同年に出した次のアルバム『ヘッド・ハンターズ』がヒットして、こちらばかりが語られるからです。

音楽的にはなかなかクリエイティブなことをやっていたのに、故に多分売れなかったであろうこの『セクスタント』を出しておきながら、見事にポップに分かりやすくサウンドを作り直して、『ヘッド・ハンタース』をヒットさせてしまったハービー・ハンコックという男。凄いと思います。

私は『ヘッド・ハンターズ』より『セクスタント』が好き。だってよりジャズだから!
これら2枚の間にはフュージョンとジャズの境界があるような気がします。

アルバム名:『SEXTANT』
メンバー:
Herbie Hancock(fender rhodes, etc)
Benny Maupin(ss, etc)
Dr.Eddie Henderson(tp,flh)
Julian Priester(t-tb, etc)
Buster Williams(e-b, b)
Dr.Patrick Gleeson(ARP)
Buck Clarke(per)

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今度のスピーカーはQUADに決めました。

オーディオ縮小化ということで、TANNOYスターリングに変わるスピーカーを探していたのですが決定しました。

QUADの12L2です。仕上げはこの写真とは違うものです。私が買うのはバーズアイメイプル仕上げ。かなり外観の仕上げが美しいようなので届くのが楽しみです。

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最初は価格.com の仕様やレビューなどを参考にしつつ、ネット上の評判を検索し、オーディオユニオンの中古なんかも探したりと色々悩みました。

そして、以前連続購読していたオーディオ雑誌「管球王国」のNo.49にこんな記事があるのを発見。大いに参考にさせていただきました。だって真空管アンプで鳴らすわけですから。

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B&Wとかクリプシュとかタンノイとかダリとかフォーカルとか色々悩みました。サイズ、能率、インピーダンス、低音の周波数特性は特に気にしつつ、最初は低音再生に有利なトールボーイ型にしようと思っていたのに、結局今あるスピーカースタンドを生かそうということで、小型のスピーカーに決めました。

ジャズをメインに聴くのにベタなJBLを選択しないのが私。今までのTANNOYからQUADってのがちょっと粋じゃないですか? イギリスの老舗スピーカー・メーカーでジャズを聴く。いや~っ、実に渋い。自己満足(笑)。

最近は音も聴かずにオーディオ機器を買ってます。まっ、これはインスピレーション勝負ということで。ビビッと来ればいいのです(笑)。

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そうだっ、オーディオを縮小化しよう!

相変わらず唐突なのですが、オーディオを縮小化しようと思い立ちました。

これまで私はタンノイスターリングをトランジスタ(FET)アンプで鳴らすメインシステムと、自作スピーカーを真空管アンプで鳴らすサブシステムを使い分けていました。メインシステムは昼に音量大き目で使い、サブシステムは夜に音量控えめで使うという使い分けでした。でも結局は夜にサブシステムを鳴らすほうが断然多いわけで、メインシステムはほとんどお休み。

最近は音より音楽を聴いているほうが多いですし、オーディオの位置づけがだいぶ変わってきていたのでした。もういっそのことシンプルにしてしまおうということで、ワンシステムに縮小化しようと考えました。

まず英断を下すことにします。14年くらい愛用してきたタンノイスターリングを外します。もっと小型のスピーカーにしようと思います。そしてアンプは真空管アンプを使います。真空管アンプ自作が趣味なのでそこは残したいわけです。これまでも結局のところは自作真空管アンプを聴くためにサブシステムがあったようなものですから。そこに一本化。

CDプレーヤー&DACはこれまでどおりでいきます。これまではCDプレーヤー直出しでサブシステム、DAC経由でメインシステムとなっていましたが、これからはDAC経由だけにします。プリアンプは自作の方にして、サブシステムのプリアンプとして使っていたラックスのCL-32はちょっともったいないけれどフォノEQとして使用します。レコードプレーヤーもいずれ1台にしようと思います。

今は次のスピーカーを何にするか悩み中。この悩んでいる時が実は一番楽しいのです。「あれにしようか?これにしようか?やっぱあれか?まてよ、こっちでしょ。」とワクワク(笑)。

ということで、先日タンノイスターリングを外してしまいました。で、自作スピーカーだけをセッティングしてみました。

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保管しておいたタオックの鋳鉄スピーカースタンドを組み立て、25年くらい前にスピーカーの下に敷いていたコンクリート板を引っぱり出してきました。ご覧のとおりのセッティングです。スピーカーの上にはこれまで同様鉛インゴットを4本乗せて、重量で押さえつけて低音を出そうという魂胆(笑)。トータル40kg越えか? 結構これが効きます。

まだ仮の状態なので後ろにはタンノイにつないでいたスピーカーコードがそのままころがっていたりですけど、次のスピーカーが決まるまではこれでいこうと思っています。スピーカー回りがスッキリして気分が良いです(笑)。まあこんな感じのオーディオライフのほうが今の私には合っている気がするのです。

さてさて、スピーカーどうしようかな~。

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キースの昔のライブ盤

今日は新譜紹介です。最近めっきり新譜を買わなくなりました。上原ひろみとかフォローしている人はともかくとして、それ以外はあまり触手が伸びません。名のある人のレギュラー新譜を中心に無難な路線でお茶を濁しています。ジャズ・バイオリズムが低下中なのでしょう。

P40キース・ジャレット『スリーパー TOKYO, APRIL 16, 1979』(1979年rec. ECM)です。メンバーは、キース・ジャレット(p,per)、ヤン・ガルバレク(ts,ss,fl,per)、パレ・ダニエルソン(b)、ヨン・クリステンセン(ds,per)です。キースのヨーロピアン・カルテットの来日公演をライブ録音したものです。時は1979年4月16日、場所は中野サンプラザ。

特にキースのファンではない私(それでもリーダー・アルバムは10数枚持っています)ですが、徘徊するブログで激賞していたので思わず買ってしまいました。どんなに凄い演奏をしているのか気になってしまったのです。

結論から先に言ってしまえばさすがにテンションが高い演奏です。今まで未発表だったのが不思議なくらいです。きっと大人の諸事情というものがあったのでしょう。そしてそれが今になって出てくるのはこれまた大人の諸事情なのでしょう(笑)。我々ジャズ・ファンとすれば、事情がどうあれこうして良い演奏が聴けたわけですから良しとしましょう。

1枚目1曲目の《パーソナル・マウンテン》から怒涛の熱演です。ヨーロピアン・カルテットの私の勝手なイメージは美メロと抒情性を重視したカルテットなのですが、そのイメージが軽く覆されました。やっぱりジャズですね。こういうインプロビゼーションを聴かせるのがジャズなんですよね。1979年、まだまだジャズが熱かった時代です。

《ソー・テンダー》はいい曲ですよね~。こういう美メロ曲におけるキースのインプロは素晴らしいものがあります。美メロが次から次へと溢れ出てくる快感。ガルバレクのテナーがなかなか雄々しいではありませんか。テクニカルに走るのではなく朗々と歌い上げています。よっ、男ガルバレク、いいぞっ!(笑)

2枚目1曲目《オアシス》、エスニック・テイストのアーシーでフリーな演奏も悪くありません。フルートとタブラ?で始まるアフリカンな感じは面白いです。この出だしを聴くとアート・アンサンブル・オブ・シカゴが想起されます。ヨーロピアン・カルテットにはこういう1面もあったんですね。知りませんでした。途中からは通常の演奏ですが、キースのコンピングがいつになく攻撃的。ダニエルソンのベースが60年代マイルス・クインテットのロン・カーターのようにも聴こえます。面白い!

このアルバムについては私が色々書くよりは、Amazonのレビューを読んでいただいたほうが良いと思います。熱烈キース・ファンの解説には、「なるほど!」なのでした。

キース・ファンは必聴。ファンでない方にもおすすめします。

アルバム名:『SLEEPER TOKYO, APRIL 16, 1979』
メンバー:
Keith Jarrett(p, per)
Jan Garbarek(ts, ss, fl, per)
Palle Danielsson(b)
Jon Christensen(ds, per)

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エロ目線も入ってます。m(_ _)m

今日はYouTubeの動画から適当に。

まずはイリアーヌ・イリアス。
美人ピアニストと言えば私はこの人。
1990年のマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルの映像です。

風に舞う金髪が麗し過ぎます。
恍惚の表情にクラクラきます。
当時この放送を見て一発でイリアーヌに惚れました(笑)。
音楽がルックスに負けず麗しい。
木住野佳子さんがデビュー・アルバムで
マーク・ジョンソンのベースとピーター・アースキンのドラムを
ロースルロイス(自動車)の如き乗り心地だと言っていました。
ロールスロイス・リズムに乗ったイリアーヌ。カッコイイ!

今度発売になるマーク・ジョンソンとイリアーヌの新譜。
買おうかな~。

お次はがらりと変わりまして大西順子。
1993年のマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルの映像です。
前に一度ブログに貼ってます。

ことらは風に舞うソバージュヘアー。
ソロ後半ではこのヘアーが嵐の様相を呈します。荒れ狂う大西順子?
ミニのボディコンスーツが時代を感じさせますよね。
当時この放送を見て、いやはや凄い女性が出てきたものだと思いました。
このツッパリと尖がり具合に惚れました。
私、浮気性なのでこういうタイプも好きです(笑)。
当時正に売込み中でした。
この人がいなければ今日の日本人女性ジャズ・ピアニストの隆盛はないはず。

これがラスト・アルバムになってしまいました。
今度のツアーを最後に引退するなんて勿体ない。

お次は山中千尋。
何年の動画なんでしょう。

ここは正直に言いますが、私、エロ目線入ってます(笑)。
オレンジ色のボディコンミニドレスですよ。
絶対エロ狙ってますよね(笑)。確信犯です。
この方は背中と前腕の逞しい筋肉がエロティシズムを発してます。
ミニスカから露わになる太ももが眩しい。
重ね重ねすみません。
完全スケベオヤジモードです。m(_ _)m
シンセが組み込まれたピアノって初めてみました。
私、この曲がかなり気に入ってます。
リズム・チェンジや変な転調はこの人らしいアレンジです。
J-POP的胸キュンメロディーが私のツボです。

ビートルズの曲をやったこのアルバム。
久しぶりに買ってみようかと思案中。

ラストはこの人でしょう。上原ひろみ。
今年のフジロックのスカパー放送がもう上がってます!

こんなに楽しそうにピアノを弾く人は見たことがありません。
ピアノが好きで好きでしょうがないんでしょうね。
相変わらず時々表情がいっちゃってます(笑)。
この人にエロティシズムは感じません。
可愛くていたずらなピアノの妖精。
鍵盤の上に蛾が舞い降りてきます(笑)。潰しちゃいそう。
エキサイティングな演奏です。
この人は意外と大胆に引用(チュニジアの夜)しますよね。

あなた!もう聴きました?
これ聴かないとまずいですからっ!

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ブログデザイン変更!

そろそろ飽きてきたのでブログデザインを変更しました。

驚かせてごめんなさい。m(_ _)m

いつものことですが全く突然の変更です。

私の中では特に区切りのイベントがなくてもやりたい時にやる!

ということで新デザインになりました。

どうぞよろしくお願いします。

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リオーネル・ルエケの新譜

今日は新譜紹介です。

P39リオーネル・ルエケ『ヘリテイジ』(2012年、BLUE NOTE)です。メンバーは、リオーネル・ルエケ(g,vo)、ロバート・グラスパー(p,key,rhodes)6曲、デリック・ホッジ(b)、マーク・ジュリアーナ(ds)、グレッチェン・パーラト(vo)2曲です。プロデュースはロバート・グラスパー。

サイドマンとしてはいくつかのアルバムで聴いていますが、ルエケのリーダー・アルバムを買うのは今回が初めてです。グラスパーがプロデュースしていることもあって買いました。

アフリカ生まれにちなんでアフリカ色を全面に出して歌っている曲とフュージョン調の曲が収録されています。2曲はグラスパーが提供していてそのシンセ音と弾き方からすぐにグラスパーの曲と分かります。ラストを飾るグラスパーの曲はモロに彼のグループ「エクスペリメント」のような演奏。ルエケのほうがゲスト参加している感じです。ハードなソロもあるにはあるのですが、全体的なサウンドとしては心地良さを主体にしている感じ。それはプロデューサーであるグラスパーの志向でもあるのだろうと思います。

冒頭のアフリカンな曲ではソロ部でギターの音にシンセを同期して音を出しているのか?まるでシンセを弾いているようです。他にも同じような使い方をしている部分があります。この音が私はどうも気持ち良くないんですよね。他の演奏でもそうなのですがどうもこの人のギターの音は”ペナペナ”した薄っぺらい音で、今までギターの音を嫌だと思ったことはないのにこのギター音だけはどうも苦手です。

ルエケのギターは音が個性的な割に演奏そのものは意外と特徴が少ないように聴こえます。結果テクニックは相当なものであるのに希求力が少ないように感じるんですよね。グラスパーもデリケートなサポートが多く、まあそれはそれで洒落たセンスとして聴きどころではあるのですが、私としてはいまひとつ来てくれないもどかしさが残ります。グレッチェン・パーラトの極軽いスキャット・コーラスでの起用法にそれが象徴されている気がします。

《アフリカン・シップ》だけはグラスパーのテンション高めのインプロを全面に出した曲で、ハービー・ハンコック調のピアノはなかなか良い感じです。ラストに”イェ~ィ、フッフ”みたいな声が入っていて、彼らにとっては「やってやったぜ!」なんでしょうけれど、私にしてみれば「この程度で?」なのでした。う~む。にしてもこの曲やラストの曲など、グラスパーは目立ちたがりでいやらしいな~(笑)。

結局のところ私が良いと思うのは、ホッジの良くグルーヴする腰の据わったエレベと今時なリズム感のジュリア―ナの巧みで闊達なドラミングです。ジュリア―ナのドラミングは特に気に入りました。ラストの「エクスペリメント」的な演奏においてはクリス・デイヴにも負けない魅力的なビートを提供していて、なるほど今はこういうビートが叩ける人は他にもいるんだなということが分かりました。

ちょっと反れますがウェイン・クランツのバンドでのジュリア―ナのドラム・ソロを貼り付けておきます。カッコいいじゃありませんか。シンバルの上に何か乗せるのって今流行りなのでしょうか?スネアの上にアルミ灰皿などを乗せるのは、外山明さんがやっていたのを見たような気がします。長いバスドラも外山さんと同じ。

アルバムの話に戻ります。私としては結局ギターの音のところでつまづいてしまうため、そこからなかなか評価が上がりません(涙)。残念ながらこのアルバムと私は相性が良くないようです。

アルバム名:『HERITAGE』
メンバー:
Lionel loueke(g, vo)
Robert Glasper(p, key, rhodes) 2,3,4,6,8,10
Derrick Hodge(b)
Mark Guliana(ds)
Gretchen Parlato(vo) 3,4

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改めて自分のジャズ耳を認識

デトロイト・テクノを紹介します。お盆前に参加したジャズ喫茶「いーぐる」の講演 「90年代のジャズを聴く」 で聴いて気に入った1枚です。このアルバムをセレクトしたのは柳樂光隆さん。その講演のレポートは以下を参照願います。

「いーぐる」講演「1990年代のジャズを聴く」前編

P38インナーゾーン・オーケストラ『プログラムド』(1999年、TALKIN LOUD/MERCURY RECORDS)です。インナーゾーン・オーケストラはデトロイト・テクノのカール・クレイグのプロジェクト名。プログラミング・サウンドや打ち込みビートに生演奏を加えたものです。

私が買ったのはたまたま日本盤の中古CDだったので帯が付いていました。その帯にはこんな宣伝文句がありました。

―それは、未来からやってきた、最も進化した音楽。
トーキング・ラウドが送る1999年<最大の衝撃作>!彼の名はカール・クレイグ。21世紀から来た男

なんとまあベタで下手な煽り文なんでしょう(笑)。”トーキン”なのに”トーキング”って誤記してますしね。いかに日本の発売元が音楽をいい加減に捉えていたかが分かってしまいます。こういうことの積み重ねが、結局日本の音楽需要の体たらくを招くことになっていったのだろうと私は思います。売る側は単なるお仕事でそこに愛情がないのです。

またしても愚痴が・・・、困ったものです最近愚痴ばかり(笑)。

柳樂さんがかけたのはこの曲。
アルバムのラスト曲(ボーナストラック除く)でした。

ドラムのビートがカッコいいですよね。この尖がり具合が素敵です。ドラムとベース、特にベースがジャズっぽさを出していると思ったら、ベースを弾いているのはジャズ・ベーシストのロドニー・ウィッテカーでした。ドラムはサン・ラのバック・バンドも経験しているフランシス・モラ。私はこのドラマーを始めて聴きました。

全部がこういうビート主体の音楽というわけでありません。ラテン調あり、ナレーション/ラップあり、アンビエントあり、ジャズ/フュージョン調あり、カントリー/ロック調(スタイリスティックスのカヴァー)の歌あり、といった具合で短めの曲が次々と現れては消えていく構成。必ずしもいわゆるテクノが全面に出ているわけではありません。

この手の音楽は、いかに聴き手に想像力を喚起する音を並べられるか、気持ち良いビートを提供できるか、が肝なのだろうと思います。私はこの手の音楽に詳しくないので、あくまで個人的なレベルでの判断になりますが、想像力は喚起させられましたし、ビートに気持ち良くのることができました。

最初は何も知らずに聴いたのですが、曲によってはザビヌル風シンセやウェザー・リポート風サウンド、70年代マイルス・サウンドとチック・コリア風エレピ、ファンクにおけるハービー・ハンコック風ピアノみたいな演奏があって、そういうジャズ要素にやたら反応してしまいました。

後でインナー・スリーブと日本語ライナーノーツを読んでビックリ。全てクレイグ・テイボーンが弾いていました。そうなんですよ。私が反応してしまったジャジーな音はジャズ・ピアニストのクレイグ・テイボーンがその正体だったのです。”ジャズ耳”が見事に反応していたわけです。改めて私の中にあるジャズ耳の存在を認識しました。

このアルバムはカール・クレイグがジャズに挑戦したアルバムということらしいのですが、結局はジャズ・ミュージシャンの起用によってそれをなしているというのが私の印象。

この曲なんかは結構気に入りました。
70年代マイルス系サウンド&チック調エレピ。
ヴァイオリンはジョン・マクラフリンのマハビシュヌ・オーケストラ風。

サウンド・コラージュという部類の音楽ですね。
なのでコラージュする素材選びと配列の仕方が肝。
センスは悪くないと思います。
私はこのアルバムがかなり気に入りました。

アルバム名:『PROGRAMED』
グループ名:INNERZONE ORCHESTRA

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《帰ってくれたら嬉しいわ》

八代亜紀が本格的ジャズ・アルバムを出すらしいですね。
『夜のアルバム』。
ジャケットがちゃんとエマーシー路線を踏襲してます(笑)。
右はヘレン・メリルの有名アルバム。

私は八代亜紀の味のある歌い方はジャズに合っていると思います。
演歌界もなかなか大変なんでしょうし、いいんじゃないでしょうか。
YouTubeにこんな映像がありました。
《帰ってくれたら嬉しいわ》を歌ってます。

雰囲気は良いと思います。
ヒノテルも頑張って応援してますね(笑)。
残念ながらこの曲はアルバムに入っていません。

この動画の類似動画の一番上にこんなものが来ていました。
キャロル・スローンが歌う同曲です。

八代亜紀には申し訳ないけれどジャズはやっぱりこれですよね。
最初のテンポだしからめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。
バックのトリオとは初顔合わせでこのレベル。ディス・イズ・ジャズ!
キャロル・スローンってかわいいおばちゃんです(笑)。

当時55歳にしては老けて見えるような・・・。m(_ _)m
上記映像における八代亜紀のほうが年上ですからね。

1992年のコンコード・ジャズ・フェスティバルの映像です。
バブル末期でしょうか。
今にして思えばまともなジャズがたくさん見られました。
金にものをいわせてあちらから大御所をたくさん呼んできていました。
あれから20年経った今。
大御所は少なくなり、この手のジャズの人気にも陰りが出て・・・。
正統派ジャズ・フェスが懐かしい。

こんな演奏も見つけました。
アニタ・オデイが歌う同曲です。

こちらは1963年。
日本人ジャズマンをバックに余裕の歌唱。
かっこ良すぎますよね。
終り方が最高です。

そしてこちらはちょっと衝撃的なチェット・ベイカー晩年(1987年東京)の同曲。

スキャットなんか微妙な感じですがこれはこれでジャズ。
それよりピアノ・ソロのあとに出てくるトランペット・ソロが良いです。
なんてことはないけれど、クールの中にある種の達した境地があります。
ジャズに自分の人生をかけてしまった男の慣れの果て・・・。

この1985年のライブ・アルバムが気になります。

ジャズって凄く面白いと思うんですよ。

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松田聖子のマスターサウンドレコード

ジャズのことになると時々むかむかする現状のことが頭を巡り出し、昨日のようにほとんどの人にとってどうでも良いようなめんどくさいこと(それは拙ブログのマニアックな読者向け発言なのですが)を吐露するようなことになってしまい、自分でも何やってんだろうと思います。ジャズファンの業なんでしょうかね。嫌になっちゃいますよ。

さて、今日は軽くいくことにします。とは言っても一旦書き始めるとどうにもこうにもマニアックな話題になってしまうのが私。m(_ _)m

P37 松田聖子のマスター・サウンド盤をとうとう買ってしまいました。Yohooオークションで一番安く出ていたのを落札。盤のコンディションは神任せ。『ティンカー・ベル』(1984年、CBS SONY)です。汚れが少々ありましたがバランス・ウォッシャーでクリーニングしたら問題なしでした。

数ある松田聖子のアルバムの中でなぜこれなのかというと、このレコードには私が好きな《時間の国のアリス》と《Rock'n Rouge》が入っているからです。作曲はどちらも呉田軽穂=松任谷由美。私、ユーミンの曲が好きなのです。

この頃、聖子ちゃんの歌い方は出来上がっていて、スタッカートと語尾ビブラートを特徴とした歌い方は聖子節と言えるものです。どこか憂いを含んだその表情と甘えた雰囲気は甘い声と相まってなかなか男心をくすぐるものがありますね。ぶりっ子と言われた聖子ちゃんですが、それを魔性の魅惑に変えてきたような感じが漂っています(笑)。

これらの2曲については以下に書いてあります。
松田聖子の胸キュンメロディー&おまけ

松田聖子のレコードを買うきっかけなどについては以下に書いてあります。
松田聖子でオーディオ・チェック?

残念ながら松田聖子のレコードは『カナリー』しか持っていなかったのでこれが2枚目になります。当時はCDが世の中に普及してきた頃で、最初のうちは友達からCDを借りてカセットにダビングし、その後はもっぱらレンタルCDをカセットにダビングしていました。今でもカセットは8本持っています。でもテープがヨレヨレ。自分の車を買ってからはドライブのB.G.M.として大活躍してました。

久々にこのアルバムを聴いたらほとんどの曲のメロディーが頭の中にスラスラ浮かんできます。歌詞が口ずさめたりもします。このアルバムについてはカセットを捨ててしまっていたので、当時かなり聴いたことを忘れてしまっていたようです。でもそれがよみがえってくるんですから、記憶力が良い頃に覚えたことというのは忘れないということを再認識。

次々と現れるポップなメロディーを聴いていると気分が軽くなりますね。アイドル歌謡の歌詞も面白いです。作詞は全て松本隆。その作詞センスは秀逸です。よくもまあ色々な(時に突飛な)シチュエーションで軽妙洒脱な恋愛歌が作れるものですよね。感心しきり。

さてさて、肝心の音質の説明の前に「マスター・サウンド・シリーズ」について説明をしておきましょう。以下は帯に書いてある説明文です。

レコード技術の極限の追求から生まれた、新しいマスター・サウンド・シリーズは、最新の録音方式の殆ど全てを駆使しているだけでなく、レコード盤自体の形状に至る迄、根本的に追求し直し、カッティングから、メッキ、プレス、材料、品質管理迄、あらゆる工程で現在考えうる最高の状態で製造されています。クリアーで豊かなサウンドは、再生装置のチェックにも最適と言えます。

いやまあ凄い宣伝文句。当時はレコード末期なのでここがレコードの最高水準ということになるのでしょう。クラシック、ジャズ、ロック、ポップスなどCBS SONYのあらゆるジャンルのアルバムがこのシリーズで発売されています。クラシック以外はアナログ録音が主体でしたが、松田聖子は途中から最新鋭のデジタル録音になっています。もちろんこのアルバムもデジタル録音です。

音質についてはレギュラー盤『カナリー』との比較です。違いは明確に分かります。まずカッティング・レベルが高いです。だから音量が少し上がって迫力がUPします。せパレーションも向上した感じで左右から音が飛び交います。肝心の声。レギュラー盤のソフトな感じからベールが1枚はがれた感じです。声のツヤが増しますね。サ行がよりはっきり聴こえます。聖子ちゃんが一歩近づいてきます。これはもう予想以上にマスター・サウンド盤が勝ち!

サ行が上手くトレースできない所が2、3ヶ所あることが判明。カートリッジの取り付けなどさらに詰める必要がありそうですがそこまでやる気はありません。う~ん、これは嬉しい誤算ですね。次のアルバム『ウィンディー・シャドウ』のマスター・サウンド盤までほしくなってしまいました。レコードは奥が深くて面白いです。

下記のBlu-spec CDはどうなんでしょうね。

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こんな本が出るらしい。

ディスクユニオンJAZZ館のホームページを見て、こんな本が発売されるということを発見しました。

「JAZZ1000円名盤ハンドブック」
再発見&新発見! 1000円で買えるジャズCDの愉しみ

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いかにJAZZが売れないかというのが分かるのと同時に、CD売り手側のなりふり構わぬ販売戦略にはもう笑うしかなくなってしまいます。行方均さんのお名前が。さすが商売上手ですな~。日本ジャズ業界のカルロス・ゴーン(笑)。

Amazonの「内容説明」をコピーすると。

昨今、大量リリースされる1000円代のジャズ名盤シリーズ。
何を聞いていいのかわからない、どれだけのCDが出ているのかわからない…。
そんな疑問に応えるべく、決定版となるガイド本!
ハンディサイズで、本書を持ってレコ屋に行こう!

ちなみに「著者について」のところ、HTMLの使い方間違ってますから(涙)。

何を聴いていいのかわからない”いたいけなJAZZファン”をいたぶってしまおうという戦略。ゴメンナサイ!それは言い過ぎでした。JAZZを多くの人に聴いてほしいという純粋な親切心からのものであることを願います。

こんな時代がやってくるとはね。
安くしないと物が売れない現実。
ジャズの過去遺産をむさぼり続けるだけのレコード会社。
今ジャズをやっている人達がほんとうにかわいそうだと思いますよ。
啓蒙してジャズファンを育ててきた時代の終焉。
つまりはジャズ評論家不要の時代。
まあ色々思うことはありますがこのくらいでやめときます。

いたいけなジャズファンはこの本を買ってジャズを聴いて下さい(笑)!

さて話は変わります。
ちょっと最近考えていた戯言を書きます。
最近私はこの手のパターンが増えてますね。m(_ _)m

60年代頃までは売れなかったと思われるジャズですが、70年代前夜マイルスがファンク(当時のブラックミュージックのメインストリーム)を取り入れた頃からセールスも期待できるようになりました。CTIレーベルとかがその路線の典型です。そういう音楽は当初クロスオーバーと呼ばれていて後にフュージョンと呼ばれるようになります。

そうフュージョンです。フュージョンと言えば”シャリコマ”、コマーシャリズム(商業主義)ですね。売るための音楽。もちろんコマーシャリズムに走らないフュージョンもたくさんあります。私のような古い人間は、コマーシャリズムと結びついたフュージョンは”ダメジャズ”という認識が根強く残っています。今でも私がうかつに「これはフュージョンです。」などと言おうものなら、ジャズ歴が長い人から「そういう言い方をしてほしくない。」といった意見があったりします。

ジャズを聴き始めた1982年頃、数少ないジャズ好きの知り合い(当時からジャズファンは少なかった)に、私が「ウェザー・リポートが好きです。」と言ったら、「あんなのジャズじゃない。」と言われたことは今でも鮮明に覚えています。その人はセロニアス・モンクが好きで、「ジャズ好きならモンクを聴かなきゃ。」みたいなことも言われました。

話はちょっとそれます。バブル前夜とバブル期の日本でジャズが多くの人に聴かれたことにより、それは多分お洒落な流行音楽でしかなかったのですが、ジャズファンが増えたという大きな錯覚をしてしまった事実に気付くべきです。当時のジャズは単なる流行だったのです。流行は去って久しいのです。これからジャズが流行になるとも思えません。だから未だに当時のようにジャズファンが増えると思っている人がいるのなら、それは大きな間違いだと思います。

話を戻しまして。ウェザー・リポートですら”フュージョン=コマーシャリズム音楽”として非難する人達がいたという時代を経験してきました。パット・メセニーもその類で事実私も最初は単なるフュージョンだと思っていました。当時私はフュージョンも好きだったので複雑な心境でジャズを聴いていました。まあそうは言っても当時もっとも身近なジャズファンはギターも弾く従兄であり、ギターアイドルが渡辺香津美だったのでフュージョンを聴くことに肩身が狭かったわけではありません。

なんでこんな昔話をしたかというと、ジャズがフュージョンでコマーシャリズムに走って、コアなジャズファンから非難されたという歴史があるという事実を再確認したかったからです。これは日本だけの傾向なのかもしれませんね。ジャズ評論家が主導した結果なのでしょうし、何というか潔癖な日本人の性格に合っているものなのかもしれません。

面白いのはヒップホップにも同じようなことが起きていることです。元々アンダーグラウンドだったヒップホップが80年代にメジャーになり、90年代のギャングスタ・ラップの爆発的なヒットによりヒップホップが金儲けの対象(コマーシャリズム音楽)になると、日本のコアなヒップホップファンはそういう売れ線ヒップホップから離れてしまう現象があるのです。私の今の感触によるとそれは日本のクラブミュージックシーンの傾向で、クラブDJ周辺の人達主導によるものであろうと察しています。上記のとおりジャズが歩んできた道のりと同じです。

さて、そんなクラブミュージックシーンの人達ですが、事が一旦ジャズの話になると、私が聴けばフュージョン(コーマシャリズム音楽)でしかないものを”ジャズ”として歓迎している事実に困惑してしまいます。ヒップホップの時に見せる態度とジャズに対する態度が違うじゃないかということです。それは私に言わせればジャズが分かっていないんじゃないかということなのですが、つまりは”踊れる”をキーワードにしてジャズを選別した結果なのでしょう。

うんっ、待てよ。逆に私はコマーシャリズムなヒップホップを今楽しく聴いてますよね(笑)。そうか、上記の論理だと私はヒップホップが分かっていないということになりますよね。私はヒップホップが分からないジャズファン。面白い!

なるほどね。結局そのジャンルの音楽の意図がよく分からないと表面上の気持ち良さや楽しさで聴いてしまうのでしょう。ある意味潔い姿勢だろうと思います。ただし私のジャズの聴き方は”ただ気持ち良ければいい”という次元にはもう戻れません。そういえば寺島靖国さんが提唱しているジャズの聴き方も同じような次元の話ですね。クラブジャズ的ですよ。

時代のトレンドに沿っているからと言って良しとする気もありません。流行を消費するようなジャズの聴き方をする気もありません。それがコアなジャズファンってものでしょう。良くも悪くもこれまではジャズ評論家によってそういうジャズの聴き方が啓蒙されてきたのだと思います。私は正に由緒正しきジャズファンです(笑)? 流行りに左右されるのではなくストイックに自分のジャズを追及する人を愛します。

そしてそして、中山康樹さんが著書「ジャズ・ヒップホップ・マイルス」でジャズとヒップホップをつないでいる路線は、コマーシャリズムを排した路線でもあるということになりますよね。なるほど。音楽において”コマーシャリズムを排する≒批評性”という見方が出来るような気がしてきました。これまた面白い!

以上で戯言は終了。

最近はこういうめんどくさいことを言う人があまりいないので敢えて書きました。
もの分かりが良いジャズファンになる気は毛頭ございません。
古い考え方ですって、”フンッ、結構毛だらけ猫灰だらけ”です(笑)。

毎度のことですが書く(文章/言葉にする)と自分の頭の中が整理されます。
時には当初思っていたこととは違う結論に至ってしまうこともあります。
整理されるというか考えていることがよく分かるようになりますね。
面白いですよ!これが言葉にすることの重要性なのです。

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スガダイローの深いピアノソロ・アルバムです。

こちらも素敵なピアニストのアルバムです。
前記事の上原ひろみとは全く方向性が違う作品ですが凄く良いんです。

まずジャケットの写真が凄いです。

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写真屋(ご本人がそう書いてます)中筋純さんが撮った「廃墟チェルノブイリ」の写真です。貼ったのは6枚つづりの中の2枚。遠くにかすむチェルノブイリ原発とその原発事故により廃墟と化した街。緑に被われているところが何とも不思議。人々は追い出されてしまったのに木々は何事もなかったかのように青々と息づいています。人の営みなんて自然の前にはちっぽけな気がしますし、でも時にはその営みが自然に大きな影響を与えてしまうことも考えなければいけないと思います。

このアルバムはスガダイロー『春風』(2011年rec. VELVETSUN PRODUCTS)です。ピアノソロ作品。中筋さんの写真個展「黙示録チェルノブイリ 再生の春」のB.G.M.を依頼されたダイローさんが、写真からインスピレーションを得て録音したアルバムです。これを録音したのが2011年の2月22日。つまり東日本大震災と福島第一原発事故の数週間前なのです。何という巡り合わせなんでしょうね。今こうしてこのアルバムを聴くと色々な思いが頭の中を巡ります。

このアルバムには以下の9曲が収録されています。
1.巨骸、2.春風、3.融合、4.廃界、5.深部、
6.望郷、7.臨界、8再生、9.終末

全ての曲が力強く深いです。そこには上記写真の緑の木々のような自然の営みの力強さが込められているように感じます。原発事故は決して終わりではなく、年月を経ればまた生命の息吹は戻ってくるのだろうと思います。そう感じさせます。抽象的なフリー演奏ではなくメロディアスなので、そのメロディーが描く思いを感じでほしいです。

冒頭の《巨骸》から深くて美しいです。左手の廃墟をイメージさせる重く繰り返される低音と右手の生き生きとしたメロディーの動きは正に上記の写真だと思いました。イメージをかきたてる演奏です。ピアノが素晴らしく良く鳴っています。それを見事に捉えている録音も相あいまって一挙にその世界に引き込まれます。

《融合》における目まぐるしい音の放出は核反応そのもの。《深部》の寂しげで暗い音の佇まいはに心が深く沈み込まされます。《望郷》のメランコリックな響きは故郷を離れた人達の切ない思いが詰まっていていると同時に、やり場のない怒りが内に秘めているようであり、また今を強く生きようとする思いも感じます。

《臨界》は核分裂が徐々に進んでいって臨界へと達します。中盤以降の怒涛のフリー演奏は生み出される強大なエネルギーの放出。後半にはその強大なエネルギーをコントロールする意思も感じられるような気がします。《再生》は大地の響きと生命の躍動。これがダラー・ブランドの持つアフリカの響きに似ているのが面白いんです。ダイローさんにはアフリカの血が混じっているじゃないかと疑ってます(笑)。

といった具合でピアノたった1台で様々なものを表現。そしてそれはとても力強い。今世の中に足りないものはこういう地にしっかり足を着けた上での揺るぎない生命活動なのではないかと思います。東日本大震災から今日で1年半経ちました。ここにある音は被災者のみならず日本への応援歌として私の耳には響いてきます。

良いピアノソロです。心を揺り動かすものがあります。

Amazonに予約しておいたら入荷見込なしになってしまい、だいぶ経ってからディスクユニオン通販で購入したため紹介がすっかり遅くなってしまいました。今ではディスクユニオンにも在庫なしです。ベルベットサンで購入できるのかな? 良いアルバムなんで多くの人に聴いてほしいのですが。

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いやはや何ともエネルギッシュ!

上原ひろみ待望の新譜が発売されました。

P34 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト『ムーヴ』(2012年rec. TELARC)です。メンバーは、上原ひろみ(p,key)、アンソニー・ジャクソン(contrabass guitar)、サイモン・フィリップス(ds)です。前回のアルバムと同メンバーによるザ・トリオ・プロジェクトのアルバムです。ジャケット写真のホラーな感じと裏ジャケから分かるケバメイクはアメリカ人のセンスですからね。日本的なアイドルジャケ写を期待するのはやめましょう(笑)。ワールドワイドな人なのでこのジャケットで良いのです。

猛烈にエネルギッシュでスリリングなアルバムになっています。前作『ヴォイス』は上原とサイモンのスピード感/タイム感などが違って気になったのですが、本作はバッチリ合わせてきています。サイモンから上原に近づいただけではなく、上原もサイモンに合わせているのです。アンソニーとのマッチングは前作から良かったですから、もう今回は鉄壁のチームワークになっています。これはライブで世界中を巡って演奏を繰り返した成果なのでしょうね。

変拍子、複雑なリズム・チェンジとキメ、刻々と変化する表情、上原が作った高度な楽曲をビシビシ決めていくのは上記の鉄壁のチームワークの成せる技なのです。これが聴いていてスリリングで気持ち良いことこの上なし。基本的にアンソニーが土台を作りその上で上原とサイモンが絡んでいくという演奏です。もちろんアンソニーが絡んでいく場面もあります。今までサイモンについては大きなドラムセットでやたら叩きまくるだけのやつだと思っていましたが、今回そうではないことが分かりました。サイモンさんどうもすみませんでした。

一日の時の流れとともに変化していく感情の流れをテーマにしたという本作、冒頭に書いたとおりとにかくエネルギッシュなので、私がもしこんな一日を過ごしたら次の日はもうダウンしてしまうことでしょう。何なんでしょうね。上原のエネルギー。あの小さな体のどこにこんなエネルギーがあるのでしょう。きっと世界中の上原ファンから気を集めて”元気玉”にして音を放っているに違いありません(笑)。

どこをどう切ってもヒロミ・ワールド全開。プログレ志向ですかね。こういう個性が重要だと私は思うのです。ジャズに限りませんが自分の世界を作れる人が一流なのです。決してテクニックだけではなくきちんと表現したいものがあります。”日本人女性ジャズ・ピアニスト”なんていう枠はとっくに超えてます。そして癒しの哀愁ピアノ・トリオとか大人の音楽ジャズとかそういう既成概念をぶっ壊しているところも気に入ってます。

1曲目《ムーヴ》は目覚まし時計のアラームを模した音で始まります。なるほどね。”ジリ、ジリ、”から始まって”ジリジリジリジリ”まで、上手いですよね。凄い難曲を頭にかましてくるのはいつものパターン。目覚めからこれでは参ってしまいます(笑)。*2つ前の記事にこの曲を演奏したブルーノートでのライブを貼り付けてあります。必見!

次の《ブラン・ニュー・デイ》は美メロの優しい曲で普通の朝のイメージはこちら。日本のニューミュージック的なメロディーです。情感溢れるピアノが素敵ですよね。アンソニーのベースが美しいですね。サイモンのドラムも上手く寄り添っています。

3曲目《エンデーヴァー》はテーマ部にファニーなキーボードを交えた曲。キーボードで通すわけではなくアクセントとして使っています。テーマ部の後半は美メロのフュージョン調(デヴィッド・ベノワ調)になっていて、私はこの曲のような上原のピアノのソロが大好きです。ピアノとドラムのバース交換はピアノ部とドラム部でノリを変えているところがミソです。

4曲目《レインメーカー》は重い雰囲気の曲。ウエットな感じは日本の梅雨を想像させます。アンソニーのベースが深く沈んでます。曲が進むにつれてテンポアップしていってだんだん雨が強くなる感じ。そしてやみます。

ここから3曲は《組曲エスカビズム》《リアリティ》は全9曲の真ん中に位置して、この曲だけソロ部分が速い4ビートになっています。ジャズのリアリティ(現実)と中心はやっぱり4ビートってことなのでしょうか? 高速4ビートにのってめまぐるしく繰り広げられるピアノ・ソロがせわしい世の中を表しているんでしょうね。アンソニー&サイモンの4ビートはなかなかカッコいいです。

《ファンタジー》は映画スターウォーズに出てくる《ザ・プリンセス・アンド・ダース・ブルース》のような雰囲気があるバラード。スターウォーズはファンタジーですから。メロディー自体は上原節ですけどね。ピアノ・ソロ部分のためと転がし具合が好きです。

《イン・ビトゥイーン》はバルカン半島あたりのエスニックな匂いがある曲。哀愁溢れる曲です。輪舞(ロンド)風かな。ピアノ・ソロはクラシックな匂いがあり、途中に《モーツアルト交響曲第40盤第1楽章》の頭のようなメロディーが出てきます。

8曲目《マルガリータ!》はファンキーに始まる(変拍子炸裂)けれど、後半はポップなラテン調になるというハイブリッドぶりが《エンデーヴァー》に近いです。キーボードのファニーなソロが入っています。今回はキーボードで押し通さず軽めに使っているのがいい感じ。アンソニーがギターのような高音でソロをとり上原がキーボードでベース・ラインを弾くのが面白いです。後半のピアノ・ソロはラテン調。色々盛りだくさんなのはパーティーをイメージした曲だからでしょう。

ラストの《11:49PM》は、この曲の演奏時間が11分少々ということで、曲の最後に鳴る鐘(シンバル)が午前0時を告げるという趣向らいいです。上原らしいドラマチックな曲。こんな遅くまでドラマチックなんですから。それもパーティーが終わった後ですよ。いやはや参りました(笑)。

前作『ヴォイス』は後半飽きてしまいましたが今回は最後まで飽きずに聴けました。ザ・トリオ・プロジェクト、フィーチャリング・アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス。今や世界屈指のピアノ・トリオと申し上げて良いのではないかと思います。凄い演奏してます。

テラークならではの好録音です。今回はいつもよりピアノがしっかり録れているように感じました。歪むところまではいってませんが、その一歩手前までいっていてそれがパワー感につながっています。低音もふんだんに入っていて、これは絶対良いオーディオで音量大きめで聴くべきです。たった3人ですがマッシブな音の壁が出現します。

そしてアンソニーのベースが上原のピアノの左手とシンクロして聴こえ難くなる場面(これはアンソニーが上原に寄り添っているからに他ならないのですが)があるので、低音がしっかり出る良いオーディオでそこを聴き取る必要性があるのです。

ダイナミックな割に繊細なニュアンスもあるので、大ホールとかの大音量PAで聴くと魅力が伝わりにくい部分があります。昨年の東京JAZZで聴いてそう思いました。コットンクラブやブルーノート東京やSTB139のような空間で聴く方が魅力は余すところなく聴き取れるはずです。まっ、野外とか大ホールで大盛り上がりするのもまた良いのでしょうけれど。

グラミー賞のコンテンポラリー・ジャズ部門、最優秀賞が狙えるか?
うんっ、となるとエスペランサの『ラジオ・ミュージック・ソサイエティ』と競うのか?

アルバム名:『MOVE』
メンバー:
上原ひろみ(p, key)
Anthony Jackson(contrabass guitar)
Simon Phillips(ds)

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なるほどこういうアルバムだったのか。

先月、ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた連続講演「1990年代のジャズ」に参加した時、「いーぐる」の壁に90年代のベスト盤が飾られていました。その中の1枚が今日紹介するアルバム。これはマスター後藤さんの本にも紹介されていましたが買いそびれていたものです。

P33 アンリ・テキシェ『マッド・ノマド(ズ)』(1995年rec. LABEL BLEU)です。メンバーは、セバスチャン・テキシェ(as,cl)、ジュリアン・ルロー(ts,as,ss)、フランソワ・コルヌルー(bs,as)、ノエル・アクショテ(g)、ボヤン・ズルフィカルパシチ(p,syn)、Jacques Mahieux(ds,per)、トニー・ラベソン(ds,per)、アンリ・テキシェ(b,oud,per,voice)です。ライナーノーツがフランス語なので内容が良く分かりませんが、ノマド(遊牧民)をテーマにしたコンセプト・アルバムだろうと思います。

テキシェはご存知のとおり、その昔フィル・ウッズのヨーロピアン・リズム・マシーンでベースを弾いていた人。今や重鎮ベーシストです。そんなテキシェが息子セバスチャンをはじめジュリアン・ルロー、ノエル・アクショテ、ボヤンZ、トニー・ラベソンといった気鋭を集めて作ったアルバム。

聴く前はタイトルとジャケットからかなりエスニック色が強いアルバムだと思っていたのですが意外とオーソドックスなジャズでした。もちろんメロディーとかにはエスニック色はありますが、それを目的としていないように感じます。冒頭を聴いた瞬間、中国風パーカッションが鳴って「なんだこれは?」となりますが、その後は普通のジャズになりますのでご安心を。

色々な演奏形態が入っています。8人参加したビッグ・コンボ、ドラムとパーカッションのデュオ、ワン・ホーン・カルテット、ピアノとドラムのデュオ、ベースとドラムのデュオ、ピアノ・トリオなど様々あって飽きさせないです。

ジャズの要素も色々詰まっています。3管の厚いホーン・アンサンブル、ホーン陣のフリーキーな音の交換、アバンギャルドでロックなギター、フリーで尖がったエレピ、ピアノとドラムの丁々発止、オーソドックスなピアノ・トリオやワン・ホーン・カルテットのジャジーな味わい、スピリチュアルに迫る熱演、ドラムとパーカッションによるリズムの妙味、フリーなピアノの乱打にからむ強烈なベースとドラムなどなど、聴かせ所は満載です。

このアルバムはノマドをテーマにしたトータル・サウンドを聴かせる趣向なんでしょうけれど、実はジャズが持つ聴かせ所を色々な形態で聴かせるということになってしまっているのが面白いのです。90年代におけるジャズ総括みたいな側面があります。このアルバムを聴いているとジャズの魅力って色々あるんだなと再認識させられますよ。

そういう意味でメタな視線(ジャズを一旦かっこに括って外から見る)を感じます。でもそれが単にクールで過去をなぞったつまらないジャズになっていないところが興味深いですね。面白さとしてきちんと魅せてくれています。それを可能にしているのが楽器を操るテクニックの高さであり、高度なテクニックを表現するという目的にしっかり生かしている意思にあるように感じます。ジャズを体現しているアンリ・テキシェの目配せもあるのでしょうね。

そしてラベル・ブリューのクリアな録音によってそれが上手く提示されているのです。サックスのきれいな響き、凄みのあるベースの弦の音、キレの良いシャープなドラミングなどを余すことなく捉えています。私的にはドラムが刻むフラットでシャープなリズムが特に快感。やっぱりジャズはリズムが重要なのだと実感します。それから《S.O.S HOZHO》という曲には太鼓の超低音が入っていてオーディオ的に魅力的なソースです。

ジャズというものはどういうものであるかをわきまえたうえで、現代感覚や当地感覚でやる質の高いジャズ。90年代から今につながる状況下で、ジャズのひとつのやり方を提示してくれている気がします。とは言っても録音から既に17年経過してますが。

面白いアルバムです。気持ち良いジャズやってます。

アルバム名:『MAD NOMAD(s)』
メンバー:
Sebastien Texier(as, cl)
Julien Lourau(ts, as, ss)
Francois Corneloup(bs, as)
Noel Akchote(g)
Bojan Zulfikarpasic(p, syn)
Jacques Mahieux(ds, per)
Tony Rabeson(ds, per)
Henri Texier(b, oud, per, voise)

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上原ひろみの圧倒的なパフォーマンス!

いよいよ本日、上原ひろみの『MOVE』が発売になります。

もちろん私はAmazonに予約済みです。

発売を前にブルーノート東京でのライブ映像がYouTubeにUPされました。

圧倒的なパフォーマンス!

いやはや凄い演奏です。インクレディブル!

このトリオは大ホールではなくこのくらいの空間で観るのがいいですね。

《マイ・フェイバリット・シングス》成分が入ってますな~(笑)。

コルトレーン・カルテットの現代版がこのヒロミ・トリオなのか?

途中チラッとミシェル・カミロも入ってた(笑)?

前のアルバムで気になっていたサイモン・フィリップスのスピード感。

今回はしっかり上原のスピードに合わせてきてます。

やっぱり何度も一緒にやっていると揃ってくるものなんですね。

ジャズを聴き始めた頃に体験してとりこになったジャズの圧倒的な演奏。

5月に生で観たクリス・ポッター・アンダーグラウンドも圧倒的でしたが、

私はジャズにこういうものを求めています。

いや~っ、『MOVE』を聴くのが待ち遠しい!

んっ、ひょっとして、初回限定盤についてくるDVD用の映像がこれなのかも?

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バラエティーに富んだアルバムです。

昨日ベニー・ウォレスのアルバムを取り上げたのはこのアルバムにウォレスが参加していたからです。

P32 矢野顕子『峠のわが家』(1986年、MIDI INC.)です。坂本龍一(key)、スティーブ・フェローン(ds)、高橋幸宏(ds)、アンソニー・ジャクソン(b)、スティーブ・ガッド(ds)、エディ・ゴメス(b)、ベニー・ウォレス(as)などが参加しています。

このレコードジャケットがなかなか凝っていて、矢野のポートレートにエンボス加工(凸)でいろいろなアイコンが刻まれています。アルバム名もエンボス加工なので読み難いです。このジャケットの制作にはジャズ友 tommyさん が係っているそうです。

これを買ったのは、《David》が入っているからです。前にこのブログで話題になり、転調が素敵なこの曲に私が一目(一聴)惚れしてしまったという経緯があります。これです。

この浮遊感溢れる優しいメロディーが好きなのです。このベスト盤は持っているのですがCDなので、レコードで聴くのもまたおつなものでしょう。

A面は《The Girl of Integrity》から始まります。この曲はJAPAN(ロックグループ)の演奏に似ています。このアルバムでキーボードを弾いている坂本龍一がJAPANのアルバムに参加したこともあるので、影響関係があるのかもしれません。これがその曲。素晴らしいアレンジですよね。坂本の技なのでしょう。井上陽水がコーラスで参加しています。

2曲目が上記《David》で、3曲目が《ちいさい秋見つけた》。詞は童謡のそれですが順番はばらばら、曲は矢野によって作り直されていて見事に矢野の世界になっています。とても面白い世界です。途中からは《サニー》に似た曲になってますね。《サニー》は好きな曲なので気に入りました。

4曲目《一分間》はバラードでガッドのドラムにゴメスのベースにベニー・ウォレスのアルトサックスという顔ぶれ。曲と詞は矢野の世界ですね。ウォレスのアルトがいい味を添えていますが、2分34秒という短さ。演奏時間の”2:34”の並びは意識して作ったものかも

5曲目《おてちょ。(Drop me a Line)》は作詞が矢野とピーター・バラカン。全編英語の歌詞です。これはまた頭と同様でJAPANの曲に似てますね。打ち込みのテクノ。

B面最初の《海と少年》はいきなりニューミュージックなのでビックリ。いい曲ですよ。かなり好きな曲です。あとで気付いたのですが大貫妙子の曲でした。私ってこういうメローでセツネー曲が好きなのでした(笑)。YouTubeには大貫のやつがありました。ねっ、いい曲でしょ。

2曲目《夏の終り》は良い歌詞だな~と思いました。恋の歌。これも矢野らしくないと思ったら小田和正の曲でした。話はちょっとそれますが、オフコースでは《Yes-No》が一番好きです。とは言ってもほとんど他の曲は聴いたことがなくて、高校生の学園祭の準備の時、誰かが持ってきたカセットでBGMとして聴いたこの曲が、やたら切なくて心に刻み込まれてしまったのです。

3曲目《そこのアイロンに告ぐ》はもろにジャズ/フュージョンです。ガッドのドラムにアンソニーのベースにウォレスのアルトサックス。矢野の歌よりウォレスのアルト・ソロの方が多いです。ガッドのサンバ・リズムに乗ってウォレスのアルトが炸裂する辺りは、チック・コリアの『フレンズ』に入っている《サンバ・ソング》を彷彿とさせます。この曲は上原ひろみとのデュオ・バージョンで知っていたのですが、元バージョンがこんなだとは知りませんでした。

4曲目《Home Sweet Home》は矢野らしい曲です。静かに始まって途中からアップテンポになるあたりは”これこれっ”という感じです。高橋のドラミングはYMOしてますね。

というわけで、良くも悪くもバラエティーに富んだアルバムです。
私にとっては気になる要素満載の素敵な1枚。

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今日は久しぶりに聴いた1枚。

大西順子引退記事の効果なんでしょう。
アクセス数がかなり多いです。
こういう旬なネタをいち早く取り上げ、
グーグル検索の1ページに来るとアクセス数が増えます。
すると検索の順位が上がりまたアクセス数が増えるという循環が起きます。

さて、今日は懐かし1枚を紹介します。久しぶりに聴いたら良かったのです。

P31 ベニー・ウォレス~チック・コリア『ミスティック・ブリッジ』(1982年rec. enja)です。メンバーは、ベニー・ウォレス(ts)、チック・コリア(p)、エディ・ゴメス(b)、ダニー・リッチモンド(ds)です。私のはCD初期盤¥3,500。あの頃CDは高価でした。

ベニー・ウォレスって当時はかなり話題の人だったのに、今では名前が出ることはほとんどありません。帯には「次代のジャズを模索し続ける俊英サックス奏者」と書かれています。この人のフレージングは独特で好き嫌いが分かれるタイプ。

そんな独特なサックを吹きピアノ・レスのグループで演奏することが多かったウォレスが、コンテンポラリー系の路線だったチックと吹き込んだので、当時は異色アルバムとして捉えられていました。私は当時ワン・ホーン・カルテットが好きだったことと、チックのピアノが好きだったことから購入。

今でこそチックは終わったと私は言ってますが、ジャズを聴き始めてからかなりの期間は好きなピアニストとだったのです。最初に聴いたのが『スリー・カルテッツ』だったので、マイケル・ブレッカーのテナーとチックのピアノのモダンな響きにやられ、次に聴いた『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』でその瑞々しいタッチにやられたというわけです。

その後チックは色々聴きましたが、エレクトリック・バンドの後期でだんだん飽きてきて、オリジンあたりからは懐疑的になり、リターン・トゥ・フォーエバーを何度も再結成するにあたり最早愛想が尽きました(笑)。基本的にチックのピアノのフレージングは好きなんですよ。だけどやってるジャズにもう刺激がないのです。またやってるのかみたいな。

で、このアルバムの話です。ウォレスのテナーについて油井正一さんはライナーノーツに「エリック・ドルフィーのアルトやベース・クラリネットをうまくテナー・サックスに応用したような感じを抱かせる」と書いていて、正にその通りだと思います。間に表れる音程の飛翔具合がドルフィーによく似た雰囲気なのです。

そしてそこが前に書いたとおり好き嫌いを分けるポイントです。当時の私もこのテナーのフレージングは若干苦手でしたが、今聴くとこのユニークなフレージングがいいんです。こういう個性的なところがやっぱりいいんですよ。一癖あるところがある時旨味に変わるともうその魅力から離れられなくなります。そこがジャズの面白さ。

チックのピアノについては、1曲目なんかは言われなければチックが弾いているかどうか分からないと油井さんはライナーに書いていますが、よく聴くとチックのフレーズは出てきます。その1曲目《ザ・ボブ・クロスビー・ブルース》はウォレスの曲で、これがセロニアス・モンク的なメロディーの曲。チックもそれに合わせて不協和音のような音を混ぜつつ弾いているのが面白いところです。

このアルバムの他のウォレス曲もモンク的で、ウォレスが前年に出した『ベニー・ウォレス・プレイズ・モンク』の流れを汲んでいるのです。実はこの頃チックも『トリオ・ミュージック』という2枚組アルバムを出していて、1枚目はフリー・インプロで2枚目がモンク曲集となっていました。なのでモンクという点でこのウォレスとチックの異色な組み合わせは繋がっているのです。

そんな中にあってアルバムタイトル曲だけはチックの曲で、これがいつものチック節美メロで私はかなり好きです。ビル・エバンスのかしこまったちょっと重い美を、もっと手近に身軽にした美がチックだと私は思っていてそこが好きなのです。ここでもウォレスはドルフィー的飛翔フレーズ炸裂ですがこれが意外とチックの美メロにマッチしています。

ずり上がったようなフレーズのゴメスのベースも私は嫌いではありません。そしてミンガス・グループでドラムを叩いていたリッチモンドの躍動するドラムはこのアルバムに勢いを与えています。ウォレスとゴメスとリッチモンドはトリオなどを組んでアルバムを出している仲なのでマッチングは良いです。そこにチックが上手く溶け込んでいます。

ウォレスの癖とチックの大衆性が意外にマッチしたのがこのアルバム。2人のデュオで《マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ》もやっています。ここでのウォレスはさすがにオーソドックスな方向に振っていて実に味わい深いバラード演奏になっています。

久しぶりに聴いたんですがなかなか良いアルバムです。

アルバム名:『THE BENNIE WALLACE TRIO & CHICK COREA』
メンバー:
Bennie Wallace(ts)
Chick Corea(p)
Eddie Gomez(b)
Dannie Richmond(ds)

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ジャズ喫茶が似合うB級アルバム

最初にちょっと余談。

今売れているジャズミュージシャンって結局、個人のファンに支えられているんだろうと思います。例えば上原ひろみのファンはジャズファンではなくて上原ひろみファンであり、菊地成孔のファンはジャズファンではなくて菊地成孔ファンなのです。

ジャンルが拡大していくと最早ジャンルのファンはいなくなり、各ミュージシャンのファンのみが存在するようになっていくのだろうと思います。上記ジャズの例に限らず、ロックとかフォークとか他のジャンルも似たような状況にあるのではないでしょうか。

ポップスなんて前からそうですよね。ポップスファンはいなくてマイケル・ジャクソン・ファンがいるのです。J-POPファンはいなくてAKB48ファンがいるのです。ジャズファンとかフュージョンファンとかプログレファンとかフォークファンとかのジャンルファンはもう中年以上のオジサンやオバサンの話だろうと思います(笑)。

だからもし自分の人気や売り上げを上げたいのなら、ジャンル内からではなくジャンル外の広範囲から自分のファンを獲得しなければいけないのです。そして、ジャンルのファンを増やそうとするなら、例えばジャズの場合は第二、第三の上原ひろみや菊地成孔の登場を願うしかないのだろうと思います。あっ、でも同ジャンルの違う人を聴かないから結局大して意味はないかも。単に数の話になってしまいますね。

余談はこれくらいにして本題。

東京のジャズ喫茶に行くようになって、ジャズ喫茶に似合うB級アルバムというのがあることを知りました。ジャズ紹介本とかにはまず出てこないけれど、ジャズ喫茶という空間にその音が鳴ると、なんとも心地良い雰囲気につつまれ、「やっぱジャズっていいよね。」と独り呟いてしまう。そんなアルバムがあるのです。今日紹介するのはそんな1枚。

P30 サム・ジョーンズ『サムシング・イン・コモン』(1977年rec. MUSE RECORDS)です。メンバーは、サム・ジョーンズ(b)、ブルー・ミッチェル(tp)、スライド・ハンプトン(tb)、ビリー・ヒギンズ(ds)、シダー・ウォルトン(p)です。どうですこのメンバー。B級な一同揃い踏みです(笑)。ここまで見事に顔を揃えているアルバムはなかなかありません。ミューズはこういう憎いところを突いてくるレーベルです。

これは渋谷の「JBS」で聴いて惚れました。「JBS」はこういうのがしょっちゅうかかります。サム・ジョーンズを始めとして、このアルバムに入っているメンバーの一人が入っているアルバムが次から次へと芋づる式にかかるのが素敵なんですよ。

そんなメンバーの中で私が特に気に入っているのはボブ・バーグ。この人はマイルスのグループへ入った後はコンテンポラリー系へ向かい、マイケル・ブレッカーと何かと比較されることになりますが、それまではバリバリのバッパーでした。とにかく吹きだしたら止まらない盛り上がりがこの人の良さ。痛快なのです。そういう性格はコンテンポラリー系になっても維持していて、『アナザ・スタンダード』ではそういう面が良い形で出ています。2002年に交通事故で亡くなってしまったのは残念としか言いようがありません。

このレコードはCD化されているようですが廃盤みたいですね。私ははなからレコードを探していて、例の 「discland JARO」 の通販リストにこれを見つけてすかさず注文しました。安かったですよ。レア盤とかではないですから。こういうのはレコードで聴くに限りますよね。皆さんレコードを聴きましょう!

サム・ジョーンズの良く歌うベースを軸に、小気味良い4ビートをこなすヒギンズ、そつなくスインギーなバップピアノを弾くウォルトンがリズム隊を構成し、そこにブリブリ熱く盛り上げるバーグのテナー、哀愁溢れるミッチェルのトランペット、熱気を孕ませたハンプトンのトロンボーンが乗っかれば、それはもう「ジャズっていいよね。」な湯気が立ち昇って、温泉に浸かっている気分になれるのです(笑)。ジョーンズの力強いベース・ソロもしっかり入ってます。

ジョーンズの曲が1曲、ウォルトの曲が2曲、ミッチェルの曲が1曲、ハンプトンの曲が1曲にスタンダード1曲の全6曲。オリジナルはそれぞれ良い曲ですがやっぱりウォルトンの2曲が抜け出ています。アルバムタイトル曲《サムシング・イン・コモン》に《ボリビア》、哀愁漂う良い曲達です。はいっ、大好きな曲《ボリビア》が入ってます!もうこれだけで買いです。

この手のアルバムではこちらも素敵です。⇒ 見つけました!
シダー・ウォルトンの『イースタン・リベリオン』シリーズも良いです。
サム・ジョーンズの『ヴィジテーション』もおすすめ。

もうありとあらゆるジャズを聴いて良さを見つけてしまう私。
これぞ王道ジャズファンです!

アルバム名:『Something In Common』
メンバー:
Sam Jones(b)
Blue Mitchell(tp)
Slide Hampton(tb)
Bob Berg(ts)
Billy Higgins(ds)
Cedar Walton(p)

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