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2012年8月

ジャズピアニスト大西順子さんの引退

2か月くらい前のことだった思います。
私のブログの”検索ワード/フレーズ”を見ていたら
”大西順子ライブ中止”とか何とかあったので、
「あれっ?」と思ってネット検索してみました。
すると4月頃のライブが中止になるとかのお知らせがあって、
そういえば最近ライブをしているとか聞かないし、
アルバムを出す話も聞こえてこないのでおかしいなと思っていました。

で、最近ですよ。
ツイッターのTLにこの記事へのリンクを見かけたのです。

大西順子からのメッセージ

そこにはこう書かれていました。

”10月22日からスタートする国内ツアーでプロ演奏家としての活動から引退します。”

大西順子さん引退しちゃうのか~。残念です。

アルバム『楽興の時』、『バロック』のツアーをそれぞれ甲府「桜座」で見て、
格好良い姿と演奏に魅せられていただけに本当に残念。
ステージ上の大西さんは輝いていましたよ。
サインもしていただきました。

P29_2 

大西さんのメッセージを読むと色々思うところはあります。

エゴをショービジネスにしたっていいんじゃないかとか。
それを認めさせてしまった方が勝ちということで、
もっと自信を持って堂々とやればいいんですよ。
もったいない気がします。
でも本人が決めたんですからしょうがありませんね。

このことについてもやっぱり触れておかないと・・・

例の『バロック』批評とその後のあれこれのことです。
大西さんのメッセージを読むと何かひっかかるんですよね。
批評ってやっぱりデリケートな部分があるんではないでしょうか。
批評される側の問題であると帰結するのは、私は良くないような気がします。

ラストツアーには行けそうもないです。

引退までにはまだ時間がありますが、お疲れ様でした。

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意外と面白いことが分かりました。

今年出たヴィジェイ・アイヤの『アッチェレランド』を聴いて、この人に対する興味がもりもり湧いてきました。なので、まだ買っていなかった昨年のアルバムを買って聴いてみることにしました。ちょっと変則的なアルバムなので敬遠していたものです。

P28 ヴィジェイ・アイヤ『tirtha』です。メンバーはヴィジェイ・アイヤ(p)、プラサンナ(g,vo)、ニティン・ミッタ?(tabra)です。ピアノにギターにタブラのトリオ、それにインド音楽をやっているというので敬遠してしまったのです。ネットでちょっと試聴してみたらそれほど毛嫌いするようなものでなかったので思い切って買ってみました。

最初に言ってしまいますがなかなか心地よい音楽です。インド・メロディーが意外と私のフィーリングにマッチしているからです。私にとってはむしろユダヤ・メロディーの方が苦手だということが分かりました。

昨年、ヴィジェイ・アイヤが参加した別のアルバムをブログで紹介した際、どなたかがこのアルバムが良いとコメントしてくれて、その時は乗り気になれず買いそびれてしまったのですが、今これを聴いてなるほどと合点がいった次第です。

アイヤが弾くピアノは相変わらず重厚で、ジャズではありますが現代音楽的な前衛の響きを持ったもの。意外とインドっぽくないのが面白いところです。それに対してギターとタブラはモロにインド・テイストで軽やかです。ピアノによる西洋音楽とギター&タブラによるインド音楽の対比とブレンドの妙がこのアルバムの肝だと私は思います。

アイヤが弾くガッチリ構築されたピアノとプラサンナが弾く揺れ動くギターが反発し合わずお互いを上手く補完しあっているのが良いです。そして私にとってはかなり重要なのですが、タブラが刻むリズムの軽快なノリがありますね。このノリがあるからこそポップに聴けるのです。

ギターはあの変態ギタリストのデヴィッド・フュージンスキーに似たところがあって、なるほどそういえば上原ひろみのガッチリしたピアノのとのマッチングが良かったということを思い出させてくれました。

アイヤの5曲とプラサンナの4曲で全9曲。2人の曲がほぼ交互に演奏されるのですが、どちらが作曲しているのか私にはよく分かりません。そういう意味で2人の音楽性はとてもマッチしているように思います。プラサンナが作る曲は意外と情感豊かな美メロで、これをアイヤがピアノで弾くと、ポップスとしていけそうな瞬間があって面白いです。

プラサンナのボーカルが1曲だけ入っています。これが実に面白い。リズムパターンを口ずさんでいる感じのもので、その急速なリズムに驚いてしまいます。よくぞここまで口が回るものだと(笑)。このリズム感覚こそがインド音楽の神髄なのかも?

意外とポップでなかなか心地良い音楽です。

アルバム名:『tirtha』
メンバー:
Vijay Iyer(p)
Prasanna(g, voice)
Nitin Mitta(tabla)

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突然ですが、「シーン」について考えてみました。

タイトルのとおりなんですが、突然「シーン」について考えました。私のことですからそれは当然ジャズシーンについてです。凄く簡略化して話を進めます。ごちゃごちゃ考えるのが苦手なので、そういうことにします。

シーンというのは中心になる人物の存在ということになると思います。その中心になる人物を取り囲む人達が、中心との距離感をどう取っているのかによってシーンが形成されます。抽象的な話だと分かりにくいのでいきなり具体論にします。これもかなり大雑把ですが返ってそれのほうが分かりやすいと思うからです。

ジャズの60年代。そうです。中心にいたのはジョン・コルトレーンです。そこではマイルスですら影が薄かったのです。ジョン・コルトレーンがフリー・ジャズをやったので、シーンがフリー・ジャズということになってしまいます。日本では特にその傾向が強かったようです。それゆえ67年のジョン・コルトレーンの死はつまりシーンの喪失を意味しました。でも、ジャズ界にはマイルスがいましたからね。コルトレーンの死後はマイルスが再びシーンを作ります。それからビル・エバンスも60年代シーンを形成した一人でしょう。

ジャズの70年代。67年以降の流れのままマイルスが中心に返り咲きます。エレクトリック・マイルスを中心としたシーン。ここについていけなかったリスナーにとっては「シーン=ジャズ」なので、「ジャズは死んだ。」という言葉になったのだろう思います。単にシーンが変わっただけなのにね。マイルスもやってくれました。76年から引退です。ここでまたシーンが喪失か。でもマイルス一派としてのウェザー・リポートが、マイルスに比べていささか役不足ながら何とかシーンをけん引したのだろうと思います。

ジャズの80年代。これはもうマイルスの復帰ですよね。そして新星ウィントン・マルサリスの登場。この2人を中心にシーンが形成されたのです。私は80年代にジャズを聴き始めたおかげで、なんとかシーンというものの面白さを味わえました。今思えばパット・メセニーもシーン(フュージョン・シーン系)を形成した人物だったのでしょう。これら3人の方向性の離散は90年代の拡散を予見させるものがあります。フージョン・シーンならデヴィッド・サンボーンあたりが中心か。

80年代の痛い記憶についても語っておきましょう。マンハッタン・ジャズ・クインテット(MJQ)です。中山康樹さんはこの人達で日本のジャズシーンを作ろうと画策したのです。まあ日本ではシーンもどきはにはなりましたね(笑)。一方中山康樹さんによるウィントン一派の「新伝承派」命名は、ウィントンを軸としたシーンを分かりやすくするために、今は正解だった思います。

ジャズの90年代。今までの流れからもうお分かりでしょう。マイルスの死がシーンを喪失させたのです。NHKの菊地成孔さんの「マイルス番組」の時、ケイ赤城さんへのインタビューで「マイルスの死によってジャズマンの立ち位置が分からなくなった。」というようなこを言っていたと思います。それがつまりシーンの喪失を意味していると思います。そこで本来80年代のもう一人の軸であったウィントンがシーンを形成すべきだったのに、なぜかそうなりませんでした。世の中の拡散の流れの中では求心力不足だったのでしょうね。同じくメセニーも役不足だったのでしょう。

非常に大雑把です。でもだいたいこんな感じなのだろうと思います。そして「シーン≒中心人物の存在」ということでだいたい良いのかと思います。

余談になりますが、最近何かとそちら方面の話が聴こえてくるので思うのですが、少なくともグラブ・ミュージックには90年代以降もシーンというものが存在していて、そういう意味では幸せだろうと思います。そしてそのシーンの中にはジャズ系のシーンが存在していて、今頃になってクラブ・ミュージックとジャズが交流すると、どうもジャズサイドと温度差があり、私なんかはそこに違和感を感じてしまっています。

本当に突然頭の中に浮かんだので、ブログをメモ代わりに使い、書くことで自分の考えを明瞭化しました。今回はまったく個人的な興味です。ご容赦願います。

まったく話は変わりますが、今これがかなり気に入ってます。

P27 中島美嘉『TRUE』。中島美嘉のファースト・アルバムです。なぜ今更中島美嘉なのかというと、昨年YouTubeで聴いた《WILL》に惚れてしまったからです。そしてこの曲が入っている『TRUE』を買ったのが中島美嘉に嵌るきっかけ。

その後『MUSIC』『YES』『STAR』も買ったのですが、この『TRUE』が一番のお気に入りです。なぜならこのアルバムにはリズミックな曲が多いから。私ってバラード系よりリズミック系が好きなのです。打ち込みのヒップホップっぽいものなどもあって楽しいです。

《WILL》《ONE SURVIVE》《HEAVEN ON EARTH》《DESTINY'S LOTUS》《HELPLESS RAIN》《TRUE EYES》《CURESCENT MOON》《JUST TRUE IN OUR LOVE》《STARS》とか好きな曲いっぱいです。というかほとんどの曲が良い(笑)。

《CURESCENT MOON》の中のこの詩がなぜか好きです。

私の中の猫は鋭い爪かくしてじゃれる
未来をうらぎったなら
たぶん許さない

この歌に歌われているのは中島美嘉本人のような感じがしますし、
そうだとしたら是非お付き合いしてみたい(笑)。

私は中島美嘉の変な癖がなく基本的に丁寧な歌い方が好きです。この人はめちゃくちゃ歌が上手いというわけではないと思いますが一生懸命歌ってます。堅気な感じがするのが良いのです。声が適度に甘いところも好きですね。そして何と言ってもこの人はファルセット(裏声)の使い方が絶妙です。特にサビのところでのファルセットに変わる瞬間はかなりの快感。

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今日は駄話。

最近の澤野工房って今何やってるんだろう?売れてるのかな?
なんてことが突然頭に浮かびあがり検索してみると、
面白い事実を発見。

澤野さんって私の大学の先輩でした!
卒業した学科は違いますけど。

ここにその記事があります。⇒ 梨大倶楽部

「澤野工房」を始めたきっかけがなかなか面白いです。

大学の入学祝金で買った真空管アンプがジャズを聴くきっかけとは。
大学に入ってからジャズを聴いたということや、
オーディオで何を聴くかということからジャズに入った私と似てます。
ただし私の10数年前のこと。

岡島デパートの近くにジャズ喫茶「デイトナ」なんてあったんですね。
甲府の商店街は”下町”?
確かに梨大からは降りていくけれど、私は”下町”と言ったことはないです。
ちなみに私は生まれも育ちも甲府市。

ただし甲州弁は子供の頃から大嫌いなので使わないようにしてました。
やっぱり末尾の「じゃん」だけは結構出てしまいますね。
そうは言っても微妙なイントネーションは甲州弁なのでしょう。

話は戻りまして、4年間は同じ甲府の空気を吸っていたということで、
澤野さんには親しみを感じました。

澤野さんもミュージックショップ・サンリンへ行ったのかな~。

1973年卒業。
その頃私は戦車や軍艦のプラモデルに凝っていました。
昔から凝り性なので友達のお兄さんに見習い、
塗料(レベルカラー)を買ってきては塗っていました。
親からはシンナーが良くないとか言われつつのことです。

当時の塗料と言えば、
レベルカラーとパクトラタミヤともう一つが思い出せない。
う~~うっ。何だっけなー。
ビンじゃなくてカレー粉の缶を小さくしたような缶に入っていたやつ。

懐かしい思い出話はこれくらいにしておきましょう。

澤野工房の存在を知ったのは
寺島靖国さんの「新しいJAZZを聴け!」だったと思います。
で、最初に買ったのが確かこれ。

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ウラジミール・シャフラノフ『ムーヴィン・ヴォヴァ!』
ウラジミールか?ウラジーミルか?
それはどうでも良くて、
まっ、難しいことは言わすスインギーなピアノを楽しみましょう。
寺島さんによれば、《あなたと夜と音楽》は「名演と呼ばずしてなんと呼ぶのか」。

シャフラノフってF1ドライバーのアラン・プロストに似てると思うのですが・・・。

シャフラノフはあと寺島有名盤の『ホワイト・ナイツ』と
『ポートレート・イン・ミュージック』の3枚だけ持っています。
シャフラノフは最近あの忌まわしき(笑)ヴィーナスに移籍したんでしたよね。
今はご縁がないピアニストです。

ジャズにまつわる色々な話は面白いです。

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ブルーノート・レーベルのLTシリーズ発売

ブルーノート・レーベルの未発表音源LTシリーズが999円で発売されるそうですね。このLTシリーズについて、3年前に渋谷の 「discland JARO」 の店主柴崎さんとお話したことを思い出しました。

そのお話についてはここに書いてあります。⇒ジャズ三昧な1日!

「LTシリーズを番号順にレコードで出したら反響があるはず。」という話でした。あれから3年、どうやら番号順でもなくレコードでもないようですが、999円という低価格で33枚出るというのはめでたいではありませんか。

再発の内容についてはこちら。⇒ブルーノートBNLT999シリーズ

9月15日(土)には ジャズ喫茶「いーぐる」 でこんなイベントがあります。
●ブルーノート発掘音源「BNLT999シリーズ」聴きまくり大会
解説は行方均さん
興味がある方は是非ご参加を!

ところで999円といい33枚といい、3の倍数に拘ったのはなぜ?(笑) で、「お前は買うのか。」と聞かれれば、今のところ買う予定なしです。ブルーノートのレコードは既に主要どころは持ってますからね。それに今はどうせCDを買うなら新譜にお金を回します。

ちなみに私が持っているブルーノートの1500番台と4000番台は全部レコードです。CDは1枚たりとも持っていません。10年くらい前までは廉価CDを持っていたのですが、全部レコードに買い換えました。その頃、国内盤と言えどブルーノートの中古レコードはそれなりに高くて大変でした。今はだいぶ値崩れして当時より500円くらいは安くなっているはずです。

ブルーノートのオリジナル盤も28枚(内ステレオ盤4枚)持っています。準オリジナル盤扱いのリバティ盤も7枚持っています。オリジナル盤をプレーヤーに乗せ、カートリッジをおもむろに溝へ落す。至福の時間が始まります。と、こうなるとほとんど自慢話ですよね(笑)。すみません。でもやっぱりブルーノートを聴くならレコードなのですよ。むふふっ。

我が愛しのレコードプレーヤー2台、カートリッジはデノン(左)にシュアー(右)。
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話を少し前に戻して。

3年前の7月、「ジャズ三昧な1日!」はそれにしても濃密ですな~。「disklandJARO」でオリジナル盤と希少盤を買い、ジャズ喫茶「いーぐる」の「NYダウンタウンを中心とした新譜特集」に参加し、渋谷のジャズ喫茶「JBS」で真っ黒いジャズを聴くというジャズ漬けな1日でした。

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恐るべし、ジャズの魔力!

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ヘンリー・スレッギルの独自な世界

先月ヴィジェイ・アイヤの新譜(と言っても出たのはだいぶ前)を紹介した時、その中にヘンリー・スレッギルの《リトル・ポケット・サイズ・デイモンス》があったことから、翌日にはヘンリー・スレッギルについて書きました。
ヘンリー・スレッギルのアルバムについて
この記事にYouTubeから動画を貼る時、スレッギルの新譜の動画を発見。そのアルバムが聴きたくなって早速Amazonに注文しました。そうしたら今度は com-post でクロスレビューをするっていうじゃありませんか。面白い展開です。

ではcom-postのクロスレビューが上がる前に私の意見を書いておきましょう。

P23 ヘンリー・スレッギル・ズォイドの『トゥモロウ・サニー/ザ・レヴェリー,Spp』(2011年rec. PI RECORDINGS)です。メンバーは、ヘンリー・スレッギル(fl,b-fl,as)、リバティ・エルマン(g)、ホセ・ダヴィラ(tb,tuba)、クリストファー・ホフマン(cello)、ツトム・タケイシ(bass guitar)、エリオット・フンベルト・カヴィー(ds)です。

3年前に出たアルバム『ディス・ブリングズ・アス・トゥVol.1』についてはブログにUPしています。
スレッギルのオーガニック・ミュージック!
翌年に続編Vol.2が出たのにそちらは買わずじまいでした。

今回は前アルバムのメンバーにチェロのクリストファー・ホフマンが加わった構成。やっていることは前作からあまり変わっていません。チェロが加わることでサウンドに多彩さが加味された程度です。

全曲スレッギルが作曲しています。演奏は2パターン。ファンク系のリズムを基調にしたフリー・ジャズ(めちゃくちゃはやってません)と、音の掛け合いを中心に置いた隙間多めの音響系フリー・ジャズ(めちゃくちゃはやってません)。

スレッギルはその場でアルトとフルートを適宜吹奏。何というか気ままにやりたいように演奏している感じです。力みがない独自の境地に達している演奏ですが、緩い演奏ではありません。緩くないからと言って聴く方に極度の緊張を強いるわけでもありません。メンバーはそんなスレッギルの意思を汲んで自由に音を絡ませ皆で綴っていきます。力強さはあります。

ベースは時にアコースティック・ベースであったり、時にはチューバであったり、チェロの低音が絡んだり、いつの間にか誰かが低音をリードする不思議な世界。ギターがよじれた音を紡いでいると、チェロが弓弾きで絡んだりピチカートで絡んだり、時々トロンボーンが低音を織り混ぜてきたり、あらゆる音が混然一体有機的に絡みます。そんな中ではエルマンのギターがやっぱりリードしている感じはします。

あまり作為的でなく自然発生的な音楽の生成を感じさせるサウンド。私はこれをオーガニック・ミュージックと呼びたい。その昔のべリー・べリー・サーカスにはポップな面があり、それが良さだったのですが、今はそういう余分な脚色がなくなってしまった感じがします。スレッギルの独自な世界がただそこにあるのみ。

アルバムの中で一番長い曲がこれ。ファンク系リズムのフリー・ジャズ。なかなかパワフルでカラフルですよね。

全44分15秒と短めの収録時間は適切。最後にアルバムについての女性ナレーションが入っているのが異色。

自然発生的で有機的な力強いジャズがここにあります。

com-post のクロスレビューを読んだら、元々はかなり作り込んだものとのこと。そういう風に聴き取れなかった私です。まだまだ修行が足らん、喝っ!(笑) ある種の現代ジャズの到達点というのは分かる気がします。

アルバム名:『TOMORROW SUNNY / THE REVELRY, Spp』
メンバー:
Henry Threadgill: flute, bass flute, alto saxophone
Liberty Ellman: guitar
Jose Davila: trombone, tuba
Christopher Hoffman: cello
Stomu Takeishi: bass guitar
Elliot Humberto Kavee: drums

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ギラッド・ヘクセルマンの堅実な1枚

やっとです。今日はジャズ・アルバムの紹介です。

P22 ギラッド・ヘクセルマン『ハーツ・ワイド・オープン』(2010年rec. chant du monde)です。メンバーは、ギラッド・ヘクセルマン(g)、マーク・ターナー(sax)(3,5,6,8)、ジョー・マーティン(b)、マーカス・ギルモア(ds)です。昨年チェックしていたけれど買いそびれた1枚。ディスクユニオンで別のアルバムを購入時、通販の送料を無料にするために追加で買った中古CDです。購入動機がいささか不純ですがお許し下さいませ(笑)。

ヘクセルマンは2005年ギブソン・モントルー・インターナショナル・ギター・コンペティションで優勝したという新進ギタリストです。色んなところに書かれていますが、パット・メセニー~カート・ローゼンウィンケルのラインに位置するスタイル。メセニー、カート共に私の好きなギタリストですので、そのサウンドには好感を持ちました。どちらかと言えば地味めの職人肌の人なんだろうと思います。何枚かアルバムを出してますが私は初試聴。

ギターの音はクリーンで、今時浮遊系も混ぜたフレージングはとても爽やかなものです。全曲ヘクセルマンが作曲していて、イスラエル出身だからでしょうか?ユダヤ調哀愁を含んだ曲はなかなか良いです。ユダヤ色を全面に出されると私は苦手なのですが、そこまで行ってないのが良。バラードの曲にはウェイン・ショーターの曲にも似たミステリアスな美しさもあったりして、私は気に入っています。

マーク・ターナーは全10曲中の4曲に参加しています。10曲とは言っても頭とラストはエスニックな短い曲《プロローグ》と《エピローグ》なので、実質8曲のうち半分にターナーが参加していることになります。ヘクセルマンの曲にとても良くマッチし、例のフレージングで”ヒラヒラ”と浮遊する様は気持ち良く、かつ非常に芯のある説得力ある演奏を聴かせるあたりはさすがです。あとの半分はギター・トリオで演奏。

マーティンのベースは裏方に徹して堅実にサポート、ギルモアはゴリゴリ押さずサウンドに合わせて俊敏で軽快なリズムを刻みつつ、プッシュすべきところはプッシュする感じです。現代ニューヨークの面々ですが、メロディアスなので難解方向に向かわないのがマル。非4ビート系が多いですが複雑変拍子もありませんので、始終心地良く安心してサウンドに浸れます。

クールでクリーンなサウンドなので熱い夏に一服の清涼剤として聴けるかも。

アルバム名:『HEARTS WIDE OPEN』
メンバー:
Gilad Hekselman(g)
Mark Turner(ts M-3,5,6,8)
Joe Martin(b)
Marcus Gilmore(ds)

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面白いことに気付きました。

先日貼ったプラスチックスのこの曲《デジタル・ウォッチ》(1980年)、
最初に演奏しているこの曲を聴いているうちにあることに気付きました。

このリズムにギターのカッティングに素っ頓狂な歌。
特にギターのカッティングとビート感に聴き覚えがあったのです。
しばし考えていると・・・、分かりましたよ!オーネット・コールマンです。
エ~ッ、という声が聞こえてきますが、これなんかどうでしょう。
アルバム『ヴァージン・ビューティ』(1988年)に入っている《Bourgeois Boogie》

それなりに似てますよね。
リズムとギターのカッティングと素っ頓狂なサックス(笑)。

プラスチックスとオーネットの関係性をどうこういうつもりはありません。
80年代の前期と後期ですが、時代の音なのだと思います。

私が言いたいことは次のことです。
こういうオーネットのサウンドを聴いた時、最初は違和感を感じていたものが次第に快感に変わっていったことを、感覚の変容体験として捉えていた私ですが、実は変容というより元々こういうもの(プラスチックスなど)に少なからず好感を抱いていて、単にそれがジャズにおいても適用されただけなんじゃないかと分かったことです。
皆さんにはつまらないことでしょうが、私には面白い事実なのです。

さて、オーネット・コールマンと言えば私にとってはこれです。
最初に聴いたオーネットのアルバムがこれだからです。
アルバム『オブ・ヒューマン・フィーリングス』(1982年)から《ジャンプ・ストリート》
録音自体は1979年です。

変だけれど気持ちいい。
この感覚に目覚めたのがこのサウンドです。
なんとファンキーで風通しが良いサウンドなのでしょう。
テーマを何度か繰り返した後、アルトのソロが始まったところに出てくる
日本の童謡的?ダサイメロディーが堪りません(笑)。
私はこの曲がかなり好きです。

ツイン・ドラムにツイン・ギター、ファンキー・ベースはジャマラディーン・タクマ。
プライム・タイム・バンドです。
オーネットは”ハーモロディック理論”なる正体不明の理論に基づいて
この演奏をしています。
これがハーモロディックならプラスチックスもハーモロディックです(笑)。
こういうことを深く考えてもしょうがないんです。
気持ち良ければ全て良し?

私にとってのオーネットは『ジャズ来たるべきもの』じゃないんですよね。
オーネットと言えばプライム・タイム・バンドなのです。
ジャズを聴き始めてすぐにこれをリアルタイムで聴いたことは、
私のジャズ観に大きな影響を及ぼしていることに間違いありません。

オーネットは『トーン・ダイヤリング』(1995年)でヒップホップもしてます。

ヒップホップをしようが、マイルスはマイルスだったように、
やっぱりオーネットはオーネットなのでした(笑)。
このアルバムは残念ながらリアルタイムで聴いていません。

そう言えば、これはcom-postの90年代の100枚に入りますよね。

音楽って面白い!

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今日はUA!

ジャズの新譜がいくつか溜まっているのですが、ジャズと向き合って紹介文を書く気がおきないので、また今日もポップスです。J-POP!

P21 UA『アメトラ』(1998年、ビクター・エンターテインメント)です。これもレンタルCDをカセットテープにダビングして、もっぱらカーオーディオで聴いた1枚。この人の独特な歌声をTVで聴いて、「なかなかいいじゃん。」と思ってレンタルしたんだと思います。結局これ1枚でUAにはあまり嵌らなかったのはどうしてなのか?多分その後、またジャズ(インスト)に興味が移ったからでしょう。

これも長らくカセットしか持っていなくて、ブックオフでもなかなか見つからなかったのですが、先日やっと見つけました。¥250也。いいアルバムなんですけどね。今やこの手のJ-POPの中古CDは投げ売り状態。私の場合はジャズの新譜にお金を回しているから、こういうのが安く買えるのは嬉しい限り。カセットしか持っていなかったJ-POPも今や40枚ほど買い戻しました。

UAの独特なハスキーボイスとジャジーな歌が好きです。この人が持つ雰囲気はジャズだと断言したい!カサンドラ・ウィルソンと比較するのはちょっと気が引けるけれど、持っている独特な雰囲気はカサンドラと同様にジャズそのものだと思います。それになぜか黒いところが面白いんです。黒いというかブルージー。ルックスも黒人っぽいですよね。これが大阪吹田生まれの日本人というんだから不思議です。

アルバム真ん中あたりに《TORO》《貴方の一番好きな家》という曲があり、ジャズマンのビル・リーが作曲した曲はもろにジャズ。これが見事にフィットしています。バックは、テナーとフルートがフランク・ウェス、トロンボーンがクリフトン・アンダーソン、ピアノがマル・グリューミラー、ドラムがナシート・ウェイツという豪華さ。私はこの2曲がかなり好きで、特にダイナミックな《TORO》は聴いていると心が盛り上がってきます。

本当のジャズボーカルが分かる人は絶対UAの良さが分かると思います。アルバム全体としてはバラエティーに富んでいて、アート・リンゼイやマイケル・フランクスが作曲した曲もあります。フォーク調、打ち込みリズムのクラブ系、レゲー/カリプソ系、AOR、R&B、南方民謡調と色々楽しめます。でもそのジャジーな雰囲気は終始一貫。

このアルバムは2作目で、前後のアルバム『11』と『turbo』もブックオフで購入済みですが、やっぱりこの『アメトラ』が私の一番のお気に入り。リアルタイムで何度も聴いているからなのかもしれませんね。

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今日はプラスチックス

先週土曜に上京した時に思わず買ってしまったプラスチックスのレコード。
懐かしく聴いています。
高尚なジャズに疲れた耳には最高ですね(笑)。

P20 『ウェルカム・プラスチックス』(1980年、ビクター音楽産業)です。メンバーは、中西俊夫(vo,g)、佐藤チカ(vo,dance)、立花ハジメ(g)、佐久間正英(syn)、島武実(rhythm box)です。プラスチックスはイラストレーターの中西、ファッション・スタイリストの佐藤、グラフィック・デザイナーの立花という音楽家でない3人に、ミュージシャンの佐久間と作詞家の島が組んで作った異色のテクノ・グループです。

プラスチックスについて詳しく知りたい方はウィキペディアをご覧ください。

このグループを知ったのは高校生の時、当時Y.M.O.のテクノが世間に流れ始め、その流れに乗って出てきたグループの一つです。友達から教えてもらったのが先なのか、下記TV番組を見て知ったのが先なのか、今は覚えていません。

ではその番組をYouTubeから貼ります。

ここに出てくるP-MODEL、ヒカシュー、プラスチックスの3グループ、
個性的ですよね。
この番組の演奏場面はかなりはっきり覚えていました。
NHKの番組「600こちら情報部」も懐かし過ぎです。

こうして見るとP-MODELはどちらかと言えばパンク・ロックです。
ヒカシューはもう巻上公一のバンドですよね。正体不明の音楽です。
ヒカシューの《ぷよぷよ》という不気味な曲があります(笑)。

P-MODELはその後色々ありつつ2000年頃まで続き、
ヒカシューは今でも続いていて、プラスチックスのみすぐに解散しました。
実はプラスチックスが翌年に解散したことを今日まで知らなかったです(笑)。

まっ、つまり興味は持ったものもあまり聴かなかったのです。
翌年には大学受験で音楽どころではなかったし、
大学に入ってからはジャズ聴きになってしまいましたからね。

で、アルバムの話に戻りますが、全曲聴いたことがあるのでした。
忘れていたけれど、このアルバムをカセットに録音したものを友達から借りて
かなり聴きこんだのではないかと思います。もしくはカセットをもらったのかも?

今聴いてもかなりいいです。
帯には”キッチュ”と書いてありますが、軽妙洒脱なところが最高です。
オリジナル曲は全て立花ハジメが作曲していて、
そのセンスのなせる業なのだろうと思います。

サウンドは”ピコピコ”テクノですが、曲はポップなロックです。
ビートルズみたいな曲がちらほらあって、
そういうセンスが上手くテクノに昇華しています。

当時私はY.M.O.に傾倒したのですが、今聴けばY.M.O.って高尚です。
坂本龍一がいるので当然なんですが、シンセのハモリとか重厚で
サウンド全体は重いものになっていると思います。

それの反対側にあるプラスチックスの軽さ、今聴くと妙に心地よいです。
その軽さを後押しするユニークな歌詞。
下品なところやダサさがないのも私は大いに気に入っています。

これはそんな面白い歌詞の曲。
このライブで最初に演奏している曲《デジタル・ウォッチ》。
語句を並べただけですが実に面白い。

こちらはモンキーズの曲を見事にテクノ化。

こういうセンスが好きです。
プラスチックスの他のアルバムも聴きたくなりました。

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「いーぐる」講演「1990年代のジャズを聴く」後編

一昨日の ジャズ喫茶「いーぐる」 連続講演「1990年代のジャズを聴く」のレポートの続きです。

P16 昨日説明したように、かかったのはベストではなく、予備選考で1票しか入らなかったものです。複数票が入るアルバムは少なかったというのが、90年代のジャズの拡散と名盤の減少をよく物語っているのだろうと思います。この辺りの事情は「いーぐる」ホームページの「blog」をご覧下さい。後藤さんが詳しくお書きになられています。

私が90年代にジャズをあまり熱心に聴いていなかった原因は、仕事が超多忙だったからに他なりませんが、90年代のジャズ状況がそうさせていたと言えなくもないと思えてきました。

*私の聞き違いや勘違いがあるかもしれませんし、聴き損ねた部分も多々ありますのでご了承下さい

8.柳樂さんセレクト
Dino Saluzzi『Cite de la Musique』

ディノ・サルーシはアルゼンチンのバンドネオン奏者。タンゴのバンドネオンとは違う演奏。インプロバイザー的な部分が一番格好良くでたアルバム。ECMレーベルです。ジャズ・ベーシストのマーク・ジョンソンと息子(ギター)との共演。

これはエスニック・ジャズです。ECMの音になっています。ジョー・ザビヌルの《バディアの楼閣》とかそっち方面のテイスト。なかなか良い感じでした。(以降緑字は私の感想などです。)

9.林さんセレクト
Yusef Lateef『Tenors of Yousef Lateef & Ricky Ford』

ユセフ・ラティーフは自分のレーベルに30枚録音していて、その中にサックスと組んだものは4枚あって、このアルバムが一番面白い。録音当時は73、4歳。ラティーフとリッキー・フォードは音色が似ているので分かり辛いけれど、2人が禅問答をしていて師匠がラティーフで弟子がフォードと思って聴けば判別できます。

リズムがオーネット・コールマンのプライム・タイム風ファンクであるところがまず気に入りました。ラティーフが吹き終えないうちにフォードが挑んでくるような掛け合いが続きます。ガッツがあって私はこういうの好きです。このアルバム、「ジャズ批評」No.125の「サックス・トリオ決定盤」の中で下段に紹介されてました。

P17

10.原田さんセレクト
Horace Tapscott『Thoughts of Dar Es Salaam』

すみません。前のアルバムのことを林さんと話してしまい、原田さんの解説を聞き逃してしまいました。皆さんごめんなさい。お詫びとして「ジャズ批評」の「90年代のジャズ」に書かれているこの盤に対する原田さんのコメントを一部抜粋します。
すべての時期がピークだったといってもおかしくない彼だけに、遺作であろう本番でも創造力は全くかげりがみられない。作曲にしろ、ピアノにしろ、彼こそ真のスタイリストだった。

重いビートがカッコいい。4ビートからシャッフル・ビートへ。これも暴れ太鼓の部類。黒いファンクとロックなギターがいいです。後で原田さんに聞いたら、ギターはマルク・デュクレ。なるほどだからキレたギター弾いていたのです。私、暴れ太鼓が好きです(笑)。

11.後藤さんセレクト
Henri Texier『Ramparts D'Argile』

オーソドックスなジャズ。アンリ・テキシェは古いところでフィル・ウッズの『アライブ・アンド・ウェルインパリ』でベースを弾いていた人。息子のセバスチャン・テキシェがサックスをバリバリ吹くが、コルトレーンなんかとは雰囲気が違うもの。気合が入っているのが良い。トニー・ラべソンはマダガスカル出身のドラマーでリズムが好き。聴いた後で村井さんがベースの音が良く録れているとおっしゃっていました。「録音がいいですよね。」と後藤さん。

あれっ?と思いました。タイトルがフランス語表記だったので気付きませんでした。後藤さんが自著でたくさん推薦いる『粘土の城壁』です。これっ、「いーぐる」で聴きたかったんですよ。凄い音が入ってますからね。かけたのは《サクリファイス》。これです。これで決まり! サックスも強烈だけれど後半のベース・ソロが怖~っ。このテクニックとパワーは異次元。ラベル・ブリュー・レーベルのクリアにしてパワフルな録音。ベースが良い音なのはヨーロッパならではだろうと私は思っています。もちろんこれは持っています。

12.村井さんセレクト
Mick Goodrick, Jerry Bergonzi, Bruce Gertz, Gary Chaffe『Sunscreams』

もの凄く同業者の間で評価が高いけれど地味。ジョン・アバークロンビーを更に地味にした感じ。サックスも同様に同業者の間で評価が高いけれど地味なジェリー・バーガンジ。グッドリックのアルバムで一番地味なアルバム。バーガンジは全てフレーズがスケール・アウトしている独特なもの。

ギター&テナー・カルテットの好演。これは4ビートのコンテンポラリー・ジャズ王道。こういう渋めのやつも好きです。スタイル的には80年代です。バーガンジいいですよ。ドラムはジャック・ディジョネットにクリソツの叩き方でした。

13.益子さんセレクト
Pita『Get Out』

これはレジュメの解説から抜粋。PitaことPeter Rehbergは、ロンドン出身の電子音楽作家。オーストラリアのエレクトロニカ系のレーベル、Megoからのリリースが多い。本作はフル・アルバムとしては2作目で、全編Macパワー・ブックのみで制作されている。フィードバックのような高周波から、部屋の空気を振動させる低周波まで幅広い音域・音色のノイズを用いて、・・・、どちらかと言えば無機的で、時に暴力的な表現を用いる。この辺りの言葉に村井さんが反応(笑)。柳樂さんから補足。Megoレーベルは踊らない電子音楽のレーベルだそうです。聴いた後で後藤さんはこういうのは結構好きとおっしゃってました。

ノイズ・ミュージックでしょうね。ジャスに引き寄せれば音響系のフリー・ジャズと言えなくもないか。終りは”ブツッ”となったのでアンプが飛んでしまったようでした。皆さんはオーディオが壊れたのか?曲が終わったのか?と笑っていました。極たまにはこいうのも面白いでしょう。

14.八田さんセレクト
アルタード・ステイツ『Cafe 9.15』

アルタード・ステイツは日本オリジナル。八田さんは90年代からこのグループがたまたま好きだったそう。2000年代の方が好きだけれど、これも90年代を代表するアルバム。ネッド・ローゼンバーグ(サックス奏者)が参加しています。

ローゼンバーグの循環呼吸による演奏が彼らしい。フリー・ジャズ。ロック・ビート&変拍子は私も好みです。今堀恒雄のウンベルティポ・トリオとかにも通じます。私にはジェームズ・ブラッド・ウルマーとかがやっていたつんのめり気味のリズムに近いように聴こえました。なかなか良いです。

2巡目終了。

2巡目はジャズと言って良いと思います。
エスニック、ベテラン、ブラック、ヨーロッパ、コンテンポラリー、アバンギャルド、日本新進と、ジャズの広がりが網羅されている感じです。
私は全てジャズとして面白く聴けるのですが皆さんはいかがでしょう?
それぞれがその人らしいセレクトです。
メンバー各自がご自分の領分を分かってセレクトされているんだと思います。

時間に余裕があるとのことで柳樂さんセレクトから。

15.小野誠彦(オノ・セイゲン)『Montreux 93-94』

小野さんというと今は録音エンジニアだが元はミュージシャン。シロ・バプティスタ、アート・リンゼイ、マーク・リボーなどが参加。モントルーのライブ。ワールドミュージックを取り入れ心地良い。90年代東京の感じがする。

正直に言ってしまえば、こういうの私にはどうも”ピン”と来ないんです。90年代東京の感じか~。薄っぺらい感じに聴こえます。1曲だけなので何とも言えませんが、どうやら私にはこの手の音楽の良さが分からないみたいです。

P18

16.Mono Fontana『Ciruelo』

シカゴの音響派と同じことをやっているとして注目されたアルゼンチンの音響派。ジョー・ザビヌルとエルメット・パスコアールの影響大。多彩なパーカッション。音響的に面白い。

これもあまり”ピン”と来ないです。ジャズが私を引きつけてやまない何かがこの音楽には足りないような? 流れて行ってしまいます。う~む・・・。

P19

ということで終了。

今回かけたのはベストではないということでしたが、色々バラエティーに富んでいて面白く聴けました。インナーゾーン・オーケストラ、ユセフ・ラティーフ、ホレス・タプスコット、ミック・グッドリック、アルタード・ステイツのアルバムは今回初めて聴いて気に入りました。

90年代のジャズ、やっぱりシーンはないようですね。
100枚選ぶとどういうことになってしまうのか?興味津々です。

打ち上げにも参加させていただき、とても楽しかったです。
「いーぐる」の連続講演、毎度色々ためになります。
感謝!!

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「いーぐる」講演「1990年代のジャズを聴く」前編

昨日は ジャズ喫茶「いーぐる」 の連続講演「1990年代のジャズを聴く」に参加してきました。そのレポートです。

せっかく東京へ行くんですから、毎度のことで今回もレコード漁りに行きました。今回一番買いたかったのはケイト・ブッシュの『天使と小悪魔』日本盤LP。

最初は下北沢の「イエロー・ポップ」へ。『天使と小悪魔』はありませんでした。残念。で、他を探していたら、矢野顕子の『峠のわが家』を発見。これは《David》が入っているので探していたのです。そしてもう1枚、プラスチックスの『ウェルカム・プラスチックス』。これは探していたわけではありませんが、YouTubeの動画を見て懐かしく思っていた和製テクノグループ。以上2枚をゲット。

「フラッシュ・ディスク・ランチ」に寄ろうとしたらまだ開店していませんでした。『天使と小悪魔』は吉祥寺の「RARE」あたりにありそうなのですが、時間の関係で新宿へ戻ることに。そっかー、下北のディスクユニオンを覗いてみるべきでしたね。

「ディスクユニオン新宿本館」へ。ここのロックレコード売り場へ初めて入りました。廃盤セールをやってましたが目もくれずお目当てのレコード探し。ここにも『天使と小悪魔』はありませんでした。で、これも探していたボストンの『サード・ステージ』輸入盤とキング・クリムゾンの『太陽と戦慄』日本盤をゲット。

レコード漁りは以上4枚で終了。今回はジャズなし。今はそういう気分なのです。

P15 はいはいっ、「いーぐる」へと向かいましたよ。お店の前でパチリ。久しぶりの「いーぐる」。今回の講演者 com-post の皆さんはほぼお揃いでした。ご挨拶して着席。そこで後藤さんから今回の講演の趣旨を説明していただきました。「90年代ベスト盤」をかけるのではないということでした。

今回の企画「90年代の100枚」は、予備選考の段階でかなりばらけてしまい、1票しか入らなかったものは相当数あるそうです。それを絞るとなると音を聴いてみようということになり、大変な時間がかかってしまうとのこと。それで、今回そういうものをこの場で聴いてみようということになったそうです。なので必ずしも内容がベストというものではないとのことです。

同様のことは講演冒頭、com-post編集長村井康司さんからも説明がありました。ということで早速かかったものを順次紹介していきましょう。各曲をかける前にcom-postのメンバーが選考理由を説明しています。

*私の聞き違いや勘違いがあるかもしれませんし、聴き損ねた部分も多々ありますのでご了承下さい

1.後藤雅洋さんセレクト
Jamaaladeen Tacuma『Gemini-Gemini, the Flavors Of Thelonious Monk』

ジャマラディーン・タクマがサックス奏者ウォルフガング・シュニングと組んだバンドGemini-Geminiのアルバム。モンクの曲を取り上げてクラブミュージックっぽいものをやっています。こんなものもあったという例。店でかけると8割がたのお客さんがジャケットを見に来るそうです。

最初にラップが入っていてブレイクビーツっぽいので、これはジャズ・ヒップホップの部類だと私は思います。そう思って聴くと、私のヒップホップ耳にはビートがいまいちに聴こえてきてしまうのでした。すみません。ジャズ耳では面白く聴けましたよ。(以降緑字は私の感想などです。)

2.柳樂光隆さんセレクト
Innerzone Orchestra『Programmed』

いわゆるテクノ。打込みビートに生演奏を加えたもので名盤と言われています。デトロイトテクノ。色々あるけれど黒人の匂いが強いものを選択。メンバーのカール・クレイグはハービー・ハンコックの『Future 2 Future』にプログラミンで参加しています。このアルバムの「トーキン・ラウド」レーベルはアシッド・ジャズのレーベル。このアルバムはアシッド・ジャズからジャスサイドに向けた最後の回答とも受け取れるとのことでした。アルバム発売は1999年。聴いた後で村井さんは「ドラムが凄い。”無法松の一生”みたい。暴れ太鼓。」と笑っていました。

ジャズではないと思いますが面白いです。ビートが際立った尖がった音。ドラム自体はロックドラムで(買って聴き直したらドラミングもジャズでした)、アコースティック・ベースがジャズっぽさを出して黒さに一役買っているように聴きました。これは是非買って聴いてみたいと思いました。

3.八田真行さんセレクト
Bluesiana Triangle『Bluesiana Triangle』

アート・ブレイキーとドクター・ジョンとデヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンの3人が組んだのでトライアングル。童謡を歌っていて長いので途中でフェードアウトしてほしいとのことだったのですが全曲かかりました。「ブレイキーとか90年代に死んだんだな。」という思いも込めての選曲。聴いた後で村井さんは「ここまで無法松の一生系が3曲続いたね。」と笑っていました。

アフロ・キューバン・リズムで黒くて良い雰囲気でした。ブレイキーはドラム頑張ってましたね。ジャズではないけれどこれもまた良し。

4.林建紀さんセレクト
Jimmy Giuffre『Conversation With a Goose』

ジミー・ジュフリー、ポール・ブレイ、スティーブ・スワローでのトリオ演奏は、60年代、80年代とこの92年の3枚があり、このトリオでのラスト作。前2作と違うのはほとんどジュフリーの曲をやっていること。ジュフリーの静かな狂気。ブレイとスワローは丸くなっています。行っちゃってる爺さん(ジュフリー、72歳)を2人が見守るような演奏。聴いた後で後藤さんから音がなかなか良いとの指摘。

フリー・ジャズ。でもベースとかピアノはバップ的であり聴きやすかったです。確かにジュフリーは凄いでしょう。でも私の耳には聴きなれてしまったというか、ジャズも熟成したんだなという印象でした。

5.原田和典さんセレクト
Cecil Taylor - Elvin Jones - Dewey Redman『Momentum Space』

Verveレーベル。セシルとエルヴィンがやったのが嬉しい。レッドマンがオーネットだったらなお良かったけれど。3人が適当にやっています。家で聴くともっとチャラチャラに聴こえるけれど、ここで聴くといいとのことでした。

これもフリー・ジャズ。さすがの演奏ですね。非常にパワフル。セシルいいですよね。エルヴィンは我が道をゆくいつものドラム。ちょっとバランス的に弱く聴こえました。こういうフリー・ジャズは良いオーディオで大きな音で聴くのが絶対いいです。これを聴いてやっぱりジャズは熟成したんだなと思いました。

6.益子博之さんセレクト
Noel Akchote『Rien』

益子さんは都合が悪くて不参加だったのでレジュメに解説が書いてありました。抜粋します。Akchoteはパリ出身のジャズに留まらない幅広い領域で活動するギタリスト。本作は、コンピューターやターンテーブルとの共演で、記憶や触覚を刺激するサウンドスケープを構築。森山大道のピンぼけ写真を配したインナー・スリーヴには「サウンドトラックというより、これ自体が一つの旅であり、ロード・ムーヴィーである。

益子さんらしいセレクトです。ノイズ/音響系でアバンギャルド。このアルバムは持っています。

7.村井康司さんセレクト
Paul Haines『Darn It!』(プロデュースはKip Hanrahan)

ポール・ヘインズはビートニク(詩人)。カーラ・ブレイの『エスカレーター・オーバー・ザ・ヒル』のテキストを書いています。このアルバムもそれの続編みたいなもの。かける曲はデレク・ベイリーがギターの弾き語りで歌うという変なもの。

確かに変なものです(笑)。こういう世界もありでしょう。

ここまでが1巡目です。

前半のブラック&ビート、中盤のフリージャズ、後半のギター・アバンギャルド。
なるほどー、90年代はこんな感じなのか~。面白いですね。

長くなってしまいますのでここで一旦切ります。
続きはまた明日!

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明日はジャズ喫茶「いーぐる」へ

明日は約6ヵ月半ぶりに ジャズ喫茶「いーぐる」 へ行きます。
明日のイベントは「com-postが選ぶ90年代ベストアルバム」

私、90年代ってジャズを熱心に追いかけて聴いていなかったので、
当時の状況が少しでも俯瞰できればいいと思っています。
私はやっぱり連続性を持ってジャズという音楽を知りたいのです。

90年代は多様化したので全貌は掴めずとも、
com-post のメンバーが聴いていたジャズが分かれば
また解説を聞けば、雰囲気は察せられるのではないかと思います。

私は90年代ジャズを全く知らないかというとそうでもなく、
この本を参考にして当時の状況を掴もうとしたりして来ました。
「ジャズ批評 No.100 90年代のジャズ

P14

ここに200枚の90年代ジャズが掲載されているのですが、
私はまだ1/5くらいしか持っていません。
聴いてみたいと思ったものはチェックしていますが、
全部聴く気にはなれません。
だって私にとっては明らかに面白くなさそうなものが多々ありますから。
90年代ってそういう時代です。

面白い記事があります。

特別激論 90年代のジャズは面白い!
~ベテラン・ファンが語る現代ジャズの魅力~
[寺島靖国&安原顕]

実は私、2000年代に入ってからこの本を買い、
この記事を真に受けてしまったのです(笑)。
今ではちょっと誤ったなと思いますが、これはこれで一側面でした。

今この本をパラパラめくって気が付いたのですが、
こんな記事もありました。

ジャズファンにおくる 90年代ダンス&クラブ・ミュージック総括
~アシッド・ジャズからエレクトロニクス・ジャズまで~
[宅間安次郎]

もう一度読んで頭に入れておこうと思います。
まっ、私、クラブジャズは大して面白いと思わないからな~(笑)。
別に分かる必要性も感じません。キッパリ!

こちらの記事は参考にさせていただきました。

90年代の活性に貢献した欧米の新進ジャズ専門レーベル
[杉田宏樹]

とくにヨーロッパのジャズに興味が湧きました。
杉田さん著「ヨーロッパのJAZZレーベル」も買いました。

そしてこれはなかなか興味深く読みました。

★90年代にジャズファンになった男たちの熱き語らい★
どうして僕らはこんなにジャズが好きなのか
菅井茂 村上浩次郎
 山野井尚也 司会進行:原田和典

この3人、私からすれば話が微妙に噛みあっていません。
そこが90年代なのです。
最早それぞれのジャズのバックグラウンドが少しずれています。
面白いです。

この記事も興味深く読みました。

[ディスカッション]
日本ジャズ界の90年代
[出席]瀬川昌久氏 岩波洋三氏

日本ジャズにも最早シーンはありません。
トピックスはあります。

ということで、明日はジャズ喫茶「いーぐる」へ。

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また山下達郎&おまけ

山下達郎と言えばこの曲を忘れてはいけませんでした。
《ライド・オン・タイム》
やっぱりこの曲が一番好きかも。
このアルバムのタイトル曲ですね。

P13

私が持っているのは数年前にハードオフで買った中古レコード。
これが出た当時はまだ山下達郎に惚れていませんでした。
でも、この曲はあれからず~っと気に入っていました。

ではYouTubeから貼ります。

何度聴いても良い曲です。
達郎さんの歌がまた素晴らしい!
では当時話題になったCMも。

「いい音しか残れない。」
いかしたキャッチコピーですね。
懐かしいオーディオ全盛期。

《ライド・オン・タイム》が主題歌になったあのドラマ、覚えてますか?
「GOOD LUCK!!」ですよ。キムタク主演のドラマ。
キムタクよりは、柴崎コウ、堤真一、黒木瞳、竹中直人、いかりや長介などの
共演陣が良かったです。
最後の方のストーリーは「なんだかな~。」という感じもありましたが、
まあ面白かったです。
柴崎コウには惚れました(笑)。

YouTubeを見ていて面白い動画を見つけたので貼ります。
車を運転しない人にはつまらない動画でしょう。

”音速の貴公子”アイルトン・セナがNSX-Rを運転する車内カメラ。
コーナリング(曲がる)テクニックをとくとご覧あれ。

コーナー(カーブ)手前でヒール・アンド・トーでエンジン回転数を落とさず減速。
基本直進状態で減速します。
ブレーキは残しつつハンドルを切り、車の向きをに変えてコーナーへ侵入。
そこからはアクセルコントロールで曲がります。
コーナーの中ではブレーキは踏まず。
アクセルを軽く数回煽りながら(これが”セナ足”と言われる)、
リア(後輪)を微妙に滑らせて車の向きを変えていきます。
ハンドルはスピンしないようにカウンターステアリングを当てます。
コーナーを出て向きが真っ直ぐになったら一挙にアクセルを踏んで加速。

セナといえどもコーナリングの基本は守っています。
要はそれをいかに高次元でやるかです。
この一連の操作を低速コーナーでも時速70~100kmくらいでやってます。
まあF1ならばもっと速いわけですからセナにとっては余裕でしょう。
普通のドライバーには想像ができないレーシングドライビングの世界。
こんなに自由に車を操れたら気持ちいいだろうな~。

セナ、いいドライバーだったのに・・・
94年のイモラ・サーキット、タンブレロ・コーナー、合掌。

ついでにこれも。
今はこういうのは流行らないけれど当時は多くの若者が憧れました。
ドリキン(ドリフトキング)こと土屋圭一のドラテク講座。

懐かしい。
私も夜な夜な180SX(RS13)で峠を攻めにいきましたが、
車を壊すのが怖くてとうとうドリフトはやりませんでした。根性なし(笑)。
「頭文字D」なんて漫画も流行りました。
その後ドリフト族が社会問題になり取締が強化されフェイドアウト。

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今日は山下達郎です。

最近はオリンピックを見ているのでブログを書くのがめんどうです。
期待されていたけれどメダルを取れない人がいたり、期待通りメダルを取る人がいたり、実力はあったけれどメディアからは無縁だった人がメダルを取って一躍スターになったりと、色々ドラマがあります。ハラハラドキドキ試合を見守るのはなかなか楽しいです。

ジャズのことを書くのもめんどくさいな~。
ということで、山下達郎のアルバムを気楽に紹介しましょう。

P12 『ポケット・ミュージック』。山下達郎のアルバムの中で私はこれが一番好きです。とは言っても山達のアルバムを全部持っているというわけではないので、そこのところはご了承願います。これは長らくの間レンタルCDをカセットテープに録音したものしか持っていませんでした。なので他のJ-POPのアルバム同様ブックオフの中古CDに買いなおしました。

このアルバムには11曲入っているんですが全曲好きです。ここまで曲が気に入るアルバムってほぼないです。このアルバムはそういう意味で私にとっては奇跡的なアルバム。

いくつかYouTubeから貼り付けます。
他に貼り付けたい曲があるんですがYouTubeにはないようなので、頭3曲。

《土曜日の夜》
アルバム冒頭のこの曲が特に好きです。
せつねーメロディーとアップテンポは私にとって最高の組み合わせ。

《ポケット・ミュージック》
ゆったりしたノリと柔らかい感じが素敵です。
ジャジーなフリューゲルホーンのソロが上手く溶け込みます。
何とジョン・ファディス!

《MERMAID》
ゆったりしたグルーヴと爽やかな曲がいいですね。
中盤に出てくるマリンバみたいな”ポコポコ”シンセ音(emulator?)は、ドナルド・フェーゲン『ナイト・フライト』の《ザ・グッドバイ・ルック》にもありますよね。

《メロディー・君の為に》《シャンプー》《風の回廊》とかもかなりお気に入りです。

素敵なアルバムです。とにかく大好き!

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ヒップホップいきま~す!

時々あらわれるヒップホップのアルバム紹介です。
高尚なものばかり聴いていると飽きてきて、ポップなものが聴きたくなります。そんな時、最近はヒップホップを聴く機会が多くなりつつあります。

P11 N.W.A.『ストレイト・アウタ・コンプトン(コンプトンの無法者たち)』です。ギャングスタ・ラップです。私、結構ギャングスタ・ラップが好きになってしまいました(笑)。ポップなサウンドが好きなんですよね。ラップの内容とかよく分からないのが幸せなのかもしれません。

今回も2冊の本から紹介文を転載します。

「文化系のためのヒップホップ入門」では

「《ストレイト・アウタ・コンプトン》、《ファック・ザ・ポリス》、《ギャングスタ・ギャングスタ》とアルバムの冒頭に並ぶ怒涛の3曲によってギャングスタ・ラップはヒップホップの地図にはっきりと刻印された。ギャングの暴力を美化するかのような過激なリリックと重くファンキーなビートは郊外の白人ティーンに熱狂的に支持され、一切のラジオプレイなしに100万枚の売り上げを達成。」

「ブラックミュージック入門」では

「ギャングスタ・ラップ勃興ののろしともなったN.W.A.のファースト。ストリート犯罪をテーマとしたラップは既に同じロサンジェルスで活動していたアイス-Tも取り上げていたテーマだった。しかし、ギャングスタ・ラップが1990年代のヒップホップを代表するほど大きなブームとなったのは、このアルバムの登場によってだった。もともとN.W.A.のギャングスタ・ラップはストリート・ギャングの生態を戯画化したパロディなのだが、ドレーの痛快なサウンドとあいまって、マジなものとして全米で衝撃をもって迎えられていった。」

あとはYouTubeから音を聴いてもらいましょう。

《ストレイト・アウタ・コンプトン》
このサウンド、結局私はドクター・ドレーの音が好きなのです。
重くファンキーなビート、いいなぁ~。
PVにもご注目。マッポがなんだやっちまえみたいな~(笑)。
風景が田舎で長閑なところはNYとイメージが異なりますよね。

《ギャングスタ・ギャングスタ》
サウンドはドレーの『ザ・クロニック』に繋がるものです。
ラップの内容はかなりお下品なようです。ビッチとファック・・・。
これ、日本語で歌われたらとても聴けないかも(笑)?

《パレントル・ディスクレーション・イズ・アドヴァイスド》
これなんかはモロにジャズ/フュージョンです。
ラストにはピアノ・ソロまで出てきます。
ハービー・ハンコック風なのか?ジョー・サンプル風なのか?

《バール》
ヘビーなビートと”ピコピコ”かわいいテクノ音のブレンドが面白い。
ビッチズ・ラバーズ・ディックだって(笑)。
女性蔑視なんですよね~。m(_ _)m

《アイ・エイント・ザ・ワン》
これはポップなので好きです。”カーン”という効果音もいい感じ。
ラップは相変わらずで、お金大好きみたい(笑)。

と、5曲も貼ってしまいました。
アルバムを通して聴くとルーズなようでいて、個々に聴けば色々あって面白いです。

社会に反抗する若者の思いがこういうヒップホップに共感したのでしょう。
80年代、日本で尾崎豊が若者に熱狂的に支持されたのと似ているのではないでしょうか?
ただしそこに描かれている心情(社会情勢)はアメリカと日本ではだいぶ異なります。

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ヴィンセント・ハーリングとエリック・アレキサンダーを観てきました。

昨日は甲府の「COTTONCLUB」でヴィンセント・ハーリングとエリック・アレキサンダーのライブを観てきました。

P9_2

表の看板には”世界最強のフロント2サックス”(笑)。最強だとは思いませんがかなり強力であることは確かです。

今回はドラマー小林陽一の”グッド・フェローズUSA&JAPAN”のアルバム『KIZUNA/絆』発売記念ツアーです。このアルバムのフロントを務めているのがハーリングとアレキサンダーなのです。ピアノは百々徹、ツアーのベースはアルバムメンバーとは違い金森もといが参加していました。昨年の東日本大震災を受けて、日米ジャズマンの絆によって録音されたアルバムです。内容の詳細はAmazonに飛んで見て下さい。

実は4月末「COTTONCLUB」にエリック・アレキサンダーが自己のカルテットを連れて来ていたのですが、うかり観損なってしまったので、今回こそは見逃すまいということで行ってきました。ここのライブはPAがないのでサックスの音がそのまま聴けます。それを是非体験したかったんです。

チケットはかなり高いんですが入りは80%くらい。こういうジャズのファンはそこそこいるということでしょう。まっ、関係者と思われる方も結構来ていたみたいです。

2部構成で各4曲づつ1時間程度のステージ。もちろんアンコールあり。

1部
1.《ネメシス》アルバム『絆』収録のアレキサンダーの曲
2.《シンク・オン・ミー》ジョージ・ケイブルスの《処女航海》に似た8ビートモード曲
3.《マイ・クリスマス・ルーム?》アレキサンダーのバラード曲
4.《絆》小林のアルバム・タイトル曲、テーマは複雑、アドリブはブルース?

2部
1.《ヒアズ・ザット・レイニー・デイ》スタンダードを8ビートアレンジで
2.《イレクション?》ハーリングのアップテンポのバップ曲
3.《ウィーバーズ・ドリーム?》ハーリングのバラード曲
4.《コバズ・デライト》アルバム『絆』収録のハーリングのノリノリな曲

バラード曲はそれぞれアレキサンダー、ハーリングのワン・ホーンで演奏。

*マイクアンプが不明瞭で曲名がよく聞き取れませんでした。

アンコール
《クール・ストラッティン》(だったはず)を速めのテンポで

P10

何の仕掛けもないバップ演奏です。テーマを演奏してアドリブ・ソロを回して、バース交換を入れたり、バラードでは無伴奏でサックスソロからスタートしてカデンツァがあったりという具合。これはこれでジャズの形です。私の目的は2人のサックスの生音を浴びることでしたから演奏形態について特にあれこれ言う気はありません。

まずハーリング、背も高いし太ってるし、大柄な体から想像できるとおり、アルト・サックスの鳴りっぷりは素晴らしいものがありました。多分今まで色々聴いた中で一番良い音で鳴っていました。ドラムの近くに座ったのですが、そんなの全然気にならないくらいです。フレージングはオーソドックスでスケールを主体としたブルージーなもの。魅力はそのドライブ感、乗らすにはいられないものがありました。見た目は人が良いオジサンで(笑)、ジョークを言ったりして終始上機嫌でした。

続いてアレキサンダー、背はかなりたかくスマートでがっちりした体格。ちょっとダークな音で低音から高音までテナー・サックスをしっかり鳴らしていました。鳴りはハーリングにも負けないくらいです。フレージングは独特のアレキサンダー節があります。ハラヒラとスケールを吹くのではなく、展開を考えながらフレーズを作っていき、盛り上がるとフリーキーに近い音もいといません。やっぱりカッコいいものがありますよ。見た目はその童顔もあり好青年。ソロを休んでいる間の行動を見ていたら、この人結構茶目っ気があります(笑)。2部のラストの曲では手拍子を促したり、ドラム・ソロとピアの・ソロでは囃したりと盛り上げに一役かっていました。

2人ともバラード演奏ではスイートな歌心をきちんと聴かせてくれたことは言うまでもありません。1部最初の曲ではハーリンがアドリブに《エアジン》のフレーズを入れ、2部最後の曲ではアレキサンダーがアドリブに《エアジン》のフレーズを入れていたのは故意なのかどうなのか?面白かったです。

百々のピアノはもっとクールなものかと勝手に思い込んでいたのですが、これが意外と熱かったです。ノリノリなバップ曲で2人のホーン奏者の勢いをそがないように盛り上げるソロを展開していました。勢いがありました。2部ラスト曲は途中にサンバビートがあって、そこでのラテンノリなんかはとても楽しませてくれましたよ。一方ケイブルスのモード曲ではリリカルな面もきちんと見せていました。

金森のベースはサポートに徹して演奏のボトムをしっかり支えていました。ベース・ソロは結構アーティスティックです。

最後にリーダー小林のドラミング、これはもう本当にオーソドックスなジャズ・ドラミング。最近聴いている現代ニューヨークの複雑なビートからすると隔世の感がありますが、今回のようなバップ演奏にはこういうドラミングが適しているでしょう。ドライブ感はありましたし、バラードでのブラシも心地よかったです。

小難しいこと抜きでバップを楽しみました。たまにはこういうオーソドックスなジャズを聴くのも良いでしょう。2部のラストでは手拍子も入り会場大盛り上がりでした。2人のサックスの生音を十分堪能できて満足です。やっぱりライブは楽しいですね。でも『KIZUNA/絆』は買いませんでした。ごめんなさい。

ライブの雰囲気を味わいたい方はこのアルバムがあります。

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