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やっぱり今注目すべきはこの人

またしても忘れた頃の新譜紹介です。

P2 ヴィジェイ・アイヤ『アッチェレランド』(2011年rec. ACT)です。メンバーは、ヴィジェイ・アイヤ(p)、ステファン・クランプ(b)、マーカス・ギルモア(ds)です。この人のピアノ・トリオ・アルバムとしては2009年の『ヒストリシティ』以来3年ぶり。チェックしていたんですが買いそびれていました。でもやっぱり聴いておかなくちゃということで購入。

『ヒストリシティ』とこのアルバムの間にはピアノ・ソロと変則的な編成のインド寄りのリーダー・アルバムがありますが、どちらも私としてはあまり好みではなかったので買いませんでした。今回はピアノ・トリオなのでそこは問題なし。でも今回これを聴いて前2作も聴きたくなりました。

『ヒストリシティ』についてはブログにUPしてあります。
ヴィジェイ・アイヤが気になって。

今回もメンバーは同じでやっていることも基本的には変わっていません。選曲についても、前回がレナード・バーンスタイン、M.I.A.、アンドリュー・ヒル、スティービー・ワンダー、ジュリアス・ヘンフィル、ロニー・フォスターの曲とオリジナルの混成でしたが、今回も似たような傾向で、ロッド・テンパートン、マイケル・ジャクソン、ハービー・ニコルズ、フライング・ロータス、ヘンリー・スレッギル、デューク・エリントンを取り上げています。この組合わせ、分かる人には分かる個性的な人達ばかり。

ポップス・スター、ヒップホップ・ミュージシャン、個性的なジャズマンの曲を自分のオリジナルと混ぜて全く違和感なく、何より自分の音楽に再構築して聴かせてしまうところがアイヤの凄さです。”ボーッ”と聴いていると、個性的なアイヤの曲が次々と流れていっているように聴こえます。

畳み掛けるようなピアノは相変わらず。濃厚な味の演奏が続きます。変に難解ではないのがいいですね。ピアノ・トリオの範疇を大きく逸脱するところはありません。それでいてこの人でしかないピアノを弾いています。逸脱すれば個性を出すことはある意味簡単だと思うのですが、そうしないで個性を発揮しているところが肝心。

リズム面では新しい感覚を感じます。ロッド・テンパートンの《ザ・スター・オブ・ザ・ストーリー》とマイケル(作曲はスティーヴ・ポーカロ)の《ヒューマン・ネイチャー》というポップス曲においてそれが顕著なのが面白いです。4連譜の連続で行進曲のようでいてバウンスする感じが微妙に揺らぐリズムの前者と、更にそれを変則的にした感じの後者。ギルモアのドラミングが聴きものです。後者は後半のベースの絡み具合も面白いです。ヒップホップ経由のリズムなのでしょう。

《ヒューマン・ネイチャー》はかなり個性的でいて元曲の魅力もきちんと聴かせます。いい演奏です。こんな風にできるアイヤはやっぱり凄腕ジャズマンなのです。それに続くのはニコルズの《ワイルドフラワー》。4ビートを基調にしつつも古臭さのないリズムです。そして「濃いな~っ」、実に濃厚にジャズしてます。

次はフライング・ロータス(ヒップホップ・プロデューサー)の《MMMHMM》。なかなかいい曲ですよね。面白いのはベースのアプローチ。最初ベースがアルコ(弓弾き)奏法です。連続音なので何となくチューバによるベースっぽく聴こえます。これが実に新鮮な8ビートになっています。ここが次の曲へとつながるポイント。元の曲を大事にしつつ自分の解釈で演奏していて、これがきちんとピアノ・トリオ。さすが!

次の《リトル・ポケット・サイズ・デイモンズ》はいかにもスレッギルらしい曲。これはあの『トゥー・マッチ・シュガー・フォー・ア・ダイム』の1曲目です。スレッギルのグループではチューバのベースでやっていますが、ここでの演奏はベースがアルコも交え、スレッギルの風合いを実に上手く再現しています。この独特なノリのリズムがアイヤにマッチ。《ヒューマン・ネイチャー》からここまでの中盤4曲の展開。私は特に好きです。

その後、アイヤのオリジナルが3曲続き、エリントンの《ザ・ヴィレッジ・オブ・ザ・ヴァージンズ》で落ち着いて重厚に終了。アイヤさん、あなたはジャズというものがよ~く分かっていらっしゃる。降参です(笑)。

現代ジャズファン必聴ピアノ・トリオ!

アルバム名:『accelerando』
メンバー:
Vijey Iyer(p)
Stephan Crump(b)
Marcus Gilmore(ds)

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コメント

随分前に、、変わった感じのピアノだなぁ、、って、思っていたんですが、、
大好きなレーベルに移籍しちゃって、なんだか、トントンとステップあがってます。

がぁ、やっぱり、この幾何学模様的な雰囲気は日本では受けないようで、、
あまり話題になりません。
このアルバムは、ルーツのインドから少し遠ざかって、結構、聴きやすくてはまったんだけどなぁ。。

個人的にはかなり注目しつつ、、人にはお勧めはしないかなぁ。。って、人です。。。
好きですから、悪口聴きたくないんで。(爆)

投稿: Suzuck | 2012年7月21日 (土) 14時59分

Suzuckさま
こんばんは。
トラバありがとうございました。


>大好きなレーベルに移籍しちゃって、なんだか、トントンとステップあがってます。
ACTレーベルはツウなレーベルですよね。
で、こっちに来て確かにレベル・アップしています。


>がぁ、やっぱり、この幾何学模様的な雰囲気は日本では受けないようで、、
>あまり話題になりません。
おっしゃるとおり、独特なピアノは好き嫌い分かれるでしょう。
いいジャズ・ピアノを弾いていると思うんですけどね。


>個人的にはかなり注目しつつ、、人にはお勧めはしないかなぁ。。って、人です。。。
え~っ、どんどんお勧めしましょうよ!鬱陶しいくらい(笑)。


>好きですから、悪口聴きたくないんで。(爆)
う~む、そういう考え方もありますか。

投稿: いっき | 2012年7月21日 (土) 19時32分

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