« ジャケットの赤色が素敵過ぎる。 | トップページ | 知的な中に織り込まれる粗野 »

ジャンル不明だが面白い音

いつものだいぶ遅れた新譜紹介。

P7 アイヴィン・オプスヴィーク『オーバーシーズⅣ』(2011年rec. Loyal Label)です。メンバーは、ケニー・ウォルスン(ds,cymbals,timpani,vib,marching machine)、ジェイコブ・サックス(harpsichord,fwrfisa,org,p)、トニー・マラビー(sax)、ブランドン・シーブルック(el-g,mandolin)、アイヴィン・オプスヴィーク(b)です。現代NYダウンタウンを追いかけている人には分かるコアなメンバーです。

この人も com-post メンバー益子博之さんの新譜特集で知った人です。この人のリーダー・アルバムは『オーバーシーズ』のⅠ~Ⅲまでは全て持っています。今回は前作から3年ぶりの4作目。

前作『オーバーシーズⅢ』についてはブログにUP済み。
この2枚を皆さんに問う?
この記事の2枚目に紹介しているのがそのアルバムです。

今回はギターをメンバー・チェンジしてジェフ・デイヴィスが抜けました。サウンドは前アルバムの延長線上でなかなか説明しにくいのですが、先入観が入ることは承知で、傾向を理解してもらうために敢えてジャンルに分ければ、プログレッシブ・ロックでしょう。現代音楽的な曲もあります。全10曲オプスヴィークが作曲。オプスヴィークのベース演奏よりはサウンドを聴くアルバム。

これはとても面白く刺激的な音楽です。私の場合、もう最近は普通のジャズを聴いてもそれほど刺激がないわけでして、そんな中で刺激を求めて新しい音を探していくと、このアルバムなんかに行き着きます。一方メセニーの『ユニティ・バンド』はメセニーらしくて良いとは思いますが、アルバム紹介でも書いたとおり想定内で安心して聴いていられる1枚。このアルバムとは求めるものが違います。

頭の《ゼイ・ウィル・ヒア・ザ・ドラムス-アンド・ゼイ・ウィル・アンサー》は、ティンパニーのゆったりした連打から入り、ハープシコードとテナーとベース弓弾きがからんでくると、もうこれは現代音楽の響き。ただしテナーはクラシックにはない濁りの成分があり、ここでジャズやプログレが想起します。曲想は葬送行進曲?

続く《ホワイト・アムール》は8ビートでハープシコードと薄く入るロックなギターから言ってプログレでしょう。テナーは連続音を中心に出すだけ、映画のサウンドトラックのようでもあり不思議な感じに浸っているとすぐに終わってしまう短めの曲です。深く沈み込むドラムは他でも聴けますがかなり気持ち良いです。

3曲目《1786》は、現代音楽風なゆっくりした出だしから徐々に盛り上がり、単調な8ビート(ブレイクビーツ的)にのってマラビーの濁った音のテナー(グロール?)が怒涛のソロを繰り広げる圧巻な展開。サックス奏者と言えば、クリス・ポッターが最近話題ですが、このトニー・マラビーを忘れてもらっては困ります。とは言っても知名度はかなり落ちますね(涙)。これを聴くだけでもこのアルバムを聴く価値あり。カッコいいなぁ~。タイトルの”1786”って何か意味がある年なんでしょうか?

その後も現代音楽風とプログレ風のものが、スローで落ち着いたものからアップテンポのロッケンローなものまで、そして今回は結構キャッチーな曲も、この人達にしか出せない音が次々と出ては消えていきます。こういう個性的で癖がある音楽、私は好きです。

4ビートでアドリブを回して黒いのがジャズとする人達には届かない音だと思います。別に届く必要はないとも思います。もうこういう音は分かる人にしか分からないのです。

私としてはかなり推薦盤。

アルバム名:『OverseasⅣ』
メンバー:
Kenny Wollesen(drums,cymbals,timpani,vibraphone,marching machine)
Jacob Sucks(harpsichord,farfisa organ,piano)
Tony Malaby(saxophone)
Brandon Seabrook(electric guitar,mandolin)
Eivind Opsvik(bass)

最初Amazonのやつは高かったので、私は他とカップリングで送料無料にしてディスクユニオンで買ったのですが、最近の円高のおかげか?Amazonはすっかり安くなってます。

|

« ジャケットの赤色が素敵過ぎる。 | トップページ | 知的な中に織り込まれる粗野 »

ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

最近の日本版アマゾンって安くなりましたよね。自分は今までは本家のアマゾンで8割方買っていたんですが、最近は6対4くらいの比率になってきていると思います。

あと私はトニー・マラビー周辺は今までほとんど聴いてなかったのですが(お恥ずかしい;)、今後軸足がそちらのほうに移っていきそうです。
いっきさんや益子さんの記事を参考に徐々に揃えて、秋~冬くらいに「現代NYアヴァン/オルタナ強化月間」をもうけようかなと画策中です笑

投稿: とっぽぎー | 2012年8月 4日 (土) 01時13分

とっぽぎーさん
こんにちは。
>最近の日本版アマゾンって安くなりましたよね。
円高のおかげでしょう。
>最近は6対4くらいの比率になってきていると思います。
そうなんですか。
アメリカのほうがもっと安いんですね。
最近は入手するのに時間はかかるけれど、より安い場合はマーケットプレイスの方を利用します。
>あと私はトニー・マラビー周辺は今までほとんど聴いてなかったのですが
この周辺、なかなか面白いことをやってます。
>秋~冬くらいに「現代NYアヴァン/オルタナ強化月間」をもうけようかなと画策中です笑
是非強化してください(笑)。

投稿: いっき | 2012年8月 4日 (土) 12時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジャンル不明だが面白い音:

« ジャケットの赤色が素敵過ぎる。 | トップページ | 知的な中に織り込まれる粗野 »