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現代先端ニューヨークの音

私のお得意、買いそびれていた1枚を紹介します。昨年発売のアルバムで気にはなっていたのですすがそのままでした。最近ウェブ・マガジン 「com-post」 に書かれていた益子博之さんのトム・ハレル新譜のクロス・レビューを読んでいるうちに、「これも聴かなきゃ」という気持ちになりました。

P195 タイション・ソーリー『オブリークⅠ』(2011年rec. PI RECORDING)です。メンバーは、タイション・ソーリー(ds 4除く)、ロレン・スティルマン(as)、トッド・ニューフェルド(el-g 1,3,5,6,8-10,ac-g 7)、ジョン・エスクリート(p 1,2,5,6,9,fender rhodes 8,10,wurlitzer piano 3)、クリス・トルディーニ(b 4除く)です。このアルバムは「ジャズ批評」2012年3月号の「マイ・ベスト・ジャズ・アルバム2011」の中で益子さんが上げていた1枚。

一時期は ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われていた益子さんの「ニューヨークダウンタウンを中心とした新譜特集」に何度も足を運び、この手のアルバムを積極的にフォローしていたのです。その後徐々に軌道修正しつつ去年はストレート・アヘッド系で大物を中心にフォローするようにしました。そのせいでこのアルバムなんかは買いそびれてしまったというわけ。

益子さんの企画は 綜合藝術茶房 喫茶茶会記 に場所を移し、NYダウンタウンを中心としたジャズの新譜を聴く会「益子博之=多田雅範 四谷音盤茶会」として今も続いているとのことです。私も都合が合えば一度行ってみたいと思っています。

このアルバムの話に戻ります。現代要注目ドラマー、タイション・ソーリーのリーダーアルバムで全曲ソーリーが作曲しています。冒頭の曲のようなフリージャズと、アドリブよりは音の佇まいを聴かせるような、マイルス《ネフェルティティ》の現代版みたいなものが入っています。1曲だけはアルト・サックスの無伴奏ソロで現代音楽的な響き。この人達らしい現代NYサウンドです。

この手のジャズは内省的で根暗な感じがつきまとうものがあり、私なんかはたくさん聴くと辛いものがあったりするのですが、本作はそういう感じよりはダウナーな感じです。聴いているうちに心が落ち着く感じとでもいいましょうか。そんな中に数曲アッパーな曲もあり、私はやっぱりこういう方が好きです(笑)。これはもう個人的な好みの問題。

曲想は落としどころがない浮遊するメロディーと複雑な変拍子が特徴。上記のような特徴と合わせ、聴く方はあまり身構えずに音をそのまま受け入れれば、気持ち良さが分かってくるのではないかと思います。曲によってギターが抜けたりピアノが抜けたり、ピアノとエレピを弾き分けていたり、全体的にはダウナーですがアッパーなものもあり、曲の流れもそれぞれ違うなど、飽きさせない工夫があります。

ソーリーのドラミングは複雑なリズムを浮つかずにグルーヴさせるあたりに相当な実力を感じます。アッパーな曲では力強く叩き流れの中で爆発力も見せてくれて迫力があります。今回私が特に関心したのはスティルマンのアルト・サックス。とても抜けの良い音で浮遊するメロディーを落ち着いて説得力を持って吹いているからです。今まであまり気に留めて来なかったのですがスティルマンはかなり良い。このアルバムの肝であることは間違いありません。

エスクリートのピアノとエレピは現代NYらしい知的なサウンド。それでもアッパーな曲ではなかなかのキレとガッツを見せてくれます。今回初聴きのニューフェルドのギターは現代的な浮遊系で音響系フリーも得意そうです。特に個性的とは感じませんが、フリー系の曲で唸りながらアコースティック・ギターのソロを展開するあたりに曲者を感じます。ベースのトルディーニも今回初聴き、複雑なドラミングに力強く適度な距離感で絡み付いています。

このサウンドはM-BASEから派生したものだと私はと思いますが、現代的な響きと感触を取り入れ、難解になり過ぎないアブストラクトなサウンドは、リスナーの感性をリフレッシュしてくれるという意味で新鮮です。

分かりやすいストレート・アヘッドなものも良いのですが、そういう中にこういうのも混ぜて聴くと音楽ライフがまた豊かになるのではないでしょうか?

アルバム名:『obliqeⅠ』
メンバー:
Tyshawn Sorey(ds)
Loren Stillman(as)
Todd Neufeld(el-g,ac-g)
John Escreet(p,elp)
Chris Tordini(b)

これを聴いて慌てて昨年出たトニー・マラビーの『Novela』を注文しました。
マラビーもフォローしている人です。

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コメント

いっきさん

ご紹介いただき、ありがとうございます。
僕はNY滞在中だったので行けませんでしたが、トッド・ヌーフェルドは先日の菊地雅章TPTトリオ@ブルーノート東京でも評判良かったみたいですね。

投稿: 益子博之 | 2012年7月 8日 (日) 20時35分

益子さん
こんばんは。
>ご紹介いただき、ありがとうございます。
いえいえどういたしまして。
>トッド・ヌーフェルドは先日の菊地雅章TPTトリオ@ブルーノート東京でも評判良かったみたいですね。
八田さんのライブレビューにも書いてありましたね。
この辺の人脈でジャズが面白くなっていけば良いと思います。

投稿: いっき | 2012年7月 8日 (日) 21時07分

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