« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »

2012年7月

知的な中に織り込まれる粗野

今日もニューヨーク・ダウンタウンのジャズです。

P8 『トニー・マラビーズ・ノヴェラ アレンジメンツ・バイ・クリス・デイヴィス』(2011年rec. clean feed)です。メンバーは、トニー・マラビー(ts,ss)、マイケル・アティアス(as)、ヨアヒム・バデンホルスト(b-cl)、アンドリュー・ハドロ(bs)、ラルフ・アレッシ(tp)、ベン・ガースティン(tb)、ダン・ペック(tuba)、クリス・デイヴィス(p,conductor)、ジョン・ホレンベック(ds,per)です。このアルバムは昨年出て、チェックをしていたのに買いそびれていた1枚。

com-post の益子博之さんの最近の記事を読んで、これも聴いておかなければならないということで購入しました。「ジャズ批評」2012年3月号の「マイ・ベスト・ジャズ・アルバム2011」で益子さんが推薦していた1枚でもあります。

トニー・マラビーは独特な音響的吹奏や爆発的な即興が魅力のサックス奏者です。私は益子さんの特集で聴いてからフォローするようになりました。私の中では注目サックス奏者と言えば、クリス・ポッターかトニー・マラビーかというくらいです。クリポタの知名度が上がりつつある今日この頃、マラビーの知名度も上がってほしいと願うところではありますが、まあ無理でしょうね(笑)。

フリー・ジャズの人なので、フリー・ジャズの根強いファンにはその実力を知られているはすです。この辺りのジャズは面白いんですけれど、なかなか知名度が上がりません。私はめげずに紹介していきます。

トニー・マラビー参加のこのアルバムなんかも面白いです。
とても音楽的なフリー・サックス・トリオ

本アルバムはホーン奏者7人+ピアノ&ドラムという面白い編成です。メンバーの中で私が知っているのはマイケル・アティアス、ラルフ・アレッシ、クリス・デイヴィス、ジョン・ホレンベック、ニューヨーク・ダウンタウンを聴いている人は注目している人達です。

ドラマーのジョン・ホレンベックはクローディア・クインテットというグループ(このグループのアルバムについてはブログで何度か紹介済み)やラージ・アンサンブルというビッグバンドを率いている鬼才ドラマー。クリス・デイヴィスはマラビーとつるんで色々やっている女性ピアニスト。今回はマラビーの曲をアレンジしてその才能を見せてくれます。

全体を通して聴くと現代音楽的な部分がある知的なサウンドということになると思います。ホーンのアンサンブルの多彩で繊細なアレンジは聴きものです。面白いのはその中に織り込まれている粗野な部分。ホーンが知的なアンサンブルを聴かせていたかと思うと粗野な(と言っても適度ではありますが)ホーンのフリーな掛け合いが出てきたりして、演奏に躍動感をもたらしています。

なかなか凝った楽曲と凝ったアレンジというと何か静的なイメージになると思うのですが、中にフリーなホーンの掛け合いを混ぜたり、マラビーを始めとするホーン陣のダイナミックなソロをフィーチャすることにより各所に動的な展開が現れ、知的でありながらパワーもあります。それから知的な部分と粗野な部分がばらばらにならずとても上手くブレンドしているところが良いです。

トニー・マラビー、色々面白いことやってますよ。
ジャズもまだまだ面白いです。

アルバム名:『Tony Malaby's Novela Arrangement By Kris Davis』
メンバー:
Tony Malaby(ss, ts)
Michaël Attias(As)
Joachim Badenhorst(b-cl)
Andrew Hadro(bs)
Ralph Alessi(tp)
Ben Gerstein(tb)
Dan Peck(tuba)
Kris Davis(p, conductor)
John Hollenbeck(ds, per)

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

ジャンル不明だが面白い音

いつものだいぶ遅れた新譜紹介。

P7 アイヴィン・オプスヴィーク『オーバーシーズⅣ』(2011年rec. Loyal Label)です。メンバーは、ケニー・ウォルスン(ds,cymbals,timpani,vib,marching machine)、ジェイコブ・サックス(harpsichord,fwrfisa,org,p)、トニー・マラビー(sax)、ブランドン・シーブルック(el-g,mandolin)、アイヴィン・オプスヴィーク(b)です。現代NYダウンタウンを追いかけている人には分かるコアなメンバーです。

この人も com-post メンバー益子博之さんの新譜特集で知った人です。この人のリーダー・アルバムは『オーバーシーズ』のⅠ~Ⅲまでは全て持っています。今回は前作から3年ぶりの4作目。

前作『オーバーシーズⅢ』についてはブログにUP済み。
この2枚を皆さんに問う?
この記事の2枚目に紹介しているのがそのアルバムです。

今回はギターをメンバー・チェンジしてジェフ・デイヴィスが抜けました。サウンドは前アルバムの延長線上でなかなか説明しにくいのですが、先入観が入ることは承知で、傾向を理解してもらうために敢えてジャンルに分ければ、プログレッシブ・ロックでしょう。現代音楽的な曲もあります。全10曲オプスヴィークが作曲。オプスヴィークのベース演奏よりはサウンドを聴くアルバム。

これはとても面白く刺激的な音楽です。私の場合、もう最近は普通のジャズを聴いてもそれほど刺激がないわけでして、そんな中で刺激を求めて新しい音を探していくと、このアルバムなんかに行き着きます。一方メセニーの『ユニティ・バンド』はメセニーらしくて良いとは思いますが、アルバム紹介でも書いたとおり想定内で安心して聴いていられる1枚。このアルバムとは求めるものが違います。

頭の《ゼイ・ウィル・ヒア・ザ・ドラムス-アンド・ゼイ・ウィル・アンサー》は、ティンパニーのゆったりした連打から入り、ハープシコードとテナーとベース弓弾きがからんでくると、もうこれは現代音楽の響き。ただしテナーはクラシックにはない濁りの成分があり、ここでジャズやプログレが想起します。曲想は葬送行進曲?

続く《ホワイト・アムール》は8ビートでハープシコードと薄く入るロックなギターから言ってプログレでしょう。テナーは連続音を中心に出すだけ、映画のサウンドトラックのようでもあり不思議な感じに浸っているとすぐに終わってしまう短めの曲です。深く沈み込むドラムは他でも聴けますがかなり気持ち良いです。

3曲目《1786》は、現代音楽風なゆっくりした出だしから徐々に盛り上がり、単調な8ビート(ブレイクビーツ的)にのってマラビーの濁った音のテナー(グロール?)が怒涛のソロを繰り広げる圧巻な展開。サックス奏者と言えば、クリス・ポッターが最近話題ですが、このトニー・マラビーを忘れてもらっては困ります。とは言っても知名度はかなり落ちますね(涙)。これを聴くだけでもこのアルバムを聴く価値あり。カッコいいなぁ~。タイトルの”1786”って何か意味がある年なんでしょうか?

その後も現代音楽風とプログレ風のものが、スローで落ち着いたものからアップテンポのロッケンローなものまで、そして今回は結構キャッチーな曲も、この人達にしか出せない音が次々と出ては消えていきます。こういう個性的で癖がある音楽、私は好きです。

4ビートでアドリブを回して黒いのがジャズとする人達には届かない音だと思います。別に届く必要はないとも思います。もうこういう音は分かる人にしか分からないのです。

私としてはかなり推薦盤。

アルバム名:『OverseasⅣ』
メンバー:
Kenny Wollesen(drums,cymbals,timpani,vibraphone,marching machine)
Jacob Sucks(harpsichord,farfisa organ,piano)
Tony Malaby(saxophone)
Brandon Seabrook(electric guitar,mandolin)
Eivind Opsvik(bass)

最初Amazonのやつは高かったので、私は他とカップリングで送料無料にしてディスクユニオンで買ったのですが、最近の円高のおかげか?Amazonはすっかり安くなってます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

ジャケットの赤色が素敵過ぎる。

今日はちょっと変わったアルバムの紹介です。まずはジャケット写真から。私はこの赤色というかワインレッドというか、深みのある赤色が凄く気に入っています。素敵な色ですよね。さすがはWINTER & WINTERレーベルです。こんな素敵なジャケットが作れるレーベルは他にないと思います。

P6

テオ・ブレックマン『ハロー・アース! ザ・ミュージック・オブ・ケイト・ブッシュ』(2011年rec. WINTER & WINTER)です。メンバーは、テオ・ブレックマン(vo,live electronic,voice processing,glockenspiel,toy piano,caxixix)、ヘンリー・ヘイ(p,prepared harpsichord,fender rhodes piano)、カリブ・バーハンス?(electric five string violin,el-g)、スクリ・スベリソン(el-b)、ジョン・ホレンベック(ds,per,crotales)です。

これを購入するきっかけは、com-post メンバー益子博之さんが開催しているNYダウンタウンを中心としたジャスの新譜を聴く会「益子博之=多田雅範 四谷音楽茶会」の選曲リストに掲載されていたからです。私は数年前の益子さんの特集でボイス・パフォーマーのブレックマンを知り、結構気に入っていました。

この人が入った面白いグループについてはかなり以前にUP: これってジャズ?

本アルバムのもう一つの興味はケイト・ブッシュの曲をやっているところです。ケイト・ブッシュと言えば、昨年末 ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われた「年末ベスト盤大会」で、真保みゆきさんがケイト・ブッシュの『50 Words for Snow』をかけました。それから真保さんと言えば、例のミュージックマガジンの記事で菊地成孔さんが怒ったという(笑)。

私はケイト・ブッシュという名前はもちろん知っていますが、実は曲をあまり聴いたことがありませんでした。なので今回このアルバムをどれほど理解できているのかは微妙なところ。通して聴くと曲そのものに独特な匂いを感じたりはします。奥にある憂いのようなものはケイト・ブッシュらしいのかもしれませんし、湿度感高めなのはイギリスらしいのかもしれません?

このアルバムの主役はフワリと優しいブレックマンのボーカル。あまり癖はないのですが独特な風味は醸し出されています。メンバー各人が色々な楽器を使い分け、アレンジも凝っているので、5人でやっているとは思えない多彩なサウンドが展開しています。繊細なニュアンスを大事にしつつアクティブな感じも失わない深みのある音楽がここにあります。

現代NYジャズマンのジャズでないけれどジャズの匂いを秘めた音楽です。
ヒットチャートに縁はないでしょうけれど上質な音楽です。
興味を持たれた方は是非!

アルバム名:『HELLO EARTH ! The music of Kate Bush』
メンバー:
Theo Bleckmann(vo, live electronics, voice processing, toy piano, eaxixi)
Henry Hey(p, prepared harpsichord, fender rhodes piano)
Caleb Burhans(electric five string violin, el-g)
Skuli Sverrison(el-b)
John Hollenbeck(ds, per, crotales)

話は変わりまして、ケイト・ブッシュを検索したら面白いことを見かけました。

そのサイトにはケイト・ブッシュのアルバムとちょっとしたコメントが書いてあるのですが、そのコメントの中にこんなことが書いてあります。1978年の来日時の思い出とのことで、
”何だかすげー顔して体操しながら唄ってる。”
と。”体操しながら唄う” この一言に私は吸い寄せられました(笑)。「なんじゃそりゃっ?」と興味津々。ありがたいですねYouTube。その模様がちゃんとUPされているんです。これです。今のところ最初で最後の来日とのこと。

なるほど。確かに変な振り付けで歌ってます。インパクトあります。20歳には見えない(笑)。私、これを見ていてケイト・ブッシュが好きになりました! ”独特な際立つ個性”は私がジャズに求めているものの一つです。パッと見奇抜だけれど表現に対する真摯な姿勢故なのだろうと感じられます。

この頃は音響的に優秀な小型マイクなんてないですから、首から普通のワイヤレスマイクを吊るして花飾りでカムフラージュしてます。面白い。

次は番組のテーマ曲としてさわりの部分しか聴いたことがありませんでした。このPVを見ると表現者としてのケイト・ブッシュに強く惹かれます。それになかなかいい曲ですよね。当時の私はABBAが好きな中坊でしたのでこの良さは分かりませんでした。赤色のドレスがいいですね。今日は赤色で始まり赤色で終わります。

この曲が入っているデビュー・アルバム『天使と小悪魔』のレコードが猛烈にほしくなってきました(笑)。CDじゃなくてLPレコード。今度中古レコードを買いたいと思います。

| | コメント (4) | トラックバック (0)
|

時にはこんなものもアリ。

数年前のアルバムですが聴いてみたくなりました。

P5 ジョエル・ハリソン『ハリソン・オン・ハリソン』(2005年、HIGHNOTE)です。メンバーは、ジョエル・ハリソン(el-g,national steel-g,fretless-g,vo)、デイブ・リーブマン(ss,ts,wood flute)、デヴィッド・ビニー(as)、ユリ・ケイン(p,fender rhodes)、ステファン・クランプ(b)、ダン・ワイス(ds)、トッド・イスラー(per)、ゲスト:ゲイリー・ヴァセーシ(p)、ロブ・バーガー(B3 organ)、ジェン・チェイピン(vo)です。

ハリソンの今年の新譜『サーチ』を聴いて、この人のアルバムをもっと聴きたくなって買った1枚。『サーチ』については⇒こういうのも悪くありません。

このアルバムはジョージ・ハリソンの曲をやっているということに興味がありました。と言いながら、私が知っているジョージの曲と言えば《マイ・スウィート・ロード》くらい。中学1年生くらいの時にAMラジオ放送から流れてきたこの曲をラジカセで録音して好きになりました。良い曲ですよね。当時ラジオには素敵な洋楽がたくさん流れていました。

このアルバムのもう一つの興味はデイブ・リーブマンの参加。ちょっとジャズから離れたこのアルバムでどんな活躍をしているのか気になったのです。やっぱりリーブマンもアメリカ人ですね。ジャジーにアドリブをガンガンやる一方で、ジョー・ロバーノのようにアメリカンソングをテナーで歌うところもあり、リーブマンのサックスが上手く生きています。

ともするとゴリ押しサックスを奏でるリーブマンですが(それはそれでまた楽しい)、ここでは程よくリラックスした演奏が聴けます。《タックスマン》ではロックンロール・アレンジに乗ってビニーとのサックス・バトルを繰り広げますが、リーブマンはどこか楽しげ。ジョージの曲に交じって《マイ・ファーザーズ・ハウス》だけはジョエルの曲。ゆったりしたバラードでリーブマンの大らかなテナーがいい味出してます。続くジョエルのフレットレス・ギターも伸びやか。

《ウィズイン・ユ-・ウィスアウト・ユー》のみリーブマンがアレンジを担当していて、これがインド風エスニックかつスピリチュアルな匂い漂うものになっているところが面白い。イントロの部分はなんとなく《イン・ア・サイレント・ウェイ》にも聴こえて、リーブマンの立ち位置が見えてくるというものです。ジョージのカントリー曲と牧歌的なサウンドが上手く合っていますね。そんな中でリーブマンらしいうねるソプラノ・サックスが生えます。

ジョエルはギター演奏よりはアレンジと曲の雰囲気を出す方に力を注いでいます。カントリー調、ロック調、フュージョン調、歌入りなど色々あり、ギターもエレキ、スティール、フレットレスの各ギターを使い分け、単調なサウンドになるのを避けています。3曲では歌も披露。歌はなかなか良い雰囲気です。私のお目当て《マイ・スウィート・ロード》はスティール・ギターとベースとパーカッションのみでジョエルが歌う素朴なカントリーに仕上がっていました。《オール・シングス・マスト・パス》のみ女性ボーカルをフィーチャ。

各メンバーはジョエルのアレンジを過不足なく演奏。腕がある人達ですから当然です。このアルバムで各メンバーを個々に語ってもしょうがないと思います。一言触れるならケインがピアノをしっかり聴かせてくれているところに好感が持てました。

このアルバム、私は気に入りました。
休日の午後、これをB.G.M.にして読書でもすれば大人お洒落かも?

アルバム名:『Harrison on Harison』
メンバー:
JOEL HARRISON(el-g, national steel-g, fretless-g, vo)
DAVE LIEBMAN(ss, ts, wood-fl)
DAVID BINNEY(as)
URI CAINE(p, rhodes)
STEPHAN CRUMP(b)
DAN WEISS(ds)
TODD ISLER(perc)
Guest:
GARY VERSACE(p)
ROB BURGER(B3 org)
JEN CHAPIN(vo)

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

レコード+CDマップ'12~'13

今日「レコード+CDマップ'12~'13」を本屋さんで買ってきました。

P4
これが最後とツイッターに書いてあったので、
とうとうこれで見納めかと感慨に浸っていたのですが・・・。

過去を総括する記事はあるもののどうも感じが違うような。
編集後記らしきものもないし、お知らせには「スタッフ/協力者募集」ってあります?
判明しました。
今後”電子書籍”化するとのことです。
なんだ、紙の媒体としてはサヨナラだったのか。

レコードに関する書籍が電子化しちゃうとはこれもご時世。
この本を読のは40~50代が多いらしいので、電子化しても大丈夫でしょう。

さて、巻頭の記事は順次読むとして、

渋谷のレコード屋さんは数年前から比べかなり減りましたね。
池袋と吉祥寺は減少傾向。
中央線沿線では高円寺が頑張っています。
下北は若干入替がありますが総数は何とか。
唯一新宿のみは相変わらずたくさんあります。
神保町・お茶の水も気を吐いています。
全体として減少傾向ではありますがまだまだ頑張ってます!

渋谷のイエロー・ポップが閉店したと聞いてビックリしたのですが、
そこにFace Recordsが移転してました。

私も最近は東京へレコードハントに行くのはめっきり減りました。
でも上京すればレコード屋には必ず生きます。
レコード蒐集はやめられません。
この本を読むとレコード屋さんへ行きたくなります。
ウズウズしてきました(笑)。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

ヘンリー・スレッギルのアルバムについて

昨日の記事の中でヘンリー・スレッギルの『トゥー・マッチ・シュガー・フォー・ア・ダイム』について触れたので、このアルバムの内容について紹介します。

4年前にUPしていますので参照願います。
モブレイ特集他
”他”の部分に相当するのが上記のアルバム紹介です。

来月11日に ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われる”com-postが選ぶ「90年代名盤」”で後藤さんがこのアルバムを選曲するのではないかと、密かに期待しています。

P3_2 

その時このジャケットになっているアート作品の話も出るのではないかと思います。

このアルバムのライナーノーツは青木和富さんが書いています。80年代からフリー系やアバンギャルドなものを積極的に紹介してきた数少ない評論家で、私は信頼していました。今も評論活動をされているようですが、あまり話題には上りませんね。

さて、そのライナーノーツの冒頭にこんなことが書かれています。長いですがそのまま引用します。90年代から日本のジャズ・ジャーナリズムはダメだったということの証しかも?(笑)

 ジャズ・ミュージシャンの評価は、海外と日本と違って当然だと思うが、しかし、それが国民性とか文化の違いによって引き起こされるのではなく、ほとんと理由にならない理由、つまり、これまで「不運」にも日本に紹介されたことなく、ほんの一部の人々しか耳にされずに、無視されつづけている重要なミュージシャンがいるとしたら、それは早急に改善されてしかるべきだろう。
 おそらくこのアルバムの主人公ヘンリー・スレッギルは、その代表といっていい。日本ではまったく話題にのぼらないミュージシャンだが、しかし、海外の評価、たとえば『ダウン・ビート』誌の人気投票などを見れば分かることだが、スレッギルは、常にいい位置を保っている。しかも、『ヴィレッジ・ヴォイス』誌の評論家投票でこの『トゥ・マッチ・シュガー・フォー・ア・ダイム』は1993年ベスト・アルバムの2位にランクされているのだが、日本ではこれまで一枚のCDも出されたことがない。つまり、海外では現代のジャズの重要なミュージシャンの一人として受け止められているが、日本では、今やその名前さえ知らないファンが多数いる。この落差は、まったく驚くべきことというしかない。

今やこういう事態は”全く驚くべきことではない”になってしまったんですから、もう笑うしかありませんよね。あれから19年、変化していないのか悪化しているのか?

ライナーノーツの最後はこんな文章で閉めています。

 この7人のユニークな音楽編成によるバンド、ベリー・ベリー・サーカスは、数年前結成され、これはブラック・セイント、テイラー・メイド盤に続く第3弾にあたるわけだが、私たちは、こういうバンドこそ、日本で生で接するべきではないだろうか。この音楽は、今ジャズが必要とするパワーを確実に持っているからである。

なるほどね。”ジャズが必要とするパワー”、私は現代それをヴィジェイ・アイヤやルドレシュ・マハンサッパらの一派に感じます。彼ら、あちらの評論家にはきちんと評価されています。

上記の事項、面白いと捉えるのか、笑えないと捉えるのか、あなたはどちら?

このアルバムの1曲目《リトル・ポケット・サイズ・デイモンズ》がYouTubeにありましたので貼り付けます。どうですパワフルで超カッコイイではありませんか。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

やっぱり今注目すべきはこの人

またしても忘れた頃の新譜紹介です。

P2 ヴィジェイ・アイヤ『アッチェレランド』(2011年rec. ACT)です。メンバーは、ヴィジェイ・アイヤ(p)、ステファン・クランプ(b)、マーカス・ギルモア(ds)です。この人のピアノ・トリオ・アルバムとしては2009年の『ヒストリシティ』以来3年ぶり。チェックしていたんですが買いそびれていました。でもやっぱり聴いておかなくちゃということで購入。

『ヒストリシティ』とこのアルバムの間にはピアノ・ソロと変則的な編成のインド寄りのリーダー・アルバムがありますが、どちらも私としてはあまり好みではなかったので買いませんでした。今回はピアノ・トリオなのでそこは問題なし。でも今回これを聴いて前2作も聴きたくなりました。

『ヒストリシティ』についてはブログにUPしてあります。
ヴィジェイ・アイヤが気になって。

今回もメンバーは同じでやっていることも基本的には変わっていません。選曲についても、前回がレナード・バーンスタイン、M.I.A.、アンドリュー・ヒル、スティービー・ワンダー、ジュリアス・ヘンフィル、ロニー・フォスターの曲とオリジナルの混成でしたが、今回も似たような傾向で、ロッド・テンパートン、マイケル・ジャクソン、ハービー・ニコルズ、フライング・ロータス、ヘンリー・スレッギル、デューク・エリントンを取り上げています。この組合わせ、分かる人には分かる個性的な人達ばかり。

ポップス・スター、ヒップホップ・ミュージシャン、個性的なジャズマンの曲を自分のオリジナルと混ぜて全く違和感なく、何より自分の音楽に再構築して聴かせてしまうところがアイヤの凄さです。”ボーッ”と聴いていると、個性的なアイヤの曲が次々と流れていっているように聴こえます。

畳み掛けるようなピアノは相変わらず。濃厚な味の演奏が続きます。変に難解ではないのがいいですね。ピアノ・トリオの範疇を大きく逸脱するところはありません。それでいてこの人でしかないピアノを弾いています。逸脱すれば個性を出すことはある意味簡単だと思うのですが、そうしないで個性を発揮しているところが肝心。

リズム面では新しい感覚を感じます。ロッド・テンパートンの《ザ・スター・オブ・ザ・ストーリー》とマイケル(作曲はスティーヴ・ポーカロ)の《ヒューマン・ネイチャー》というポップス曲においてそれが顕著なのが面白いです。4連譜の連続で行進曲のようでいてバウンスする感じが微妙に揺らぐリズムの前者と、更にそれを変則的にした感じの後者。ギルモアのドラミングが聴きものです。後者は後半のベースの絡み具合も面白いです。ヒップホップ経由のリズムなのでしょう。

《ヒューマン・ネイチャー》はかなり個性的でいて元曲の魅力もきちんと聴かせます。いい演奏です。こんな風にできるアイヤはやっぱり凄腕ジャズマンなのです。それに続くのはニコルズの《ワイルドフラワー》。4ビートを基調にしつつも古臭さのないリズムです。そして「濃いな~っ」、実に濃厚にジャズしてます。

次はフライング・ロータス(ヒップホップ・プロデューサー)の《MMMHMM》。なかなかいい曲ですよね。面白いのはベースのアプローチ。最初ベースがアルコ(弓弾き)奏法です。連続音なので何となくチューバによるベースっぽく聴こえます。これが実に新鮮な8ビートになっています。ここが次の曲へとつながるポイント。元の曲を大事にしつつ自分の解釈で演奏していて、これがきちんとピアノ・トリオ。さすが!

次の《リトル・ポケット・サイズ・デイモンズ》はいかにもスレッギルらしい曲。これはあの『トゥー・マッチ・シュガー・フォー・ア・ダイム』の1曲目です。スレッギルのグループではチューバのベースでやっていますが、ここでの演奏はベースがアルコも交え、スレッギルの風合いを実に上手く再現しています。この独特なノリのリズムがアイヤにマッチ。《ヒューマン・ネイチャー》からここまでの中盤4曲の展開。私は特に好きです。

その後、アイヤのオリジナルが3曲続き、エリントンの《ザ・ヴィレッジ・オブ・ザ・ヴァージンズ》で落ち着いて重厚に終了。アイヤさん、あなたはジャズというものがよ~く分かっていらっしゃる。降参です(笑)。

現代ジャズファン必聴ピアノ・トリオ!

アルバム名:『accelerando』
メンバー:
Vijey Iyer(p)
Stephan Crump(b)
Marcus Gilmore(ds)

| | コメント (2) | トラックバック (1)
|

パット・メセニー・ユニティ・バンドの映像!

はやくもパット・メセニー・ユニティ・バンドの映像がたくさんYouTubeにUPされてます。

懐かしい《Are You Going With Me?》。
クリポタがフルートを吹いていますね。
なんでも吹けるのね。
シンセ音はシーケンサーか?

こちらはメセニーのソロを抜き出したもの。
きてます。きてます。ギターシンセ!

これは冒頭ピカソギターが登場。
メインは《New Year》。後半セミアコに持ち替えていますね。
会場のモニターを撮影したもの?

こちらも懐かしの《Two Folk Songs 1st》。
クリポタのテナー・ソロが炸裂。
カッコイイー! が、短いのが残念。
『80/81』のマイケル・ブレッカーとの比較ができますね。

いい時代になりました。
世界中のジャズ祭の音がこうして聴けるわけですから。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

Mingaのライブはやっぱり楽しかった!

昨日は甲府「桜座」Minga4のライブを観てきました。

P198 Minga4のメンバーは、早坂紗知(as,ss)、吉田桂一(p)、永田利樹(b)、コスマス・カピッツァ(per)です。このメンバーで桜座に来るのは今年で3回目。私は全て観に行っています。だってMingaのサウンドが好きなんですもん。今回は 新譜『ラ・マラヴィージャ!』発売記念ツアーです。 『ラ・マラヴィージャ!』は既に購入済み。ブログにも紹介記事をUPしています。

昨日は”13日の金曜日”でした。でも特に何のトラブルもなし。ただ客の入りが・・・。良いバンドなのにどうしてお客さんがもっと来てくれないんだろう。甲府のジャズファン、最近めっきり元気がないような気がします。ジャズファンも一向に増えないし、むしろ減っているくらい。あ~あっ(涙)。桜座がレコ発ツアーの初日ということでした。このあと順次西日本を巡っていきます。

ファーストセットは今回のアルバムの1曲目の曲で早坂さんの《アンモナイト・セレモニー》から。元気が出る曲でこのライブの幕開けにふさわしい曲です。ソプラノ・サックスで、サックス・ソロのところはポリリズムになっていました。合っていないようで合っているリズム。面白い!

2曲目は永田さんの《東京ギガンテ》。昨年永田さんが結核で入院した時に、病院の屋上から眺めた巨大な東京のイメージを曲にしたものだそうです。少し前にアルゼンチンに行っていて、この曲をやったらメランコリックと言われたそうです。ちょっとユーモアな感じもするこの曲をアルト・サックスで。独特な味わいです。

3曲目は早坂さんの《ノア・ノア》。「香しい香」という意味だそうです。ワルツのバラードをアルト・サックスで濃厚に描きます。以上3曲は『ラ・マラヴィージャ!』収録。

4曲目はアルゼンチンに行っていたつながりでピアソラの《リベル・タンゴ》。最初はベースの弓弾きでクラシックな匂いも混ぜていました。この情熱的な曲をアルト・サックスでさらに情熱的に。吉田さんのピアノ・ソロって最初は2オクターブくらいでこじんまり始め、徐々に盛り上げて鍵盤全域を使ってダイナミックになるのですが、この曲ではピアノ・ソロの途中で早坂さんがアルトで合いの手を入れ、盛り上がりを催促しているように見えて面白かったです。カピッツァさんのパーカッション・ソロも華麗でした。

P1 早坂さんはMCで全曲を解説してくれるのでありがたいですね。それから早坂さんの衣装が素敵でした。

セカンドセットは永田さんの《ウモ・ドラド(金色のけむり)》から。ワルツ曲をソプラノ・サックスで。哀愁漂う心地よいワルツ演奏です。『パルピタンテ!』収録。

2曲目は早坂さんの《ゴールデン・カルサイト》をソプラノ・サックスで。ラテン風味の陽気な曲はリズムも軽やかに。ソプラノが気持ち良く歌っていました。『ラ・マラヴィージャ!』収録。

3曲目はもう一度ピアソラの曲で《オブリビオン(忘却)》。イントロ部分でアルゼンチン国歌を引用。アルゼンチン国歌は凄く長いらしく、その一部とのことでした。ソプラノ・サックスの無伴奏ソロで始め、ベースが加わりデュオとなり、その後全員でというムーディーな展開でした。

4曲目は早坂さんの《ラ・マラヴィージャ》。アルバムタイトル曲ですね。去年「プロジェクトFUKUSHIMA」というのが立ち上げられ、そのサイトからこの曲をダウンロードでき、ダウンロード金額¥300(最低)は寄付されるそうです。”素晴らしき人生、生きてて良かった”という意味のタイトルです。ラテン調の陽気で明るい曲をアルト・サックスで朗々と。生きる歓びに溢れています。パーカッション・ソロで大いに盛り上がりました。

アンコールは《オ・ショチ・ダス・ミニーニャス》。ブラジルの北の方のリズムだそうです。サンバのリズムで軽やかにソプラノ・サックスを歌わせて楽しくエンディング。『アルディエンテ!』収録。

こればっかりで申し訳ないのですが、とにかく楽しい!
サックスは朗々と歌い、ピアノは軽やかに舞い、ベースは力強く響き、パーカションは華やかに弾ける。
Minga4、音楽の楽しさを発散するバンドです。

このアルバムの予告編はこちら。

明日以降のレコ発ツアーなどについては⇒ 「早坂紗知sax/minga」

7/15(日)大阪府/ブックカフェ・ワイルドバンチ06-4800-4900
7/17(火)山口県徳山/シーホース0834-26-0700
7/18(水)広島県/Juke 092-249-1930
7/20(金)京都市祇園/ロシア料理キエフ075-525-0860
      7000円(食事付)食事無し3000円(前売予約受付中)
7/21,22(土、日)愛知県名古屋市/minga all stars @Jazz inn Lovely052-951-6085 ★minga all starsメンバーです。
7/23(月)愛知県 島坂公民館 minga4+Rio ★チケット完売したそうです。
7/24(火)箱根強羅マーミーキッチン/minga4+Rio 問0460-82-4719

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

Mingaのライブを観ていきました。

今日「13日の金曜日」、Mingaのライブを観てきました。
毎年甲府の 「桜座」 に来てくれるので毎年観に行ってます。

Mingaはサックスの早坂紗知さんを中心としたカルテット。
ワールドミュージックを飲み込んだジャズグループです。
とにかく活気に満ちています。音がビビットです。
聴いていて楽しくてしょうがないです。

今回は新譜 『La Maravilla』 の発売記念ツアーの初日でした。

これ、とても楽しいアルバムです是非!

入口のところでCDを流していました。

P198

ライブの内容については明日書きます。

昨年もらったサインはピアノの吉田桂一さんのサインだけが水性ペンで、
消えかかっていました。
これです。前アルバムのライナーノーツ。

P199_2 

今回、吉田さんにサインしなおしてもらいました。めでたし!
(スキャナーがA4なので一部欠落あり)

P200

早坂紗知さんには今年のサインももらいました。左上がそれです。
中央の4人の写真。甲府「桜座」で撮ったものです。
う~ん、これで完璧!

ライブのレポートは明日書きます。

今回のMingaのツアーは以下のとおりです。

7/14(土)愛知県幡豆郡/インテルサット0563-35-0972
7/15(日)大阪府/ブックカフェ・ワイルドバンチ06-4800-4900
7/17(火)山口県徳山/シーホース0834-26-0700
7/18(水)広島県/Juke 092-249-1930
7/20(金)京都市祇園/ロシア料理キエフ075-525-0860
    7000円(食事付)食事無し3000円(前売予約受付中)
7/21,22(土、日)愛知県名古屋市/minga all stars @Jazz inn Lovely052-951-6085 ★minga all starsメンバーです。
7/23(月)愛知県 島坂公民館 minga4+Rio ★チケット完売したそうです。
7/24(火)箱根強羅マーミーキッチン/minga4+Rio 問0460-82-4719

お近くの方は是非観に行きましょう!
文句なく楽しいです。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

スピリット溢れるジャズ

今日はレコード紹介です。油井正一著「ジャズ ベスト・レコード・コレクションズ」に掲載されているアルバムです。

P197『 マックス・ローチ・カルテット ライヴ・イン・トーキョーVol.1』(1977年rec. DENON)です。メンバーは、マックス・ローチ(ds)、セシル・ブリッジウォーター(tp)、ビリー・ハーパー(ts)、レジー・ワークマン(b)です。1977年1月郵便貯金ホールでのライヴ録音。DENON(デンオン)のPCM録音シリーズの1枚。ライナーノーツにはPCM録音のありがた味が記載されていて時代を感じます。「discland JARO」の6月通販リストにあったので購入。

こういう硬派な1枚が最近は新鮮に聴こえてきます。スピリチュアルではなくスピリット溢れるジャズです。注目の若手を後ろからローチが”ガンガン”煽って気合が入ったジャズに仕立て上げています。前回書いたケニー・ギャレットのアフロ・スピリチュアル・ジャズとはものが違うのです。あちらにはこちらにあるような内から湧き上がるパワーが不足しています。時代の違いもあるんでしょうね。70年代はまだまだパワーが溢れていました。

油井さんの本には次のように書かれています。

「注目の新人ビリー・ハーパーを加えた久々の来日公演のライヴ・レjコーディング。あい変らず端正でいて力強いローチのドラミングにあおられて、若手連中がいずれも甲乙つけがたい快調なソロを展開する。ジャズの歴史はこのようにして次の世代へひきつがれていくのだろうと思わせる白熱のライヴ盤。」

ちなみにハーパーはこの時点ではもう新人ではないと思います。油井さんが書いたライナーノーツにもそのような記述はないです。上記の本を書いた1986年に勘違いが生じているものと思われます。

そしてジャズ継承のあり方を考えさせられます。その後ハーパーやブリッジウォーターもローチに習って、若手にジャズを伝承していったのでしょうけれど、私はよく知りません。マイルスのところでジャズを継承したはずのケニー・ギャレットも、今や懐かしコルトレーン路線ですし、ジャズはちゃんと継承されているのか否か?

ライナーノーツには面白いことが書かれています。当時マサチューセッツ大学音楽部に新設されたアフロ・アフリカン・ミュージック課主任教授だったローチへのインタビューで、ローチが強調したことだそうです。

「第二次大戦がおこるまで、ジャズは娯楽音楽であり、ダンス音楽であった。 ところが開戦と共に戦時特別税として、ダンス税が課税されることになった(ローチはその税率を20%といったが、私の知る限り最初が30%で、のち25%に引き下げられたはずである)。つまりダンスは禁止的重税の対象となり、ジャズは鑑賞の音楽となったのであるが、鑑賞に堪え得る音楽家の数はすくなく、ここでジャズ界は淘汰され、パーカー、ホリディらによって芸術音楽としての道を歩むことになった。」

大体以上の論旨で、ローチが大学教授として板についてきたな~というのが、油井さんの偽らざる感想だったそうです。

なるほどね。第二次世界大戦という環境下に適したジャズマン/ウーマンが生き延びてジャズを担っていくという、ダーウィンの進化論みたいな論法がなされているのはいかにも教授(笑)。去年の「ジャズ・ヒップホップ学習会」や「ジャズ・ヒップホップ・マイルス」でも、ジャズがダンス音楽から芸術音楽へと変わる辺りはポイントで、ローチも重要人物として取り上げられていたりするので、上記の話は興味深いところです。

A面がハーパーのオリジナル1曲のみ、B面が《ラウンド・ミッドナイト》とローチのオリジナル曲という全3曲。それぞれ各人のソロがたっぷり聴けます。内容は前述のとおりスピリット溢れるジャズ。特にハーパーの強烈ブローには惹かれます。油井さんはポスト・コルトレーン派の第一人者と評しています。

油井さんがここでのローチのドラミングを「驚くべきポリリズム」と評していて、言葉で正確に説明するのは難しいとしつつ、「叩き出される現実の音と音との間に、叩き出されていない音が発生して、それが現実の音とオーバーラップして、複雑なポリリズムをつくりだすのである。」と書いていて、ちょっとそれは感覚的過ぎるのでは?と思ってしまいます(笑)。

このドラミング、私には4ビートと8ビートのハイブリッドに聴こえます。シンバルレガートで4ビートのスイング感を残しつつ、スネアとバスドラのコンビネーションで8ビートに細分化して叩いているのです。ノリがステディなのでロック的に聴こえる面白いビートが生じています。他でこういうビートは聴いたことがありません。ビートにアプローチして進化させるローチ、凄いですよね。で、このローチのドラミングが最高にカッコいいのです。35年前の出来事。

ジャケ写のとおりドラムを叩くローチは大学教授ではなくジャズマンの顔です。
ジャズの面白さを感じさせてくれるアルバムです。
CD化はされたようですが廃盤みたいですね。残念。

アルバム名:『MAX ROACH QUARTET LIVE IN TOKYO Vol.1』
メンバー:
Max Roach(ds)
Cecil Bridgewater(tp)
Billy Harper(ts)
Reggie Workmann(b)

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

あ~ケニー・ギャレット・・・。

遅い新譜紹介です。FM-NHK「ジャズ・トゥナイト」でかかっているを聴いて、買いたくなった1枚なのですが・・・

P196 ケニー・ギャレット『シーズ・フロム・ジ・アンダーグラウンド』(2012年、MACK AVENUE)です。メンバーは、ケニー・ギャレット(as,ss,p)、ベニート・ゴンザレス(p)、ナット・リーヴス(b)、ロナルド・ブルーナー(ds)、ルディ・バード(bata,per)、ネデルカ・プレスコッド(vo)です。久しぶりにギャレットのアルバムを買いました。「この人は最近何やってるのかな~?」と。

「ジャズ・トゥナイト」でかかった曲は《J.MAC》。コルトレーン・カルテット風の曲でギャレットが気持ち良さそうにブローしていたので、「なかなか良いかも?」と思って購入。通してきいたら・・・、「なるほど、今更こんなことをやりたいのか。」という感じです。

正直に言ってしまえば肯定的というよりは否定的な感じ(涙)。全10曲ギャレットが作曲。アフロ・スピリチュアルなジャズが並んでいます。モロにコルトレーン・カルテット風な演奏が何曲かあります。アフリカンな曲にはパーカッションが参加。ギャレットは気持ち良さそうにブローしているので、何も考えずに聴けば楽しいと言えば楽しいアルバムです。

でもそれだけ、触発されるような要素はありません。まっ、これはこれで”アリ”だとは思います。この人はマイルスの元にいて色々学んだと思うんですけどね~。今やこの人の中でジャズは進展していないようですね。むしろ後退している感じです。進展しなければいけないというわけではありませんが、だからと言ってこれで良いのかというと?

ピアノのゴンザレスが痛い。コルトレーン風な曲ではマッコイ・タイナーを演じているわけですが、ソロになるとチック・コリアが顔を出したり、ハービー・ハンコックが顔を出したり、「あなたはだぁーれ?」と聞きたくなります(笑)。リーブスのベースは存在感薄いです。スタンリー・クラーク・グループのドラマー、ブルーナーは元気があってなかなかよろしい。途中に入るタム”ドロドロドロン”が気持ち良いです。

《デトロイト》という曲が異色。始終バックにレコードのプチパチ音が効果音として流れ、素朴なピアノだけを伴奏に(ギャレットが弾いているのか?)アルトでスピリチュアルなバラードを展開していきます。途中からはアフロ・スピリチュアルな女性ボイス(コーラス風)が加わっていかにもな感じ。でもどこか厳かになりきれない中途半端さ(涙)。レア・グルーヴ~クラブ・ジャズの影か。トホホ。これだからクラブジャズってやつは・・・。

あちらでも”ジャズの何たるか”は今やこんな状況なのでしょう。
色々書きましたがちゃんとジャズやってますしギャレットの熱演は聴けます。

アルバム名:『Seeds from the Underground』
メンバー:
Kenny Garrett(as, ss, p)
Benito Gonzalez(p)
Nat Reeves(b)
Ronald Bruner(ds)
Rudy Bird(bata, perc)
Nedelka Prescod(vo)

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

今日はドリカム!

昨日が「現代先端ニューヨークの音」なのに今日はドリカムって、
ギャップあり過ぎ(笑)。

ドリカム(ドリームズ・カム・トゥルー)は好きなグループです。
ドリカムのことについては今更説明不要でしょう。

昔レンタルCDをカセットにダビングしてカー・オーディオでよく聴いていました。
カセットは今も持っているのですがテープが伸びて怪しい音。
なので最近はブックオフで中古CDを買いなおしています。
この手のやつは安いですから気兼ねなく買えます。

昨日は3枚買ったのですが、その中の1枚『ワンダー3』を聴いていて発見!
《時間旅行》の歌詞の中に今年2012年の金環食が出てくるのです。
作詞/作曲:吉田美和

すっかり忘れていました。
今から22年前に歌われていたことが感慨深いです。

P145

私見ましたからね。金環食。この目で。う~ん感動です。時間旅行。

ドリカムと言えばこの曲が好きです。
これを聴いて一発でドリカムが好きになったように記憶しています。
《うれしい!たのしい!大好き!》 作詞/作曲:吉田美和

まず曲が好き。そしてこの歌詞。吉田美和の感性が好きです。
今も聴いていると胸の奥がじんわりしてきます。
バブル景気時のあっけらかんとした屈託のない明るさだと思いますよ。

今は東日本大震災、原発事故、消費税増税、ヨーロッパ財政危機などなど、
不安要素満載です。
でもこんな時だからこそ、”うれしい!たのしい!大好き!”、だめですかね?

当時ドリカムを聴いてその歌詞の斬新さに新時代を感じました。
《KUWABARA KUWABARA》 作詞/作曲:吉田美和

こんなファミリードラマの一場面みたいなシーンをそのまま歌にしてしまう凄さ。
あるかもしれない女の子の日常をまんま歌ってかつ心情を上手く表現しています。
作詞作曲して歌唱力まで素晴らしいという吉田美和。凄すぎ!

これも好きな曲です。
《BIG MOUTHの逆襲》 作詞:吉田美和、作曲:中村正人

これは中村正人の曲が好きです。大好きな転調あります(笑)。
もちろん吉田美和の歌詞も面白いですよ。

ドリカムにはバラードにも良いものがたくさんあります。
でも今回は割愛。
私、アップテンポの曲が好きなのです(笑)。

| | コメント (4) | トラックバック (0)
|

現代先端ニューヨークの音

私のお得意、買いそびれていた1枚を紹介します。昨年発売のアルバムで気にはなっていたのですすがそのままでした。最近ウェブ・マガジン 「com-post」 に書かれていた益子博之さんのトム・ハレル新譜のクロス・レビューを読んでいるうちに、「これも聴かなきゃ」という気持ちになりました。

P195 タイション・ソーリー『オブリークⅠ』(2011年rec. PI RECORDING)です。メンバーは、タイション・ソーリー(ds 4除く)、ロレン・スティルマン(as)、トッド・ニューフェルド(el-g 1,3,5,6,8-10,ac-g 7)、ジョン・エスクリート(p 1,2,5,6,9,fender rhodes 8,10,wurlitzer piano 3)、クリス・トルディーニ(b 4除く)です。このアルバムは「ジャズ批評」2012年3月号の「マイ・ベスト・ジャズ・アルバム2011」の中で益子さんが上げていた1枚。

一時期は ジャズ喫茶「いーぐる」 で行われていた益子さんの「ニューヨークダウンタウンを中心とした新譜特集」に何度も足を運び、この手のアルバムを積極的にフォローしていたのです。その後徐々に軌道修正しつつ去年はストレート・アヘッド系で大物を中心にフォローするようにしました。そのせいでこのアルバムなんかは買いそびれてしまったというわけ。

益子さんの企画は 綜合藝術茶房 喫茶茶会記 に場所を移し、NYダウンタウンを中心としたジャズの新譜を聴く会「益子博之=多田雅範 四谷音盤茶会」として今も続いているとのことです。私も都合が合えば一度行ってみたいと思っています。

このアルバムの話に戻ります。現代要注目ドラマー、タイション・ソーリーのリーダーアルバムで全曲ソーリーが作曲しています。冒頭の曲のようなフリージャズと、アドリブよりは音の佇まいを聴かせるような、マイルス《ネフェルティティ》の現代版みたいなものが入っています。1曲だけはアルト・サックスの無伴奏ソロで現代音楽的な響き。この人達らしい現代NYサウンドです。

この手のジャズは内省的で根暗な感じがつきまとうものがあり、私なんかはたくさん聴くと辛いものがあったりするのですが、本作はそういう感じよりはダウナーな感じです。聴いているうちに心が落ち着く感じとでもいいましょうか。そんな中に数曲アッパーな曲もあり、私はやっぱりこういう方が好きです(笑)。これはもう個人的な好みの問題。

曲想は落としどころがない浮遊するメロディーと複雑な変拍子が特徴。上記のような特徴と合わせ、聴く方はあまり身構えずに音をそのまま受け入れれば、気持ち良さが分かってくるのではないかと思います。曲によってギターが抜けたりピアノが抜けたり、ピアノとエレピを弾き分けていたり、全体的にはダウナーですがアッパーなものもあり、曲の流れもそれぞれ違うなど、飽きさせない工夫があります。

ソーリーのドラミングは複雑なリズムを浮つかずにグルーヴさせるあたりに相当な実力を感じます。アッパーな曲では力強く叩き流れの中で爆発力も見せてくれて迫力があります。今回私が特に関心したのはスティルマンのアルト・サックス。とても抜けの良い音で浮遊するメロディーを落ち着いて説得力を持って吹いているからです。今まであまり気に留めて来なかったのですがスティルマンはかなり良い。このアルバムの肝であることは間違いありません。

エスクリートのピアノとエレピは現代NYらしい知的なサウンド。それでもアッパーな曲ではなかなかのキレとガッツを見せてくれます。今回初聴きのニューフェルドのギターは現代的な浮遊系で音響系フリーも得意そうです。特に個性的とは感じませんが、フリー系の曲で唸りながらアコースティック・ギターのソロを展開するあたりに曲者を感じます。ベースのトルディーニも今回初聴き、複雑なドラミングに力強く適度な距離感で絡み付いています。

このサウンドはM-BASEから派生したものだと私はと思いますが、現代的な響きと感触を取り入れ、難解になり過ぎないアブストラクトなサウンドは、リスナーの感性をリフレッシュしてくれるという意味で新鮮です。

分かりやすいストレート・アヘッドなものも良いのですが、そういう中にこういうのも混ぜて聴くと音楽ライフがまた豊かになるのではないでしょうか?

アルバム名:『obliqeⅠ』
メンバー:
Tyshawn Sorey(ds)
Loren Stillman(as)
Todd Neufeld(el-g,ac-g)
John Escreet(p,elp)
Chris Tordini(b)

これを聴いて慌てて昨年出たトニー・マラビーの『Novela』を注文しました。
マラビーもフォローしている人です。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

落ち着いて音楽に浸れる1枚

今日は昨年出たアルバムを紹介します。

P194 マイク・モレノ『ファースト・イン・マインド』(2011年rec. Criss Cross)です。メンバーは、マイク・モレノ(el-g,ac-g)、アーロン・パークス(p,fender Rhodes)、マット・ブリューワー(b)、ケンドリック・スコット(ds)です。今年出たモレノのアルバムがなかなか良く、モレノ&パークス・コンビのアルバムをもっと聴きたくなってこれを買いました。

買うきっかけになった今年出たモレノのアルバムはコチラ⇒コンテンポラリー・バップ

本作は落ち着いた出来です。クリスクロス・レーベルらしい1枚と言えるでしょう。モレノのギターを中心にパークス他メンバーが一体となって、各曲のメロディーを現代感覚で丁寧に料理していく作りになっています。ということで選曲が大事になってくるわけですが、これがなかなか独特。

ジミー・ヴァン・ヒューゼンの《バッド・ビューティフル》、ミルトン・ナシメントの《MILAGRE DOS PEIXES》、ネルソン・カヴァキーニョの《花ととげ》、ジョー・ザビヌルの《イン・ア・サイレント・ウェイ》といった良い曲をやっている他に、ジョシュア・レッドマンの2曲が入っているのが面白いところ。自身の曲は1曲のみで、毛色が違うように思えるソニー・ロリンズの《エアジン》はちょっと変わったアレンジでやっています。

ミディアム~スロー・テンポの曲がほとんどで、モレノは適度に現代的浮遊感を感じさせつつ比較的オーソドックスにメロディーを丁寧に紡ぎ出していきます。梅雨時に聴いているせいもあるのか?ちょっと湿度感高めの情緒です。《バッド・ビューティフル》での切々と訴えかけてくる情感は特に心に響いています。いい演奏ですよ。

パークスもこの雰囲気に沿ってモレノを丁寧にサポート。曲によってはエレピも使って甘さを加味しています。1曲のみパークス抜きのギター・トリオでの演奏があります。ベースは良いメロディーを生かした音でしっとりかつ力強く哀愁を込め、ドラムはグルーヴを出すよりは曲の流れに表情を上手くつけていき、曲によってドラマチックに盛り上げています。

特にミルトンの《MILAGRE DOS PEIXES》、カヴァキーニョの《花ととげ》、ザビヌルの《イン・ア・サイレント・ウェイ》と続けて演奏される流れは、音楽にドップリ浸らせてくれます。

ギターの調べに浸りたい時におすすめの1枚です。

アルバム名:『FIRST IN MIND』
メンバー:
Mike Moreno(g)
Aaron Parks(p,fender rhodes)
Matt Brewer(b)
Kendrick Scott(ds)

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

上原ひろみ&クリス・ポッターの話題

ブログにコメントをいただいた新情報について書きます。
最近の私は新譜を聴いて紹介することが主になっていて新情報集めがなかなかできないので、こういう情報をいただくととてもありがたいです。

まずはkimtさんからいただいた上原ひろみ情報。

9月5日に新アルバム『MOVE』が出ます。
情報はコチラ⇒ http://www.musicman-net.com/artist/18320.html
アンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップスとのザ・トリオ・プロジェクトの第2弾。

P193
このジャケ写はどうなの?ってご意見はあるでしょうね(笑)。前回も微妙でしたが、でもしょうがない、アメリカのセンスで作っているんだから。白黒のマニキュアはピアノの鍵盤のイメージなんでしょう。

私は去年1年のみのプロジェクトかと思っていたのですが、今年はこのプロジェクトで日本をメイン・ターゲットに活動を展開していくみたいですね。フジロック・フェスティバルにも出演。日本でガッポガッポ?お金儲けしちゃおうというテラークの企み(笑)。今やテラークのジャズ部門の稼ぎ頭がHiromiでしょうからね。

日本ツアーの最終日、東京国際フォーラムでのコンサート。盛り上がるでしょうね。観に行っちゃおっかな~。

アルバムはDVD付初回限定盤を買います!

次はとっぽぎーさんからいただいたアクシス・サキソフォン・カルテットの情報。

このサックス・カルテット、NHK-FM「ジャズ・トゥナイト」にクリス・ポッターがゲスト出演した際に出た話題です。クリポタが「ジョシュア・レッドマン、クリス・チーク、マーク・ターナーとのサックス・カルテットがエキサイティングだ。」とか言ってました。

YouTubeに今年のモスクワ・インターナショナル・ミュージック・フェエスティバルでのライブ映像がいくつかUPされているんです。お客さんがこんなに勝手に撮っちゃっていいところが大らかです。

左からクリス・チーク、ジョシュア・レッドマン、マーク・ターナー、クリス・ポッター。クリポタがアルト・サックスを吹いているのは初めて見ました。白のマウスピースが変わっています。この4人ですからね。何の問題もなくアンサンブル、ソロとこなしていきます。なかなか渋くてカッコいいですよね。クリポタのアルト・サックス・ソロは要チェック!

とっぽぎーさん情報によるとアレンジを担当しているのがパトリック・ジメルリ。この人はブラッド・メルドーとケヴィン・ヘイズのデュオ・アルバム『モダン・ミュージック』でアレンジと作曲とプロデュースを担当しています。現代ニューヨーク周辺のクラシック/ジャズの橋渡しをする人物なのでしょう。

こういうグループが東京JAZZに出演するようにでもなればもう少し芸術的なイベントになると思うのですが、今は商業的でどちらかと言えば若者向けお祭りイベントという色が強いところが日本らしいと言えばらしいと思っています。

CDが発売されるようであれば聴いてみたいグループですね。

日本ではメジャーな上原ひろみとマイナーなアクシス・サキソフォン・カルテット。
どちらも私にとっては興味をそそる対象です。

| | コメント (6) | トラックバック (0)
|

メセニーのユニティ・バンド行ってみよう!

さすがにそろそろこいつの紹介をしておかないと怒られますよね。って、誰から怒られるんでっか? メセニー&クリポタのファンの皆様にでんがな、きまってるがな。と、おふざけで始めてみました(笑)。

P192 パット・メセニー『ユニティ・バンド』(2012年rec. NONESUCH)です。メンバーは、パット・メセニー(el-g,ac-g,guitar synth,orchestrionics)、クリス・ポッター(ts,b-cl,ss)、ベン・ウィリアムス(ac-b)、アントニオ・サンチェス(ds)です。まさかメセニーのグループにクリス・ポッターが入るとは思っていなかったので、私のようなクリポタ・ファンは嬉しさMAXでごさいます。

自身のグループにサックスを入れてアルバムを作るのは約30年ぶりとか。『80/81』以来ということらしいです。このサックス奏者に我らがクリポタが抜擢されたということが嬉しい! これでクリポタの知名度は一気に上昇するでしょう。めでたしめでたし。

はっきり言ってこのアルバム、私にとっては基本的に想定内でした。ただしオーケストリオニクスと共演した1曲は想定外でしたけどね。なので聴いていて妙に安心感に包まれてしまいます。この人達ならこういうサウンドでしょうというものがそこに鳴っています。ここのところメセニーのアルバムと言えば、オーケストリオンにギター・ソロだったので、そろそろこういう音が聴きたいという私の欲求を十分満たしてくれました。全曲メセニーの曲です。

1曲目《ニュー・イヤー》、これは事前にYouTubeにUPされていた曲ですね。アコースティック・ギターの独奏から入る辺りに、前ギター・ソロ・アルバムとのつながりを感じます。こういう所をきちんと押さえてくるのがメセニーというミュージシャンなのだと思います。メロディーが甘過ぎ。ロマンチック。覚えやすいメロディーなので既に頭の中で時々このテーマが鳴ってます(笑)。

メセニーはもういつものメセニー節。これが好きなので良いとしか言いようがありません。ウィリアムスのベースは初聴きなのですが、バックでさりげなくいいフレーズを弾いてますね。ソロもいい感じで、なるほどセンスいいかも? メセニーに抜擢されるだけのことはあります。サンチェスはもうメセニーと相性抜群。結構叩いている割にはうるさくなく、上手い具合に表情を付けていきます。クリポタのテナーが歌ってますね~。このメロディーなので歌心全開ですよ。

2曲目《ルーフドッグス》、ギター・シンセきたーっ!メセニーはギター・シンセを持つと内に秘めた暴力性があらわになると思います。ハンドルを握る(自動車を運転する)と人が変わる人がいますがあの感覚ですね。サンチェスのフット・カウベルが聴こえてきたりして最高。にしてもサンチェスの向かって右シンバルの中心部を叩く時の金属と木のスティックがぶつかる音は最高に気持ち良く録れています。うねるソプラノがナイス。ギター・シンセ・ソロ、私は「イケイケッ、もっと飛ばせーっ」と心の中で叫んでます(笑)。1曲目の甘さを完全に吹き飛ばす気持ち良さ。参りました。

3曲目《カム・アンド・シー》、エスニックな出だしは42弦のピカソ・ギターとバスクラのからみから。なるほど、クリポタのバスクラがここで効果を発揮。テーマが終わりギター・ソロは高速テクニカル・フレージング炸裂。陶酔感があります。負けじとテクニカルなフレージングで応酬するクリポタ。この2人にしかできない世界でしょう。クリポタのいくつかの面のひとつ、ポスト・マイケル・ブレッカーがここで生きるのです。さりげない3拍子へのリズムチェンジがカッコいい。ウィリアムスもベース・ソロで頑張ってます。

4曲目《ディス・ビロングス・トゥ・ユー》はスロー・バラードをアコースティック・ギターで。ギター弦の擦過音までがアートしていますね。これはメセニーのギターのための曲。

5曲目《リーヴィング・タウン》は美メロ曲、あの名曲《ジェームス》にちょっと似てます。メセニー節全開。テナーは王道コンテンポラリー。サンチェスの左右に飛び散る多彩な音色のシンバル・ワークが気持ち良過ぎです。

6曲目《インターヴァル・ワルツ》はこれもメセニーお得意、落ち着いたトーンの美メロ・スロー・ワルツ。もう誰も文句はないでしょ(笑)。テナーは大らかにスケール大きく歌います。クリポタ余裕かましてるじゃん(笑)。ベースをゆったりグルーヴさせるウィリアムス、なかなか腰が据わっています。

7曲目《シグナルズ(オーケストリオン・スケッチ)》にはちょっとビックリ。最初がフリー・ジャズだからです。メセニーはこういうジャズができることは知っていますが、このアルバムに入っているとは思わなかったのです。これが新鮮に響きます。テナーとバスクラの多重録音が不穏な感じ。そのうち聴いたことがあるパーカッション群が絡んできて、その正体がオーケストリオニクスだと分かります。フリー部分もプログラミングしてあるってことですよね!凄い。

オーケストリオニクスとサンチェスのドラミングの絡み具合が聴きどころです。プログラミングの正確なリズムと人間の微妙なグルーヴの彩が楽しめます。もともとオーケストリオンの無表情なベースが特に嫌いだった私ですが、今回はウィリアムスがベースを弾いているのでウィーク・ポイントが解消されました。おもむろにテナーがソロを初め、オーケストロニクスだけの演奏を挟み、じらしにじらして「やっぱりこれでしょ。」という感じでギター・シンセが登場してくるくだりは最高です。テナーとギター・シンセが交換する会話も素敵。

この曲のスケールの大きさが好きです。後半に向かって列車が大草原の中を突き進んでいく感じになり、気持ち良い風を頬に感じます。私はこれをメセニー流トレイン・ソングと呼んでいます。やがて列車は徐々にスピードを落し駅へと滑り込みます。この曲に惚れました! さすがはメセニーじゃーっ、このサウンド・スケールは素晴らしい。オーケストリオニクスをこういう風に使うなら私は大歓迎。

8曲目《ゼン・アンド・ナウ》は落ち着いたバラード。ウェザー・リポートの《お前のしるし》に何となく似てます。ホロッと泣かせる感じのやつです。クリポタのテナーも泣かせてくれますよ。こういうストレートな良い曲でのクリポタの泣きっぷりっもたまにはいいもんですね。テナー・ソロが終わったところで入れるサンチェスの”チャリン”が憎い!

ラスト《ブレイクディーラー》はブレッカー・ブラザーズ風イケイケ曲。最後にこういうのを持ってきますかーっ! 今回最高の速弾き弾き倒しっす。カッコイイ! メセニー節炸裂しまくり。で、クリポタですよ。この高速でメカニカルにして歌いまくるフレージングのハイテンション・テナー。やっぱ、ポスト・マイケル・ブレッカー筆頭でしょっ。私なんか涙チョチョ切れてます(笑)。同世代の人は分かるでしょう。更に最後にはこれでもかのドラム・ソロまで。やっぱメセニーさん、あなたはファン心理が分かってらっしゃる。鷲掴みっす。

最初はクールに想定内と言っておきながら、全曲レビューしてしまうという興奮ぶり。
鬱陶しくてゴメンナサイ。m(_ _)m
「買って下さい。」と言わなくても、買う人はもう買って聴いていますよね。
*まだ日本盤は発売されてないんですね。これから日本盤を買う人は是非!

アルバム名:『UNITY BAND』
メンバー:
Pat Metheny(el-g ac-g, guitar synth, orchestrionics)
Chris Potter(ts, b-cl, ss)
Ben Williams(ac-b)
Antonio Sanchez(ds)

| | コメント (10) | トラックバック (2)
|

« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »