音を楽しむという快感
3年前、「ジャズ批評」2009年3月号(No.148)で後藤雅洋さんと私が「現代ジャズ・シーンの活性化を考える ~ブログ、ウェブ・マガジンの可能性~」というテーマで対談をしました。当時の問題点(今と大して変わりないと思います)を指摘して私の意見を表明してあります。若い人達にもっと新しいジャズを知ってもらいたいということです。まっ、いわゆるジャズの外側のことまでは想定していませんけどね。
基本的に今も私の気持ちに変わりはありません。ただ3年前の意気込みはないですし、最近では諦め気分が湧いてきていることも事実です。それでも少しずつ熱量は減ってはきているものの,持続しているつもりです。このブログも4年半続けているわけですから。鬱陶しいところもあるでしょうけれど、それがジャズ・マニアだということで。
m(_ _)m
そう言えば、ウェブ・マガジン com-post はだいぶ休眠のような状態たったので心配していましたが、やっと目覚めたので喜んでいます。そして対談時の流れからして、私はcom-postが新しいものを取り込んでいくことに特に異論はありません。それによって新たな活力が得られれば良いと思っています。
その対談の中では2008年に行われた「ジャズ・ジャーナリズムの現状を考える」というシンポジウムについて触れています。私も出席してましたからね。その流れで対談があったということでもあります。あれから4年、来月には「音楽批評とは何か」というイベントがあります。定期的にシーンに問題提起されている後藤さんは凄いと思いますよ。後藤さんの他にはいないわけですし。あとは議論だけで終わらないことを切に願っています。
一人のブロガーのささやかな活動、誰かに少しでも何かが届けばそれでいいです。
*
さてと、出るアルバムは全て買うことにしているミュージシャンが何人かいます。上原ひろみとかメセニーとかクリポタとかスティーブ・リーマンとかです。それぞれがやっているジャズはさまざまです。今回紹介するのもその中の一人である早坂紗知のアルバムです。そうそう、メセニー&クリポタの話題の新譜『ユニティ・バンド』の紹介は後日ということで。
ミンガの『La Maravilla』(2012年rec. NBAGI Record)です。メンバーは、早坂紗知(ss,as)、リオ(bs)、高橋香織(vl)、吉田桂一(p)、永田利樹(b)、大儀見元(per)、コスマス・カピッツア(per)です。
ミンガの基本メンバーは、早坂、吉田、永田、カピッツアの4人。今回は早坂、永田夫妻の息子でバリトン・サックス奏者のリオ、仙波清彦の奥方でバイオリニストの高橋香織、オルケスタ・デ・ラ・ルス結成時のリーダーでパーカッショニストの大儀見元が加わって、いつにも増してパワフルでカラフルな演奏を聴かせてくれます。
2年前にライブを観た時には息子さんはアルゼンチンに行っていると言ってましたが、今はこっちにいるんでしょうかね。アルバムでの親子共演は今回初めてです。バリトン・サックスを痛快に吹いてミンガに新たな息吹を吹き込んでくれています。親子だからと言ってそこに緩さはありません。なんてったって強力な早坂のサックスと共演するわけですから半端は演奏でははじき飛ばされてしまいます。
ジャズを聴く楽しみというのは色々あるわけでして、聴いたことがないものに出会い触発される喜びは特に大きいわけですが、そればかりではなく、気持ち良い調べに心を躍らせたり、躍動するリズムに体を揺らしたり、感情をさらけ出した過激な咆哮に気持ちの高ぶりをおぼえたり、神妙微細な音の交換に心を引き込まれたりなどなど、ジャズというジャンルの中だけでもそれこそ千差万別の楽しみがあります。
ではミンガの音楽とははどういうものなのでしょう? これはもう音を楽しむ快感の一言なのであります。そこに理屈はありません。とにかく音がヴィヴィットに躍動していて、3Dのように飛び出しくるので、それをただ全身で浴びればいいのです。すると心躍り血が騒ぐのです。元気が出ない、気持ちが落ち込んでいる、そんな時はミンガを聴きましょう!元気が出ること間違いなしです。
早坂のサックスが生き生きとパワフルに歌い踊ります。永田のベースが大地の如く支えています。吉田のピアノがキラキラ降り注ぎます。パーカッションが辺りを囲んで囃し立てます。バイオリンが歓びの歌を歌い、バリトン・サックスがうねりのたうち回ります。さあ祝宴だ!飲めや歌え!
こういうジャズが大好きです。応援しています。
7月13日にはミンガが甲府「桜座」にやってきますので観にいきます。
アルバム予告動画があります。タイトル曲《La Maravilla》が流れています。
| 固定リンク
「ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事
- 明けましておめでとうございます!(2023.01.01)
- 今日はこんなの聴きました。(2022.01.01)
- 追悼、チック・コリア。(2021.02.14)
- このアルバムのこの曲が好き!(2021.02.07)
- こんなの聴いています。(2021.01.03)
コメント
こんばんは、いっきさん。
正当派ジャズ聴きのいっきさんには元気でいて欲しいですね。
そう、坦々と我がジャズを進めてくれると嬉しいです。
そういう意味では、オイラの指針、座標でもあるからです。
顔も知らない奴からの絡みは不愉快です。
基本的にはコミュニケーションは顔見知りに限りますね。
それと子供とは話したくないですね。得る者がない!(笑)。
ああなると「ジャズじゃなくてもいいんじゃない?」って感じ。
コミュニケーションの基本が出来ていないんだよね。
そっちはそっちでやってください。関わらないでね!
関わって楽しいことは何もないことが気づかないんだよ。
もっと面白いヤツかと思ったけど、そうでもなかった(笑)。
まぁ、オイラともそういう感じだったんだけど、本人が逃げた!
何か問題があることを本人が気づいていないんだよね。
今までも、同じトラブルを何度も起こしていると思うなぁ〜。
「現代ジャズ・シーンの活性化」は、一般的にはないですね。
オイラの周りではジャズが鳴っているので別に困りません。
ホント、生活の音楽としてジャズを聴く友人が多いからね。
意外とジャズのコンピを聴いている人が多いんだよ。
まぁ、気分悪いから、暫く楽器の練習に没頭することにします(笑)。
投稿: tommy | 2012年6月25日 (月) 23時49分
tommyさん
こんばんは。
御心配いただきありがとうございます。昨日一日クールダウンしたし、ミンガという楽しい音楽に元気づけられていますし、私は元気ですよ。
私、こう見えても結構頑固なので、こうと決めたら簡単には曲げません(笑)。
いえいえ、私は顔見知りですし「いーぐる」で何度もお話しています。頑張ってほしいと真面目に思っています。お手並み拝見なのです。で、あまりこじらせたくなかったのではぐらかしながら逃げたつもりです。私にはそんなやり方しか思い浮かびませんでした。まあ、コミュニケーションのやり方にはさすがにギャップを感じました。
>「現代ジャズ・シーンの活性化」は、一般的にはないですね。
>オイラの周りではジャズが鳴っているので別に困りません。
それが普通の人達でしょう。
だから最近はマニアの人にとかマイノリティにとか言っているわけです。
>まぁ、気分悪いから、暫く楽器の練習に没頭することにします(笑)。
頑張って下さい。
投稿: いっき | 2012年6月26日 (火) 00時14分
いっきさん、こんばんは。
「現代ジャズ・シーンの活性化を考える ~ブログ、ウェブ・マガジンの可能性~」を拝読しましたが、良い対談ですね。
あの対談で一番印象に残ったのは後藤さんの
「でも断言しないと、先に進めないじゃない。音楽の質がどの程度のものか言い切るということは、言った人間の耳が問われるわけですよ。断言できない人間の言葉は力を持たない。そこで腹をくくれるかくくれないかが、いちファンとジャズ・シーンに責任がある人間かどうかの境目なんですよ。」
という言葉です。
後藤さんはまさにプロ中のプロですね。まああれだけキッパリ言い切ると敵も出て来るでしょうが、本当に凄味のある発言だと思います。
いっきさんの発言では、
「単にフォーマットだけがジャズで発想的にはフュージョンなのに、それが一緒にジャズにくくられているのが私にはすごくイヤなんですよ。」
の部分が印象に残りました。これはこの対談上で話題になっていたHigh FiveやQuasimodeのことを指しているんでしょうが、この辺の見解は今も変わってないですよね。
それから、来月に行われる、
徹底討論「音楽批評とは何か -感想、紹介、批評、研究、そして?-」
このイヴェントも面白そうですね。いっきさんも参加されるのでしょうか。
投稿: kimt | 2012年6月27日 (水) 23時16分
kmitさん
こんばんは。
>「現代ジャズ・シーンの活性化を考える ~ブログ、ウェブ・マガジンの可能性~」を拝読しましたが、良い対談ですね。
お読みいただき、そのようにおっしゃっていただけると嬉しいです。
ありがとうございます。
>後藤さんはまさにプロ中のプロですね。まああれだけキッパリ言い切ると敵も出て来るでしょうが、本当に凄味のある発言だと思います。
そうなんですよ。
だから対談するまで私はかなり怖かったんです(笑)。
でも対談したら意外と気さくに話をして下さって、調子にのった私が色々やばい発言を・・・。
>これはこの対談上で話題になっていたHigh FiveやQuasimodeのことを指しているんでしょうが、この辺の見解は今も変わってないですよね。
それが調子にのった発言でして、今も変わっていませんよ。
M.J.Q.、High Five、Quasimodeのことです。
Quasimodeは去年、東京JAZZで観て、フュージョンだということを確信しました。
それはブログにも書いてあります。
>それから、来月に行われる、徹底討論「音楽批評とは何か -感想、紹介、批評、研究、そして?-」このイヴェントも面白そうですね。いっきさんも参加されるのでしょうか。
私は今批評文の書き方についてはあまり興味がありません。
ブログを書く場合、フォーマットを決めるのではなく、自分が伝えたいことを、その時その時に興味がある他の話題をからめたりして、書きやすいように書くのが私流で、それがブロガーの良さだと思うからです。
私は批評家ではないですし、ブロガーならではのやり方でやらないと、ブロガーが存在する意味がありません。
「ジャズ構造改革」で指摘されていた”評論家ごっこ”なんて言われないためにもブロガーを意識してやっていきます。
ということで参加しません。
それよりも今度の土曜の後藤さんの講演を聴きたいです。
私の理想はジャズリスナーライフを楽しく見せることです。
楽しそうだと思ってもらえればこちらへ入ってきてくれるだろうと思うからです。
投稿: いっき | 2012年6月27日 (水) 23時43分
いっきさん、こんばんは。
先ほどいっきさんの、Twitterを拝見したのですが、
今日のいーぐるのイヴェントをご覧になったのですね。
僕は休みではなかったので、見ることが出来ませんでした。
イヴェントの感想を伺いたいですね。
よろしくお願いします。
投稿: kimt | 2012年7月14日 (土) 23時48分
kimtさん
こんばんは。
面白かったですよ。
磯部さん、高橋さんのご意見を聞いていて、
音楽批評サイドもまだまだ元気があると思いました。
大和田さん、栗原さんのご意見も面白かったです。
ふがいないのはジャズサイド(笑)?
こちらで休憩後(後半)の録画が見られますよ。
http://www.ustream.tv/recorded/23980234
投稿: いっき | 2012年7月15日 (日) 00時03分
いっきさん、こんばんは。
動画の紹介ありがとうございました。
現在は前半の部分もアップされていますね。
来週以降時間の余裕が出来次第見てみます。
このイヴェントに参加した方では栗原さんという方が
なかなかユニークな経歴の持ち主ですね。
com-postの掲示板で後藤さんが紹介していた「盗作の文学史」
という本も興味があります。
そのうち読みたいと思います。
>>ふがいないのはジャズサイド(笑)?
ちよっと残念ですね。
投稿: kimt | 2012年7月15日 (日) 17時27分
kimtさん
こんばんは。
>動画の紹介ありがとうございました。
いえいえ。
>現在は前半の部分もアップされていますね。
アップされましたね。
長編ですのでごゆっくり見て下さい。
磯部さん、高橋さん、大和田さん、栗原さん、それぞれ個性的です。
各人の著書も読んでみたいのですが、まっ、そのうちということで(笑)。
残念でした。
投稿: いっき | 2012年7月15日 (日) 19時47分