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武骨なベースが素晴らしいリンダ・オー

新譜紹介です。我々ジャズブロガーはこういうアルバムを紹介することに意義があると思います。ジャーナリズムがフォローしないこういうのを地道に紹介していきたいです。

P189 リンダ・オー『イニシャル・ヒア』(2011年rec. Greenleaf Music)です。メンバーは、リンダ・オー(b,el-b,bassoon)、ダイナ・ステフェンス(ts)、フェビアン・アルマザン(p,rhodes,melodica)、ルディ・ロイストン(ds)、イェン・シュー(vo)、クリスチャン・ハウズ(strings)です。オーの前作が気にいっていたので今回もチェック。

その前作はこちら。地味で渋い1枚。こういうのを推薦するのは難しい。

ベースを鳴らすということに関しては、エスペランサよりオーのぼうが上だと思います。こんな”漢”なベースを弾く女性がいるというんだから驚きです。なのに見た目は小柄なアジア女性。これは上原ひろみに似た感触です。アジアン・パワー恐るべし! ビジュアル的には地味な感じなので何とかしてあげたいです。ヘアースタイルやメークでもっと魅力的になれると思うのです。そうすればもっと注目されると思います。まっ、本人は望まないでしょうけれど。

まずは何と言っても”ゴリンゴリン”鳴るベースが魅力。軟弱男子ベーシストにオーの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいくらいです(笑)。《ミスター・M》という曲があり、ライナーノーツには「チャールス・ミンガスのために」なんて書いてありました。そうですよね。オーのベースがミンガスを範としているのは分かります。ベースをこれだけガッツリ聴かせてくれる人、なかなかいません。

さらに今回はフォデラのエレクトリック・ベースも弾いていて、こちらはアンソニー・ジャクソンみたいです。アーティスティックにエレベを弾くあたりにセンスの良さを感じます。アンソニー好きな私としてはオーにますます惚れてしまいました。いるんですよね。知名度は全然なくても凄い人が、アメリカには。

このアルバムは2曲を除いてオーが全て作曲しています。他人の曲の一つがレナード・バーンスタイン/イーゴリ・ストラヴィンスキーの《サムシングス・カミング/Les Cinq Doigts》。2曲のつなぎ目が私にはよく分からないのですが、こういう現代音楽が他の曲と違和感なく4ビートで演奏されてしまうのが現代バップなのでしょう。オーの高速ウォーキング・ベースに乗って、ステフェンスのテナーとアルマザンのピアノがアグレッシブなソロを繰り広げるのは快感です。

もう一つの他人の曲はデューク・エリントンの《カム・サンデイ》。ベース・ソロの深くゆったりしたイントロに始まり、カルテットでの自由な展開をはさんで落ち着いたベース・ソロ、ステフェンスの深入りしすぎない情感のテナー・ソロと、この曲の美しさを生かした演奏が続きます。エリントン音楽の”美学”が分かってらっしゃいますね。

1曲目《アルティメート・パーソン》のいかにも現代ニューヨーク的な変拍子の複雑リズムと浮遊感あるメロディーから始まり、色々な曲があります。テナー、ピアノ、ベース、ドラムのカルテット演奏が基本。2曲はエレピとエレベ、2曲はエレピとベースの組み合わせでやっています。それらの組み合わせは曲のイメージを上手く生かすものです。

真ん中5曲目《チケット・ザン・ウォーター》のみシューのボーカルをフィーチャ。シューは中国語(マンダリン/官話)で歌っています。オーが作詞してシューが翻訳。オーはバスーンも吹いていてベースは弓弾きと室内楽風仕上がり。これなんかはエスペランサの『チェンバー・ミュージック・ソサイエティ』を意識しているのかもしれませんね。この曲だけが浮いているかもしれませんが、気分転換になっていて私は良いと思います。オーもなかなかの才女です。

アーティスティックなエレベが映える寂しげでロマンチックな《リトル・ハウス》、”ジャラン”と鳴らすようにベースを弾くのが面白い《デザート・アイランド・ドリーム》、弓弾きで映画のサウンドトラックみたに始まりながら、コーラスなどを交えだんだんスピリチュアルへと変化する《ディーパー・ザン・サッド》など、落ち着いて味のあるテナーを吹くステフェンス、現代的知的センスを醸すアルマザンのピアノ/エレピ、複雑なリズムを難なくこなすロイストンのドラムが組んで、オーのジャズをしっかり表現しています。

どちらかと言えば地味なアルバムですが、ジャズが分かる人は是非。
このアルバムの良さが分かってもらえると思います。

アルバム名:『Initial Here』
メンバー:
Linda Oh(ac-b, el-b, bassoon)
Dayna Stephens(ts)
Fabian Almazan(p, rhodes, melodica)
Rudy Royston(ds)
ゲスト:
Jen Shyu(vo)(5)
Christian Howes(strings)(6)

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ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
女性ベ-シストの活躍?が目立ちますね。
こちらのアルバムの記事 どこかで読みました。

ウッドベ-スが弾けると エレキベ-スも弾けるのですか?
弦の押さえ方って同じ?
楽器に詳しくなくて…

器用ですよね。いくつもの種類のベ-スを曲に合わせて弾きこなせるなんて♪

投稿: Marlin | 2012年6月17日 (日) 17時54分

Marlinさん
こんばんは。
>女性ベ-シストの活躍?が目立ちますね。
はい目立ちます。
>こちらのアルバムの記事 どこかで読みました。
はいっ、私もお一人だけ読みました。
>ウッドベ-スが弾けると エレキベ-スも弾けるのですか?
必ずしもそうではないと思います。
弦の張り具合、音の出具合、ネックの太さとか色々違いますから。
>弦の押さえ方って同じ?
私も良く知らないのですが、5弦どうしならば指のポジションとかは同じなのではないかと思います。
>楽器に詳しくなくて…
私も楽器はやらないのであまり詳しくありません。
>器用ですよね。いくつもの種類のベ-スを曲に合わせて弾きこなせるなんて♪
やっぱり器用でないと色々な楽器は弾きこなせないでしょう。

投稿: いっき | 2012年6月17日 (日) 21時33分

いっきさん、こんばんは。

リンダオー懐かしいですね。
僕が彼女のファーストアルバムを購入したのはいっきさんのブログを読んだからなのです。Amazonの購入履歴を見るといっきさんが記事を御書きになった翌日に注文しています。たぶんジャケットに惹きつけられて購入したのかもしれません。

正直記事にあるように地味な曲ばかりで、初心者向きのアルバムではないような気がしますが、当時良さが判らないながらも毎日のように聴いていました。
彼女のセカンドアルバムですが、メンバーをみると、リンダ以外は総入れ替えみたいですね。ヴォーカル入りの曲も有るのですか。たぶんだいぶ先になると思いますが、ぜひ聴いてみたいです。

>>ビジュアル的には地味な感じなので何とかしてあげたいです。

確かに地味ですね。JAZZミュージシャンの女性は美形が多いので、逆の意味で目立ちますね。

そういえば、このアルバムに入っている曲が聴きたくて、You Tubeでリンダの名前で検索したところ、「Chris Potter, Linda Oh, Kurt Rosenwinkel Jam at City Winery」という動画が有りました。
説明書きを読むとクリスがピアノをカートがドラムをやっているみたいなんですが。

投稿: kimt | 2012年6月18日 (月) 20時09分

kimtさん
こんばんは。
私のブログを見てリンダ・オー買って下さったのですか。
嬉しいです。
初心者向きではないけれど渋いジャズやってますよね。
今回はメンバーも違いますし内容も異なりますが、真面目に作るという姿勢はファースト・アルバムと同じです。
今回のほうが馴染みやすい内容になっていると思います。
>JAZZミュージシャンの女性は美形が多いので、逆の意味で目立ちますね。
なるほど地味なままのほうが逆に目立つというのは確かにそうですね。


>「Chris Potter, Linda Oh, Kurt Rosenwinkel Jam at City Winery」
>説明書きを読むとクリスがピアノをカートがドラムをやっているみたいなんですが。
早速検索して見ました。
カートは判別できませんが、ピアノはクリポタでしょう。
恐ろしや~っ、やっぱりクリポタ、カート、次元が違いますね。
ニューヨークでジャズやるってこういうことなのかと・・・。
怖い世界です。

投稿: いっき | 2012年6月18日 (月) 21時13分

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