ルドレシュ・マハンサッパじゃっ!
ルドレシュ・マハンサッパ、この変な名前は時々私のブログに登場してきます。私が注目しているアルト・サックス奏者だからです。現代ニューヨーク、ダウンタウンのジャズマンです。聴く人がいようがいまいが、ジャズが正統継承されているのは何と言ってもここなんだから私としてはフォローしていくだけです。
結局ジャズを支えるのはコアなマイノリティ(少数派)であってマジョリティ(多数派)ではないのです。どうしてそれが分からないのでしょうか? マジョリティ/マスなんて所詮流行しか作りませんし、そんなものはすぐに廃れてしまいます。と、思う今日この頃。戯言はこのくらにしておきます(笑)。
MSGの『テイスティ!』(2006年rec. PLUS LOIN MUSIC)です。メンバーは、ルドレシュ・マハンサッパ(as)、チャンダー・サードジョー(ds)、ロナン・グイルフォイル(acoustic bass guitar)です。MSGというのはメンバーの姓の頭文字を並べたもの。2006年録音2008,9年ミックスで2010年発売です。日本では昨年発売。気になりながら買いそびれていた1枚なのですが、クリポタのライブを観に上京した時にディスクユニオンで中古を見つけたので購入。
インド系アメリカ人のマハンサッパ(ジャケット写真一番奥)、黒人かと思ったらインドネシア出身のサードジョー(ジャケット写真真ん中)、白人(ユダヤ系?)グイルフォイル(ジャケット写真一番手前)で構成されるトリオ。黒人がいないところが今時。”美味しい!”というタイトルにかけ、食堂のテーブルに並んで座ったジャケット写真がユニークです。
冒頭にも書きましたが現代ニューヨークの人達で、M-BASEの流れを汲むジャズをやっています。従来にない新しいものをということで色々思考してきたあげくの難解メロディーと複雑奇怪な変拍子ファンクがその特色と言ってしまってもよいかもしれません。
新しいものや分からないことに拒絶反応を示す人達には、ミュージシャンの独りよがりとして受け入れ難いものがあるようです。その筆頭が寺島靖国さんだと私は理解しています。まあ、そんな意見は放っておきますが(笑)。
このサックス・トリオ難解そうでいて実はあまりそうでもないのです。まあこの手のやつをたくさん聴いてきた私なのであまりあてにならないかもしれませんが・・・。なぜそれほど難解ではないのか? まずメロディーが無機的でないです。これはもうマハンサッパのインド系ならではのメロディーセンスによるところ大なのでしょうね。インドメロディーの好き嫌いはあるにしても、哀愁が漂うメロディーは馴染みやすいです。
そしてこれも私の個人的な感覚(たぶん世代的なものもある)なのかもしれませんが、変拍子とはいえファンキーなグルーヴがあるところです。こういうグルーヴって腰に来てとても気持ちが良いのです。8ビート系なので大まかに括ればハード・フュージョンとしてとらえることができ、そのテクニカルなリズムはテクニカル・フュージョン好きにも訴えかかえるものはあるはずです。
演奏のテンションが極端に張りつめていないところも○。どことなく大らかで付け入る隙を与えてくれているところが親しみやすさにつながるわけです。そんなわけでサウンドとしては結構馴染めます。
聴きどころは何といっても東洋エスニック・パワーで独特のメロディーを”グリグリ”とねじ込んでくるマハンサッパのアルト・サックス。パワフルでテクニカルな吹奏というのはジャズの醍醐味です。そして複雑な変拍子と多用されるリズム・チェンジをものともせず、弾力あるパワフル・グルーヴを叩き出すサードジョーのドラミングはやはり快感でしょう。
さて、もう一人のメンバー、グイルフォイルのベースはというと。センスの良い音やリズム感覚を持っているとは思うのですが音がちょっと弱い。これは彼が使っているアコースティック・ベース・ギターのせいだと思います。ギターのでっかいやつです。緩めの響きが独特のニュアンスを出しているんでしょうけれど私はダメ。”ギリギリ”締まったアップライト・ベースにするか、緩く低いエレクトリック・ベースにするか、はっきりせい!(笑)
曲はマハンサッパが5曲、グリフォイルが3曲提供して全8曲。2人の作曲ですが一貫性はあります。どの曲も途中でリズムチェンジしながら表情を変え、ソロとテーマが有機的につながる構成。途中4ビートが出てくる曲が2曲あり、良いアクセントになっています。アドリブが主体ですがアドリブ一発というだけではないところが現代的です。
「皆さん聴いて下さい。」とは言いません。ジャズを支えるコアな方に薦めます。
アルバム名:『Tasty!』
メンバー:
Rudresh Mahanthappa(sax)
Chander Sardjoe(ds)
Ronan Guilfoyle(b)
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コメント
いっきさん。こんばんは。
林栄一さんのサックスは美しいですよね。
オイラは、あの音に魅了されている一人。
生音聴かなくっちゃ、分からないと思う。
>結局ジャズを支えるのは
>コアなマイノリティ(少数派)であって
>マジョリティ(多数派)ではないのです。
>どうしてそれが分からないのでしょうか?
これは夢なんだと思いますよ。二度と来ない・・・(笑)。
オイラはジャズは自分の問題だと思っています。
そのアルバムが好きになるには何か理由があると。。。(笑)
まぁ、同期するってことでしょうね。 その人の問題。
投稿: tommyTDO | 2012年6月11日 (月) 00時56分
tommyさん
こんばんは。
>林栄一さんのサックスは美しいですよね。
>オイラは、あの音に魅了されている一人。
サックスの鳴りがいいんですよね。
抜けが良くてブライト。
>生音聴かなくっちゃ、分からないと思う。
おっしゃるとおりです。
>これは夢なんだと思いますよ。二度と来ない・・・(笑)。
でしょうね。来ないと思います。別にそれでいいと思うのですが。
>そのアルバムが好きになるには何か理由があると。。。(笑)
>まぁ、同期するってことでしょうね。 その人の問題。
そのとおりだと思いますが、同じような感覚で同期する人が少ないとは言えそれなりの数はいるわけでして、そういう人達が緩く繋がってコミュニケーションできていればいいんじゃないかと私は思います。
投稿: いっき | 2012年6月11日 (月) 20時38分
このアルバムは先日、DUでVijay Iyerを大人買いした時にお金がないから給料日以降に買おうと思ってとって置いたやつでは…?
orz
投稿: 名無し | 2012年6月13日 (水) 23時24分
こんばんは。
給料日が待ち遠しいことでしょう。
なかなか良いアルバムです。
投稿: いっき | 2012年6月14日 (木) 00時00分
いっきさん、こんばんは。
もうご存知でしたら余計なお世話ですが、今年のジャズ・ジャーナリスト・アソシエーションのJJA Jazz Awardsで見事選ばれましたね。Alto of the yearにルドレシュ・マハンサッパ。(他の候補はリー・コニツ、フィル・ウッズらです)
ヴィジェイ・アイヤーもなんとキース・ジャレットを抑えてピアノ部門に入賞です。
90年代に死語になったはずのM-Base出身の中堅若手がJazz Legendを喰ってしまう結果になりました。
少なくともアメリカの批評家・ジャーナリストは保守的とか言われてても、ミュージシャンに付いているファンの多寡に関係なく良いものを評価していると思います(ECMがlabel of the yearは疑問ですが;)。
投稿: 名無し | 2012年6月23日 (土) 01時51分
おはようございます。
>今年のジャズ・ジャーナリスト・アソシエーションのJJA Jazz Awardsで見事選ばれましたね。Alto of the yearにルドレシュ・マハンサッパ。(他の候補はリー・コニツ、フィル・ウッズらです)
知りませんでした。そういうことに結構疎いんです。
気にかけているジャズマンが受賞するのは嬉しいです。
>ヴィジェイ・アイヤーもなんとキース・ジャレットを抑えてピアノ部門に入賞です。
それは凄いですね。
>90年代に死語になったはずのM-Base出身の中堅若手がJazz Legendを喰ってしまう結果になりました。
M-Baseが現代まで脈々と流れていることを7年くらい前に知り、注目してきたわけですが、最近になっていよいよジャズ界に影響力を及ぼすことになているのは面白いことです。
>少なくともアメリカの批評家・ジャーナリストは保守的とか言われてても、ミュージシャンに付いているファンの多寡に関係なく良いものを評価していると思います(ECMがlabel of the yearは疑問ですが;)。
批評家・ジャーナリストはまずはミュージシャンの方を向いていなければいけないと思うのですが、日本の批評家・ジャーナリストは半分くらいリスナー/消費者の方を向いちゃっているような気がして、そこら辺が問題なのかもと思っています。
最近のECMの活躍ぶりからすれば、label of the yearというのもわからなくはありません。ヨーロッパでほとんど唯一好調なドイツのレーベルというのが時代を映している気もします。
投稿: いっき | 2012年6月23日 (土) 08時04分