« 皆さんは金環日食を見ましたか? | トップページ | 明日はいよいよクリポタじゃん! »

これはジャズです。

今日は新譜紹介です。これは面白いアルバムですよ。

P157 大谷能生『ジャズ・アブストラクションズ』(2012年、BLACK S<OKER RECORDS)です。パソコンの音楽編集/再生ソフトを使って大谷さんがミックスとプログラミングをして作ったアルバムです。ジャンルで言えばアブストラクト・ヒップホップというのが良いような気がします。普通のジャズファンはこれをジャズとは呼ばないんじゃないでしょうか。

さて、この唯一無二の面白いサウンドですが、私が聴く限りこれはジャズとしか言いようがありません。音の佇まいがジャズなんですよね。ジャズの何たるかが分かっていないとこういうサウンドは作れないと思います。

サンプリングしたジャズ・アルバムはスリーブに全て記載してあります。有名なアルバムがたくさんあり、トラックによっては元のアルバムが何なのか分からない場合もありますしすぐに分かる場合もあります。このアルバムがジャズだと書きましたが、それはジャズ・アルバムをサンプリングしているからというわけではありません。なぜならヒップホップでジャズ・アルバムをサンプリングしていてもジャズを感じないものがたくさんあるからです。

ジャズ・アルバムをサンプリングすればジャズになるというような簡単なものではないと思うのです。そこへいくと大谷さんはやっぱりジャズがよく分かっているわけで、サンプリングするのがピアノの数音、ドラムの数音、ベースの数音だとしても、その音に宿るジャズが上手く表現されているんです。だからサウンドはジャズの匂いを放っています。

ジャズのアルバムをサンプリングするアブストラクト・ヒップホップと言えばマッドリブがいます。そのマッドリブがいかにもバーチャルで実態感希薄な現代サウンドなのに対して、こちらには昭和のアングラ臭漂う実態感があるところが私は気に入っています。喩えるならば、同じSFものでもマッドリブはアニメであり、このアルバムはウルトラマンやゴジラなどの実写版なのです(笑)。

ライナーノーツは、いかにも菊地さんらしいヒップホップとジャズの関係からこのアルバムを見たものと、大谷さんのこのアルバムを作った意図が掲載されていて、どちらも面白いしうなずけるものがります。特に大谷さんが書いている前半部分は”ジャズとは何なのか”を上手く表現している気がします。”私がジャズに感じるもの”(それを感じるが故にジャズを聴き続けているとも言える)がここに書かれています。そしてそれが見事にサウンド化しているのがこのアルバムだと思います。

大谷さんののっぺりしたラップというかナレーションというかが3曲入っているのはご愛嬌。《ボブ・ジェームス》という曲が全然ボブ・ジェームスじゃなかったり、《エルヴィンヴィー》という曲で私の大好きなエルビンのドラムがめちゃくちゃ格好良く鳴っていたり、《アイル・リメンバー・エイプリル・リジョイス》というバップでフリーなタイトルの曲が格好良いヒップホップだったり、面白さ満載です。

ラストの曲でビリーが歌う《アイ・ラブズ・ユー・ポーギー》からウェスの《ザ・ジョーカー》へというエンディングがなるほどです。いかにもな”バップ”曲を持って来ないところが面白いじゃありませんか。

このアルバムは私にとって”ジャズとは何か?”を再認識させてくれます。
”ジャズとは何か?””何でジャズを聴き続けているのか?”
私としてはそれをこのアルバムから是非感じ取ってほしいです。
こんな感じで妄想が進んでいくからジャズは楽しい(笑)。

|
|

« 皆さんは金環日食を見ましたか? | トップページ | 明日はいよいよクリポタじゃん! »

ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

いっきさん、こんにちは。


やっぱりこれ、「ジャズ」ですよね。
「実態感」ってジャズの大事な要素だと思います。
大谷さんがライナーに、「音楽が出来上がってゆくその場の雰囲気というか、
まだ作品がはじまっていない状態から、さりげなく、しかし気が付くとあっという間に演奏が流れ出してくるその感じに、とにかく興奮していた」と書いていますが、そういう生々しさというか人間臭さみたいなものが、ジャズのおいしいところだろ思うのです。


ジャズのそういう部分と、いっきさんが先日少し書いておられた「哀愁メロディー」って相性いいんじゃないでしょうか。
ダスコ・ゴイコビッチとか、それこそユダヤ系の人たちとか、スペイン系の人たちとか、民族的な要素を取り込んでいくミュージシャンは結構いますが、それはやはりジャズというフォーマットに合っているからでしょう。


改めて考えてみると、ぼくが最近はまっているアケタの店周りというか、いわゆる「中央線ジャズ」の人たちの中には、そういう「哀愁」であったり、「歌謡曲感」、「演歌感」みたいなものを持っている人が多い気がします。
先日アケタの店で林栄一さん率いるガトス・ミーティングのライブを観てきたんですが、林さんの曲もそういう感じの曲が多いなあと。
(ちなみにライブの内容はほんとにすばらしかったです。レコーディングライブと言ってたので、CD化されるかも。お客さんはぼく含めて10人いませんでしたが 笑)


ところで、大谷さんの新譜の最後の曲、I loves you porgy歌ってるのってエラですか?
タイトルが「奇妙な果実」だし、ビリー・ホリデイだと思ってたんですが・・・。
ボーカルものはニーナ・シモン、カッサンドラ・ウィルソン、アビー・リンカーンくらいしか聴かないので(←偏りすぎですね 笑)自信はないです。間違ってたらすみません。

投稿: many blessings | 2012年5月24日 (木) 15時20分

many blessingsさん


こんばんは。
「ジャズ」「実態感」って感じますよね。
>そういう生々しさというか人間臭さみたいなものが、ジャズのおいしいところだろ思うのです。
正におっしゃるとおりだと思います。
大谷さんが書いているその部分って凄く説得力を感じました。


>ジャズのそういう部分と、いっきさんが先日少し書いておられた「哀愁メロディー」って相性いいんじゃないでしょうか。
確かに親和性は感じます。
あとは日本人にとっても相性が良い要素だと思います。


>改めて考えてみると、ぼくが最近はまっているアケタの店周りというか、いわゆる「中央線ジャズ」の人たちの中には、そういう「哀愁」であったり、「歌謡曲感」、「演歌感」みたいなものを持っている人が多い気がします。
そこですよね。
濃くてアングラな感じはこのアルバムにも流れています。
何というか怪しい感じに惹かれます[笑)。


>先日アケタの店で林栄一さん率いるガトス・ミーティングのライブを観てきたんですが、林さんの曲もそういう感じの曲が多いなあと。
分かりますその感じ。
林さんは私も4回くらい甲府で見ています。
林さんのアルトの音色とアバンギャルドな精神が好きです。
渋さ知らズがよくやる林さんの《ナーダム》が特に好きです。
アルバムも3枚持っています。


>(ちなみにライブの内容はほんとにすばらしかったです。レコーディングライブと言ってたので、CD化されるかも。お客さんはぼく含めて10人いませんでしたが 笑)
少ないですよね。
もう少し入ってくれればと思いますよ。
CDになるなら聴いてみたいです。


>ところで、大谷さんの新譜の最後の曲、I loves you porgy歌ってるのってエラですか?
>タイトルが「奇妙な果実」だし、ビリー・ホリデイだと思ってたんですが・・・。
はい、おっしゃるとおりだと思います。
ご指摘感謝です。
タイトルも確認せず思い込んでしまいました。
本文を修正致します。
私もボーカルものはほとんど聴きません。
一応有名どころのアルバムはひととおり持って入るのですが聴かないです。
ちなみにビリー・ホリデイは3枚持っていて、よほど気が向かないと聴きません。

投稿: いっき | 2012年5月24日 (木) 20時46分

ビリー・ホリデイで合ってましたか。ほんとにエラだったらどうしようかと(笑)
ぼくもビリー・ホリデイは陰鬱な気分になっちゃうのでめったに聴きません。
I'll be seeing youとか、どう考えても二度と会えないようにしか聞こえないのが…。


ガトス・ミーティング、おすすめです。
森の人、ナーダム、ノース・イースト、回想など、林さんの名曲が目白押しでした。
主にバリサクの吉田隆一さん目当てで観に行ったのですが、ツインベース・ツインドラムの迫力にとにかく圧倒されました(もちろん吉田さんのソロも良かったです)。
林さんもすでに還暦を超えていると思いますが、比較的若いメンバーに囲まれながら、まだまだ健在といった感じでバリバリ吹いてました。かっこいい!

投稿: many blessings | 2012年5月25日 (金) 00時24分

many blessingsさん


こんばんは。
ビリー・ホリデイの暗さもいいんですけどね。
なかなか聴きません。


ガトス・ミーティングの”ガトス”ってファミレスのなんでしょうかね?
ファミレスの”ガトスで会議”なら面白いグループ名です。
バリサクとのコンビでツイン・ベース&ツイン・ドラムってカッコ良さそう。
是非見たいです。アルバム出たら買います。
林さんみたいな方が若手を引っ張っていくジャズっていいですよね。
こういう流れが絶えなければジャズも続いていくと思います。

投稿: いっき | 2012年5月25日 (金) 21時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/511944/45381611

この記事へのトラックバック一覧です: これはジャズです。:

« 皆さんは金環日食を見ましたか? | トップページ | 明日はいよいよクリポタじゃん! »