カントリー系のアメリカ音楽
com-post の掲示板で最近ブルースとカントリーの話題があったり、ジャズ喫茶「いーぐる」 のブログや掲示板で今年の初めに”黒耳””白耳”の話題があったりと、黒vs白というのはアメリカ音楽を聴く者にとってはかなり気になる事項であります。私の場合、”黒”というと最近はヒップホップになっていますが、”白”というと最近のジャズの主流なので、特に意識して聴いていません。そんな状況の中で今日の1枚はカントリー系です。準新譜。
ハンク・ロバーツの『エブリシング・イズ・アライブ』(2010年rec. Winter&Winter)です。メンバーは、ハンク・ロバーツ(cello,voice,jazzaphone,fiddle)、ビル・フリゼール(el-g,ac-g)、ジェローム・ハリス(sc-bg,ac-g,voice)、ケニー・ウォルスン(ds,per)です。カントリー系と言えばやっぱりこの人。ビル・フリゼールがいます。
このアルバムをチェックしていたのはディスクユニオンの「1月度WEB、店舗スタッフ推薦盤」になっていたからです。推薦文は四浦さんが書いていました。私にとって四浦さんの推薦盤はかなり信頼できるものになっています。買うのが遅れてしまったのはAmazonで安い輸入盤を書いたかったから。4月にユニオンの中古盤を安く購入したのですが、今はAmazonの輸入盤のほうが安く買えます。これはボンバ・レコードから日本盤も出ています。
ハンク・ロバーツを知ったのはこのアルバムです。
「ハンク・ロバーツって知ってますか?」
”ジャズ/ジャズではない”問題もはらんだ音楽。
上記アルバムから4年ぶりの新作が今回のアルバムです。前回はマルク・デュクレ(g)、ジム・ブラック(ds)を起用して前衛色が強かったけれど、今回はビル・フリゼールということなのでカントリー色が強まっています。ベースとドラムもロバーツとフリゼールゆかりのメンバーということで、この人達らしくてこの人達にしかできない演奏です。
アメリカ音楽の色々な要素がない交ぜになったサウンド。それはアメリカの田舎の風景と大地や自然を想起させます。私の場合はあくまでテレビや映画で知るアメリカの風景ということではありますが。
私達の世代(アラウンド・フィフティー)は”アメリカに追いつけ追い越せ”を知るたぶん最後の世代なので、アメリカへの憧れというものがあります。それは日本にない広大さと豊かさへの憧れです。青春時代がそんな時期に当たります。その後私が就職した80年代は”ジャパン・アズ・ナンバー・ワン”=”バブル景気”なので、それ以降の人達はたぶんアメリカへの憧れは薄れているだろうというのが私の想像。日本も豊かになったのです。
私のオーディオ歴なんかは正に”ジャパン・アズ・ナンバー・ワン”を肌身で感じてきました。JBL、SHURE、TANNOYなどへの憧れはありましたが基本は優秀な日本製品。それはある意味オーディオ評論家の故長岡鉄男さんの姿勢にも言えると思います。音源は外盤で機器は日本製。長岡さんは一番共感できたオーディオ評論家です。
ジャズや洋楽好きというのはアメリカへの憧れと切り離なせないと思います。そして実は対象がイギリスや他国だとしても、アメリカを通してその先に広がっていたというのが私の実感です。今思えば青春時代は”アメリカ≒世界”だった気がします。個人的な感覚ではありますがそういうものでした。ビートルズもレッド・ツェッペリンもクイーンもABBAもビージーズも私の中では皆アメリカでした(笑)。
話が大分反れてしまいましたね。このアルバムの話に戻しまして、メンバーがメンバーですから一筋縄ではいきません。独特の捻りが加味されたサウンドはイマジネーションをくすぐってくれます。作曲は全てロバーツがしていますが、中には音響系のフリー・インプロみたいな部分もあります。スタジオライブのアナログ2トラック録音。ポスト・プロダクションが注目される昨今ですが、やっぱりこのライブ一発録りがジャズなのです。
アメリカへの憧れが分かる人には聴いてほしいサウンド。
ゆったりとした時が流れつつも時々”グイグイ”迫ってきます。
ドイツのレーベルWinter&Winterがこれとか、ポール・モチアンの『ザ・ウィンドミルズ・オブ・ユア・マインド』とか、アメリカンサウンドとしか言いようがないものを録音しているところが興味深いですよね。古くはブルーノートのオーナーのアルフレッド・ライオンがドイツ人だったり、今やドイツのECMがジャズの一大勢力だったり、これってつまりはドイツ人のアメリカへの憧れなのかもしれませんね?憧れるが故に本人達以上に良さが分かったということがあるかもしれません。日本にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
第二次世界大戦の敗戦国ドイツと日本がジャズの良き理解者である現在というのはかなり興味深いことです。そういえば第二次世界大戦のもう一つの同盟国イタリアも現在は伝統的なジャズの良き理解者でした。米に負けた日独伊こそが現在はジャズの最良な理解者だったりして(笑)。
ついでにもう一つ。日本のクラブ・ジャズの人達はイギリスを通してアメリカを見ている気がします。ここが私と合いいれない根本的理由なのかもしれません?
更に、今や日本自身がかつてのアメリカの立場だったりします。アニメやコスプレなど、日本に憧れる人たちが世界中にいて、日本人以上にその良さを理解しているのです。世の中面白いですよね。
話が脱線しまくり。ご容赦願います。m(_ _)m
アルバム名:『EVERYTHING IS AKIVE』
メンバー:
Hank Roberts (cello, vo, jazzaphone fiddle)
Bill Frisell (el-g, ac-g)
Jerome Harris(ac-b, el-b, vo)
Kenny Wollesen (ds, per)
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コメント
いっきさん、こんばんは。
「アメリカへの憧れ」話、興味深く読ませていただきました。
23歳の私の場合、アメリカに対する「憧れ」は確かに薄いと思います。
思春期に911、対テロ戦争、イラク戦争などを目にし、新自由主義への反発なんかもあって、特に政治・経済面でアメリカを好きになれない部分が多いのです。
アメリカ発の文化にしても、生まれたときから当たり前のように身の回りにあったせいか、遠い国に対する憧れのような感覚はあまりないですね。
(そんな私がいま大学院でアメリカ法を勉強しているのですから、世の中何があるか分かりません)
洋楽も邦楽も、欧州もアメリカもラテンも、メジャーなものに関してはそれほど差異を意識しないで聴いていくというのが現代的な感覚なのかもしれません。
「ビートルズもレッド・ツェッペリンもクイーンもABBAもビージーズも」、「アメリカ」である前に「良い感じのサウンド」として聴いてきたと思います。
それでもアメリカの音楽に深入りしていくうちに、根底に(?)ある「特殊アメリカ的なサウンド」みたいなものを発見していくことはあるのですが。
本文とは関係ありませんが、昨日やっと大谷さんの新譜が届きました(注文から約一週間待たされました)。
まだあまり聞きこんでませんが、大谷さんのジャズへの愛(偏愛?)が感じられる、なかなか面白いサウンドだと思いました。
ラップに関しては、いっきさんのおっしゃる通りの「のっぺりラップ」ですね(笑)
ポエトリーリーディングっぽいと言うか、小林大吾とSUIKAのtotoを足して2で割って、志人のフレーバーを振りかけた感じ?
生粋のヒップホップ(日本語ラップ)ファンが聴くとどう感じるのか気になります。
個性的なMCも増えているようだし、抵抗なく聴けたりするんでしょうかね?
投稿: many blessings | 2012年5月15日 (火) 21時33分
many blessingsさん
こんばんは。
育った時期が違えば当然対象に対する感じ方が違っていて、年齢が四半世紀以上も違うと全く異なったものになっていることは想像に難くありません。
many blessingsさんが目の当りにしてきた世界の警察としてのアメリカとその衰退や歪に嫌悪感を抱くのは自然だと思います。
今の私もアメリカへの憧れなんてないですが、アメリカの音楽に関しては憧れの感情は残っています。
>そんな私がいま大学院でアメリカ法を勉強しているのですから、世の中何があるか分かりません
そうなんですよね。そういうことって起こります。だから面白い。
>洋楽も邦楽も、欧州もアメリカもラテンも、メジャーなものに関してはそれほど差異を意識しないで聴いていくというのが現代的な感覚なのかもしれません。
現代のボーダーレスな感覚ですよね。
私も今はそうです。ただ記憶として色々抱えています。
>「特殊アメリカ的なサウンド」みたいなものを発見していくことはあるのですが。
私の経験で言えば北欧ジャズやイタリアジャズやフランスジャズがそれぞれ持つテイストを発見していくようなことと同じなんでしょうね。
大谷さんの新譜ですが、ジャズのマイナー・レーベルの流通って悪いですね。
私はスガダイローさんの新譜がもう何週間も送られて来ない状況です(笑)。
>大谷さんのジャズへの愛(偏愛?)が感じられる、なかなか面白いサウンドだと思いました。
”ジャズ愛”が感じられますよね。で、日本的。こういう味は日本人にしか出せないと思います。
>ポエトリーリーディングっぽいと言うか、小林大吾とSUIKAのtotoを足して2で割って、志人のフレーバーを振りかけた感じ?
う~む、どういう喩なのか残念ながら全く理解不能なのですが、面白いです。
>生粋のヒップホップ(日本語ラップ)ファンが聴くとどう感じるのか気になります。
>個性的なMCも増えているようだし、抵抗なく聴けたりするんでしょうかね?
ほとんどの人が違和感アリアリなのではないでしょうか。
でも中には面白いと思う人が必ずいるはずで、そこがまた面白いわけです。
投稿: いっき | 2012年5月15日 (火) 23時33分
このアルバム、私も出てたことに気がつかなくて、後から入手しました。大手通販では、宣伝、してないですよね。
たくさんあるうちのある面だと思うのですが、ハンク・ロバーツとビル・フリゼールの指向する方向って似てる部分があって、それがうまくサウンドになったという感じがあります。どちらのアルバムでもアリな、アメリカンで牧歌的(?)な部分の多いサウンドが心地良いですよね。チェロでこういうサウンドを出してしまうのも、けっこう個性的ですよね。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2012年6月16日 (土) 18時18分
910さん
こんばんは。
大手通販ではこういうのは宣伝しませんね。
確かにある面が合致してうまくいっていると思います。
>アメリカンで牧歌的(?)な部分の多いサウンドが心地良いですよね。
はい。そこが魅力だと思います。
>チェロでこういうサウンドを出してしまうのも、けっこう個性的ですよね。
この人にしかできないサウンド、そういうものに惹かれます。
TBありがとうございました。
投稿: いっき | 2012年6月16日 (土) 19時19分