メルドー・トリオってやっぱりいいな~。
これまた少々遅れた新譜紹介。昨日と同じピアノ・トリオですがこちらはかなり気に入ってます。
ブラッド・メルドー・トリオの『オード』(2008,11年rec. NONESUCH)です。メンバーは、ブラッド・メルドー(p)、ラリー・グレナディア(b)、ジェフ・バラード(ds)です。ドラマーが変わってからのいつものメンバー。2008年録音の8曲に昨年録音した3曲を加えた全11曲。全てメルドーのオリジナル曲です。特に今回新機軸みたいなものはありません。
『ハイウエイ・ライダー』録音前に録音しておいたのに、何で今頃の発売になったんでしょう? ピアノ・トリオばかりを続けるのを避けて『ハイウエイ・ライダー』プロジェクトを優先させたということなのかもしれません。その後はソロとかデュオとかのアルバムを出していて、久々のメルドー・トリオということになります。今回3曲追加してアルバム化したみたいですね。
曲のほとんどが誰かのためのトリビュートらしく、マイケル・ブレッカーやカート・ローゼンウィンケルに捧げた曲も入っています。基本的にメルドーの音そのものです。ちょっと暗めでねじれたトーンを含みつつ独特な美しさを持った曲が並んでいます。メルドーさん、すっかり貫禄が出てきてしまった感じです(笑)。特に気負うところもなく自分の感じた世界をそのまま音にして綴っています。
相変わらず左右の手は変幻自在。別々のメロディーを奏でたり、輪唱モードだったり、その音の重なり具合からはメルドー特融のトーンが発せられていて、ちょっと過大気味に言えば、あのセロニアス・モンクが持っていたような、自分独特のトーンまで感じさせてくれます。そしてかなりテンション高めだったりするのですが、私には温もりまで感じられます。
ブルージーでジャジーでモロにバップな《ビー・ブルー》、ジェフがドラムをパーカッションとして叩いているオーガニック・ミュージックのような《ツイギー》、高速4ビートでこれまたモロにバップでユーモアまで含んでいるように感じさせる《スタン・ザ・マン》、フリー要素強めだけれど排他的ではない《ユーロジー・フォー・ジョージ・ハンソン》とか色々あって、メルドー・ジャズの懐の深さが分かります。
グレナディアのベース、バラードのドラムが何の違和感もなく、これ以外ないという説得力を持ってメルドーの世界をサポートしているのが、このトリオの熟成を物語っているように思います。で、タイトルのとおり ”メルドー・トリオってやっぱりいいな~” なのです。
変に威圧的に尖がったりしていないので、何回か聴くうちに音がだんだん染み込んできていい感じに聴こえてきます。メルドーがこんなスルメ盤的なものに感じられるようになるとは思いませんでした(笑)。私の耳が変化しているってことなんでしょうか? メルドーのピアノ、なかなかいい感じに熟成してきていると思います。
『ハイウエイ・ライダー』がちょっと”やっちゃった”感があったので心配しましたが、このアルバムでは2008年の演奏と2011年の演奏に大きな変化がないことから、ピアニスト・メルドーのぶれない芯が感じられたので一安心。
現代ジャズを聴く人は聴いておくべきピアノ・トリオです。
アルバム名:『ODE』
メンバー:
BRAD MEHLDAU(p)
LARRY GRENADIER(b)
JEFF BALLARD(ds)
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コメント
こんにちは。
わたしも このアルバム聴きました。
トリオでのメルド-は初でしたが とても良かったと思います。
タイトル曲「ODE」が一番好きかな(^-^)♪
ライナ-の表紙のデザインが、かっこよかったですね。
今年 来日するそうですね。
他にも いろんな方が来日するようで みなさん ワクワクされていますね。
いっきさんも なにか聴きに行かれるのですか?
わたしは…お江戸は遠く残念です。
投稿: マ-リン | 2012年4月13日 (金) 17時45分
マーリンさん
こんばんは。
>わたしも このアルバム聴きました。
マーリンさんはピアノ・トリオがお好きなんですもんね。
>トリオでのメルド-は初でしたが とても良かったと思います。
これの良さが分かるところはさすがですね。
>タイトル曲「ODE」が一番好きかな(^-^)♪
音が溢れ出してくるような感じのテーマが素敵な曲ですよね。
私も気に入ってます。
>ライナ-の表紙のデザインが、かっこよかったですね。
渋い所に目をつけますね。
このシンプルなタイポグラフ。
>今年 来日するそうですね。
そうですか。
今年は観に行きたい気分です。
>他にも いろんな方が来日するようで みなさん ワクワクされていますね。
みたいですね。
すずっくさまのところで拝見してます。
>いっきさんも なにか聴きに行かれるのですか?
行きます。
クリス・ポッター@コットンクラブ。
>わたしは…お江戸は遠く残念です。
金沢からでは、ちょっと観に行くってわけにいかないですもんね。
泊りがけになっちゃうでしょうし。
地元に来られるジャズ・マン/ウーマンを観るのでもいいと、私は思います。
誰それというよりライブで直にジャズに触れることが大事だと思います。
投稿: いっき | 2012年4月13日 (金) 20時19分
個人的にはけっこういいと思うんですが(たぶん星をつけたら4つかな)、発売前の期待でけっこう妄想してしまい(笑)、期待が高すぎたというのはあったかもです。それが書いている時に自分の文章に出てきたのかも。
最近メルドーのピアノ・トリオが少なかったですけど、個人的にはソロとか「『ハイウエイ・ライダー』がちょっと”やっちゃった”感があったので」という、そちら方面が割と好み、という面も大きいのかもしれません。でも、結局これからも追っかけてしまうんですよね。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2012年4月13日 (金) 21時57分
910さん
こんばんは。
4つ星ですか。私は4つ星半あげたい気分です。
確かに期待したものとはちょっと違った感じです。
私は逆にそこを評価しています。
ソロは聴いていないのですが、『ハイウエイ・ライダー』は悪いとは思っていません。ただ少し空回り気味で冗長な部分があったので心配してしまいました。
私も追いかけますが、微妙に作品は選んでます(笑)。
TBありがとうございます。
投稿: いっき | 2012年4月13日 (金) 22時28分
おはようございます。
わたしも面白かったと思います。
でも、メルドーみたいなクラスになると5年間と一緒はどうよ、違和感ないって何よ、って、言うのもあるかと思います。
あっちにも少し書いたのですが、、
メルドーって、心の中の空虚な部分からくる焦燥感とか不安とか、そういうものが原動力となって、あのわけわかんない凄みがあったと思うんです。
で、今だってそうう部分が消えたわけでないでしょうけど、、生活の中に柔らかで優しい時間も増えたんじゃないか,って、思うんです。
そういう意味では、単なるピアノ弾きでなイ分、なかなか、これから大変なのかもしれないですよね。
彼みたいな人は、自分の気持ちを無視した部分で演奏ってあり得ないでしょうから。
投稿: Suzuck | 2012年4月14日 (土) 09時36分
Suzuckさま
こんにちは。
>わたしも面白かったと思います。
ですよね。
>でも、メルドーみたいなクラスになると5年間と一緒はどうよ、違和感ないって何よ、って、言うのもあるかと思います。
そういう意見もあるでしょね。
変わり続けるのが良いのか。
熟成が良いのか。
>メルドーって、心の中の空虚な部分からくる焦燥感とか不安とか、そういうものが原動力となって、あのわけわかんない凄みがあったと思うんです。
凄みという部分ではそうでしょうね。
得体の知れないところがないと凄みにはなりませんから。
>で、今だってそうう部分が消えたわけでないでしょうけど、、生活の中に柔らかで優しい時間も増えたんじゃないか,って、思うんです。
たぶんそうだと思います。
>そういう意味では、単なるピアノ弾きでなイ分、なかなか、これから大変なのかもしれないですよね。
>彼みたいな人は、自分の気持ちを無視した部分で演奏ってあり得ないでしょうから。
確かに得体の知れない芸術的発想と普通の日常生活にどう折り合いをつけるか、そしてどのように作品に落とし込むか、色々あるんでしょうね。
でも、リスナーとしての安易な考えでは、そういうものが音になっていれば、リスナーとして賛否悲喜こもごも楽しめるのではないかと思います。
投稿: いっき | 2012年4月14日 (土) 16時30分