ヨーロッパ音楽土壌の豊かさを感じる。
今日は新譜紹介です。
パラティノの『バック・イン・タウン』(2011年rec. naive)です。メンバーは、ミシェル・ベニタ(b)、グレン・フェリス(tb)、パオロ・フレス(tp,flh)、アルド・ロマーノ(ds)です。フランスのグルノーブルでのライブ録音2枚組。パラティノはロマーノ率いるピアノレス・カルテット。
このグループを知ったのは杉田宏樹さん著「ヨーロッパのJAZZレーベル」に掲載されていたからです。ラベル・ブリューから出た『テンポ』(1997,8年rec.)を聴いてそのオープンでリラックスした感じが気に入っていました。でも、その後このグループをフォローすることもなく放っておいたら、Amazonの”こんな商品も買ってます”にたまたまひっかかってきたので購入することに。最近はほとんどアメリカのジャズを聴いているのですが、たまにはヨーロッパのクオリティが高いジャズも聴きたくなります。
ロマーノとベニタのフランス勢リズムに、フランス在住のアメリカ人フェリスとイタリア人フレスというフロント2管が加わり、アンサンブルとアドリブ・ソロを何の衒いもなく素直に聴かせるカルテットです。個々のテクニックは折り紙つきなので何の不安もありません。今回はライブ録音ですがスタジオ録音と何ら変わりがない完成度の高い演奏をしています。違うとすれば観客に後押しされての熱気が感じられるところくらい。
ロマーノの曲が3曲、フェリスの曲が4曲、ベニタの曲が3曲、フレスの曲が2曲、スタンダード2曲の全14曲。7曲ずつ1枚のCDに収められています。メンバーオリジナル曲が6曲演奏され、ラストにスタンダードが演奏されるという面白い構成。各オリジナル曲はメロディーを大事にしつつ、特に際立った特徴はないのですが、ヨーロッパらしい音楽性を聴かせるものになっています。リズムは4ビート、8ビート、ラテンまでと多彩。
フェリスのテクニカルでありながら大らかに歌うトロンボーン、フレスのテクニカルでありながら哀感薫るまろやかなラッパが素敵です。2管のアンサンブルは極上のまろみを聴かせてくれます。バックは軽やかなリズムを刻むロマーノとベニタ。ゴリ押し感はないのですが、リズムの推進力には心地良いものを感じます。フェリスとフレスがバリバリ吹く曲もあるので、2人のファンは必聴の内容。
広い会場なのですが、静かに聴きつつ要所で拍手をするところは、ヨーロッパならではの音楽土壌の豊かさを醸し出しているように感じます。ジャズというフォーマットの上でヨーロッパならではの音楽性を聴かせる。今巷で話題のDCPRGのような、ある意味日本の未成熟感(あるいは幼児性は菊地の狙いであると思う)とは対極にあるような成熟のサウンドがこのアルバムからは響いています。どっちが良いとかではなく、色々楽しめるのが今のジャズです。
こういうジャズを聴いているとこちらも心豊かになる感じがします。
ホールトーンを適度に含んだ録音は優秀。
カッコイイ素敵なジャズだと思います。
アルバム名:『Back In Town』
メンバー:
Michel Benita(b)
Glenn Ferris(tb)
Paolo Fresu(tp, flh)
Aldo Romano(ds)
この雰囲気を知ってもらうには映像が一番と思いつつ、YouTubeを探さなかったのですが、ジャズ友のすずっく様がブログに貼っていたので、私もマネをしてペタ。なかなか良い雰囲気だと思いませんか?
ダウンロードだけじゃなくてCDもAmazonで買えます。
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コメント
こんにちは。
庭の桜も、、やっと咲き始めました。
って、このアルバムは、個人的には先を越されてガーンって、感じ。
うーーん、悔しい。。。実は、結構、慌てた。(爆)
コードレスでフロント2人が、トランペットとトロンボーンって、渋いですよね。
でも、どの曲もかっこ良いやりとりで、目が離せません。
あ、耳ですね。
みんなかっこ良いけど、やっぱり、、大好きなフレスです。
そう、成熟って、ぴったりかもしれません。
個人の技量だけでなく、風土が生み出したものを強く感じますよね。
投稿: Suzuck | 2012年4月19日 (木) 17時54分
Suzuckさま
こんばんは。
>庭の桜も、、やっと咲き始めました。
いよいよ本格的な春到来ですね。
こちらは桜がほぼ散ってしまい緑の葉っぱが噴出しています。
>って、このアルバムは、個人的には先を越されてガーンって、感じ。
>うーーん、悔しい。。。実は、結構、慌てた。(爆)
いつもは私が後塵を拝しているので、たまには良しということでお願いします(笑)。
>コードレスでフロント2人が、トランペットとトロンボーンって、渋いですよね。
渋いです。
>でも、どの曲もかっこ良いやりとりで、目が離せません。
>あ、耳ですね。
なかなか良いですよね。
聴いていて飽きません。
耳が離せません。
>みんなかっこ良いけど、やっぱり、、大好きなフレスです。
フレスいいですよね。
たっぷり聴けて嬉しい限りです。
>そう、成熟って、ぴったりかもしれません。
ですよね。
落ち着いて音楽に浸れるジャズだと思います。
>個人の技量だけでなく、風土が生み出したものを強く感じますよね。
あちらの風土がそうさせていると思います。
投稿: いっき | 2012年4月19日 (木) 19時59分
おじゃまします。
こんにちわ。
コンテンポラリー系を集中的に聴いていたため、入手当時は
失望したのですが、改めて聴いてみるととてもいいですね。
音色のまろやかさ、豊かさ、ゆったりとおおらかな空気。
肩の力はすっと抜けていても、たるみが全くないのもさすが。
2枚一気に聴くと正直少し飽きますが、1枚の半分くらい
聴くと和めていい感じです。
投稿: さだ | 2012年5月15日 (火) 13時07分
さださん
はじめまして。こんばんは。
コメントありがとうございます。
>改めて聴いてみるととてもいいですね。
コンテンポラリー系とは違う良さがあると思います。
>音色のまろやかさ、豊かさ、ゆったりとおおらかな空気。
正にその感じが良いと思います。
>肩の力はすっと抜けていても、たるみが全くないのもさすが。
押さえるところはきちんと押さえているように感じます。
>2枚一気に聴くと正直少し飽きますが、1枚の半分くらい
>聴くと和めていい感じです。
同感です。2枚連続聴きはちょっと飽きてしまいます。
私の場合は気分次第で1枚くらいなら一挙に聴けてしまいます。
投稿: いっき | 2012年5月15日 (火) 23時04分